あみdan

わらいしなみだし

文字の大きさ
上 下
301 / 339
女人禁制の☆あみだん☆開始!

60 ショッピング? 5

しおりを挟む
「なかなか編み物コーナーに来ないから探しに来たんだ」
「あ、……うん。そう、だね……」

 声のトーンが暗い。

「この本見せてくれる?」
「あ、どうぞ」

 名塚君は声の主戸神先輩に本を渡して「ごめん」と一言俺に謝った。
 ということは、わかってて来なかったということなのかもしれない。

 いつもあんなに堂々としている名塚君とは打って変わって肩もストンと落ちているししょぼくれているように見えた。

 本を受け取った戸神先輩は田岡先輩と一緒にメンズニットの本を仲良く見ている。それも不思議なことに二人とも無言だ。

「実は……先に見つけたんだ」

 ポツンと呟いた名塚君。

 そう、だったんだね。
 その言葉で何となく理解できてしまった。

 俺と名塚君は編み物がしたいという名塚君はセーターを俺はマフラーを編んで贈りたいという想いが一緒なんだから、あの編み物コーナーを見たらショックは隠せなかったということなのだろう。

「薄々は……感づいてたんだ。季節外れだし、この先もっと暑くなるから毛糸なんかあるのかって。でも、でもさ。はじめての俺なんかさー……」

 声が小さくなって……最後は言葉にもしなくなっていた。

 俺と同じでガッカリしたんだろうな。あの品揃えを見ちゃって。
 思わず俺は自分より大きな名塚君を見上げて両肩に手を置いた。

「大丈夫!一緒に頑張ろうよ」
「そう……だね」

 どう頑張るのかなんて考えもせずにただなんとか励ましたくてそう言ってしまった。

 名塚君の声に張りも力もなく曖昧に答えているのが気にかかった。

「あの本……自費で購入するから同好会の荷物と一緒に置いててもいいかな?」

 どうしてと訪ねる前にすぐ言葉が返ってきた。

「堀も彼女もよく家に来るんだ。だから……内緒にしたい……」

「うん、いいよ」

 その気持ちは、痛いほどわかる。
 内緒で編みたい。そして贈りたい。

 前向きの言葉を聞けた俺はさっきの気がかりは気にしないことにした。
 
 だから学校で放課後で同好会で編みたいんだもの。
 噂好きの女子がいない男子だけの編み物同好会で。

 名塚君の落ち込みに引っ掛かりを覚えながら俺は残りの二人を探しに行くことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

見せしめ王子監禁調教日誌

ミツミチ
BL
敵国につかまった王子様がなぶられる話。 徐々に王×王子に成る

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

処理中です...