☆あ・み・だ・ん☆

わらいしなみだし

文字の大きさ
290 / 342
女人禁制の☆あみだん☆開始!

★『何があっても、何も聞くなよ』

しおりを挟む
 グランドで待っている時間はモヤモヤしっぱなしだったし、キャプテンと一緒にいるのなんて苦痛極まりなかった。

「神崎川……本当にいいんだな?」

 なんのことだ?
 翔琉の話じゃないだろうな?

「ポジションのことだよ」

 あーそういえば、そう言ったっけ。

「はい。本気ですよ」

 俺はFWからGKへの転向を希望している。
 それは翔琉の言葉がきっかけだ。
 言わねーけど。

「最初の練習試合はFW。次の練習試合はGK……どっちもスタメンでいいよね?僕の望んでいる活躍が出来なければ、即降ろすから」

「はい、わかりました」

 暫く俺とキャプテンは無言だった。



『活躍が出来なければ、即降ろすから』

 それは当然のこと。
 GKの練習はそんなにしてはいない。付け焼き刃に近いかもしれない。
 それでも翔琉がGKの方が合うようなことを言ったんだ。
 俺の剣道に似ていると……そう言ったんだ。
 翔琉は何処かで俺の剣道をしかと観ていた……そんな気がする。
 試合会場にいたのはやっぱり翔琉だったんだ。
 その時に俺の試合を観ていたんだ……。
 だから翔琉の言葉を信じられる。
 小学生時代の翔琉は人を見る目が誰よりも優れていたのだから。
 だから……確信出来る。

 本当は一緒に部活したかった。
 編み物部なんて、なくなればいい……本気で思っていた。
 だけど出来てしまったからには応援する。
 アイツ等が羨ましい。だけど、俺は翔琉と編み物をしたいんじゃない。
 だからこれでいいと思っている。

 中学時代、俺は仲間の榊が羨ましかった。
 同じ部活でしかもコンビを組んでいるような立場。
 部活では翔琉の隣を独占していたのは……榊だったからだ。

 まさか同じ高校を受験することになり、下から数えた方が早い翔琉が県トップの高校に合格するとは思わなかった。
 そして……同じクラス。
 翔琉の顔をみた瞬間……今度こそ『運命』だと思った。
 どれだけ忘れようとしたって叶わなかった。
 自分の気持ちに嘘をつくのはやめようと……心に決めた。

 翔琉と心の中で呼ぶようになったのは中学の、ある出来事があってからだ。



「何があっても、何も聞くなよ」
「何がですか?」

 突然のキャプテンの言葉にムッとした。
 意味がわかんねー
 だいたい誰のこと言ってんだ?

「翔琉のことだよ」

 俺は一瞬ぎょっとした。
 何故何かあったと思う?
 翔琉の何をわかってるというんだ?

「何で……ですか?」

 動揺を隠せただろうか?自信はない。

「たぶん、何かあったと思う。僕たちが待っているとわかっててこんなに遅くなる筈はないからね」

「だったら……探しに行かな」
「ダメだよ」動こうとする俺を即行で制した。

「な、なんで?」わけがわかんねー。
「信じて待つよ。それがいいんだ……」

 サッカー部の部活が終わってもう三十分近く過ぎていた。

 キャプテンはせつなそうな苦しそうな表情を見せた。
 だったら翔琉を探して助けに行かなきゃ!
 そう思うのが男ってもんだろ?

「言いたいことは、わかるよ。でもね、何処にいるか、神崎川にはわかるのかい?まだ一ヶ月もこの学校にいない神崎川にこの校舎を全部探し回ったって、果たして見つかるだろうか?」
「だったら、キャプテンが……」
「僕は……翔琉を信じてるから。何があっても待っていられるよ。此処に来ない筈は……ないからね」

 俺は何も言えなかった。
 この二人の絆ってなんだ?
 ムシャクシャする。
 今度こそ、間違わずに、翔琉の隣に堂々といられるように、そう思ってた。
 誰にも翔琉に近づかないように目を光らせていた。
 なのに……
 隣にいる男に翔琉をとられた。
 だからなのか……キャプテンの言葉の意味が俺にはわからなかった。

『何があっても、何も聞くなよ』

 俺は頭の中でこの言葉がグルグル渦巻いていた。



 翔琉が現れたのはそれから三十分……前後の時間だ。

 キャプテンが翔琉を連れ去った。
 俺は黙って座ったまま我慢した。
 二人きりにしたくはなかったけど、翔琉の隣は今はキャプテンのモノだった。
 『今は!』とそこは強調したい。

 暫くして戻ってきた二人。
 先にキャプテンが立ち去った。

 翔琉の首には……いつものキスマークとそれ以外のものが見られた。

『何があっても、何も聞くなよ』

 これが……その意味だったのか?

 俺の体内に激震が襲う。
 何があった?誰にヤられた?
 聞きたいことが後から後から襲ってくる。

 聞けば俺が苦しくなる。
 聞けば翔琉も苦しくなる。

『何があっても、何も聞くなよ』

 そういう意味かよ!
 俺は小さく舌打ちした。

 俺と翔琉。
 当たり障りのない会話が続く。
 俺は素直になれない。
 なっちゃ……いけない。
 わかってる……。

 だけど……だけど……
 これくらい……許されて、いいよな?

 俺は……翔琉を優しく、出来る限り優しく、抱きしめた。

 翔琉の隣を陣取ってるキャプテンはどんな思いで耐えたのだろうか?
 翔琉はどうしてそんな目に遭ったのだろうか?

 すぐにわかってたら、翔琉に被害はなかったのだろうか?
 俺は……直ぐに翔琉を守れたのだろうか?

 悔やんだってどれ程悔やんだって後のまつり。
 過去は変えられない。変わることはない。

 翔琉……翔琉……
 今は……今だけは……

 俺の温もりを感じていて。
 俺のでいてくれ。

 必ず、必ず、誰にも触れさせないように強くなるから。
 誰にも咎められないように清くなって戻ってくるから。

 翔琉……翔琉……
 好きだよ、翔琉……

 いつか、いつか必ず告白するから……。

 翔琉の手が俺を抱きしめ返してくれる。
 ちょっとぎこちなく、ちょっとずつ強くなる。

 どれほど心細かったんだろう?
 聞きたいけど、聞いてはいけない。
 グッと堪える。
 俺は……その立場にいないのが、どうしようもなく悔しい。

 翔琉……翔琉……
 愛してるから……

 翔琉……翔琉……
 いつか必ず……

 言えない言葉を全部飲み込んで。
 この気持ちを込めて抱きしめるしかなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

処理中です...