あみdan

『編み物男子部』？ができるまで。

179 楽しい日曜日 11

　焼きそば用の野菜とお肉をすべて切り終えたので、神崎川はそれらを持ってリビングへ向かった。
　そのリビングから楽しそうな声が聞こえてきて、その中に入れない俺はちょっと羨ましく思った。
　火が通った筍を流しに置いて自然に冷ましてるうちに俺は唐揚げの準備を始めた。
　フライパンの中にサラダ油を注入している時、不意に坂口君がやって来た。

「鳴海君、手伝うことない？」

　変な明るさの声を感じた俺はそれが何なのか気になりながらも聞くことを躊躇った。

「こっちは一人でも大丈夫だけど……いてくれると嬉しいかな？一人じゃちょっと寂しくってさ」

　素直な気持ちを言ってみると嬉しそうな照れているような……なんか懐かしいような笑顔が返ってきた。

「うん！そうさせてくれると嬉しいな。鳴海君、ありがとう！」

「ありがとうって言いたいのは俺の方なんだけど」

　俺が首を傾けてニコって笑うと目を見開いた坂口君はその後顔をくしゃっとして大粒の涙を溢した。

　それを見た俺は戸惑った。
　だって、どこをどうみて泣く要素があるんだろう？って。

「さ……坂口君、ど、どうしたの？」

　サラダ油を持っている俺は動揺しすぎてその手をどうしようか迷ってしまった。

「ん……あの、嬉しくってさ……」

「嬉しい？」

　俺にはその感情の意味がわからなかった。
　目線は二人そのままで、どちらも逸らさない。
　逸らさないのは疚しいことはないってことだよね？
　感極まっていた坂口君は俺の疑問をゆっくりと解いてくれた。

「昔の鳴海君を思い出したんだ……。中学の時は側にもいけなかったから……。こんな日が来るとは……思わなかったんだ。……僕、すごく嬉しいんだ……」

「坂口君……」

　言葉が出てこない。
　中学時代の俺は本当に忘れてしまいたいほどどうしようもなかったから。

「ご、ごめんね。僕、邪魔しちゃって……。こんな笑顔……反則だよ……。本当に……僕だけじゃないんだ……僕たちはずっと……こんな日が来ることを待ち望んでいたんだ……」

「え……？」

　坂口君だけじゃなく？他の誰かが何を待っていたっていうの？

「あ、ごめんごめん！後でゆっくり話すから……。鳴海君、今から何を作るの？」

　坂口君は涙を自分の袖で拭き、何事もなかったかのように聞いてきた。　

「鶏の唐揚げだよ」

　なんか話を逸らされた気はしたけど、俺もゆっくりはしていられないから話を切ってくれたのは正直有り難かった。
　冷蔵庫から鶏肉を漬け込んでいたボウルを取り出し坂口君に見せた。

「え？すごい！漬け込んである！本格的！」

　大袈裟に誉められてつい照れた。
　俺は軽く謙遜をして唐揚げを作るために油を半分ほど入れたフライパンのコンロに火を入れた。

　二人で小学生時代の話で盛り上がりながら俺は唐揚げを次から次へと揚げていった。