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『編み物男子部』?ができるまで。
37 いない……そして狙われる 1
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部活が終わる予定の午後五時まで名塚君と話をした。
作りたいと言っていたセーターは彼女にあげるためではなかった。
彼女に出会うきっかけを作ってくれた親友の堀君に作ってあげたいのだと……。
俺はその話を聞いて勇気が出てきたし、欲も出てきた。
俺も……報われない恋でも、『一生ダチで……』という言葉がある。
今年はマフラーを作って渡すのとは別に、振られても来年セーターを作って渡すことを決意しそれを胸の奥底に秘めた。
さすがにいきなりは暴挙なので……今年は名塚君もマフラーを編むことに決めて、今日はお開きにした。
いつものように渡り廊下で神崎川を見る。
すぐに見つかる筈なのに何処にもいない。
不安になってサッカー部が活動している一角のグランドまで階段を掛け降り急いで走っていった。
女子たちの居る場所から離れた場所で神崎川を探す。
いない。いない。いない。
何処を探してもいない。
俺に何も言わずに、帰ったのか?
部活に行かずに?
何がなんだかわからず呆然としていると、俺の前に影が出来た。
何故か歓声と悲鳴が聞こえる。
な、何?
それに気がついて顔をあげると、部活を抜けてきたらしい汗を流してるサッカー部のキャプテンが俺の前に居た。
ユニフォームまで汗だくだ。
「キミ、ちょっとこっち来て」
腕を掴まれて足早に引っ張っていかれた。
サッカー部の部室に連れ込まれ、何故か鍵を掛けられてしまった。
突然の出来事で何がなんだか脳内の思考が滞る。
言葉を先に発したのは彼だった。掴まれた腕は放してもらえない。
彼の汗の匂いが鼻腔を擽る。
「キミ、神崎川とよく居るよね?神崎川の何?」
「友達……兼、マネージャーです……」
どうしてサッカー部のキャプテンがそんなこと聞くんだろう?
たぶん返事は合ってるよね?
友達らしいし、マネージャは正しいし。
だいたいサッカー部の部室に二人でいるのって変だよね?
鍵までかけられてるし、理由がわからない。
「キミが作るハチミツ漬けレモンは部員にも好評なんだ。みんな一枚はご相伴させてもらっててね」
「あ……」
そうなんだ。知らなかったな……。
神崎川って一人で食べてるんじゃなかったんだね。
嬉しいような?残念なような?
気持ちがどっちつかずに揺さぶっている。
「僕にも作ってくれないかい?個人的に、ね?」
「あ、あの……」 個人的に?
「美味しいのに神崎川は一枚しか呉れないんだよ。ズルいと思わないかい?」
「え……あの……」 な、なんなの?
段々顔が近づいてきて、なんか、ヤバそうな雰囲気?
いつのまにか壁まで追いやられていた。
ダン!
掴まれていない手が壁を叩く。
なんか、変だよね?
俺、サッカー部に関係ないし。
どうしてキャプテンに壁……されてるの?
「キスしてもいい?」
へ?
キ、キス?
な、
なんで?
何言ってるの?
「嫌なら僕にも作ってきてよ。ハチミツ漬けレモン。じゃなきゃ、今からでも襲うけど」
もしかして……脅されてる?
ギラギラした獰猛な瞳。
有無を言わせない引き込まれる黒。
細目に見下ろされた視線からはエロチックな色気が漂ってくる。
誰もを虜にする魅力的な眼。
危険な眼だ。
変な汗が流れてくる。
襲うって……何?
どうしてそんな目で俺を視るの?
わからない……。
怖いし意味がわからない。
俺は作る方を選択した。それ以外あり得ない。
だって、キスも襲われるのも御免被りたいんだから。
「はい。作らせて戴きます……」
先輩だから敬語を使うべきなんだろう。
理不尽だと思ってもいい筈だよね?
全然知らない上級生に何でこんなことをしなきゃいけないんだろう?
俺は頭の中で不満がぐるぐる蠢いていた。
隙があったのかもしれない……。
「うん、うん、いい子だね!」
そう言ってその男は俺の頬に……キスをした。
作りたいと言っていたセーターは彼女にあげるためではなかった。
彼女に出会うきっかけを作ってくれた親友の堀君に作ってあげたいのだと……。
俺はその話を聞いて勇気が出てきたし、欲も出てきた。
俺も……報われない恋でも、『一生ダチで……』という言葉がある。
今年はマフラーを作って渡すのとは別に、振られても来年セーターを作って渡すことを決意しそれを胸の奥底に秘めた。
さすがにいきなりは暴挙なので……今年は名塚君もマフラーを編むことに決めて、今日はお開きにした。
いつものように渡り廊下で神崎川を見る。
すぐに見つかる筈なのに何処にもいない。
不安になってサッカー部が活動している一角のグランドまで階段を掛け降り急いで走っていった。
女子たちの居る場所から離れた場所で神崎川を探す。
いない。いない。いない。
何処を探してもいない。
俺に何も言わずに、帰ったのか?
部活に行かずに?
何がなんだかわからず呆然としていると、俺の前に影が出来た。
何故か歓声と悲鳴が聞こえる。
な、何?
それに気がついて顔をあげると、部活を抜けてきたらしい汗を流してるサッカー部のキャプテンが俺の前に居た。
ユニフォームまで汗だくだ。
「キミ、ちょっとこっち来て」
腕を掴まれて足早に引っ張っていかれた。
サッカー部の部室に連れ込まれ、何故か鍵を掛けられてしまった。
突然の出来事で何がなんだか脳内の思考が滞る。
言葉を先に発したのは彼だった。掴まれた腕は放してもらえない。
彼の汗の匂いが鼻腔を擽る。
「キミ、神崎川とよく居るよね?神崎川の何?」
「友達……兼、マネージャーです……」
どうしてサッカー部のキャプテンがそんなこと聞くんだろう?
たぶん返事は合ってるよね?
友達らしいし、マネージャは正しいし。
だいたいサッカー部の部室に二人でいるのって変だよね?
鍵までかけられてるし、理由がわからない。
「キミが作るハチミツ漬けレモンは部員にも好評なんだ。みんな一枚はご相伴させてもらっててね」
「あ……」
そうなんだ。知らなかったな……。
神崎川って一人で食べてるんじゃなかったんだね。
嬉しいような?残念なような?
気持ちがどっちつかずに揺さぶっている。
「僕にも作ってくれないかい?個人的に、ね?」
「あ、あの……」 個人的に?
「美味しいのに神崎川は一枚しか呉れないんだよ。ズルいと思わないかい?」
「え……あの……」 な、なんなの?
段々顔が近づいてきて、なんか、ヤバそうな雰囲気?
いつのまにか壁まで追いやられていた。
ダン!
掴まれていない手が壁を叩く。
なんか、変だよね?
俺、サッカー部に関係ないし。
どうしてキャプテンに壁……されてるの?
「キスしてもいい?」
へ?
キ、キス?
な、
なんで?
何言ってるの?
「嫌なら僕にも作ってきてよ。ハチミツ漬けレモン。じゃなきゃ、今からでも襲うけど」
もしかして……脅されてる?
ギラギラした獰猛な瞳。
有無を言わせない引き込まれる黒。
細目に見下ろされた視線からはエロチックな色気が漂ってくる。
誰もを虜にする魅力的な眼。
危険な眼だ。
変な汗が流れてくる。
襲うって……何?
どうしてそんな目で俺を視るの?
わからない……。
怖いし意味がわからない。
俺は作る方を選択した。それ以外あり得ない。
だって、キスも襲われるのも御免被りたいんだから。
「はい。作らせて戴きます……」
先輩だから敬語を使うべきなんだろう。
理不尽だと思ってもいい筈だよね?
全然知らない上級生に何でこんなことをしなきゃいけないんだろう?
俺は頭の中で不満がぐるぐる蠢いていた。
隙があったのかもしれない……。
「うん、うん、いい子だね!」
そう言ってその男は俺の頬に……キスをした。
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