あみdan

わらいしなみだし

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『編み物男子部』?ができるまで。

29 約束の放課後は…爆弾だった 2

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 とっても固まる……俺。

「え?なんで?」

 動揺が隠せない。あまりにも坂口君の言葉は不意打ちで衝撃的だった。

「え?違うの?」
「え?」

 何もおかしい話をしたのではなく、ごく普通のことのような口調の坂口君。
 それもニコニコ顔で。
 ますます強張っていく俺。

「だって、鳴海君は神崎川君のこと大好きでしょ?ずーっと前から」
 これ以上ないほどの満面のニッコリ!
「え?えええ?」

 バレてたの?
 ホントにホントにバレてたの?
 う、うそだよね?
 ちょっと……流石に動揺が隠せないんですが……!

「だって小学生の時、あんなに仲がよかったもん。たとえ神崎川君が彼女いたって友情は不滅じゃん!」

「へ?」

 『友情は不滅』?

 な、なんのこと?
 彼女がいたって友情は不滅? 

 想いがバレてたんじゃなく? 

 軽く脳内混乱中!

「中学の時はあんだけあからさまに女子を取っ替え引っ替えしてたから鳴海くんも流石にドン引きして神崎川君と仲良く出来なかったと思うし」

「へ?」

 まだ頭の中が坂口君の言葉の意味を理解していない。
 俺は変な言葉を発するだけになっている。

「あの頃、鳴海君バレー部に集中してたもんね!それがまた一段と格好よかったけど」

「へ?」

 俺の脳内を置き去りにして、坂口君の話は続く。

「あ、ごめん。知らなかったよね?僕たち小学生の頃の男子三十名ほどで鳴海君のファンクラブ作って情報交換してたんだ」

「へ?」

 爆弾……何個目?

 衝撃の大きさに脳内が拒否してるの?
 全然追い付いてくれない!

「僕のスマホ見る?鳴海君コレクション!」

 そこには俺のいろんな姿が計20枚ほど納められていた。
 教室で一人佇んでる姿、机に臥せって寝ている顔。
 壁に凭れて地面を見てるようで見ていない儚げな目線の俺。
 それとは全然違って……。
 バレー部の時のトスをあげてる姿に、サーブの横顔。キリリとした熱中顔。
 榊とのハイタッチに仲間とハグしているしている中で俺は歓喜の笑顔を見せていた。

 これが……あの頃の俺?
 あんな笑顔を見せてたことがあったんだ……。知らなかった。
 バレー部の俺は、あの頃の俺とは……日常の俺とは、全然掠りもしないほど輝いていた。

 本当はもっとあるんだけど、と照れ臭そうにいいながらその20枚全部見せてくれた。

「あ。女子には負けてないと思うよ。このクオリティの高さは」

「は?」

「え?それも知らないの?女子は女子で鳴海君の『親衛隊』作って変な女子を鳴海君に近づけないようにしてたんだから。鳴海君がいつもと違うから出来るだけ穏やかに過ごさせてあげたいからって。みんなの鳴海君を温かく守っていこうね!って。もちろんこういうコレクションもある筈だよ」

「え?」

「『表の神崎川、裏の鳴海』って言うぐらい人気を二分してたんだよ!中学時代の鳴海君と神崎川君は。ま、小学校三校が一緒になったようなものだったから。小学時代の僕たちは鳴海君派で、他の二校の女子たちが神崎川君派かな?違う子たちもいたけど、基本はこうだよ!」

「は、初耳……」
「そんなこと、誰が本人に言うのさ。庶民学生のささやかな楽しみなんだから。うん」

 興奮状態の坂口君は全然話をやめようとしない。

「鳴海君は小学生の頃は『王子さま』って呼ばれてて。中学生の頃は『哀愁の貴公子』でしょ?」
  
 全然知らないんですけど。

「神崎川君がモテだしたのは中学に入ってからだもん。それも『皇帝』だよ!顔つきまで変わっちゃってさ。精悍になったって言うか。やっぱり剣道部に入ったからかな?昔からもとの素材はよかったけどね。」

 初めて会った時から男前になる要素は持ち合わせていたもんね。
 中学時代、モテてたのは知ってるよ。俺でも。
 いつも仲間と一緒にいて彼女が隣にいて、いつも彼女の腰に腕を回して抱き寄せてた……。

 今でも思い出すと心が千切れそうになる……。

「あれだけ文武両道になるだなんて。それもずっと一位で。もう、信じられないよね!どれだけの努力をしたんだろうね!神崎川君は。小学生の頃の彼からは想像できないよね!」

 そっか……客観的に見たら神崎川がどれだけの努力をしてすべての一位の座を勝ち取って誰にも譲らなかった、ていうのが事実だよな。
 普通に考えてもどれ程の勉強量かなんて計り知れないんだもん。神崎川がそこまで拘ったのはいったい何故なんだろう?

 それにしても……坂口君って、こんなキャラじゃなかったよね?
 やっぱり月日は人を変えちゃうんだね……。
 あ、違う。人は日々成長して変わってくものなんだよね。

 何も変わってない……。
 俺だけが……置き去りの気分だ。

「ごめんね!僕、物凄くコーフンしちゃってて!鳴海君とこんなにお話が出来るだなんて、夢のようだよ」

 いえ、ほとんど君が喋ってるんだけどね。

「今日、家に帰ったらファンクラブと白鳥さんに報告しなくっちゃ!」
「ちょ、ちょっとそれだけはやめて!」
 
 な、何、突然どでかい爆弾投下するの?

 俺、かなり粉々なんですけど!
 跡形……ぐらい、あるよね?

「え?どうして?」

「どうしてって……」

 普通しないでしょ?そういうこと。
 俺の気持ち全部見透かされてすべて報告させるのでは……なんていう恐怖がひしひしと。

「僕たちは純粋に鳴海くんの幸せを応援してるんだよ。今でもみんな鳴海君のこと大好きだし。だから想いを共有してたんだ」

「あ……」

 そっか……。
 俺があんなだった頃でもずっと陰ながら俺を見ていてくれてたんだ……。
 俺のこと、応援してくれてたんだ……!

 ジーンと胸が熱くなる。
 怖さが減ったわけではないけど。

「だから、許してね!僕たちはいつまでも鳴海君のファンでいたいんだ」

 純粋な想いに俺は断ることが出来なかった。

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