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『編み物男子部』?ができるまで。
28 約束の放課後は…爆弾だった 1
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放課後、理科室で一人坂口君を待っていた。
ただ待つのは手持ち無沙汰だったので、この前座ってた場所でいつものように赤い毛糸玉とかぎ針を出してくさり編みを編み始めた。
リズミカルに何個も何個も。
30個ほどくさり編みを作ったら一段立ち上げて細編みを作り始める。
サクサク、サクサク。
からだが編むリズムを覚えている。
この単純な作業が心地いい。
夢中になっていると突然扉を叩く音がした。
慌てて側に駆け寄る。
扉を開けると、そこには約束をしていた坂口君が鞄を持ってそこに立っていた。
「ようこそ!編み物部へ」
俺は執事のような仕草をして大袈裟な挨拶をした。
坂口君も大袈裟に頭をペコリと下げた。
「おじゃましまーす!」
元気な声の坂口君。
キョロキョロしながら理科室の中を見る。
「もしかして……鳴海くん一人?」
「うん、今日はね。部員はもう一人だけいるんだ」
「そうなんだね!じゃあ僕を入れて三人になるんだね!」
一人ではないことに安堵の色が窺える。
「ごめん……。最初に言っとかなくちゃ、いけないことなんだけど」
ちょっと申し訳ない気になる。だって、まだ部として確立していないから。騙してるようで悪い気持ちになってしまう。
「ん?なに?」
「十人集まらないと部にならないんだ」
「そうなの?」
ちょっとガッカリしたような仕草で少し悩んでるようだった。
「……あの、もし部にならなくても、僕に編み物教えてくれる?」
困惑気味に聞いてくる。理由があるみたい。聞いてみることにしよう。
「そういえば、『クリスマスまでにマフラー』って言ってたよね?誰かにあげるの?」
「うん……。そうなんだ。僕がこんなに明るくなったのは鳴海くんのおかげなんだよ。でね、好きな人が出来たんだけど、告白する勇気がなかなか持てなかったんだ」
坂口君の話は続く。
「でもね、違う高校に行くことになって、卒業式の日に告白したら、付き合うことになったんだ!だから、ね。感謝の気持ちを彼女に届けたくて……。鳴海君って名前があるポスター見た時、鳴海君だ!って思わず喜んじゃったよ。で、思ったんだ!鳴海くんと一緒に編み物をして、マフラーを編んで彼女にあげたいなぁーって!」
「俺の名前で?」
「うん!そうだよ。僕の付き合ってる女の子は小学校五・六年の時一緒だった白鳥さんだもん!」
「えええー!」
驚きが隠せない。だって、二人それほど仲良くしてた訳じゃなかったよ。
当時の俺は、なかなかみんなに打ち解けない二人に、別々に毎日声を掛け続けてたんだから。最後の最後に漸くみんなと打ち解けたのは……坂口君、君なんだけどね。
「僕たちクラスで孤立しちゃってて、いつもポツンといたでしょ?」
「そ、そうかな?」
そうだったけど……断定するのはちょっと……引ける。
「その頃はお互い意識してなかったんだけど、偶然中学三年になって同じクラスになったんだ。その頃は僕も眼鏡じゃなくコンタクトにしてたし、白鳥さんもあの頃はボブだったけど今はロングでめっちゃ可愛くなってて」
といいながら顔をポッと赤く染める坂口君。
「二人でよく話するんだ。小学五・六年生の頃のこと。鳴海君がいなかったら、僕たちこんな風に変われなかったよね!って。僕たちが勇気を持てるようになったのも自分が変われるように頑張れたのも全部鳴海君のおかげなんだよ!」
「う、うそ……」
「うそじゃないよ!」
「告白出来たのも鳴海君のおかげだし。いつかお礼が言いたかったんだ!こんなに早く叶うことが出来たのは……。此処で会えたからだよ!中学生の時は……ごめん。近寄り難くって……」
言葉がちょっと歯切れが悪くなり、言い辛そうだ。
俺も、それはわかってるから。
「あ、気にしないで。中学の時も、あ、今も違うけど、どっちも普通に大丈夫だから」
な、何言ってるんだろう!うまく誤魔化せないし取り繕えない。
「で、鳴海くんが編み物をするんだったら……その、教えて欲しいんだ。もし、仮に部がなくなっても……。いいかな?」
「俺は大丈夫だよ。俺もマフラー編みたいし」
そう、俺も編みたいんだよな。
出来れば……憧れの『棒針編みのマフラー』!
「いいの?僕、彼女とお揃いのマフラー編んでクリスマスプレゼントに渡したいんだ!ペアマフラーっていいかなって」
「うわぁあ!なんて素敵なんだ、坂口君!かっこいいね!うん、お互い頑張ろうね!」
「鳴海君は神崎川君にあげるんでしょ?」
突然の坂口君の言葉。
固まる……俺。
ただ待つのは手持ち無沙汰だったので、この前座ってた場所でいつものように赤い毛糸玉とかぎ針を出してくさり編みを編み始めた。
リズミカルに何個も何個も。
30個ほどくさり編みを作ったら一段立ち上げて細編みを作り始める。
サクサク、サクサク。
からだが編むリズムを覚えている。
この単純な作業が心地いい。
夢中になっていると突然扉を叩く音がした。
慌てて側に駆け寄る。
扉を開けると、そこには約束をしていた坂口君が鞄を持ってそこに立っていた。
「ようこそ!編み物部へ」
俺は執事のような仕草をして大袈裟な挨拶をした。
坂口君も大袈裟に頭をペコリと下げた。
「おじゃましまーす!」
元気な声の坂口君。
キョロキョロしながら理科室の中を見る。
「もしかして……鳴海くん一人?」
「うん、今日はね。部員はもう一人だけいるんだ」
「そうなんだね!じゃあ僕を入れて三人になるんだね!」
一人ではないことに安堵の色が窺える。
「ごめん……。最初に言っとかなくちゃ、いけないことなんだけど」
ちょっと申し訳ない気になる。だって、まだ部として確立していないから。騙してるようで悪い気持ちになってしまう。
「ん?なに?」
「十人集まらないと部にならないんだ」
「そうなの?」
ちょっとガッカリしたような仕草で少し悩んでるようだった。
「……あの、もし部にならなくても、僕に編み物教えてくれる?」
困惑気味に聞いてくる。理由があるみたい。聞いてみることにしよう。
「そういえば、『クリスマスまでにマフラー』って言ってたよね?誰かにあげるの?」
「うん……。そうなんだ。僕がこんなに明るくなったのは鳴海くんのおかげなんだよ。でね、好きな人が出来たんだけど、告白する勇気がなかなか持てなかったんだ」
坂口君の話は続く。
「でもね、違う高校に行くことになって、卒業式の日に告白したら、付き合うことになったんだ!だから、ね。感謝の気持ちを彼女に届けたくて……。鳴海君って名前があるポスター見た時、鳴海君だ!って思わず喜んじゃったよ。で、思ったんだ!鳴海くんと一緒に編み物をして、マフラーを編んで彼女にあげたいなぁーって!」
「俺の名前で?」
「うん!そうだよ。僕の付き合ってる女の子は小学校五・六年の時一緒だった白鳥さんだもん!」
「えええー!」
驚きが隠せない。だって、二人それほど仲良くしてた訳じゃなかったよ。
当時の俺は、なかなかみんなに打ち解けない二人に、別々に毎日声を掛け続けてたんだから。最後の最後に漸くみんなと打ち解けたのは……坂口君、君なんだけどね。
「僕たちクラスで孤立しちゃってて、いつもポツンといたでしょ?」
「そ、そうかな?」
そうだったけど……断定するのはちょっと……引ける。
「その頃はお互い意識してなかったんだけど、偶然中学三年になって同じクラスになったんだ。その頃は僕も眼鏡じゃなくコンタクトにしてたし、白鳥さんもあの頃はボブだったけど今はロングでめっちゃ可愛くなってて」
といいながら顔をポッと赤く染める坂口君。
「二人でよく話するんだ。小学五・六年生の頃のこと。鳴海君がいなかったら、僕たちこんな風に変われなかったよね!って。僕たちが勇気を持てるようになったのも自分が変われるように頑張れたのも全部鳴海君のおかげなんだよ!」
「う、うそ……」
「うそじゃないよ!」
「告白出来たのも鳴海君のおかげだし。いつかお礼が言いたかったんだ!こんなに早く叶うことが出来たのは……。此処で会えたからだよ!中学生の時は……ごめん。近寄り難くって……」
言葉がちょっと歯切れが悪くなり、言い辛そうだ。
俺も、それはわかってるから。
「あ、気にしないで。中学の時も、あ、今も違うけど、どっちも普通に大丈夫だから」
な、何言ってるんだろう!うまく誤魔化せないし取り繕えない。
「で、鳴海くんが編み物をするんだったら……その、教えて欲しいんだ。もし、仮に部がなくなっても……。いいかな?」
「俺は大丈夫だよ。俺もマフラー編みたいし」
そう、俺も編みたいんだよな。
出来れば……憧れの『棒針編みのマフラー』!
「いいの?僕、彼女とお揃いのマフラー編んでクリスマスプレゼントに渡したいんだ!ペアマフラーっていいかなって」
「うわぁあ!なんて素敵なんだ、坂口君!かっこいいね!うん、お互い頑張ろうね!」
「鳴海君は神崎川君にあげるんでしょ?」
突然の坂口君の言葉。
固まる……俺。
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