あみdan

わらいしなみだし

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『編み物男子部』?ができるまで。

23 ポスター

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 翌日、始業のベルが鳴る前に、朔田君が早速作成してくれたポスターを見せてくれた。


 女人禁制の 『編み物男子部』 部員募集中! 1ーAの鳴海まで


 白の画用紙を縦にして『編み物男子部』が真ん中よりも上部に均等に黒で大きく書かれていて、左上肩に少し小さめに赤で『女人禁制の』と書かれていて、『女人禁制』の部分を黄色で強調させ、文字も細目の黒で縁取られていた。
 その下に右合わせで『部員募集中!』と書かれていて、その文字の下は赤で二重線が引かれている。
 空白になる下の場所には、真っ赤の毛糸玉に黒猫がじゃれてるイラストが描かれていた。
 右端に小さめに『1ーAの鳴海まで』と青で書いてあった。

「朔田君……凄いよ!」
 
 俺はポスターの出来映えに感動していた。
 黒猫が毛糸で遊んでいるのがいい。
 楽しく遊んでいる黒猫がなんとも言えないほど可愛かった。

「絵は少しだけ得意なんだ……」
 
 モジモジしながら朔田君は答えた。

 ポスターを受け取った俺はHR後直ぐに職員室へ行き、担任にそのポスターを見せ顧問印を難なく押してもらった。

 担任が俺の顔を見ながら申し訳なさそうに
「力になれなくて、悪かった……」
 という言葉の意味がわからなかったが、そう言ってくれたことに無難に相槌のような言葉だけ言って退室した。

 ポスターを貼っていい場所を確認してお昼休みにポスターを貼りに行った。
 もちろん朔田君と一緒に。 
 部活動の一環だと思っているのに、当たり前とでもいうようにそういう時も行動は神崎川と一緒だ。
 有り難いことに今回の場合は……今回の場合に限りなのか?……俺の両肩はフリーだ。

 ポスターは掲示板ではなく、新入部員勧誘の時期だけ講堂の外側のグランドに面している壁の部分がポスターを貼れる場所になっていた。

 神崎川がまじまじとポスターを覗き見る。

「ホントにあいつが書いたのか?」

「朔田君だって…。そうだよ。彼が作ってくれたんだよ。すごいでしょ?」 

「いいのん描いてるじゃねーか!」

 神崎川は目線を朔田君に合わせるように少し屈み、彼の頭を撫でた。

 神崎川に褒められて頬をうっすら赤くする朔田君。
 その笑顔は、とても幸せだと言っているような屈託のない笑顔だった。 
 彼にとって極上の褒美であったのだから、それは当然の事だった。

 チリッと胸の奥が痛む。
 こんなことで嫉妬?自分の感情に戸惑う。
 神崎川は俺の所有ではないのに、何勝手に心を痛めてるんだ?
 
 あ、それでもやっぱり見たくない。
 無になるのは得意だろ?俺……。思い出して、あの頃を……!

 二人の仲良さを端に見つつ、不完全に彼らをスルーして最適なポスターの貼る位置を探し、精一杯気持ちを逸らす。
 他の部は当然この事を熟知しているのでとっくにポスターは沢山貼られている。
 流石に出遅れてる分、いい場所がある筈もなく……。

 大抵、目線の位置、その上下の三段が所狭しとポスターが張られていて、それ以外の場所は、わざわざその位置に目を向けないと見てくれそうにない。

「ここにしようぜ」

 いつのまにか俺の側に神崎川がおり、自分が気に入ったとでも言うように、その場所を指差した。

 そこは講堂の出口側の壁で、端から三番目と四番目の間でポスターの上端の部分より五センチ離した場所で、その場所に神崎川が手際よくポスターを貼り付けた。

「あ……」

 ポスターを取り返すことも出来ず、それはあっという間の出来事だった。

 なんて……不協和音な感いっぱいの場所に…!

「ぜってー目立つぜ!」

 言い切る神崎川。

 ああ、残念なほど目立ってます……。
 こんな目立ち方、はっきり言って嫌です……。

 俺の身長では絶対届かない場所に貼られた『黒猫が赤い毛糸にじゃれている』部分がなんとか目線に入るポスターは、違う意味で存在感を出しながら部員募集に貢献することになったのであった。




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