37 / 339
『編み物男子部』?ができるまで。
23 ポスター
しおりを挟む
翌日、始業のベルが鳴る前に、朔田君が早速作成してくれたポスターを見せてくれた。
女人禁制の 『編み物男子部』 部員募集中! 1ーAの鳴海まで
白の画用紙を縦にして『編み物男子部』が真ん中よりも上部に均等に黒で大きく書かれていて、左上肩に少し小さめに赤で『女人禁制の』と書かれていて、『女人禁制』の部分を黄色で強調させ、文字も細目の黒で縁取られていた。
その下に右合わせで『部員募集中!』と書かれていて、その文字の下は赤で二重線が引かれている。
空白になる下の場所には、真っ赤の毛糸玉に黒猫がじゃれてるイラストが描かれていた。
右端に小さめに『1ーAの鳴海まで』と青で書いてあった。
「朔田君……凄いよ!」
俺はポスターの出来映えに感動していた。
黒猫が毛糸で遊んでいるのがいい。
楽しく遊んでいる黒猫がなんとも言えないほど可愛かった。
「絵は少しだけ得意なんだ……」
モジモジしながら朔田君は答えた。
ポスターを受け取った俺はHR後直ぐに職員室へ行き、担任にそのポスターを見せ顧問印を難なく押してもらった。
担任が俺の顔を見ながら申し訳なさそうに
「力になれなくて、悪かった……」
という言葉の意味がわからなかったが、そう言ってくれたことに無難に相槌のような言葉だけ言って退室した。
ポスターを貼っていい場所を確認してお昼休みにポスターを貼りに行った。
もちろん朔田君と一緒に。
部活動の一環だと思っているのに、当たり前とでもいうようにそういう時も行動は神崎川と一緒だ。
有り難いことに今回の場合は……今回の場合に限りなのか?……俺の両肩はフリーだ。
ポスターは掲示板ではなく、新入部員勧誘の時期だけ講堂の外側のグランドに面している壁の部分がポスターを貼れる場所になっていた。
神崎川がまじまじとポスターを覗き見る。
「ホントにあいつが書いたのか?」
「朔田君だって…。そうだよ。彼が作ってくれたんだよ。すごいでしょ?」
「いいのん描いてるじゃねーか!」
神崎川は目線を朔田君に合わせるように少し屈み、彼の頭を撫でた。
神崎川に褒められて頬をうっすら赤くする朔田君。
その笑顔は、とても幸せだと言っているような屈託のない笑顔だった。
彼にとって極上の褒美であったのだから、それは当然の事だった。
チリッと胸の奥が痛む。
こんなことで嫉妬?自分の感情に戸惑う。
神崎川は俺の所有ではないのに、何勝手に心を痛めてるんだ?
あ、それでもやっぱり見たくない。
無になるのは得意だろ?俺……。思い出して、あの頃を……!
二人の仲良さを端に見つつ、不完全に彼らをスルーして最適なポスターの貼る位置を探し、精一杯気持ちを逸らす。
他の部は当然この事を熟知しているのでとっくにポスターは沢山貼られている。
流石に出遅れてる分、いい場所がある筈もなく……。
大抵、目線の位置、その上下の三段が所狭しとポスターが張られていて、それ以外の場所は、わざわざその位置に目を向けないと見てくれそうにない。
「ここにしようぜ」
いつのまにか俺の側に神崎川がおり、自分が気に入ったとでも言うように、その場所を指差した。
そこは講堂の出口側の壁で、端から三番目と四番目の間でポスターの上端の部分より五センチ離した場所で、その場所に神崎川が手際よくポスターを貼り付けた。
「あ……」
ポスターを取り返すことも出来ず、それはあっという間の出来事だった。
なんて……不協和音な感いっぱいの場所に…!
「ぜってー目立つぜ!」
言い切る神崎川。
ああ、残念なほど目立ってます……。
こんな目立ち方、はっきり言って嫌です……。
俺の身長では絶対届かない場所に貼られた『黒猫が赤い毛糸にじゃれている』部分がなんとか目線に入るポスターは、違う意味で存在感を出しながら部員募集に貢献することになったのであった。
女人禁制の 『編み物男子部』 部員募集中! 1ーAの鳴海まで
白の画用紙を縦にして『編み物男子部』が真ん中よりも上部に均等に黒で大きく書かれていて、左上肩に少し小さめに赤で『女人禁制の』と書かれていて、『女人禁制』の部分を黄色で強調させ、文字も細目の黒で縁取られていた。
その下に右合わせで『部員募集中!』と書かれていて、その文字の下は赤で二重線が引かれている。
空白になる下の場所には、真っ赤の毛糸玉に黒猫がじゃれてるイラストが描かれていた。
右端に小さめに『1ーAの鳴海まで』と青で書いてあった。
「朔田君……凄いよ!」
俺はポスターの出来映えに感動していた。
黒猫が毛糸で遊んでいるのがいい。
楽しく遊んでいる黒猫がなんとも言えないほど可愛かった。
「絵は少しだけ得意なんだ……」
モジモジしながら朔田君は答えた。
ポスターを受け取った俺はHR後直ぐに職員室へ行き、担任にそのポスターを見せ顧問印を難なく押してもらった。
担任が俺の顔を見ながら申し訳なさそうに
「力になれなくて、悪かった……」
という言葉の意味がわからなかったが、そう言ってくれたことに無難に相槌のような言葉だけ言って退室した。
ポスターを貼っていい場所を確認してお昼休みにポスターを貼りに行った。
もちろん朔田君と一緒に。
部活動の一環だと思っているのに、当たり前とでもいうようにそういう時も行動は神崎川と一緒だ。
有り難いことに今回の場合は……今回の場合に限りなのか?……俺の両肩はフリーだ。
ポスターは掲示板ではなく、新入部員勧誘の時期だけ講堂の外側のグランドに面している壁の部分がポスターを貼れる場所になっていた。
神崎川がまじまじとポスターを覗き見る。
「ホントにあいつが書いたのか?」
「朔田君だって…。そうだよ。彼が作ってくれたんだよ。すごいでしょ?」
「いいのん描いてるじゃねーか!」
神崎川は目線を朔田君に合わせるように少し屈み、彼の頭を撫でた。
神崎川に褒められて頬をうっすら赤くする朔田君。
その笑顔は、とても幸せだと言っているような屈託のない笑顔だった。
彼にとって極上の褒美であったのだから、それは当然の事だった。
チリッと胸の奥が痛む。
こんなことで嫉妬?自分の感情に戸惑う。
神崎川は俺の所有ではないのに、何勝手に心を痛めてるんだ?
あ、それでもやっぱり見たくない。
無になるのは得意だろ?俺……。思い出して、あの頃を……!
二人の仲良さを端に見つつ、不完全に彼らをスルーして最適なポスターの貼る位置を探し、精一杯気持ちを逸らす。
他の部は当然この事を熟知しているのでとっくにポスターは沢山貼られている。
流石に出遅れてる分、いい場所がある筈もなく……。
大抵、目線の位置、その上下の三段が所狭しとポスターが張られていて、それ以外の場所は、わざわざその位置に目を向けないと見てくれそうにない。
「ここにしようぜ」
いつのまにか俺の側に神崎川がおり、自分が気に入ったとでも言うように、その場所を指差した。
そこは講堂の出口側の壁で、端から三番目と四番目の間でポスターの上端の部分より五センチ離した場所で、その場所に神崎川が手際よくポスターを貼り付けた。
「あ……」
ポスターを取り返すことも出来ず、それはあっという間の出来事だった。
なんて……不協和音な感いっぱいの場所に…!
「ぜってー目立つぜ!」
言い切る神崎川。
ああ、残念なほど目立ってます……。
こんな目立ち方、はっきり言って嫌です……。
俺の身長では絶対届かない場所に貼られた『黒猫が赤い毛糸にじゃれている』部分がなんとか目線に入るポスターは、違う意味で存在感を出しながら部員募集に貢献することになったのであった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
渋滞車内でトントン脳イキ
阿沙🌷
BL
天体観測イベントに向かう門倉史明と松宮侑汰の乗った車が渋滞に巻き込まれた。車内で時間を潰す間、流れる奇妙な空気。門倉の指の音に松宮が発情して――。
ごめんなさい、ただのアホエロになりました。どうしてこうなった……
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
男とラブホに入ろうとしてるのがわんこ属性の親友に見つかった件
水瀬かずか
BL
一夜限りの相手とホテルに入ろうとしていたら、後からきた男女がケンカを始め、その場でその男はふられた。
殴られてこっち向いた男と、うっかりそれをじっと見ていた俺の目が合った。
それは、ずっと好きだけど、忘れなきゃと思っていた親友だった。
俺は親友に、ゲイだと、バレてしまった。
イラストは、すぎちよさまからいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる