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『編み物男子部』?ができるまで。
15 奇跡?
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「さっきは一体何してくれたんだよ!」
体育の授業が終わって、着替えをさっさと済ませて神崎川の方へ自分から向かう。神崎川の腕を捕まえて大声で怒鳴る。
そう、俺は怒っているのだ。
教室にいた男子生徒全員にあんな姿をみられて、羞恥心でいっぱいだった。
「ああ?あれね、単なるじゃれあい、ちょっとした余興」
「な……」言葉が出てこない。
「そんなこと言って、感じてやがったのはどこのどいつだ?ま、感じてたのは鳴海だけじゃなかったけどな。俺やっぱテク凄いわ」
そうだった……。
テクね、神崎川は彼女何人もいたんだから、いっぱいいっぱい彼女とイタシテイタノデショウネ……。
「男でも啼かせられるって、俺才能あるんじゃねー?」
不敵な笑み。
『皇帝様降臨』だ。
ああ、やだ。
まさかの
『エロ大魔王様』だよ……。
俺、純粋で可愛らしいじょうちゃんを好きになった筈なんだけどなぁ。
あ、気づいた時には
『皇帝』だったっけ。
「さっさと頑張って『編み物部』を作るんだな。出来た暁には最初の作品を寄越せ。俺が貰ってやるから。安心しろ」
意識が違うところに行っていたので、突然話を振られてちょっと驚いた。
内容が内容だけに、顔がさっと明るくなる。
「え?いいの?ホントに『編み物部』応援してくれるの?サッカー部入らなくていいの?」
「さっさと人数集めろ。俺の気が変わらないうちに」
「突然どうしたの?変わるの、早くない?」
「いいんだよ。俺の部活が終わるまでなら、好きにしていーからよ」
「……マネージャーは、諦めてくれないの?」
「当たりめーだろ?で、一緒に帰ってやっから」
「いらない……」
「?何か言ったか……」
「四六時中一緒って変だよ!」
「四六時中じゃねーと『女避け』の意味がねーじゃんかよ!ふっざけんな」
言葉がキレ気味だよ。あ、キレてるか……。
「あーそうでした……」ムカつく。何か気に入らない。
ムカつくムカつくムカつくムカつく……。
「今日は授業終わったらさっさと帰るから!」
「な、なんだよ!」
「あんなことされて、俺、平気じゃないもん。放課後になったら全部渡すから。今日はもう、許して……」
言葉にすると、自分がされたことを思い出して胸の奥が疼く。
未知の恐怖に思わず涙ぐんでしまった。
や、やばい……。
「……あー、わかったよ。……悪戯が過ぎた。……もうしないから。許せ……」
大きな掌で頭を撫でられる。そして、思いっきり抱き締められた。
体が震える。
嬉しいけど、この震えは……嬉しさなんかじゃない!
抱き締められる神崎川の体温を感じずにはいられなかった。
「泣くなよ……。二度としないから……」
泣いてないから!
その後、何か小さく言葉を発していたが俺には聞き取れなかった。
「でさ、呉れんだろ?一番最初に作ったヤツ」
その言葉でやっと俺を解放してくれた。
心地よかった体温が遠ざかる。
「あ、そ、それは……」どう言ったらいいかな?下手なことは言えない。
「嫌だって言わせねーからな!ダチだろ?な!」あ、めっちゃ強引!
俺の気持ちを悉く蔑ろにして……。
軽く頭を抱えてしまった。
それをずーっと見ていた二つの瞳が遠くにあった。
***
放課後、奇跡が起こった。
クラスメイトが編み物部に入部したいと言ってきたのだ。
俺よりも啼かされていた男子だということを全く知らない。
「鳴海君だよね?僕は朔田乃斗(さくたのと)。よろしく」
「朔田君、こちらこそよろしくね。朔田君は編み物は初めて?」
「初心者だよ。やってみたいな……って思ったんだ」
俺は心の中で大きなガッツポーズをし、飛び付きたいほど大喜びをした。
朔田君の両手を握りしめ、思わずブンブン振ってしまった。
「あ、ごめん。ちょっと、あ、違う。めちゃくちゃ嬉しくって……」
「え、大丈夫だよ。気にしないで」
「まだ、部員募集中で、正式な『部』にはなってないんだ」
「……そ、そうなんだ」
「朔田君が第一号だから。俺、頑張って部員集めるから、一緒に編み物をして楽しもうね!」
「う、うん……」
俺は浮かれていて、全然気づいていなかった。
まだ、『編み物部』を作ることを神崎川以外には誰にも言っていないし、まだ宣伝のポスターも作って張り出してはいなかったのだから。
朔田が編み物をしたい気持ちがないことなんて俺は知らなかった。
朔田が編み物部に入ろうとしたきっかけは、鳴海の側にいれば神崎川に少しでも近寄れる為だったとは、それはもちろん俺は後で知ることになる。
体育の授業が終わって、着替えをさっさと済ませて神崎川の方へ自分から向かう。神崎川の腕を捕まえて大声で怒鳴る。
そう、俺は怒っているのだ。
教室にいた男子生徒全員にあんな姿をみられて、羞恥心でいっぱいだった。
「ああ?あれね、単なるじゃれあい、ちょっとした余興」
「な……」言葉が出てこない。
「そんなこと言って、感じてやがったのはどこのどいつだ?ま、感じてたのは鳴海だけじゃなかったけどな。俺やっぱテク凄いわ」
そうだった……。
テクね、神崎川は彼女何人もいたんだから、いっぱいいっぱい彼女とイタシテイタノデショウネ……。
「男でも啼かせられるって、俺才能あるんじゃねー?」
不敵な笑み。
『皇帝様降臨』だ。
ああ、やだ。
まさかの
『エロ大魔王様』だよ……。
俺、純粋で可愛らしいじょうちゃんを好きになった筈なんだけどなぁ。
あ、気づいた時には
『皇帝』だったっけ。
「さっさと頑張って『編み物部』を作るんだな。出来た暁には最初の作品を寄越せ。俺が貰ってやるから。安心しろ」
意識が違うところに行っていたので、突然話を振られてちょっと驚いた。
内容が内容だけに、顔がさっと明るくなる。
「え?いいの?ホントに『編み物部』応援してくれるの?サッカー部入らなくていいの?」
「さっさと人数集めろ。俺の気が変わらないうちに」
「突然どうしたの?変わるの、早くない?」
「いいんだよ。俺の部活が終わるまでなら、好きにしていーからよ」
「……マネージャーは、諦めてくれないの?」
「当たりめーだろ?で、一緒に帰ってやっから」
「いらない……」
「?何か言ったか……」
「四六時中一緒って変だよ!」
「四六時中じゃねーと『女避け』の意味がねーじゃんかよ!ふっざけんな」
言葉がキレ気味だよ。あ、キレてるか……。
「あーそうでした……」ムカつく。何か気に入らない。
ムカつくムカつくムカつくムカつく……。
「今日は授業終わったらさっさと帰るから!」
「な、なんだよ!」
「あんなことされて、俺、平気じゃないもん。放課後になったら全部渡すから。今日はもう、許して……」
言葉にすると、自分がされたことを思い出して胸の奥が疼く。
未知の恐怖に思わず涙ぐんでしまった。
や、やばい……。
「……あー、わかったよ。……悪戯が過ぎた。……もうしないから。許せ……」
大きな掌で頭を撫でられる。そして、思いっきり抱き締められた。
体が震える。
嬉しいけど、この震えは……嬉しさなんかじゃない!
抱き締められる神崎川の体温を感じずにはいられなかった。
「泣くなよ……。二度としないから……」
泣いてないから!
その後、何か小さく言葉を発していたが俺には聞き取れなかった。
「でさ、呉れんだろ?一番最初に作ったヤツ」
その言葉でやっと俺を解放してくれた。
心地よかった体温が遠ざかる。
「あ、そ、それは……」どう言ったらいいかな?下手なことは言えない。
「嫌だって言わせねーからな!ダチだろ?な!」あ、めっちゃ強引!
俺の気持ちを悉く蔑ろにして……。
軽く頭を抱えてしまった。
それをずーっと見ていた二つの瞳が遠くにあった。
***
放課後、奇跡が起こった。
クラスメイトが編み物部に入部したいと言ってきたのだ。
俺よりも啼かされていた男子だということを全く知らない。
「鳴海君だよね?僕は朔田乃斗(さくたのと)。よろしく」
「朔田君、こちらこそよろしくね。朔田君は編み物は初めて?」
「初心者だよ。やってみたいな……って思ったんだ」
俺は心の中で大きなガッツポーズをし、飛び付きたいほど大喜びをした。
朔田君の両手を握りしめ、思わずブンブン振ってしまった。
「あ、ごめん。ちょっと、あ、違う。めちゃくちゃ嬉しくって……」
「え、大丈夫だよ。気にしないで」
「まだ、部員募集中で、正式な『部』にはなってないんだ」
「……そ、そうなんだ」
「朔田君が第一号だから。俺、頑張って部員集めるから、一緒に編み物をして楽しもうね!」
「う、うん……」
俺は浮かれていて、全然気づいていなかった。
まだ、『編み物部』を作ることを神崎川以外には誰にも言っていないし、まだ宣伝のポスターも作って張り出してはいなかったのだから。
朔田が編み物をしたい気持ちがないことなんて俺は知らなかった。
朔田が編み物部に入ろうとしたきっかけは、鳴海の側にいれば神崎川に少しでも近寄れる為だったとは、それはもちろん俺は後で知ることになる。
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