あみdan

わらいしなみだし

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『編み物男子部』?ができるまで。

9 譲れない攻防戦 4

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「それって……誰でもいいんじゃないの?」

 今度は俺が顔を近づけて言う。
 あー!胸の音、激しく鳴ってるけど。
 なんか、悔しいんだよね。そんなことの為に俺の隣って。
 そういうことだったんだね。

 休み時間の度に俺の側に来て俺の肩を抱いて仲良しアピールしてるじょうちゃん。
 どうしてこうも俺にくっついてくるんだと思えば、そういうことだったんだね。
 俺の側に居るのは、見知った人が俺だけだと言う訳ではなかったんだ。
 俺って、『女避け』……?
 う、嘘だ。あり得ないよ……。
 俺が女避けになるとは思えない。
 何一ついいものを持ってる訳じゃないんだから。

 じょうちゃんは文武両道で背も高ければ体格もいい。
 引き締まってるし、二の腕やふくらはぎの筋肉は体育会系で鍛えてました!ってわかる形をしている。
 中学時代、ホントによくモテてたもんね、じょうちゃん。
 きっと此処でもすぐモテるだろう。

 だから……早いうちから策を講じてるってこと?

 俺、『女避け』なんて嫌だよ。

「鳴海じゃないと無理。俺の『青春』を蔑ろにするんだからそれぐらいの事してくれたってバチあたらねーだろ?編み物していいっていってんだ。だが、部が出来なきゃ無理矢理サッカー部に入れるからな!」

 無理って、無理ってなんだよ。

 『編み物部』が出来なきゃ……強制的にサッカー部に入部させるって、なんなんだよ。

 俺には俺の高校生活があるんだ。
 何でそこまで俺に拘るの?
 じょうちゃんが何考えてるのかわかんない。
 サッカー部には絶対入りたくない。ずっとじょうちゃんの側にいるだなんて、嫌だ。
 マネージャーも嫌だけど、サッカー部のマネージャーではないんだよね?
 言葉からして、『俺のマネージャー』って言ってるし。
 部活終わりにタオルを持って労えって……。
 だ、妥協さえすれば、サッカー部は免れる?あ、違うか……。
 『編み物部』さえ、それさえあれば……。
 そもそも、それが高校生活の第一歩だったんだ。
 じょうちゃんと一緒の部活なんて……絶対、お断りなんだ!
 『編み物部』をつくって穏やかな高校生活を過ごすんだ!

「絶対!『編み物部』つくってみせるから!」絶対!絶対なんだから。強い意気込みで言う。

「せいぜい足掻けよ。部の発足は十人だってよ」ニヤッと意地悪な笑みを浮かべる。

「へ?」軽く頭の中が真っ白になる。

「部の発足条件読んでないのかよ?生徒手帳に詳しく書いてあるぜ。せいぜい頑張れや、な・る・み」

「う、嘘だよね……」背筋に変な汗が流れてきそうだ。

 そんなの、いつ読んだんだよ、じょうちゃん……。

 そんなにハードルが高いの?

『編み物部』

 俺が理想とした女人禁制の『編み物男子部』が……。

 言葉がそよ風で飛んでいく風景が頭の中に浮かんで、俺はガックリ肩を落として立ち尽くした。




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