256 / 280
泣いてばかりいられない!
219 いつもと違う朝の総務課
しおりを挟む
いつも三十分前に到着している一番乗りの総務課で私は珍しく人の気配を感じていたの。
だいたい来る順番は決まっているからいつもなら次に総務課に到着するのは夏川上司なのよね。
もしかして……
そう思って私が総務課のドアを開けるとそこには想像していなかった人が椅子に座っていた。
「ひ、陽愛さん?ど、どうしてここに?」
夏川上司の奥さまの陽愛さんが夏川上司の席に座っていて、書類を見ているところだったの。
流石に吃驚するじゃない?
もしかしたら……夏川上司が雨月を連れて会社に来ているのかもって思っちゃったんだもの。
「おはよう!葉月ちゃん。私、夏川の代理ね。あ……そうだった。仕事の時はやっぱり『葉月ちゃん』じゃなく『星野さん』かな?」
クスクスと笑いながら目線は書類に戻した陽愛さん。
あ、そうだった!完全に夏川上司がいるかも……って思った瞬間、ピンチヒッターで陽愛さんが来ることを完全に脳内から消え去ってしまった私です。
「あ、あの……陽愛さん……」
私は挨拶を忘れて夏川上司の事が聞きたくて声をかけたんだけど、すぐにその言葉は制された。
「急用なの?」
「え、いえ……」
私にとって急用と言えば急用なんだけど、陽愛さんの眼差しが「邪魔しないで」って言っているようで怖じ気付いてしまった私は言葉をさ迷わせてしまう。
「それならあとにしてくれるかしら?夏川が放置した仕事の後始末を私がすることになってるから。あ、コーヒーお願いできる?それから暫く誰にも声をかけないように言ってくれると嬉しいわ」
笑顔で私に用件だけを伝えたらすぐに書類に目線を戻す陽愛さん。
「陽愛さん……あの……」
「まだなにか?」
「コーヒーは何にしますか?」
目線は書類のままの陽愛さんに聞いた。
だって、陽愛さんのコーヒーの好みなんか知らないんだもの。
「あ。そうね……頭動かさなきゃいけないから、砂糖三個入れてくれる?いつもならブラックでもいいんだけど」
「はい、すぐにお持ちします」
書類から目を動かさずに陽愛さんは答え、私は自分の椅子に鞄を置いて給湯室へ急いで向かい注文通りのコーヒーを用意した。
角砂糖三個は多いんじゃないかな……?なんてスプーンで砂糖をかき混ぜながら思いつつ。
砂糖が完全に溶けたのを見計らってからスプーンをカップ皿に置きトレイに乗せて総務課へ戻った。
コトって音をたてて陽愛さんの机の上にコーヒーが入ったカップを書類から遠い場所に皿と一緒に置いた。
その音にピクリと体が反応した陽愛さんの目がカップを探し手にとって一口飲む。
山になっている書類をひとつ見ては次の書類を見てそれらを三種類に分類しているようだった。
私がその状況を見て、自分のすることを思い出して見えてない陽愛さんに頭を下げてそこから離れようとした。
「コーヒー、ありがとう。これで頭がスッキリ動く気がするわ!」
書類から目を離して私の顔を見てカップを軽く掲げ、にんまりとした笑顔を見せた。私がもう一度頭を下げて挨拶をしたのを見送ってから、陽愛さんは書類に目線を戻してコーヒーをゆっくり一口一口飲んでいく。
私はそれを見てから給湯室に戻りいつものようにそれぞれの机を拭いてから自分の席に着いて一息吐いて気持ちを落ち着かせクリアにする。
雨月……待っててね。
必ず探してみせるから……。
私は仕事が始まってからは淡々と自分の仕事をしながら雨月を探す為にも陽愛さんと話が出来れば……と、沸々闘志を燃やしていた。
だいたい来る順番は決まっているからいつもなら次に総務課に到着するのは夏川上司なのよね。
もしかして……
そう思って私が総務課のドアを開けるとそこには想像していなかった人が椅子に座っていた。
「ひ、陽愛さん?ど、どうしてここに?」
夏川上司の奥さまの陽愛さんが夏川上司の席に座っていて、書類を見ているところだったの。
流石に吃驚するじゃない?
もしかしたら……夏川上司が雨月を連れて会社に来ているのかもって思っちゃったんだもの。
「おはよう!葉月ちゃん。私、夏川の代理ね。あ……そうだった。仕事の時はやっぱり『葉月ちゃん』じゃなく『星野さん』かな?」
クスクスと笑いながら目線は書類に戻した陽愛さん。
あ、そうだった!完全に夏川上司がいるかも……って思った瞬間、ピンチヒッターで陽愛さんが来ることを完全に脳内から消え去ってしまった私です。
「あ、あの……陽愛さん……」
私は挨拶を忘れて夏川上司の事が聞きたくて声をかけたんだけど、すぐにその言葉は制された。
「急用なの?」
「え、いえ……」
私にとって急用と言えば急用なんだけど、陽愛さんの眼差しが「邪魔しないで」って言っているようで怖じ気付いてしまった私は言葉をさ迷わせてしまう。
「それならあとにしてくれるかしら?夏川が放置した仕事の後始末を私がすることになってるから。あ、コーヒーお願いできる?それから暫く誰にも声をかけないように言ってくれると嬉しいわ」
笑顔で私に用件だけを伝えたらすぐに書類に目線を戻す陽愛さん。
「陽愛さん……あの……」
「まだなにか?」
「コーヒーは何にしますか?」
目線は書類のままの陽愛さんに聞いた。
だって、陽愛さんのコーヒーの好みなんか知らないんだもの。
「あ。そうね……頭動かさなきゃいけないから、砂糖三個入れてくれる?いつもならブラックでもいいんだけど」
「はい、すぐにお持ちします」
書類から目を動かさずに陽愛さんは答え、私は自分の椅子に鞄を置いて給湯室へ急いで向かい注文通りのコーヒーを用意した。
角砂糖三個は多いんじゃないかな……?なんてスプーンで砂糖をかき混ぜながら思いつつ。
砂糖が完全に溶けたのを見計らってからスプーンをカップ皿に置きトレイに乗せて総務課へ戻った。
コトって音をたてて陽愛さんの机の上にコーヒーが入ったカップを書類から遠い場所に皿と一緒に置いた。
その音にピクリと体が反応した陽愛さんの目がカップを探し手にとって一口飲む。
山になっている書類をひとつ見ては次の書類を見てそれらを三種類に分類しているようだった。
私がその状況を見て、自分のすることを思い出して見えてない陽愛さんに頭を下げてそこから離れようとした。
「コーヒー、ありがとう。これで頭がスッキリ動く気がするわ!」
書類から目を離して私の顔を見てカップを軽く掲げ、にんまりとした笑顔を見せた。私がもう一度頭を下げて挨拶をしたのを見送ってから、陽愛さんは書類に目線を戻してコーヒーをゆっくり一口一口飲んでいく。
私はそれを見てから給湯室に戻りいつものようにそれぞれの机を拭いてから自分の席に着いて一息吐いて気持ちを落ち着かせクリアにする。
雨月……待っててね。
必ず探してみせるから……。
私は仕事が始まってからは淡々と自分の仕事をしながら雨月を探す為にも陽愛さんと話が出来れば……と、沸々闘志を燃やしていた。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる