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なーちゃって何者?

182 幾月も幾年も

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 何時間走行していたのだろうか……

 深い色をした音のない小さな湖畔に二階建ての白い洋館が見えてきた。
 湖の反対側の壁の横に白い乗用車が停まっていた。

 屋根は深い青を基調にしていて湖畔側の洋館の横の芝には景色を楽しむ為のテーブルセットがある。

 そこに一人の男が座って湖畔を眺めていた。

 夏川は停まっていた白い乗用車の隣にゆっくり自分の車を停めた。

 隣のチャイルドシートを外し運転席から降り助手席のドアを開けてチャイルドシートですやすやと眠っているおさない雨月をそっと抱き上げ助手席のドアを閉めた。



 椅子に腰掛けていた男性は車の走る音が聞こえ始めた時に耳を済ませ、音のなる方に視線を向けていた。
 黒い乗用車がこの地に近づいてくるのを今か今かと見つめていた。



『俺が……俺ではどうしようもなくなった時、逢いに行きます。だから、サヨナラは言いません。本気で愛したのは……あなただけです。俺に命を灯してくれたのはあなたです。忘れないでください。私が愛したのはあなただと……』

 名を……

 もし私が君に名を与えなければ……

 君はどのように生きたのだろうか?

 名を与えたものが主になり、主の命令は絶対従う……

 そんな宿命を知らずに私はなんて事を君にしてしまったのだろうか?



 初めて出逢った彼は今とは違う銀色の髪を靡かせ、透き通るほどの白い肌をしていた。

 逞しくも美しい……
 そんな彼を見て一目で恋に落ちた……

 その彼が……私の元に来る!

 胸を高ぶらせる。
 忘れることなんて……だが、突き放したのは私。

 それでもずっとこの日を待ち望んでいた。
 幾月も幾年も……



 感慨に耽ながら彼の足音が聞こえるのを待ちながら静かに目を閉じた。
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