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男の子?の雨月はイチャイチャしたがる
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新しく入ってきた渡辺さんと夏川上司と陽愛さんの三人のやり取りを見て、おさない雨月は夏川上司に話しかけた。
「なーちゃ、あのちと……だあれ?」
「渡辺君といって、会社でお仕事をしてるんだよ」
「ふうん」
おさない雨月は渡辺さんの方を見ながら頭をコテンと傾けた。
子猫の雨月の時に渡辺さんに会っているのだけど。
どうやら子猫の雨月の記憶はおさない雨月にはないみたい。
私のことはさすがに覚えているみたいなんだけどね。
覚えていなかったら……私の方が困っちゃうのですけど?
「渡辺、用件はなんだ?急ぎか?」
突然の訪問に夏川上司が聞く。始業時間が過ぎているのに総務課の上司が席にいなきゃ心配するよね?
総務の要ですから。
総務の業務はもちろん部署にいる社員は難なく職務をこなしちゃいますよ。
でも、総務なのです!
不意の予期せぬ出来事が回ってくるのも総務だったりするのです。
そういう時に臨機応変に総務の人たちを回すのは夏川上司以外に適任者はいないのであります。
「第一営業の係長が仮払いの立て替えが必要とのことで書類を預かっていまして、確認と捺印をお願いしたいのですが」
「経理に回せないのか?」
「それは……夏川課長の方がわかる案件ですよね?」
「わかった。あとでいくから私の席の隣のソファーで待っててもらって」
「わかりました」
「あのちと、はーちゃとっちゃう?」
おさない雨月が背筋をいっぱい伸ばして夏川上司の顔を自分の方に向けさせている。
覗き込もうとしているみたいにちっちゃなお手々が二つ、夏川上司の頬をそおーっと包んで見上げているのです。
あの……雨月。
あとが怖いから、そんなことやめてほしいのだけど……
私、生きた心地しない。
「大丈夫。とらないし、私がそうならないように見張っておくからね」
おさない雨月を見る眼差しが優しくていつも仕事で見るような顔ではない。
「なーちゃ、だいちゅき!」
そんなことを知らないおさない雨月は勢いよく夏川上司に抱きついた。
その光景は『父とおさなご』というタイトルをつけたくなるような切り取られたほんのひとこまの絵画のよう。
「……で、その子って一体なんなんです?夏川課長にめちゃくちゃ懐いてるじゃないですか?本当に夏川課長のお子さんじゃないんですよね?」
怪訝そうに聞く渡辺さん。
早く総務に戻ればいいのに……
なんか、楽しんでるのでは?
用件は済んだみたいなのに……
お願いだから早く戻ってよ……。
「ああ。星野君の遠縁のお子さんだよ。雨月君っていうんだ」
「なるほど!だからここにって……え?星野に遠縁の子供がいたんだ?じゃあどうして夏川課長の膝の上に座っていて、あんなにも懐いてるのですか?夏川課長って仕事では総務の鬼じゃないですか!」
「雨月君には人を見る目があるのだろう。渡辺は私を鬼だと思っているみたいだな?」
「やべっ……。いえ、思っていませんから。失礼しました。俺、仕事に戻ります。……って、あれ?ま、いっか……」
……なんか、ボーッとしてても勘のいい渡辺さんだし。
子猫の雨月のことが気になったのかもしれない。
渡辺さん、『うーちゃん』溺愛してるもんね。
これ以上、何事も起こりませんように!
……という私の願いを簡単に壊すのは、おさない雨月の言葉でした。
「なーちゃ、あのちと……だあれ?」
「渡辺君といって、会社でお仕事をしてるんだよ」
「ふうん」
おさない雨月は渡辺さんの方を見ながら頭をコテンと傾けた。
子猫の雨月の時に渡辺さんに会っているのだけど。
どうやら子猫の雨月の記憶はおさない雨月にはないみたい。
私のことはさすがに覚えているみたいなんだけどね。
覚えていなかったら……私の方が困っちゃうのですけど?
「渡辺、用件はなんだ?急ぎか?」
突然の訪問に夏川上司が聞く。始業時間が過ぎているのに総務課の上司が席にいなきゃ心配するよね?
総務の要ですから。
総務の業務はもちろん部署にいる社員は難なく職務をこなしちゃいますよ。
でも、総務なのです!
不意の予期せぬ出来事が回ってくるのも総務だったりするのです。
そういう時に臨機応変に総務の人たちを回すのは夏川上司以外に適任者はいないのであります。
「第一営業の係長が仮払いの立て替えが必要とのことで書類を預かっていまして、確認と捺印をお願いしたいのですが」
「経理に回せないのか?」
「それは……夏川課長の方がわかる案件ですよね?」
「わかった。あとでいくから私の席の隣のソファーで待っててもらって」
「わかりました」
「あのちと、はーちゃとっちゃう?」
おさない雨月が背筋をいっぱい伸ばして夏川上司の顔を自分の方に向けさせている。
覗き込もうとしているみたいにちっちゃなお手々が二つ、夏川上司の頬をそおーっと包んで見上げているのです。
あの……雨月。
あとが怖いから、そんなことやめてほしいのだけど……
私、生きた心地しない。
「大丈夫。とらないし、私がそうならないように見張っておくからね」
おさない雨月を見る眼差しが優しくていつも仕事で見るような顔ではない。
「なーちゃ、だいちゅき!」
そんなことを知らないおさない雨月は勢いよく夏川上司に抱きついた。
その光景は『父とおさなご』というタイトルをつけたくなるような切り取られたほんのひとこまの絵画のよう。
「……で、その子って一体なんなんです?夏川課長にめちゃくちゃ懐いてるじゃないですか?本当に夏川課長のお子さんじゃないんですよね?」
怪訝そうに聞く渡辺さん。
早く総務に戻ればいいのに……
なんか、楽しんでるのでは?
用件は済んだみたいなのに……
お願いだから早く戻ってよ……。
「ああ。星野君の遠縁のお子さんだよ。雨月君っていうんだ」
「なるほど!だからここにって……え?星野に遠縁の子供がいたんだ?じゃあどうして夏川課長の膝の上に座っていて、あんなにも懐いてるのですか?夏川課長って仕事では総務の鬼じゃないですか!」
「雨月君には人を見る目があるのだろう。渡辺は私を鬼だと思っているみたいだな?」
「やべっ……。いえ、思っていませんから。失礼しました。俺、仕事に戻ります。……って、あれ?ま、いっか……」
……なんか、ボーッとしてても勘のいい渡辺さんだし。
子猫の雨月のことが気になったのかもしれない。
渡辺さん、『うーちゃん』溺愛してるもんね。
これ以上、何事も起こりませんように!
……という私の願いを簡単に壊すのは、おさない雨月の言葉でした。
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