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男の子?の雨月はイチャイチャしたがる

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 コンコン!

 此処の扉を叩く音がする。

 始業時間がもう過ぎてるし、第三会議室は今日終日私が使うことになっているから用はない筈だし……。そもそも私が此処にいることは夏川上司と社長しか知らない筈なんだよね。

「は、はい!」

 扉の向こうにいる人に返事をしてみた。聞き覚えのある声が返ってきた。

「あ、星野か?そっちに夏川課長いる?聞きたいことがあるんだけど」

「私か?ちょっと待ってくれるか?」

 夏川上司がその言葉に応答する。

「入ってもよろしいですか?」

 ……さすがにいいとも悪いとも言えないんだけど。
 だって、おさない雨月がいるし。
 幼い子供が会社にいるって……問題だよね?

 ……どうしよう?

 返事に困っていると夏川上司が私の代わりに答えてくれた。

「ああ、入ってもいいよ」

 あ、入れちゃうんだ……

 入ってきたのは私の隣の席の渡辺さんだった。

「失礼しまーす! あ、あれ?この子……夏川課長の、隠し子ですか?」

 夏川上司の膝の上にいるおさない子供を見て上司を茶化す渡辺さん。

 側に夏川上司の奥さん、陽愛さんがいるっていうのに何てことを言うのですかぁ!
 渡辺さんったら……
 これって、冗談にもならないんだから。

「そうだったの?あ・な・た?」

 陽愛さんがおさない雨月を抱えて座っている自分の夫を軽く睨みながら不敵な笑みを溢して聞き返した。

「……わかってて遊ぶな」

 夏川上司が自分の妻に応戦する。
 なんかこの二人のやり取りが愛し合っている雰囲気を醸し出していてなんだか微笑ましい。

「え?……お、奥さん?夏川課長の?」

 冗談を言ったつもりが冗談にならないことになってしまっている事態に困惑している渡辺さん。
 渡辺さんは夏川上司の奥さんの顔を知らなかったみたい。

 普通、奥さんが会社にいるとは思わないものね!
 おさない雨月だって……。

「そうです……夏川上司の奥さんの『陽愛』さんですよ」

「はじめましてー。主人が浮気して隠し子を会社に連れてきているみたいで……あなたも共犯かしら?うふふふふ……」

「……こ、こぇ……」

 いつもお気楽な渡辺さんが固まってしまいました。
 夏川上司の奥さまなのですから……!

 怖いだなんて……言い過ぎです。
 お茶目なだけですってー!
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