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子猫の雨月と男の子の雨月2

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「ニャァアアア!」

 子猫の雨月はちょっと不満気な顔をしているように見える。
 突然見知らぬ人たちに囲まれちゃって、きっと嫌な思いをしてるんだよね。
 ……ごめんね、雨月。
 私だって本意じゃないのよ、だからそんな顔しないで、お願いだから。

 渡辺さんが私の側まで寄って来て、子猫の雨月の直ぐ近くまで顔を寄せていた。
 身体中ウズウズさせてるような仕草で子猫の雨月を愛おしく見つめてる。

「なぁ、ご主人様ぁ……『うーちゃん』の頭、ちょっとでいいから撫でていい?」

 私に懇願するお目々はつぶらになっちゃってて、撫でるためなら土下座でもしそうな勢いだった。私は自分で判断するのではなく、子猫の雨月に判断を委ねることにした。
 だって、私がいいっていっても子猫の雨月が嫌ならそれはさせてあげたくない。
 私の雨月は聡い子猫なんだから、きっと私の言葉はわかる筈……よね?

「『うーちゃん』、私の会社の同僚の渡辺さんが『うーちゃん』の頭を撫でたいんだって。どうする?嫌なら嫌って態度で示してもいいんだからね」

 私はじーっと子猫の雨月の反応を見た。
 もちろん私の顔の直ぐそばに渡辺さんの顔がある。渡辺さんは子猫の雨月にも懇願するようなせつない顔を見せていた。

 子猫の雨月は私の顔を見てから次に渡辺さんの顔をじっくりと見つめ、今度は柴田君の顔を見てから最後に雨月の後ろにいる三人を見てから中心にいる今川さんをじっと見つめ、視線を私に戻した。

「ニャァア!」

 この声は……いいって言うことだよね?

「渡辺さん、『うーちゃん』がちょっとならいいって……いってますよ!」

「ほほほほほ、本当か?ご主人様、ありがとう!『うーちゃん』、ちょっとだけ失礼しまーす!」

 嬉しそうな顔をしながら、渡辺さんは子猫の雨月の頭を人差し指で優しく、とっても優しく数回撫でてやめた。
 数回でやめるだなんて……私には渡辺さんの行動が信じられなかった。
 渡辺さんの子猫の溺愛っ振りは凄まじかったから、あり得ない行動に思えたの。

「むっちゃ俺、しあわせー!明日世界が終わっても俺は悔いないから……」

 渡辺さんは子猫の雨月には何処までも真摯で今にも蕩けそうだった。

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