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子猫の雨月と男の子の雨月

95 猫好きは子猫が大好き

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 時計の針が十二時ジャストになった瞬間、隣の渡辺さんが早速私の方に顔を向けて質問してきた。

「ねぇ、この子猫の名前は?いつから飼ってんの?俺、猫好きでさぁー」

 あ……なるほどね。
 だからずっと眺めてたんだ。
 私、もうちょっとお仕事したいんだよね。

「名前は『うーちゃん』。木曜日の雨の時に公園に捨てられてるのを見つけちゃってね……」

 何でだろう?本当の名前をいうのを躊躇っちゃった。
 雨月なんだから……『うーちゃん』でもいいよね?

「ひでー飼い主もいるもんだね。ね、ねぇ、触っていい?」

「ダメです!寝てるんだから……さっさと休憩に行って下さい。邪魔です!」

「そーっと触るからさー」

 なかなか引き下がらない。渡辺さん、本当に邪魔です!
 そこへ美樹ちゃんがやって来た。

「葉月先輩!お食事行きませんか?あ、なになに?渡辺さん何見てるんですか?」

「子猫だよ子猫!星野が連れてきたんだよ」

「あ、それで一旦家に帰ってたんですね!私にも見せてくださいよー」

「寝てるんだから、静かにして……」

 あ、ダメだわ。これじゃあ、起きちゃうじゃない!
 このままじゃあ、私も仕事が捗らないわ。
 あ、諦めよう……。

「私、夏川上司に話があるから……美樹ちゃん、お昼は先に行っててくれる?」

「葉月先輩、ちゃんと後から来てくれるんですよね?私、ひとりごはんは嫌ですよー」

「『うーちゃん』も連れてくるんだったら、俺もご一緒したいなー」

 あ……余程猫が好きなんだね、渡辺さん。
 全然子猫の雨月から離れたがらないんだから!
 ……負けちゃうわ。
 
 私は二人に白旗を振って用事が終わったらケージを持って合流する約束をしてしまった。


  
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