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子猫の雨月と男の子の雨月

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 私は真ん中に置いてあるケチャップを取り、キャップを外して雨月が食べる方の丸いオムライスの薄焼き玉子の上にケチャップで文字を書く準備をした。

「雨月ー!見ててね!」

 私はそこに『すきっ』と書いた。

「これが『すきっ』っていう言葉だよ!雨月が私にいつも言ってくれる言葉だよ!」

 男の子の雨月は目を見開いてその『すきっ』って書いた言葉をマジマジと眺め見ていた。

 だんだん顔が笑顔になって口元が綻んでくる。

「すきっ!すきっ!すきっ!」

 大声で「すきっ!」を言ってから私の顔を見つめてもう一度

「すきっ!」

 と言ってくれた。私も言葉を返す。

「私も大好きだよ!雨月!あ、そうだ……」

 私は自分の方のオムライスに「うげつ」と書いた。

「雨月、こっちは『うげつ』、あなたの名前、『うげつ』と書いたよ!ね、一緒に読んだら『すきっ』『うげつ』だよー」

 私はケチャップをテーブルに置いて男の子の雨月を後ろからギュッと抱きしめた。

 私はうげつの顔を覗き込んで顔を見合わせた。

「じゃあ今度こそ一緒に食べようね!今日は頑張ってスプーンを持ってみようね!」

 私は男の子の雨月にスプーンを持たせてみることにした。
 初めてのスプーン。男の子の雨月にとっては普通にスプーンを持つということはかなり難しいようだ。

「グーで持ってもいいからね!」

 私はスプーンをグーの持ち方で教えた。
 お行儀的にはよくないのかもしれないけど、自分で食べるという行為を何としても習得して欲しい一心だったの。

 男の子の雨月はなんとかグーでスプーンを持つことが出来た。
 ぎこちなくても、いいと思うんだ。
 とっかかり、最初が肝心だもの。

「よく頑張ったね!じゃあ、スプーンでオムライスを食べてみて」

「 ……。」

 男の子の雨月は固まったまま動こうとしない。
 あれほど食べたがっていたのに……?
 自分で食べるのがそんなに嫌なのかな?
 もしかして、食べ方がわからないとか?

「雨月、食べないの?」

 男の子の雨月は悲しそうに

「んー」

 といって、スプーンを置いてしまった。

 ど、どうしてそうなったの?

 私はまたしても絶句状態。

「私が食べさせてあげようか?」

 そう言ったら大きく首を振って

「やっ!やっ!」

 と、嫌がり始めた。
 
 私は完全に……パニックです!

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