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子猫の雨月と男の子の雨月

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「雨月にとって、この首輪は大切なものなの?」

「んー」

 雨月は何度も頷いてみせる。
 いつのまにかたまりにためていた雨月の目から涙が零れる。

「ね?聞いて。これは『子猫の雨月』にあげたものなの。『男の子の雨月』にあげたものではないの」

 男の子の雨月はピクリと体を動かした。言葉に反応しているみたい。
 私は言葉を続けた。

「今、雨月は『男の子の雨月』でしょ?『男の子の雨月』には別に同じようなものをプレゼントするから、『子猫の雨月』にあげたこの首輪は……はずさせてくれないかな?」

 私に焦点を合わせてそのまま制止する。男の子の雨月は私の言葉を一所懸命理解しようとしてくれてるみたい。
 ジーっと私の顔を見つめて……まだ涙がポロポロ零れてて、どうしようもないほど愛おしさが募っていく。

 本当にもう……可愛いんだからぁ!

 雨月はゆっくりゆっくり、体を私に寄せてきて手をゆっくりゆっくり下ろし……頭を少し上を向けて首を私に差し出してきた。

 目を瞑って、いろんなことを頑張ってるみたい。

「雨月……ごめんね!」
 
 もらい泣きしながら私はできるだけ優しく指輪をはずそうとした。はずすためにくいっと首を少しだけ絞めなきゃいけない。
 そんなことしたくないから本来なら鋏で切って首輪をはずしたいんだけど、それはきっと雨月は望まない。だから、あえて痛みを伴う方を選んだ。

 首輪をする可愛い雨月を想像して購入した真っ赤な首輪。
 子猫だから出来たこと。
 男の子になんか、絶対そんなことは思わなかった。
 でも、子猫でも『首輪』は『首輪』。
 自分の所有を意味するもの……。
 子猫でも男の子でも私のすることとしては許されるものではない。
 私はどっちの雨月にも責任はある立場になっちゃったけど、所有じゃない。
 対等な筈だよね……。

 私って……本当にバカなんだから……。
 涙が止まらない!

 私は……残酷だよ。
 涙でぐじゃぐじゃになって手元が視界が歪む。

 ん!んんっ!

 我慢する苦しそうな声を聞きつつ何とか私は首輪をはずした。

「雨月!ごめんね。大好きだよぉ!」

 私は泣きながら思いっきり男の子の雨月と抱きしめあった。

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