25 / 280
子猫の雨月と男の子の雨月
20
しおりを挟む
十二時を過ぎたお昼休憩。
美樹ちゃんのランチのお誘いを断って黙々と……違うか、鬼の形相で淡々と仕事をこなしていた。
あと、一時間ぐらいしたら今日の書類は終了する。
私の計算ではちょっと時間がかかりすぎちゃってる。詰めが甘かったみたい。
とりあえず先にまだ席にいる上司にお伺いをしてみることにした。
今はこの部署には夏川上司と私のみだもん。
みんなに知られずにお願い出来る願ってもいないチャンスだもん!
逃してなるものか!
思わず思いっきり力こぶしをつくって気合いを入れちゃう!
でも、態度はそんな風にはしないけどね。
そわそわしながら上司の席の前に行く。これも作戦です。
こんなお願い……聞いてもらえるものなのかな?
それでも……絶対聞いてもらうんだからぁ!
「夏川上司、折り入ってご相談したいことがあるのですが……」
私に目線を合わせて聞いてくれる。
「星野君、珍しいね。何かあった?」
「私情なのですが……今日、早退させてくれませんか?今日の仕事分はあと一時間で終わりますから」
「何かあったのかね?」
「すみません……。私情としか言えないんです」
男の子がひとりで家にいるだなんて、絶対言えません!
それも見ず知らずの男の子です。
私が拾ったのは……男の子じゃなくって、子猫なんですって。
どれひとつ、言えないんですもの!
「……」
夏川上司は頬杖をついて机の卓上カレンダーを険しい顔で見ている。
机をトントン右手の中指で弾きながら。
なにか、あるのかな?
「急ぎか?」
「出来れば早く帰宅したいです」
目をじっと見て正直に言う。
「これからちょっと営業の仕事のサポートで書類がこっちに回って来るんだ。明日、午前中でいいから休日出勤して呉れないか?その代わり、今日はもう帰っていいから」
「あ、ありがとうございます!明日、休日出勤します!」
「なら残りの仕事、俺がするから持ってこい」
「わ、わかりました!よろしくお願いします!」
や、やったぁああ!
私の上司、夏川さんは仕事は誰よりも早くこなせるし、面倒見がいいんだよね。ありがたい存在です。奥さんは美人だし子煩悩だし。
夏川上司がいてこその総務部です。
本当に。
おかげさまで……助かっちゃいました。
明日の午前中休日出勤になったけど、今日はもう帰れるんだ!
待っててね!雨月!
逸る気持ちを押さえつつ、私は自分の席に戻って残りの書類を束ねながら帰宅の準備を始めた。
美樹ちゃんのランチのお誘いを断って黙々と……違うか、鬼の形相で淡々と仕事をこなしていた。
あと、一時間ぐらいしたら今日の書類は終了する。
私の計算ではちょっと時間がかかりすぎちゃってる。詰めが甘かったみたい。
とりあえず先にまだ席にいる上司にお伺いをしてみることにした。
今はこの部署には夏川上司と私のみだもん。
みんなに知られずにお願い出来る願ってもいないチャンスだもん!
逃してなるものか!
思わず思いっきり力こぶしをつくって気合いを入れちゃう!
でも、態度はそんな風にはしないけどね。
そわそわしながら上司の席の前に行く。これも作戦です。
こんなお願い……聞いてもらえるものなのかな?
それでも……絶対聞いてもらうんだからぁ!
「夏川上司、折り入ってご相談したいことがあるのですが……」
私に目線を合わせて聞いてくれる。
「星野君、珍しいね。何かあった?」
「私情なのですが……今日、早退させてくれませんか?今日の仕事分はあと一時間で終わりますから」
「何かあったのかね?」
「すみません……。私情としか言えないんです」
男の子がひとりで家にいるだなんて、絶対言えません!
それも見ず知らずの男の子です。
私が拾ったのは……男の子じゃなくって、子猫なんですって。
どれひとつ、言えないんですもの!
「……」
夏川上司は頬杖をついて机の卓上カレンダーを険しい顔で見ている。
机をトントン右手の中指で弾きながら。
なにか、あるのかな?
「急ぎか?」
「出来れば早く帰宅したいです」
目をじっと見て正直に言う。
「これからちょっと営業の仕事のサポートで書類がこっちに回って来るんだ。明日、午前中でいいから休日出勤して呉れないか?その代わり、今日はもう帰っていいから」
「あ、ありがとうございます!明日、休日出勤します!」
「なら残りの仕事、俺がするから持ってこい」
「わ、わかりました!よろしくお願いします!」
や、やったぁああ!
私の上司、夏川さんは仕事は誰よりも早くこなせるし、面倒見がいいんだよね。ありがたい存在です。奥さんは美人だし子煩悩だし。
夏川上司がいてこその総務部です。
本当に。
おかげさまで……助かっちゃいました。
明日の午前中休日出勤になったけど、今日はもう帰れるんだ!
待っててね!雨月!
逸る気持ちを押さえつつ、私は自分の席に戻って残りの書類を束ねながら帰宅の準備を始めた。
0
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
見知らぬ男に監禁されています
月鳴
恋愛
悪夢はある日突然訪れた。どこにでもいるような普通の女子大生だった私は、見知らぬ男に攫われ、その日から人生が一転する。
――どうしてこんなことになったのだろう。その問いに答えるものは誰もいない。
メリバ風味のバッドエンドです。
2023.3.31 ifストーリー追加
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる