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弱点のない兵器などは存在しない
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私は走る。
今までの自分では出せない速度で。
これも私が機械人間になっていっている証拠だろう。
しばらく走りエレベーターに乗り込む。
ここは地下施設、彼が来ているのならおそらく一番最初にあの男と対峙した広場。
形からしておそらく資材搬入用のエレベーターだと予想している。
どっちに何があるかは案内があるため問題ない。
別の問題があるが。
さて、そろそろ、
「そこの男、止まれ!」
予想通り兵士たちが私のことに気が付き始めた。後ろから兵士たちが追ってくる。
だが気にするものかよ。
そのまま、走り続ける。
止まらないと分かったのか、今度は正面に集まってきた。どうやら道をふさぐつもりらしい。
「よし行ける。いけるぞ」
なぜか銃を撃ってこないのでそのまま飛び蹴りを食らわせる。おそらくあの男の命令だろう。
「悪いけど、いかせてもらう」
そういいながら兵士の集団に突撃し次々と投げ飛ばしていく。
本気でどんどん人間離れしていっている自分に恐怖を感じながらも、その歩みを止めるつもりはない。
人の波を抜けようやく資材搬入用エレベーターに乗り込むことができた。
上に出るとすでに施設が崩壊していた。
その瓦礫山の上で二人が向き合っている。
男は仁王立ちで、彼は膝をつき今にも倒れそうになりながら。
いろいろ言いたいことはあった。だがそれよりも、今は。
思いを秘め、必死に彼のもとに駆け寄る。途中で二人が私の存在に気づく。
「ほう、まさかあの拘束を解くとは。すでに底まで成長しているというわけか。これは将来が楽しみだ」
初めに言葉を発したのは男の方だった。
「拘束って、なんかピーって言って解けたぞ」
私がそういうと男が固まる。そして小声で何かぶつぶつ言うが声が小さいので聞こえなかった。
男の意識が別の方向に向いているうちに、私は彼のもとに駆け寄った。
「大丈夫か」
「・・・馬鹿が、なんで逃げねえんだ」
そんなの決まってるじゃないかと、私はできる限りの笑顔で答える。
「君が好きだからだよ」
「はあ?!」
その答えに彼はたいそう驚いた。
まあ、そうだろう。自分で認めたといっても私自身、戸惑いつつだったから。
「とにかく。その様子じゃもう戦えないだろ。君は端っこに行って退避しててくれ。ここからは、俺が戦う」
「正気か?」
「正気さ。俺、こう見えても強くなったのよ」
そういって立ち上がり彼の前に立つ。
「さあ、おっさん。ここからは俺が相手だ」
彼が何か言ってくるが無視してズイズイと前に出る。
そうすると男がようやくあちらの世界から帰ってきた。
「あ、ああ。お前が相手か。できるかな? 機械化しきっていないその身で」
「何、ちゃ~んと秘策を用意してますよ」
そういって大きく一歩を踏み出す。
まずは顔に一発。さっきのお返しにとこぶしを振るが軽くよけられる。
「なんでほかの兵士がいないんだ」
「私が全力を出せば彼らはかえって邪魔になる」
「なるほどね」
私は殴った勢いを殺さずにジャンプ。そこから頭を狙ったけりを出そうとするが、その前に足をつかまれ投げ飛ばされる。
がれきの山に突っ込むがまったく痛みを感じない。
見た目こそ全く変わっていないが、すでに皮膚は完全に機械化しているようだ。
何も言わずに瓦礫から這い出る。
「ふふふ。いいぞ、それでこそ私が見込んだ男だ」
「うるせえ!」
そういって再び突撃していく。
今度は、正面からのパンチ、と見せかけて後ろに回り込もうとしたが途中で腕をつかまれる。
「反応速度もさすがだ。やはり貴様は機械化と相性がいいようだ」
「そんなこと知らねえよ。俺はあいつと帰るんだよ家に」
「だが貴様にはもう帰る家も何もないはずだ」
それを言われて一瞬固まってしまう。
その隙を逃さず男は私の顔を殴りつける。掴んだ腕を放さずに何度も何度も。
いつまでもやられてるわけにはいかないと、覚悟を決めて拳を振り上げ相手と同じように頭めがけてふる。放たれた拳は両者の間ですれ違い両者ともに顔面にヒット。
しかし、浅い。
「その程度か! もっとだ! もっと! 機械化した体はこの程度の衝撃、痛みとも受け取らないはずだ!」
そういって男は私を投げ飛ばしました。
内心は無茶を言うなと言いたかった。
機械化してまだ1日もたっていないのに、体は全然いうことを聞いてくれない。
確かに素早く動ける。だが、まだ神経は機械化されていないようで反応がどうしても遅れてしまう。
要はこう動こうと考える前に体が勝手に動いてしまっているような感じ。
これでは体に振り回されているだけだ。
「リミッターを外せ、脳の芯まで使って自分の体をコントロールしろ。それも出来ぬのなら、今ここで殺すまでだ」
無茶をおしゃる、と本気で言いたかった。だが、言うよりも行動するほうが先だ。
俺がそう思っていると、男に向けてどこからともなくミサイルが飛んでくる。
なんの苦も無く男は回避するが、ギロッと彼のほうに視線を向けた。
「一号。まさか、邪魔をする気か?」
「・・・」
彼は何も言わない。
黙って私の方を見てくる。
そこで理解した。
二人合わせて戦おうということだと。
言葉は交わさない。
俺が走り出すと同時に彼が片手に持ったハンドガンを発砲する。
「く、小癪な」
男はそう言ってハンドガンの球を腕で弾くと私に向かってきた。
「なるほど連携か。確かにいい手だ。だが、そんな付け焼刃が」
男はそう言って私に手を伸ばしてくる。再び掴んでくることを察知した私は、一気に姿勢を低くし男の足にスライディング仕掛けるが、それも読まれよけられてしまう。
だが、それは予想していた。すぐに態勢を整え地面から勢いよく飛び上がりながらアッパーを入れようとする。それと同時に、彼のカラーボックスからビームとミサイルが放たれる。
さすがに、それはよけられない。どちらかをよけようとすればどちらかに当たる。
前のように火の息を使っても後ろの私からの攻撃を防ぐ事はできない。
「終わりだ。くそ野郎」
私がそういった瞬間、私の拳が相手にクリーンヒット。吹っ飛ばされた男めがけてミサイルが雨あられと降ってくる。
しこたま爆音が鳴り響いた後、やったのかとそこに目を向けていると、腕が私に向けて飛んできました。
「この程度で、私は・・・死なん!」
首がすごい力で締め付けられて息ができない。
「やはりまだ完全でない以上それが限界か」
「い・・・や」
「何?」
私を掴んでいる男の腕に全身でしがみ付く。傍らにこちらにカラーボックスを向けていることに気が付く。
「手えだすな!」
「な」
彼に顔を向ける笑おうとするが首を掴まれているためうまく笑えない。
「俺に任せとけ」
俺はそう言って全身に力を込める。
腕を折るための行動だったが、全く効果はないように見えた。
「ちょっと手加減してくれてもええんじゃないのか」
「お前が本気を出せば考えてやらんでもない」
そう言って男はより一層、手に力を入れ私の首を絞める。
「いつまで遊んでいる気だ?」
一体どういうことなのかわからなかった。遊んでいるつもりなどない。全力だ。確かに、体はまだ十全に動かない。
だが、それでもできる事をやろうとしている。
「やはりだめか。まだ機械化が完全ではないからか」
そう言ってより一層、男は手に力を込め俺の首を折りにきた。
そして、
「う、うう。っか」
少しの嗚咽、最後にかっという謎の音が出ると同時にゴキっという音がなり体に力が入らなくなる。
「そこでじっとしているがいい」
そう言って私から彼の方に視線を向けた。
「なに、心配する必要はないぞ、1号。あの程度で機械化した人間が死ぬことはない。それにお前もすぐこの素晴らしい新人類へと進化するのだからな」
体が動かない。
いや、体だけじゃない。息もできない、だが死んでいない。不思議な気分だった。まるで自分が今ここにおらず、自分の部屋でテレビを見ているような気分。
だが、動かないと。
彼一人では、あいつを倒すことはできない。
あの男は彼の事を知り尽くしている。そうなうように男がっプログラムしたからだ。ここに来る途中、他の研究員から話を聞いた。
だからこそ、彼らから無理やり聞いた機械化したことによる弱点を。
だから、動け、動けと体に命令するが体が動かない。
動かす以外はいい、とにかく手足が動けばいい。
すると、手が動く、足が動くが依然、首が折れたままであるため首に力が入らず頭がぶらぶらと揺れている。だが気にする必要はない。懐に隠していた注射器を取り出し走る。この注射器は上の部分にスイッチがあり相手の地肌に押し当ててスイッチを押すと針が飛び出し中の薬品を注入するという物。
私の存在に男はすぐにかが付くが、私の様子に一瞬面くらい反応が遅れる。その隙に男に飛びつき首筋めがけて注射器を押し当てスイッチを押す。
注射器に内蔵されている装置が、男のナノマシンを動かして注射器の針が刺さる部分を通常の人の肌と同じ高度にする。そうすることによって問題なく機械化した人物にも注射ができる。
「ちい、はなれろ!」
すぐに引きはがされるが。が、もう遅い。
「私に何をした?」
「聞いてきたんだよ、研究者からな。機械化した人間の弱点を」
起き上がり、手で顔を持ちながら男に告げる。
「此処の連中によれば機械化された人間はナノマシンを介する事で複雑化した体と頭をつないでコントロールしていると」
「ま、まさか・・・」
男は驚愕の表情で私が注射器をさした部分に手を持っていく。
「今、注射したのは体内のナノマシンの働きを抑制する薬品だ。これ自体は何の変哲もない一般的な医薬品だけど、俺たちにすれば・・・」
男が膝をつく。それと同時に全身から高温の熱を放出し始める。
「だから待ってた。あんたが俺から意識をそらすその瞬間をな」
嘘である。
この時、私にそこまで考える余裕はない。だが、これで時間を稼ぐことができれば、男の体を完全に崩壊させられる。
薬を注射したとしてもすぐに効果が出てくるわけじゃない。全身に回って効果が出るまで当然時間がかかる。
が、それほど問題出はない。死ぬまでには時間がかかるが戦闘不能になるまでは、それほど時間はかからない。
その証拠に、男は膝をついたまま熱を放出し続けている。おまけに、見えるところの肌が赤くなり、衣服は燃え始めた。
「ふ、ふふふ」
突然、男が笑いだした。
「どうした?」
「いや、なるほど。このような弱点があったとはな。これはのちの改良点だな」
「な、何でそんな、冷静でいられるんだ! 死にそうになっているんだぞ!」
私が驚き、同時に恐ろしさから声をあげると男はさらに話を続ける。
「理由を問うのか? それこそ、愚問。私の体で仮説を証明することができたのだからな、これほどうれしいことはない。私が死んでも私の体に起こったことを元に、研究を受け継いだものが更なるものを開発する。すなわち、私は研究の糧となるのだ。研究者の一人としてこれほど嬉しいことはない」
「残念ながらそれは無理」
男の話と私のやり取りを無言で聞いていた彼が満を持して口を開く。
「この基地は完膚なきまでに破壊する。その上で動けずにいるお前もただではすまない。お前たちの研究がこれ以上進むことはない」
彼はそういうが男は笑みを崩そうとしない。
「違う。違うぞ、1号よ。人は、人々は、どんな困難が待っていようとその先に進まずにはいられないものだ。ここで私のしたいが失われたとしても、いつかは、研究者たちは完成させる。研究を。その証拠がお前でもある」
男はそういうと最後に「最終的に勝つのは私だ」といって地面に倒れる。まだ死んではいないが、体を支えることすらできなくなったと言うことだ。
「さて、じゃあ施設の破壊と行きますか」
場の空気を変えるために声を出すが彼の表情は暗い。そんな彼に俺は設置式の高性能爆薬を渡す。
「今は考えてもしょうがない。君の任務を果たそう」
「ああ、わかってる。分かってるよ!」
そういって私と彼は基地に降りていくのだった。
今までの自分では出せない速度で。
これも私が機械人間になっていっている証拠だろう。
しばらく走りエレベーターに乗り込む。
ここは地下施設、彼が来ているのならおそらく一番最初にあの男と対峙した広場。
形からしておそらく資材搬入用のエレベーターだと予想している。
どっちに何があるかは案内があるため問題ない。
別の問題があるが。
さて、そろそろ、
「そこの男、止まれ!」
予想通り兵士たちが私のことに気が付き始めた。後ろから兵士たちが追ってくる。
だが気にするものかよ。
そのまま、走り続ける。
止まらないと分かったのか、今度は正面に集まってきた。どうやら道をふさぐつもりらしい。
「よし行ける。いけるぞ」
なぜか銃を撃ってこないのでそのまま飛び蹴りを食らわせる。おそらくあの男の命令だろう。
「悪いけど、いかせてもらう」
そういいながら兵士の集団に突撃し次々と投げ飛ばしていく。
本気でどんどん人間離れしていっている自分に恐怖を感じながらも、その歩みを止めるつもりはない。
人の波を抜けようやく資材搬入用エレベーターに乗り込むことができた。
上に出るとすでに施設が崩壊していた。
その瓦礫山の上で二人が向き合っている。
男は仁王立ちで、彼は膝をつき今にも倒れそうになりながら。
いろいろ言いたいことはあった。だがそれよりも、今は。
思いを秘め、必死に彼のもとに駆け寄る。途中で二人が私の存在に気づく。
「ほう、まさかあの拘束を解くとは。すでに底まで成長しているというわけか。これは将来が楽しみだ」
初めに言葉を発したのは男の方だった。
「拘束って、なんかピーって言って解けたぞ」
私がそういうと男が固まる。そして小声で何かぶつぶつ言うが声が小さいので聞こえなかった。
男の意識が別の方向に向いているうちに、私は彼のもとに駆け寄った。
「大丈夫か」
「・・・馬鹿が、なんで逃げねえんだ」
そんなの決まってるじゃないかと、私はできる限りの笑顔で答える。
「君が好きだからだよ」
「はあ?!」
その答えに彼はたいそう驚いた。
まあ、そうだろう。自分で認めたといっても私自身、戸惑いつつだったから。
「とにかく。その様子じゃもう戦えないだろ。君は端っこに行って退避しててくれ。ここからは、俺が戦う」
「正気か?」
「正気さ。俺、こう見えても強くなったのよ」
そういって立ち上がり彼の前に立つ。
「さあ、おっさん。ここからは俺が相手だ」
彼が何か言ってくるが無視してズイズイと前に出る。
そうすると男がようやくあちらの世界から帰ってきた。
「あ、ああ。お前が相手か。できるかな? 機械化しきっていないその身で」
「何、ちゃ~んと秘策を用意してますよ」
そういって大きく一歩を踏み出す。
まずは顔に一発。さっきのお返しにとこぶしを振るが軽くよけられる。
「なんでほかの兵士がいないんだ」
「私が全力を出せば彼らはかえって邪魔になる」
「なるほどね」
私は殴った勢いを殺さずにジャンプ。そこから頭を狙ったけりを出そうとするが、その前に足をつかまれ投げ飛ばされる。
がれきの山に突っ込むがまったく痛みを感じない。
見た目こそ全く変わっていないが、すでに皮膚は完全に機械化しているようだ。
何も言わずに瓦礫から這い出る。
「ふふふ。いいぞ、それでこそ私が見込んだ男だ」
「うるせえ!」
そういって再び突撃していく。
今度は、正面からのパンチ、と見せかけて後ろに回り込もうとしたが途中で腕をつかまれる。
「反応速度もさすがだ。やはり貴様は機械化と相性がいいようだ」
「そんなこと知らねえよ。俺はあいつと帰るんだよ家に」
「だが貴様にはもう帰る家も何もないはずだ」
それを言われて一瞬固まってしまう。
その隙を逃さず男は私の顔を殴りつける。掴んだ腕を放さずに何度も何度も。
いつまでもやられてるわけにはいかないと、覚悟を決めて拳を振り上げ相手と同じように頭めがけてふる。放たれた拳は両者の間ですれ違い両者ともに顔面にヒット。
しかし、浅い。
「その程度か! もっとだ! もっと! 機械化した体はこの程度の衝撃、痛みとも受け取らないはずだ!」
そういって男は私を投げ飛ばしました。
内心は無茶を言うなと言いたかった。
機械化してまだ1日もたっていないのに、体は全然いうことを聞いてくれない。
確かに素早く動ける。だが、まだ神経は機械化されていないようで反応がどうしても遅れてしまう。
要はこう動こうと考える前に体が勝手に動いてしまっているような感じ。
これでは体に振り回されているだけだ。
「リミッターを外せ、脳の芯まで使って自分の体をコントロールしろ。それも出来ぬのなら、今ここで殺すまでだ」
無茶をおしゃる、と本気で言いたかった。だが、言うよりも行動するほうが先だ。
俺がそう思っていると、男に向けてどこからともなくミサイルが飛んでくる。
なんの苦も無く男は回避するが、ギロッと彼のほうに視線を向けた。
「一号。まさか、邪魔をする気か?」
「・・・」
彼は何も言わない。
黙って私の方を見てくる。
そこで理解した。
二人合わせて戦おうということだと。
言葉は交わさない。
俺が走り出すと同時に彼が片手に持ったハンドガンを発砲する。
「く、小癪な」
男はそう言ってハンドガンの球を腕で弾くと私に向かってきた。
「なるほど連携か。確かにいい手だ。だが、そんな付け焼刃が」
男はそう言って私に手を伸ばしてくる。再び掴んでくることを察知した私は、一気に姿勢を低くし男の足にスライディング仕掛けるが、それも読まれよけられてしまう。
だが、それは予想していた。すぐに態勢を整え地面から勢いよく飛び上がりながらアッパーを入れようとする。それと同時に、彼のカラーボックスからビームとミサイルが放たれる。
さすがに、それはよけられない。どちらかをよけようとすればどちらかに当たる。
前のように火の息を使っても後ろの私からの攻撃を防ぐ事はできない。
「終わりだ。くそ野郎」
私がそういった瞬間、私の拳が相手にクリーンヒット。吹っ飛ばされた男めがけてミサイルが雨あられと降ってくる。
しこたま爆音が鳴り響いた後、やったのかとそこに目を向けていると、腕が私に向けて飛んできました。
「この程度で、私は・・・死なん!」
首がすごい力で締め付けられて息ができない。
「やはりまだ完全でない以上それが限界か」
「い・・・や」
「何?」
私を掴んでいる男の腕に全身でしがみ付く。傍らにこちらにカラーボックスを向けていることに気が付く。
「手えだすな!」
「な」
彼に顔を向ける笑おうとするが首を掴まれているためうまく笑えない。
「俺に任せとけ」
俺はそう言って全身に力を込める。
腕を折るための行動だったが、全く効果はないように見えた。
「ちょっと手加減してくれてもええんじゃないのか」
「お前が本気を出せば考えてやらんでもない」
そう言って男はより一層、手に力を入れ私の首を絞める。
「いつまで遊んでいる気だ?」
一体どういうことなのかわからなかった。遊んでいるつもりなどない。全力だ。確かに、体はまだ十全に動かない。
だが、それでもできる事をやろうとしている。
「やはりだめか。まだ機械化が完全ではないからか」
そう言ってより一層、男は手に力を込め俺の首を折りにきた。
そして、
「う、うう。っか」
少しの嗚咽、最後にかっという謎の音が出ると同時にゴキっという音がなり体に力が入らなくなる。
「そこでじっとしているがいい」
そう言って私から彼の方に視線を向けた。
「なに、心配する必要はないぞ、1号。あの程度で機械化した人間が死ぬことはない。それにお前もすぐこの素晴らしい新人類へと進化するのだからな」
体が動かない。
いや、体だけじゃない。息もできない、だが死んでいない。不思議な気分だった。まるで自分が今ここにおらず、自分の部屋でテレビを見ているような気分。
だが、動かないと。
彼一人では、あいつを倒すことはできない。
あの男は彼の事を知り尽くしている。そうなうように男がっプログラムしたからだ。ここに来る途中、他の研究員から話を聞いた。
だからこそ、彼らから無理やり聞いた機械化したことによる弱点を。
だから、動け、動けと体に命令するが体が動かない。
動かす以外はいい、とにかく手足が動けばいい。
すると、手が動く、足が動くが依然、首が折れたままであるため首に力が入らず頭がぶらぶらと揺れている。だが気にする必要はない。懐に隠していた注射器を取り出し走る。この注射器は上の部分にスイッチがあり相手の地肌に押し当ててスイッチを押すと針が飛び出し中の薬品を注入するという物。
私の存在に男はすぐにかが付くが、私の様子に一瞬面くらい反応が遅れる。その隙に男に飛びつき首筋めがけて注射器を押し当てスイッチを押す。
注射器に内蔵されている装置が、男のナノマシンを動かして注射器の針が刺さる部分を通常の人の肌と同じ高度にする。そうすることによって問題なく機械化した人物にも注射ができる。
「ちい、はなれろ!」
すぐに引きはがされるが。が、もう遅い。
「私に何をした?」
「聞いてきたんだよ、研究者からな。機械化した人間の弱点を」
起き上がり、手で顔を持ちながら男に告げる。
「此処の連中によれば機械化された人間はナノマシンを介する事で複雑化した体と頭をつないでコントロールしていると」
「ま、まさか・・・」
男は驚愕の表情で私が注射器をさした部分に手を持っていく。
「今、注射したのは体内のナノマシンの働きを抑制する薬品だ。これ自体は何の変哲もない一般的な医薬品だけど、俺たちにすれば・・・」
男が膝をつく。それと同時に全身から高温の熱を放出し始める。
「だから待ってた。あんたが俺から意識をそらすその瞬間をな」
嘘である。
この時、私にそこまで考える余裕はない。だが、これで時間を稼ぐことができれば、男の体を完全に崩壊させられる。
薬を注射したとしてもすぐに効果が出てくるわけじゃない。全身に回って効果が出るまで当然時間がかかる。
が、それほど問題出はない。死ぬまでには時間がかかるが戦闘不能になるまでは、それほど時間はかからない。
その証拠に、男は膝をついたまま熱を放出し続けている。おまけに、見えるところの肌が赤くなり、衣服は燃え始めた。
「ふ、ふふふ」
突然、男が笑いだした。
「どうした?」
「いや、なるほど。このような弱点があったとはな。これはのちの改良点だな」
「な、何でそんな、冷静でいられるんだ! 死にそうになっているんだぞ!」
私が驚き、同時に恐ろしさから声をあげると男はさらに話を続ける。
「理由を問うのか? それこそ、愚問。私の体で仮説を証明することができたのだからな、これほどうれしいことはない。私が死んでも私の体に起こったことを元に、研究を受け継いだものが更なるものを開発する。すなわち、私は研究の糧となるのだ。研究者の一人としてこれほど嬉しいことはない」
「残念ながらそれは無理」
男の話と私のやり取りを無言で聞いていた彼が満を持して口を開く。
「この基地は完膚なきまでに破壊する。その上で動けずにいるお前もただではすまない。お前たちの研究がこれ以上進むことはない」
彼はそういうが男は笑みを崩そうとしない。
「違う。違うぞ、1号よ。人は、人々は、どんな困難が待っていようとその先に進まずにはいられないものだ。ここで私のしたいが失われたとしても、いつかは、研究者たちは完成させる。研究を。その証拠がお前でもある」
男はそういうと最後に「最終的に勝つのは私だ」といって地面に倒れる。まだ死んではいないが、体を支えることすらできなくなったと言うことだ。
「さて、じゃあ施設の破壊と行きますか」
場の空気を変えるために声を出すが彼の表情は暗い。そんな彼に俺は設置式の高性能爆薬を渡す。
「今は考えてもしょうがない。君の任務を果たそう」
「ああ、わかってる。分かってるよ!」
そういって私と彼は基地に降りていくのだった。
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