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婚約編
インベントリはとても便利なようです
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キッチンにコトコトという音がしている。今土鍋で煮込んでいるのはロールキャベツだ。いつもより早く目が覚めてしまったし、父や兄のリクエストに答えるべくロールキャベツを作っている。その横ではミゲルさんたちモーントシュタイン家の料理人たちが朝食の準備をしていて、いつもその邪魔をしていないか気になっている。
尤も料理人たちは私が作る料理に興味津々なようで、手が空くと質問してくるくらいなので邪魔にはなっていないのだろう。場合によっては一緒に作ることもあるしね……お菓子は特に。
キャベツは蒸して柔らかくしている間にタネを作り、他のおかずの準備もした。今回はブリに似た魚がこの世界にあるのでそれをこの世界のナンプラーもどきで照り焼きにしたのだけれど、見事に失敗。しかも料理酒やみりんなどないので白ワインで代用したけれど、正直言って味はイマイチだった。なので今回は仕方なく向こうの世界の醤油や料理酒、みりんを使って照り焼きにした。
時間があればこの世界にある調味料のことを教えてもらったり料理のアレンジを研究したいのだけれど、今のところそんな暇はないので我慢している。こちらの世界にも醤油や味噌、酒やみりんがあればいいのだけれど、そこは今度聞いてみようと思う。こちらの世界に来た以上この世界に慣れないといけないし、未練がましく向こうの部屋や調味料を使うわけにはいかないと思い始めている。
まあ、そこは父と相談かな?
ロールキャベツはコンソメで煮ている。向こうの世界にあるようなキューブ状のものや粉状のものではなく、フランス料理で使うような、本格的に作ったものだ。ブイヨンやコンソメ自体はこの世界にもあるし、スープに使うお肉は豚肉や牛肉などよりも味の濃い魔獣肉を使っているらしく、私としては地球産のよりも気に入っている味だったりする。
今回使わせてもらったコンソメは、ミゲルさんたちが毎日大量に作っているものを少し分けてもらう代わりに、ロールキャベツの作り方と煮込むスープの種類を教えている。今回はジークハルト様たちの口にも合うようにコンソメを使って煮込んだけれど、トマト――こちらで言うタマータルで煮込んでも美味しいと教えると、「今夜にでもお出しいたしますので、味見をお願いいたします」と言われたので頷いた。
「そろそろいいかしら」
<ミカお姉ちゃん、できたー?>
《おお、どんなものなんじゃ?》
『早く中身を見せてちょうだい!』
「ちょっと待ってくださいね」
早く早くと急かす魔物たちを宥め、土鍋の蓋を開けると湯気が上がる。そしてふわっと漂ったコンソメやキャベツなどの匂いに、《『<おおーっ!!>』》と三人から歓声があがる。そしてどうしてかミゲルさんたちからも。
「ふふ、今日は肌寒いから、きっとおかわりされると思うの」
<うん、そうだね! 今日はボクもついて行こうかなー>
「構わないと思いますけど、どちらの格好で行かれるのですか? あと、熱いのもは大丈夫ですか?」
<うーん……小虎かな? お爺ちゃんとオネェちゃんと一緒にいるよ。熱いのはちょっと苦手ー>
『あら。やっと三人で護衛できるのね』
《儂も楽しみだのう》
「熱いのが苦手なのであれば、ナミルさんのぶんは除けておきますね」
本当はまずいのだけれど今回だけだからと、ナミルさんのぶんをタッパにいくつか取り分ける。土鍋の中には腸詰肉も入っているので、スープの味もいい塩梅になっていた。そわそわしている料理人たちに苦笑しつつも彼ら用の味見として用意していた土鍋を渡すと、早速それを食べている。
他に野菜や腸詰肉の代わりにベーコンを入れ、野菜を増やして煮込めば具沢山のスープ――ポトフになるとアレンジを教えると、皆して「なるほど……」と考えこんでいた。基本さえ教えておけばあとはミゲルさんたちが勝手にアレンジしてくれるので、最近は私も彼らがアレンジした料理を楽しみにしていた。
土鍋の蓋を戻し、蓋が開かないように木綿で作った風呂敷で包むと、そのままインベントリに入れた。本来ならば煮込んだものを器に入れて持って行きたいところだけれど、今日は雨降りで肌寒く、温かいスープも必要だろうとそのままにしたのだ。
兄曰く、インベントリは時間経過をしないそうなので冷めることもないし、鞄と違ってぐらぐら揺れて中身が零れることもないそうなので、インベントリに入れたのだ。とても便利です、インベントリ。
ロールキャベツと照り焼きがあるのでパンとおむすびを用意した。パンは料理長が作った柔らかい白パンに蜂蜜入りのパン、くるみとチーズが練りこまれているパンだ。今回のおむすびは塩むすびだけ。それらや他のおかずは全て料理人たちがお皿や籠に詰めてくれたのでそれをインベントリに全てしまうと、お礼を言って我が家のキッチンをあとにした。
そのまま食堂に行って父や兄と談笑をしながら朝食を取り、食べ終わると部屋に戻る。アイニさんたちにドレスを着付けられ、髪も整えられて行く。今日は寒いからと少し厚手の布地に上に羽織るケープと膝掛け、念のためにとストールまで用意してくれた。雨の日は私の古傷が痛むと知っているようで、家にいても必ず用意してくれるのだ。
「実花、支度できたかい?」
「はい、できました」
顔を出したのは兄だった。いつもは父が来るのにどうしたのか聞けば、会議があるから先に行ったそうだ。転移できるからこそゆっくり朝食を食べていたけれど、本来はもっと早く出なければならないらしい。
「お父様ったら……。それでお兄様。今日は馬車で行くのですか?」
「いや? 僕の転移でひとっ跳びさ」
「そう仰いますけれど、私の護衛もいるのです。彼らはどうするのですか?」
「……忘れてた。バルド、すまない、馬車の用意をしてもらえるかな」
「そう仰るだろうと思い、既に準備は出来ておりますよ」
「おー、さすがバルド!」
さすがは我が家の筆頭執事、兄のことをよくわかっている。そんな二人のやり取りに内心苦笑しつつ、玄関へと歩いて行く。そして全員が馬車に乗り込むと、すぐに発車した。今回は相当の距離を飛んだようで、いつもは一時間かかるところを三十分でお城に着いてしまった。
それに呆れつつも馬車から降りると、今日は雨が降っているからかいつもとは違う場所だった。そしてそこにはジークハルト様がいて、私たちを見ると笑顔を浮かべていた。
「おはよう、ミカ、アル」
「おはようございます、殿下」
「おはようございます、ジークハルト様」
確か、婚約発表をしたあとならば特別な名前を呼んでいいと言われていたことを思い出してそう呼べば、兄もジークハルト様も小さく頷いていたので、胸を撫で下ろす。
「殿下、今日は会議ではなかったのですか?」
「ああ、さっき休憩に入ったんだ。だから陛下に断ってミカに会いに来た」
「グラナート殿下……。まあ、気持ちはわかりますけどね」
「ありがとうございます、ジークハルト様。でも、私よりも会議を優先してくださいね? そちらのほうが大事なのですから」
「ああ、今度からそうしよう。だが、今日は許せ」
兄はお城にいるからかいつもの気安い話し方ではなく、貴族の嫡子としての話し方だった。そんな会話をしながら歩いて行く。本当に顔を見に来ただけのようで、私の額にキスを落とすと「お昼に行く」と言って、途中にあった曲がり角を曲がって行ってしまった。……キスを落としたジークハルト様に、その場にいた騎士や侍従、女官が驚いていたけれど。
相変わらず鬱陶しい視線だと思うものの、昨日婚約発表をしたからなのか、あからさまに窺うような視線はない。が、それでもやはり鬱陶しいことには変わりはないので、内心溜息をついている間に見覚えのある場所に来て、父と兄が執務をしている部屋に辿り着いた。
中へと入ると書類が山積みになっていて、兄が苦笑していた。
「まあ、昨日一日仕事してないから仕方ないな」
「そうですね」
「じゃあ、今日はこの書類を先に片付けるのを手伝ってくれるかい?」
「わかりました」
ロールキャベツに味を滲みこませたいからと先にキッチンに行くと、風呂敷を外して土鍋を台に置く。それから兄の指示に従って、日付を見ながら急ぎの書類とそうでないものに分けていく。先に急ぎのものを兄に渡し、検算を頼まれたものはそれをやり、手が空いたら先日同様に書類を束ねていった。
そして午前の休憩時間になったころ、会議が終わったらしい父が顔を出した。心なしか疲れたような顔をしていたので、チョコレートを添えてコーヒーを出す。
「ありがとう、実花」
「どういたしまして。疲れているように見えるのですけど、大変だったのですか?」
「大変と言えば大変だった。もうじき月末の決算になるから、その報告や問題がないかを話し合ったからね」
そういった話を聞くと、会社の経営かと思う。規模は違うしやり方も違うだろうけれど、きっと会社経営と同じなのだと思う。……実際はどうなのかわからないけれど。然り気無く父はどのような職についているのか聞くと、財務大臣をしていると聞いて驚いた。
「まさかそんなに重要な地位にいるとは思いませんでした」
「私だってこんなに重要な地位になんてつきたくなかったが、前陛下と前宰相殿に任命されてしまったからね……。こればかりは仕方がない」
「宰相や外交担当よりはマシだよね」
「確かにな」
宰相とは国の頭脳だから、余計に大変なのだろう。父も兄も経営に優れているけれど、二人が言うには領地ならばともかく、国となると無理だと言っていた。……私にしてみれば領地ですら大変なのだけれど、ハイスペックな二人からすれば、会社経営と変わらない感覚で領地経営をしているのだろうということが垣間見えた。
休憩も終わり仕事を再開、集中してやっているとあっという間に時間が過ぎて行く。時計を見て土鍋を火にかけて温め直し、お湯を沸かし始めるとすぐにお昼の鐘が鳴ったので、テーブルの上を拭いてランチョンマットや食器など用意しているとノックの音がした。私が準備中だったからなのか兄が対応に出てくれて、中に入って来たのはジークハルト様と昨日紹介してくれると言っていた騎士の方と侍従の方がいた。
自己紹介などは食事をしながらでもできるからとジークハルト様が仰ってくださったので、まずは何を飲むかだけ先に聞き、テーブルのセッティングをする。そして真ん中にロールキャベツが入っている土鍋を二つと他のおかず、パンやおむすびなどをテーブルに乗せ、それぞれ取り分けていく。
最後に飲み物を配ると全員でいただきますをして食べ始めた。
尤も料理人たちは私が作る料理に興味津々なようで、手が空くと質問してくるくらいなので邪魔にはなっていないのだろう。場合によっては一緒に作ることもあるしね……お菓子は特に。
キャベツは蒸して柔らかくしている間にタネを作り、他のおかずの準備もした。今回はブリに似た魚がこの世界にあるのでそれをこの世界のナンプラーもどきで照り焼きにしたのだけれど、見事に失敗。しかも料理酒やみりんなどないので白ワインで代用したけれど、正直言って味はイマイチだった。なので今回は仕方なく向こうの世界の醤油や料理酒、みりんを使って照り焼きにした。
時間があればこの世界にある調味料のことを教えてもらったり料理のアレンジを研究したいのだけれど、今のところそんな暇はないので我慢している。こちらの世界にも醤油や味噌、酒やみりんがあればいいのだけれど、そこは今度聞いてみようと思う。こちらの世界に来た以上この世界に慣れないといけないし、未練がましく向こうの部屋や調味料を使うわけにはいかないと思い始めている。
まあ、そこは父と相談かな?
ロールキャベツはコンソメで煮ている。向こうの世界にあるようなキューブ状のものや粉状のものではなく、フランス料理で使うような、本格的に作ったものだ。ブイヨンやコンソメ自体はこの世界にもあるし、スープに使うお肉は豚肉や牛肉などよりも味の濃い魔獣肉を使っているらしく、私としては地球産のよりも気に入っている味だったりする。
今回使わせてもらったコンソメは、ミゲルさんたちが毎日大量に作っているものを少し分けてもらう代わりに、ロールキャベツの作り方と煮込むスープの種類を教えている。今回はジークハルト様たちの口にも合うようにコンソメを使って煮込んだけれど、トマト――こちらで言うタマータルで煮込んでも美味しいと教えると、「今夜にでもお出しいたしますので、味見をお願いいたします」と言われたので頷いた。
「そろそろいいかしら」
<ミカお姉ちゃん、できたー?>
《おお、どんなものなんじゃ?》
『早く中身を見せてちょうだい!』
「ちょっと待ってくださいね」
早く早くと急かす魔物たちを宥め、土鍋の蓋を開けると湯気が上がる。そしてふわっと漂ったコンソメやキャベツなどの匂いに、《『<おおーっ!!>』》と三人から歓声があがる。そしてどうしてかミゲルさんたちからも。
「ふふ、今日は肌寒いから、きっとおかわりされると思うの」
<うん、そうだね! 今日はボクもついて行こうかなー>
「構わないと思いますけど、どちらの格好で行かれるのですか? あと、熱いのもは大丈夫ですか?」
<うーん……小虎かな? お爺ちゃんとオネェちゃんと一緒にいるよ。熱いのはちょっと苦手ー>
『あら。やっと三人で護衛できるのね』
《儂も楽しみだのう》
「熱いのが苦手なのであれば、ナミルさんのぶんは除けておきますね」
本当はまずいのだけれど今回だけだからと、ナミルさんのぶんをタッパにいくつか取り分ける。土鍋の中には腸詰肉も入っているので、スープの味もいい塩梅になっていた。そわそわしている料理人たちに苦笑しつつも彼ら用の味見として用意していた土鍋を渡すと、早速それを食べている。
他に野菜や腸詰肉の代わりにベーコンを入れ、野菜を増やして煮込めば具沢山のスープ――ポトフになるとアレンジを教えると、皆して「なるほど……」と考えこんでいた。基本さえ教えておけばあとはミゲルさんたちが勝手にアレンジしてくれるので、最近は私も彼らがアレンジした料理を楽しみにしていた。
土鍋の蓋を戻し、蓋が開かないように木綿で作った風呂敷で包むと、そのままインベントリに入れた。本来ならば煮込んだものを器に入れて持って行きたいところだけれど、今日は雨降りで肌寒く、温かいスープも必要だろうとそのままにしたのだ。
兄曰く、インベントリは時間経過をしないそうなので冷めることもないし、鞄と違ってぐらぐら揺れて中身が零れることもないそうなので、インベントリに入れたのだ。とても便利です、インベントリ。
ロールキャベツと照り焼きがあるのでパンとおむすびを用意した。パンは料理長が作った柔らかい白パンに蜂蜜入りのパン、くるみとチーズが練りこまれているパンだ。今回のおむすびは塩むすびだけ。それらや他のおかずは全て料理人たちがお皿や籠に詰めてくれたのでそれをインベントリに全てしまうと、お礼を言って我が家のキッチンをあとにした。
そのまま食堂に行って父や兄と談笑をしながら朝食を取り、食べ終わると部屋に戻る。アイニさんたちにドレスを着付けられ、髪も整えられて行く。今日は寒いからと少し厚手の布地に上に羽織るケープと膝掛け、念のためにとストールまで用意してくれた。雨の日は私の古傷が痛むと知っているようで、家にいても必ず用意してくれるのだ。
「実花、支度できたかい?」
「はい、できました」
顔を出したのは兄だった。いつもは父が来るのにどうしたのか聞けば、会議があるから先に行ったそうだ。転移できるからこそゆっくり朝食を食べていたけれど、本来はもっと早く出なければならないらしい。
「お父様ったら……。それでお兄様。今日は馬車で行くのですか?」
「いや? 僕の転移でひとっ跳びさ」
「そう仰いますけれど、私の護衛もいるのです。彼らはどうするのですか?」
「……忘れてた。バルド、すまない、馬車の用意をしてもらえるかな」
「そう仰るだろうと思い、既に準備は出来ておりますよ」
「おー、さすがバルド!」
さすがは我が家の筆頭執事、兄のことをよくわかっている。そんな二人のやり取りに内心苦笑しつつ、玄関へと歩いて行く。そして全員が馬車に乗り込むと、すぐに発車した。今回は相当の距離を飛んだようで、いつもは一時間かかるところを三十分でお城に着いてしまった。
それに呆れつつも馬車から降りると、今日は雨が降っているからかいつもとは違う場所だった。そしてそこにはジークハルト様がいて、私たちを見ると笑顔を浮かべていた。
「おはよう、ミカ、アル」
「おはようございます、殿下」
「おはようございます、ジークハルト様」
確か、婚約発表をしたあとならば特別な名前を呼んでいいと言われていたことを思い出してそう呼べば、兄もジークハルト様も小さく頷いていたので、胸を撫で下ろす。
「殿下、今日は会議ではなかったのですか?」
「ああ、さっき休憩に入ったんだ。だから陛下に断ってミカに会いに来た」
「グラナート殿下……。まあ、気持ちはわかりますけどね」
「ありがとうございます、ジークハルト様。でも、私よりも会議を優先してくださいね? そちらのほうが大事なのですから」
「ああ、今度からそうしよう。だが、今日は許せ」
兄はお城にいるからかいつもの気安い話し方ではなく、貴族の嫡子としての話し方だった。そんな会話をしながら歩いて行く。本当に顔を見に来ただけのようで、私の額にキスを落とすと「お昼に行く」と言って、途中にあった曲がり角を曲がって行ってしまった。……キスを落としたジークハルト様に、その場にいた騎士や侍従、女官が驚いていたけれど。
相変わらず鬱陶しい視線だと思うものの、昨日婚約発表をしたからなのか、あからさまに窺うような視線はない。が、それでもやはり鬱陶しいことには変わりはないので、内心溜息をついている間に見覚えのある場所に来て、父と兄が執務をしている部屋に辿り着いた。
中へと入ると書類が山積みになっていて、兄が苦笑していた。
「まあ、昨日一日仕事してないから仕方ないな」
「そうですね」
「じゃあ、今日はこの書類を先に片付けるのを手伝ってくれるかい?」
「わかりました」
ロールキャベツに味を滲みこませたいからと先にキッチンに行くと、風呂敷を外して土鍋を台に置く。それから兄の指示に従って、日付を見ながら急ぎの書類とそうでないものに分けていく。先に急ぎのものを兄に渡し、検算を頼まれたものはそれをやり、手が空いたら先日同様に書類を束ねていった。
そして午前の休憩時間になったころ、会議が終わったらしい父が顔を出した。心なしか疲れたような顔をしていたので、チョコレートを添えてコーヒーを出す。
「ありがとう、実花」
「どういたしまして。疲れているように見えるのですけど、大変だったのですか?」
「大変と言えば大変だった。もうじき月末の決算になるから、その報告や問題がないかを話し合ったからね」
そういった話を聞くと、会社の経営かと思う。規模は違うしやり方も違うだろうけれど、きっと会社経営と同じなのだと思う。……実際はどうなのかわからないけれど。然り気無く父はどのような職についているのか聞くと、財務大臣をしていると聞いて驚いた。
「まさかそんなに重要な地位にいるとは思いませんでした」
「私だってこんなに重要な地位になんてつきたくなかったが、前陛下と前宰相殿に任命されてしまったからね……。こればかりは仕方がない」
「宰相や外交担当よりはマシだよね」
「確かにな」
宰相とは国の頭脳だから、余計に大変なのだろう。父も兄も経営に優れているけれど、二人が言うには領地ならばともかく、国となると無理だと言っていた。……私にしてみれば領地ですら大変なのだけれど、ハイスペックな二人からすれば、会社経営と変わらない感覚で領地経営をしているのだろうということが垣間見えた。
休憩も終わり仕事を再開、集中してやっているとあっという間に時間が過ぎて行く。時計を見て土鍋を火にかけて温め直し、お湯を沸かし始めるとすぐにお昼の鐘が鳴ったので、テーブルの上を拭いてランチョンマットや食器など用意しているとノックの音がした。私が準備中だったからなのか兄が対応に出てくれて、中に入って来たのはジークハルト様と昨日紹介してくれると言っていた騎士の方と侍従の方がいた。
自己紹介などは食事をしながらでもできるからとジークハルト様が仰ってくださったので、まずは何を飲むかだけ先に聞き、テーブルのセッティングをする。そして真ん中にロールキャベツが入っている土鍋を二つと他のおかず、パンやおむすびなどをテーブルに乗せ、それぞれ取り分けていく。
最後に飲み物を配ると全員でいただきますをして食べ始めた。
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