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婚約編
教育者が決まったようです★
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膝からおろしてくれないジークハルト様に「庭が見たいから」と膝からおろしてもらう。私をエスコートしたかったみたいだけれど、父に「ご相談したいことがあります」と言われ、しぶしぶソファーに座った。
私はと言えば紅茶とコーヒーを全員分用意して配り、私とアレイさんとシェーデルさんのぶんをトレーに用意してアレイさんにそれを持ってもらい、シェーデルさんのエスコートで庭に出ると窓際の椅子に座って庭を眺めた。
今日の空は曇天で朝よりも風が冷たい。そのせいで古傷が痛む。
《ミカ、紅茶でいいか?》
「はい。お二人も座ってください。またチョコレートを出しますから」
チョコレートの味を気に入ったらしい二人が笑顔を溢す。そんな二人にチョコレートを渡すとカップを持ち上げて紅茶を飲み、その温かさが喉を通り抜けていって思わずほうっ、と息を吐く。
《ミカ、寒いからこれを羽織っておれ》
「ありがとうございます」
いつの間に持って来たのか、アレイさんが肩にかけてくれたのはストールだ。その気遣いにお礼を言い、チョコを摘んでから紅茶を飲む。
曇天なのに外に出て来たのは失敗だっただろうか……そう思いながら三人でしばらく雑談をしていると、窓から顔を出した父に呼ばれた。
「実花、話があるから中に入りなさい」
「わかりました」
『もう、さっき来たばっかなのに』
《仕方ないじゃろうが。ほれ、紅茶を飲んでさっさと中に行くぞ》
『はいはい。わかってるわよ』
残っていた紅茶を飲み干し、カップを片付けて中へと入る。ジークハルト様の隣に座るように言われて座ると、対面に座っている父を見た。兄は父の隣にいてコーヒーを飲んでいる。
「実花、王子妃教育のことだが、殿下の母上である王太后様がしてくださるそうだ」
「え……? 王太后様が、ですか?」
「ああ。実花も会ったことはないだろう? それに王族に嫁ぐことになるから、私としても有り難い話ではある」
父の言葉に驚く。まさか王太后様自ら教育してくださるとは思ってもみなかったのだ。まだ夜会などに出ていないので他の王族や貴族たちに会ったこともなければ、友人と呼べる人もいないのでそこは仕方がない。友人に関しては、年齢的にも常識が疎いということを踏まえてもできるとは思っていないので、そこはできたら考えようと思っている。
「本当にいいのでしょうか」
「母上自ら言い出したことだから、何も問題はない」
「……お父様はどうお考えでしょうか」
「私もこれ以上の教育者はいないと思っている。だからのちほど手紙を書き、殿下にお願いするつもりだ」
「俺もそれを承知している」
二人が納得しているなら問題はないのだろう。
「そうですか……。お父様やジークハルト様がそう仰るのであれば、お願いいたします」
「わかった」
そんな会話をしてジークハルト様を見ると、彼はいつの間にかドッグタグを首からぶら提げていた。それが嬉しくて、心が温かくなる。
「ジークハルト様、タグは服の中へとしまっておいたほうがいいですよ」
「そうか。ではそうしよう」
騎士服の襟を緩め、タグを中にしまうジークハルト様。それを見てから父を見ると、こちらを見ながらコーヒーを飲んでいた。おやつ代わりにとインベントリからクッキーを出し、お皿に少しだけ乗せると残りをジークハルト様に渡した。
「ミカ、これは?」
「午後の休憩の時に、皆様と一緒に召し上がってください」
「む……アルはともかく、他の人間にこれを渡すのは嫌だ」
「でしたら、お兄様と召し上がってください」
「そうしよう」
子どもっぽいことを仰るなあと思いつつコーヒーや紅茶のおかわりを淹れると、父がまた話し出した。
「それと、婚約発表の日にちだが、十日後になった。その前に陛下との謁見があるから、その時はまた知らせる」
「はい」
「婚約発表の時のドレスは俺が贈ることにする」
「よろしいのですか?」
「ああ。是非ミカに着てほしい」
「はい。私も楽しみにしています」
どのようなドレスを贈ってくださるのだろうか、少し楽しみだと思いジークハルト様に微笑むと、彼も微笑んでくれた。ほんの些細な出来事であるのに、嬉しく感じる。
しばらく雑談して、そろそろ休憩時間も終わりだというのでジークハルト様と兄は部屋から出ていった。仕事が終わるころ、採寸をする女官数名と一緒に来るからと言葉を残して。
午後は父の仕事を手伝い、手が空いたら置きっ放しの書類を片付ける。この世界には書類整理用のバインダーなどはないので、専用の針と革紐で書類を束ねているそうだ。
父に聞きながら表紙を作り、わかりやすいように背表紙も作ってそこにどんな書類なのか簡潔に書いていく。このあたりは秘書の仕事をしていた時と変わらない。
「背表紙も作ってくれたのか。探す手間が省けるから助かる」
「どういたしまして」
「あと、これを検算してくれるか?」
「はい」
できたものから父に確認してもらい、室内にある棚に乗せて行く。その作業の合間に父と一緒に計算をしていると、ノックの音がしたので席を立つ。その間に父が返事をするとジークハルト様だったので扉を開けると、ジークハルト様だけではなく女官が三人一緒にいたので中へと通した。
「アイゼン、先ほど言っていた女官だ。ミカの採寸をしてもいいだろうか」
「ほとんど終わっていますので、構いませんよ」
「そうか。カチヤ、頼む」
「畏まりました。お嬢様、こちらへどうぞ」
「はい。あ、その前にご挨拶を。私はミカ・モーントシュタインと申します。よろしくお願いいたします」
呼ばれたので移動する前にスカートを摘んで先に自己紹介をすると、驚いた顔をしたあとで微笑んでくれた。キッチンがある扉とは別にある扉に案内されると、中にはベッドやクローゼットがあった。多分仮眠室なのだろう。まさかこんな部屋があるとは思っていなくて聞いたら、部署や人によっては忙しい時は自宅に帰らず、こういった部屋で寝泊りする方がいるそうだ。
そして改めて自己紹介をしてくれた女官は、カチヤさん、リタさん、イーリスさんと仰るそうだ。三人ともジークハルト様付きの女官だそうだ。
「ではミカ様、採寸させていただきますので、ドレスを脱がさせていただきますね」
「申し訳ありません。お願いいたします」
さすがに一人でドレスを脱ぐことはできないので、手伝ってくれるのは有り難い。
コルセットをしていないことに驚かれたり、「細い腰ですわ!」とか言われても信じられなかった。だって私は標準内ではあるけれど少し太めだし……と思っていたのだけれど……もしかして、こちらの世界と地球では細さの基準が違うのだろうか。
帰ったら自分で測ってみようと考えながら、彼女たちに言われるがままに手を広げたり背筋を伸ばしたりした。そして足も含めた採寸の全てが終わり、またドレスを着せてくれた。
「ありがとうございます」
「とんでもございません」
着せてくれたことにお礼を言うと、彼女たちは嬉しそうに微笑んでくれた。
お礼を言っただけで嬉しそうにするなんて……他の家の貴族女性はお礼を言ったりしないのだろうか。
そんな疑問が頭をもたげたものの、既に扉の外に出てしまったので聞くことができなかった。このあたりは帰ってからアイニさんをはじめとした家の侍女に聞けばいいかと思い、父のところへ戻る。女官たちはジークハルト様の指示で部屋から出て行った。そう言えばジークハルト様に飲み物を用意していないと何が飲みたいか聞けば、すぐに戻るからいらないと言うので用意せず、彼に手招きされたので隣に座るととんでもないことを言われた。
「実花、殿下の執務室もこの部屋と同じように片付けてほしいと言われたんだが……どうする?」
「どうすると仰られましても……。この部屋もまだ全て片付いていませんよね? それに、私が行っても問題ないのでしょうか」
女性が仕事をしていいのかとか、機密事項の書類があるのではないかとか、まだ婚約を発表していないのにいいのかという意味を込めて聞く。
「今すぐと言うわけではない。この部屋が片付き、俺とミカの婚約が発表されてからだ。そうでないと女性は執務室に入れないからな」
「そうなのですね」
それをわかってくれているようで、簡単にではあるけれど説明してくれたジークハルト様曰く、父の執務室にしろジークハルト様の執務室にしろ、当主やジークハルト様の許可がないと貴族女性は室内に入ることができないのだという。特に王族の執務室は厳重だし扉の前に近衛騎士がいるから、約束がない限り中に入れてもらえないそうだ。
「どうする?」
「俺としては是非手伝ってほしいのだが……」
「私にできるでしょうか」
「この部屋を見た限り問題ないし、指示は俺かアルが出すことにするから」
父を見れば頷いているので、ジークハルト様の話に納得しているのだろう。
「畏まりました。よろしくお願いいたします」
「ああ、こちらこそ頼む。無理を言ってすまない」
「娘がお役に立てるのであれば、構いません。実花、粗相のないようにな」
「はい。ご迷惑をかけないよう頑張ります。いろいろ教えてくださいませ、ジークハルト様」
まさかジークハルト様と一緒に仕事ができるとは思っていなかったので、少しだけ嬉しくなる。それにまだまだ文字やこの世界のことなど勉強中の身だからそれを教えてほしくて「いろいろ教えてほしい」と言ったのだけれど……なぜかジークハルト様は耳や頬を赤くして固まったように私を見ているし、父や兄、アレイさんやシェーデルさんは生温い視線を向けてくるし、そのことに首を傾げてしまう。
「あの、ジークハルト様?」
「あ、ああ。そうだな、いろいろと教えよう」
不安になって声をかけると我に返ったように動きだし、笑みを浮かべると私の頬にキスをした。
「その時を楽しみにしている」
さらに笑みを深めて席を立つと、ジークハルト様は「まだ仕事が残っているから」と部屋を出て行った。
護衛中のヒト型のシェーデルとアレイ
私はと言えば紅茶とコーヒーを全員分用意して配り、私とアレイさんとシェーデルさんのぶんをトレーに用意してアレイさんにそれを持ってもらい、シェーデルさんのエスコートで庭に出ると窓際の椅子に座って庭を眺めた。
今日の空は曇天で朝よりも風が冷たい。そのせいで古傷が痛む。
《ミカ、紅茶でいいか?》
「はい。お二人も座ってください。またチョコレートを出しますから」
チョコレートの味を気に入ったらしい二人が笑顔を溢す。そんな二人にチョコレートを渡すとカップを持ち上げて紅茶を飲み、その温かさが喉を通り抜けていって思わずほうっ、と息を吐く。
《ミカ、寒いからこれを羽織っておれ》
「ありがとうございます」
いつの間に持って来たのか、アレイさんが肩にかけてくれたのはストールだ。その気遣いにお礼を言い、チョコを摘んでから紅茶を飲む。
曇天なのに外に出て来たのは失敗だっただろうか……そう思いながら三人でしばらく雑談をしていると、窓から顔を出した父に呼ばれた。
「実花、話があるから中に入りなさい」
「わかりました」
『もう、さっき来たばっかなのに』
《仕方ないじゃろうが。ほれ、紅茶を飲んでさっさと中に行くぞ》
『はいはい。わかってるわよ』
残っていた紅茶を飲み干し、カップを片付けて中へと入る。ジークハルト様の隣に座るように言われて座ると、対面に座っている父を見た。兄は父の隣にいてコーヒーを飲んでいる。
「実花、王子妃教育のことだが、殿下の母上である王太后様がしてくださるそうだ」
「え……? 王太后様が、ですか?」
「ああ。実花も会ったことはないだろう? それに王族に嫁ぐことになるから、私としても有り難い話ではある」
父の言葉に驚く。まさか王太后様自ら教育してくださるとは思ってもみなかったのだ。まだ夜会などに出ていないので他の王族や貴族たちに会ったこともなければ、友人と呼べる人もいないのでそこは仕方がない。友人に関しては、年齢的にも常識が疎いということを踏まえてもできるとは思っていないので、そこはできたら考えようと思っている。
「本当にいいのでしょうか」
「母上自ら言い出したことだから、何も問題はない」
「……お父様はどうお考えでしょうか」
「私もこれ以上の教育者はいないと思っている。だからのちほど手紙を書き、殿下にお願いするつもりだ」
「俺もそれを承知している」
二人が納得しているなら問題はないのだろう。
「そうですか……。お父様やジークハルト様がそう仰るのであれば、お願いいたします」
「わかった」
そんな会話をしてジークハルト様を見ると、彼はいつの間にかドッグタグを首からぶら提げていた。それが嬉しくて、心が温かくなる。
「ジークハルト様、タグは服の中へとしまっておいたほうがいいですよ」
「そうか。ではそうしよう」
騎士服の襟を緩め、タグを中にしまうジークハルト様。それを見てから父を見ると、こちらを見ながらコーヒーを飲んでいた。おやつ代わりにとインベントリからクッキーを出し、お皿に少しだけ乗せると残りをジークハルト様に渡した。
「ミカ、これは?」
「午後の休憩の時に、皆様と一緒に召し上がってください」
「む……アルはともかく、他の人間にこれを渡すのは嫌だ」
「でしたら、お兄様と召し上がってください」
「そうしよう」
子どもっぽいことを仰るなあと思いつつコーヒーや紅茶のおかわりを淹れると、父がまた話し出した。
「それと、婚約発表の日にちだが、十日後になった。その前に陛下との謁見があるから、その時はまた知らせる」
「はい」
「婚約発表の時のドレスは俺が贈ることにする」
「よろしいのですか?」
「ああ。是非ミカに着てほしい」
「はい。私も楽しみにしています」
どのようなドレスを贈ってくださるのだろうか、少し楽しみだと思いジークハルト様に微笑むと、彼も微笑んでくれた。ほんの些細な出来事であるのに、嬉しく感じる。
しばらく雑談して、そろそろ休憩時間も終わりだというのでジークハルト様と兄は部屋から出ていった。仕事が終わるころ、採寸をする女官数名と一緒に来るからと言葉を残して。
午後は父の仕事を手伝い、手が空いたら置きっ放しの書類を片付ける。この世界には書類整理用のバインダーなどはないので、専用の針と革紐で書類を束ねているそうだ。
父に聞きながら表紙を作り、わかりやすいように背表紙も作ってそこにどんな書類なのか簡潔に書いていく。このあたりは秘書の仕事をしていた時と変わらない。
「背表紙も作ってくれたのか。探す手間が省けるから助かる」
「どういたしまして」
「あと、これを検算してくれるか?」
「はい」
できたものから父に確認してもらい、室内にある棚に乗せて行く。その作業の合間に父と一緒に計算をしていると、ノックの音がしたので席を立つ。その間に父が返事をするとジークハルト様だったので扉を開けると、ジークハルト様だけではなく女官が三人一緒にいたので中へと通した。
「アイゼン、先ほど言っていた女官だ。ミカの採寸をしてもいいだろうか」
「ほとんど終わっていますので、構いませんよ」
「そうか。カチヤ、頼む」
「畏まりました。お嬢様、こちらへどうぞ」
「はい。あ、その前にご挨拶を。私はミカ・モーントシュタインと申します。よろしくお願いいたします」
呼ばれたので移動する前にスカートを摘んで先に自己紹介をすると、驚いた顔をしたあとで微笑んでくれた。キッチンがある扉とは別にある扉に案内されると、中にはベッドやクローゼットがあった。多分仮眠室なのだろう。まさかこんな部屋があるとは思っていなくて聞いたら、部署や人によっては忙しい時は自宅に帰らず、こういった部屋で寝泊りする方がいるそうだ。
そして改めて自己紹介をしてくれた女官は、カチヤさん、リタさん、イーリスさんと仰るそうだ。三人ともジークハルト様付きの女官だそうだ。
「ではミカ様、採寸させていただきますので、ドレスを脱がさせていただきますね」
「申し訳ありません。お願いいたします」
さすがに一人でドレスを脱ぐことはできないので、手伝ってくれるのは有り難い。
コルセットをしていないことに驚かれたり、「細い腰ですわ!」とか言われても信じられなかった。だって私は標準内ではあるけれど少し太めだし……と思っていたのだけれど……もしかして、こちらの世界と地球では細さの基準が違うのだろうか。
帰ったら自分で測ってみようと考えながら、彼女たちに言われるがままに手を広げたり背筋を伸ばしたりした。そして足も含めた採寸の全てが終わり、またドレスを着せてくれた。
「ありがとうございます」
「とんでもございません」
着せてくれたことにお礼を言うと、彼女たちは嬉しそうに微笑んでくれた。
お礼を言っただけで嬉しそうにするなんて……他の家の貴族女性はお礼を言ったりしないのだろうか。
そんな疑問が頭をもたげたものの、既に扉の外に出てしまったので聞くことができなかった。このあたりは帰ってからアイニさんをはじめとした家の侍女に聞けばいいかと思い、父のところへ戻る。女官たちはジークハルト様の指示で部屋から出て行った。そう言えばジークハルト様に飲み物を用意していないと何が飲みたいか聞けば、すぐに戻るからいらないと言うので用意せず、彼に手招きされたので隣に座るととんでもないことを言われた。
「実花、殿下の執務室もこの部屋と同じように片付けてほしいと言われたんだが……どうする?」
「どうすると仰られましても……。この部屋もまだ全て片付いていませんよね? それに、私が行っても問題ないのでしょうか」
女性が仕事をしていいのかとか、機密事項の書類があるのではないかとか、まだ婚約を発表していないのにいいのかという意味を込めて聞く。
「今すぐと言うわけではない。この部屋が片付き、俺とミカの婚約が発表されてからだ。そうでないと女性は執務室に入れないからな」
「そうなのですね」
それをわかってくれているようで、簡単にではあるけれど説明してくれたジークハルト様曰く、父の執務室にしろジークハルト様の執務室にしろ、当主やジークハルト様の許可がないと貴族女性は室内に入ることができないのだという。特に王族の執務室は厳重だし扉の前に近衛騎士がいるから、約束がない限り中に入れてもらえないそうだ。
「どうする?」
「俺としては是非手伝ってほしいのだが……」
「私にできるでしょうか」
「この部屋を見た限り問題ないし、指示は俺かアルが出すことにするから」
父を見れば頷いているので、ジークハルト様の話に納得しているのだろう。
「畏まりました。よろしくお願いいたします」
「ああ、こちらこそ頼む。無理を言ってすまない」
「娘がお役に立てるのであれば、構いません。実花、粗相のないようにな」
「はい。ご迷惑をかけないよう頑張ります。いろいろ教えてくださいませ、ジークハルト様」
まさかジークハルト様と一緒に仕事ができるとは思っていなかったので、少しだけ嬉しくなる。それにまだまだ文字やこの世界のことなど勉強中の身だからそれを教えてほしくて「いろいろ教えてほしい」と言ったのだけれど……なぜかジークハルト様は耳や頬を赤くして固まったように私を見ているし、父や兄、アレイさんやシェーデルさんは生温い視線を向けてくるし、そのことに首を傾げてしまう。
「あの、ジークハルト様?」
「あ、ああ。そうだな、いろいろと教えよう」
不安になって声をかけると我に返ったように動きだし、笑みを浮かべると私の頬にキスをした。
「その時を楽しみにしている」
さらに笑みを深めて席を立つと、ジークハルト様は「まだ仕事が残っているから」と部屋を出て行った。
護衛中のヒト型のシェーデルとアレイ
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