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本編 2
カルティス領へ行こう 3
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馬車の移動だと一週間前後だそうだけど、空を飛んで二時間。やってきました、カルティス領。
王都からみて東南東になるのかな? やや南寄りの東にある領地で、空からみた限り、いわゆる盆地のような地形が特徴の領地みたい。山自体はめっちゃ高いというわけではないが、それでもそこそこ高い場所に領都がある。
小さいながらもダンジョンがあるようで、賑わっている町があるんだとか。
領都の門のところでカールさん、レイラさんと待ち合わせをしていたので、二人が来るまでエアハルトさんやアレクさんにカルティス領の話を聞いていた。壁の外に広がっているのは特産品のキャベツ畑と、黄金色の穂を垂れる麦畑。
今日は珍しく雨季の合間の晴れで、どちらの畑にも人がいるから、収穫しているんだろう。
見えているのはそれくらいで、他にどんな野菜があるんだろうねと話していたら、レイラさんたちがやってきた。
「お義兄様、お義姉さま。ようこそいらっしゃいました!」
「兄上、こちらからどうぞ」
門を警備していた人に指示を出し、私たちを通してくれるカールさん。当然のことながら、白水晶にタッチしている。従魔たちのぶんはギルドカードを見せて対応し、大所帯でぞろぞろと門を抜けると、真っ直ぐに延びた道があり、両脇には店舗が並んでいた。
「お~、活気があって凄いです!」
「でしょう? 数年前に、新たにダンジョンができましたの。そのおかげでもありますわ」
「そうなんですね」
そういえば、ダンジョンは国や大陸によって違うと、アントス様が言ってたなあと思い出す。一定の数から増えない国や大陸もあれば、勝手に増える場合もあるんだとか。
そんな神様情報は口が裂けても言えないので、今はお口チャックだよ。
で、ダンジョンなんて聞いたら従魔たちが騒ぐかと思ったらそんなことはなく、キョロキョロと周囲を見回している。しかもロキとレンの眉間に皺が寄っていることから、なにかしらの悪意が近づいているのかなあ……なんて思っていたら、ラズとスミレが動く。
<ここもスリがいるの?>
<多スギ!>
ブツブツと文句を言いながらも動いた二匹は、簀巻きにした人を転がしている。その数、五。たしかに多すぎるかも!
そんなことを考えていたらカールさんとレイラさんが転がされた人たちを見て固まったあと、血の気を失ったように真っ青になった。それでもさすが領主をしているだけあり、我に返ったレイラさんが首から下げていた笛を鳴らす。
すると、甲高い音がしてすぐ、聞きつけたらしい騎士服を着た集団が現れた。
「これは領主様。笛の音がしましたが、どうされました?」
「スリだそうですわ。すぐにこちらの方々を詰め所に」
私たち全員が下を向いていたおかげでわかったのだろう。騎士服を着た人たちはすぐに動き、簀巻きにされている男たちを立たせて引きずっていく。それを見送ったあと、私たちも移動を再開する。
その歩きながらの会話で、フルドの町に行ったときのように私が狙われたわけではないけど、それでも一気に五人は多い気がする。その理由をエアハルトさんが尋ねると、新たにダンジョンができた弊害だと聞かされ、エアハルトさんとアレクさん、ナディさんがなんとも言い難い表情をして、「あぁ……」と溜息をついた。
どういうことか聞くと、新たにダンジョンができると、冒険者ランクの高低に限らず、ダンジョンに潜ろうとあちこちから冒険者がやってくる。それ自体は町や村の活性化に繋がったり、ダンジョン攻略に拍車がかかるのでいいことではあるんだけど、中には攻略を失敗して怪我をしたものの、そのまま悪いほうへと転げ堕ちていく人がいるのも事実。
そういった人たちや、人が集まるとそこに目をつけた犯罪組織が集まってきたりと、必ずしもいいことばかりではないんだとか。特に新たにダンジョンができたり発見されたりした場合、ある程度の攻略と人の流れが落ち着くまでは、今回のようなことはまま起きることなんだとか。
それはそれで大変ではあるんだけど、歴史が長い国ともなれば対処法やマニュアルができているんだそうだ。
アイデクセはそれなりに長い国なのでマニュアルがあり、今回は国から派遣されてきた騎士たち指導の下、店舗を含めた住民たちに笛を配り、もし喧嘩を見たり今回のようにスリに巻き込まれたら笛を鳴らすようにと徹底されているんだとか。相手は戦う手段を持つ冒険者たちなので、けして仲裁に入ることはしないようにと厳命されている。
だからこそ、その笛の音を聞いたら、数人で巡回行動をしている騎士たちが駆け付けるという仕組みを作り上げ、住民たちの安全を護っているんだって。
「凄いですね」
「ええ。わたくしどもも助かっておりますの」
「荒事に関しては、騎士たちや兵士たちの仕事でもありますしね。住民を護るという意識があるからなのか、みんな誇りをもって仕事をしているんだ」
「そうなんですね」
誇りをもって仕事をするのはいいことだよね~、なんて歩きながら話しているうちに、領主館に着く。領主館は小高い丘の上に建っており、背後はなだらかな山裾のように平原が広がっている。
まあ、平原といってもところどころに畑があるようで、黄金色が広がっている場所や土がむき出しになっている場所もあるし、木造の小屋もあった。もしかしたら、シュピナート領のように、実験農場みたいなのがあるのかもしれない。
そこはあとで聞いてみるとして、今は目の前にある領主館だ。
レイラさんによると、元は伯爵家だったので家自体はそこそこ大きい。とはいえ、子爵家の家としては大きい部類なんだそう。
まあ、そこはしょうがないよね……レイラさんとカールさんがやらかした結果なわけだし。
それでも、今は当時のことを反省し、真面目に頑張ろうとしているという。
そんな領主館の大きさは、ガウティーノ侯爵家よりも二回りほど小さい感じかな? ……庶民の感覚からすれば、豪邸で間違いない大きさだけどね!
貴族の家って大きいのしかないの!? なんて思っていると、「こちらにどうぞ」とレイラさんに促され、お屋敷の中へと入っていく。案内されたのは一階にある応接室で、そこにはレイラさんによく似た女性と、目元がレイラさんにそっくりな男性がいた。
王都からみて東南東になるのかな? やや南寄りの東にある領地で、空からみた限り、いわゆる盆地のような地形が特徴の領地みたい。山自体はめっちゃ高いというわけではないが、それでもそこそこ高い場所に領都がある。
小さいながらもダンジョンがあるようで、賑わっている町があるんだとか。
領都の門のところでカールさん、レイラさんと待ち合わせをしていたので、二人が来るまでエアハルトさんやアレクさんにカルティス領の話を聞いていた。壁の外に広がっているのは特産品のキャベツ畑と、黄金色の穂を垂れる麦畑。
今日は珍しく雨季の合間の晴れで、どちらの畑にも人がいるから、収穫しているんだろう。
見えているのはそれくらいで、他にどんな野菜があるんだろうねと話していたら、レイラさんたちがやってきた。
「お義兄様、お義姉さま。ようこそいらっしゃいました!」
「兄上、こちらからどうぞ」
門を警備していた人に指示を出し、私たちを通してくれるカールさん。当然のことながら、白水晶にタッチしている。従魔たちのぶんはギルドカードを見せて対応し、大所帯でぞろぞろと門を抜けると、真っ直ぐに延びた道があり、両脇には店舗が並んでいた。
「お~、活気があって凄いです!」
「でしょう? 数年前に、新たにダンジョンができましたの。そのおかげでもありますわ」
「そうなんですね」
そういえば、ダンジョンは国や大陸によって違うと、アントス様が言ってたなあと思い出す。一定の数から増えない国や大陸もあれば、勝手に増える場合もあるんだとか。
そんな神様情報は口が裂けても言えないので、今はお口チャックだよ。
で、ダンジョンなんて聞いたら従魔たちが騒ぐかと思ったらそんなことはなく、キョロキョロと周囲を見回している。しかもロキとレンの眉間に皺が寄っていることから、なにかしらの悪意が近づいているのかなあ……なんて思っていたら、ラズとスミレが動く。
<ここもスリがいるの?>
<多スギ!>
ブツブツと文句を言いながらも動いた二匹は、簀巻きにした人を転がしている。その数、五。たしかに多すぎるかも!
そんなことを考えていたらカールさんとレイラさんが転がされた人たちを見て固まったあと、血の気を失ったように真っ青になった。それでもさすが領主をしているだけあり、我に返ったレイラさんが首から下げていた笛を鳴らす。
すると、甲高い音がしてすぐ、聞きつけたらしい騎士服を着た集団が現れた。
「これは領主様。笛の音がしましたが、どうされました?」
「スリだそうですわ。すぐにこちらの方々を詰め所に」
私たち全員が下を向いていたおかげでわかったのだろう。騎士服を着た人たちはすぐに動き、簀巻きにされている男たちを立たせて引きずっていく。それを見送ったあと、私たちも移動を再開する。
その歩きながらの会話で、フルドの町に行ったときのように私が狙われたわけではないけど、それでも一気に五人は多い気がする。その理由をエアハルトさんが尋ねると、新たにダンジョンができた弊害だと聞かされ、エアハルトさんとアレクさん、ナディさんがなんとも言い難い表情をして、「あぁ……」と溜息をついた。
どういうことか聞くと、新たにダンジョンができると、冒険者ランクの高低に限らず、ダンジョンに潜ろうとあちこちから冒険者がやってくる。それ自体は町や村の活性化に繋がったり、ダンジョン攻略に拍車がかかるのでいいことではあるんだけど、中には攻略を失敗して怪我をしたものの、そのまま悪いほうへと転げ堕ちていく人がいるのも事実。
そういった人たちや、人が集まるとそこに目をつけた犯罪組織が集まってきたりと、必ずしもいいことばかりではないんだとか。特に新たにダンジョンができたり発見されたりした場合、ある程度の攻略と人の流れが落ち着くまでは、今回のようなことはまま起きることなんだとか。
それはそれで大変ではあるんだけど、歴史が長い国ともなれば対処法やマニュアルができているんだそうだ。
アイデクセはそれなりに長い国なのでマニュアルがあり、今回は国から派遣されてきた騎士たち指導の下、店舗を含めた住民たちに笛を配り、もし喧嘩を見たり今回のようにスリに巻き込まれたら笛を鳴らすようにと徹底されているんだとか。相手は戦う手段を持つ冒険者たちなので、けして仲裁に入ることはしないようにと厳命されている。
だからこそ、その笛の音を聞いたら、数人で巡回行動をしている騎士たちが駆け付けるという仕組みを作り上げ、住民たちの安全を護っているんだって。
「凄いですね」
「ええ。わたくしどもも助かっておりますの」
「荒事に関しては、騎士たちや兵士たちの仕事でもありますしね。住民を護るという意識があるからなのか、みんな誇りをもって仕事をしているんだ」
「そうなんですね」
誇りをもって仕事をするのはいいことだよね~、なんて歩きながら話しているうちに、領主館に着く。領主館は小高い丘の上に建っており、背後はなだらかな山裾のように平原が広がっている。
まあ、平原といってもところどころに畑があるようで、黄金色が広がっている場所や土がむき出しになっている場所もあるし、木造の小屋もあった。もしかしたら、シュピナート領のように、実験農場みたいなのがあるのかもしれない。
そこはあとで聞いてみるとして、今は目の前にある領主館だ。
レイラさんによると、元は伯爵家だったので家自体はそこそこ大きい。とはいえ、子爵家の家としては大きい部類なんだそう。
まあ、そこはしょうがないよね……レイラさんとカールさんがやらかした結果なわけだし。
それでも、今は当時のことを反省し、真面目に頑張ろうとしているという。
そんな領主館の大きさは、ガウティーノ侯爵家よりも二回りほど小さい感じかな? ……庶民の感覚からすれば、豪邸で間違いない大きさだけどね!
貴族の家って大きいのしかないの!? なんて思っていると、「こちらにどうぞ」とレイラさんに促され、お屋敷の中へと入っていく。案内されたのは一階にある応接室で、そこにはレイラさんによく似た女性と、目元がレイラさんにそっくりな男性がいた。
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