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本編 2
アイデクセ国の出生率
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今日も今日とて、マルクさんが遊びに来てくれた。そのタイミングで私が休憩がてら様子を見に来たんだけど、隣の道具屋をしている魔神族のお姉様から、気になることを言われたのだ。
「そういえば、マルクさん」
「……」
返事をしないマルクさん。あ~、これはおじいちゃんと呼ばないと返事してくれないやつだと察する。
「マルクおじいちゃん」
「なんじゃ?」
「聞きたいことがあるんです」
「儂でわかることならば」
「おじいちゃんが一番適任なんです」
そう言いつつ、この国というか、この世界の出生率を聞いてみた。
隣のお姉様が言っていたのは、「子沢山なのねぇ」だ。確かに四人は多いかもしれないけど、ガウティーノ家も四人兄弟だ。
不思議だったんだよね、子沢山という言い方が。だからマルクさんに聞いたんだけど。
マルクさんいわく、魔神族に限らず、長命種になるほど子どもの出生率は高くないという。だいたい、短くて十年か二十年間隔で一人産み、長いと五十年なんだとか。
しかも、多くて三人、たいていは一人か二人しか産めない、らしい。
「え? でも、ガウティーノ家は四兄弟ですよ?」
「ガウティーノ家が特別なんじゃ。いや、ガウティーノ家というより、騎士の家系というべきかの」
「それは、どうしてですか?」
「今は平和な世の中じゃから関係ないが、昔は魔物の数も多かった。それに加えて戦乱があったからのう。戦乱があれば親兄弟は戦に駆り出される。もし後継者が駆り出されて戦死すると、次が必要になってくるからの」
「あ~……」
「言い方は悪いが、予備がたくさん必要だったんじゃ。そのため、割と短期間で産み育てることがおおくてのう」
そういう時代が続けば、子も親に倣って子沢山になる。それを繰り返しているうちに血族の血に刻まれたんだろうというマルクさん。
つまり、いつの間にか遺伝子に組み込まれたってことなんだろうね。
とはいえ、それは遥か彼方のことであって、今は当時に比べたら魔物は少ないし、北大陸以外は戦乱もない。なので、病気や事故にあったことを考えて一人か二人産んだら終わりというのが主流の考え方らしい。
それでも、現在も騎士の家系は多産の家が多いし、多産の家系同士で結婚すると、どうしても出生率は高くなる。なので、常に一人しか子どもができない家に嫁いだり、婿に行ったりしている国もあるんだとか。
アイデクセ国はそこそこの出生率でちょうどいい人口だけど、他国だともっと少ないんだとか。
「そうなんですね」
「とはいえ、わりと長命種になる獣人族の中には、一回の出産で双子や三つ子を産む種族もおあるからのう。一概にこうだと言えんのが現状じゃな」
「なるほど~」
種族に寄りけりなんだね。さすがは宮廷医師だったマルクさんだ。
他にも、ドラゴン族のように卵を産む種族で天使のような羽根人という種族がいるそうなんだけど、彼らも卵を産んだあと、ドラゴン族のように両親の魔力を与えて成長させるんだって。
本当にいろんな種族がいるんだなと勉強になった。
「他にはあるかの?」
「いえ、特には」
とりあえず聞きたいことも聞けたしと二人してお茶を飲みつつお菓子を頬張っていると、小さくなって子どもたちを見守っていたロックが声をあげる。
<リンママ! アンナがうんちした!>
「あーーん!」
ロックが叫んだあと、室内にアンナの鳴き声が響く。ほんと、ロックだけじゃなくて他の従魔たちがおしっことうんちを教えてくれるから、本当に助かっている。
「おやおや。どれ、儂がおむつを変えようかのう」
「え、でも……」
「よいよい。家でもやっているからの。手慣れたもんじゃて」
お茶を飲み切ったマルクさんは、そう言って席を立つと、おむつを置いている棚に向かう。そこからおむつとおしりを拭くための濡れている布、父が開発したベビーパウダーを持ち、アンナのところへ向かう。
マルクさんを追いかけてアンナのところへ行くと、汚れたおむつをはがし、濡れた布でおしりなどを優しく丁寧に拭いたあと、ベビーパウダーをはたいてから新しいおむつをアンナにつけるマルクさん。
その手慣れた手つきが、家でもやっているという事実が伺える。
「ほれ、終わりじゃ」
「あ~い! じー、あ~と~」
「よいよい。……リン、アンナはだいぶ言葉を覚えてきたのう」
「そうなんですよ~。これもおじいちゃんやみなさん、従魔たちが話しかけてくれるおかげですね」
本当にそう思う。もちろん私もエアハルトさんも子どもたちに話しかけているけど、一人よりも二人、二人よりも三人と、人数が多くなっていくごとに聞く機会も増えるし、話もしてくれるようになった子どもたち。
アンナとマルクさんが話しているのを見て、このまま元気に育ってくれるといいなあと思った。
「そういえば、マルクさん」
「……」
返事をしないマルクさん。あ~、これはおじいちゃんと呼ばないと返事してくれないやつだと察する。
「マルクおじいちゃん」
「なんじゃ?」
「聞きたいことがあるんです」
「儂でわかることならば」
「おじいちゃんが一番適任なんです」
そう言いつつ、この国というか、この世界の出生率を聞いてみた。
隣のお姉様が言っていたのは、「子沢山なのねぇ」だ。確かに四人は多いかもしれないけど、ガウティーノ家も四人兄弟だ。
不思議だったんだよね、子沢山という言い方が。だからマルクさんに聞いたんだけど。
マルクさんいわく、魔神族に限らず、長命種になるほど子どもの出生率は高くないという。だいたい、短くて十年か二十年間隔で一人産み、長いと五十年なんだとか。
しかも、多くて三人、たいていは一人か二人しか産めない、らしい。
「え? でも、ガウティーノ家は四兄弟ですよ?」
「ガウティーノ家が特別なんじゃ。いや、ガウティーノ家というより、騎士の家系というべきかの」
「それは、どうしてですか?」
「今は平和な世の中じゃから関係ないが、昔は魔物の数も多かった。それに加えて戦乱があったからのう。戦乱があれば親兄弟は戦に駆り出される。もし後継者が駆り出されて戦死すると、次が必要になってくるからの」
「あ~……」
「言い方は悪いが、予備がたくさん必要だったんじゃ。そのため、割と短期間で産み育てることがおおくてのう」
そういう時代が続けば、子も親に倣って子沢山になる。それを繰り返しているうちに血族の血に刻まれたんだろうというマルクさん。
つまり、いつの間にか遺伝子に組み込まれたってことなんだろうね。
とはいえ、それは遥か彼方のことであって、今は当時に比べたら魔物は少ないし、北大陸以外は戦乱もない。なので、病気や事故にあったことを考えて一人か二人産んだら終わりというのが主流の考え方らしい。
それでも、現在も騎士の家系は多産の家が多いし、多産の家系同士で結婚すると、どうしても出生率は高くなる。なので、常に一人しか子どもができない家に嫁いだり、婿に行ったりしている国もあるんだとか。
アイデクセ国はそこそこの出生率でちょうどいい人口だけど、他国だともっと少ないんだとか。
「そうなんですね」
「とはいえ、わりと長命種になる獣人族の中には、一回の出産で双子や三つ子を産む種族もおあるからのう。一概にこうだと言えんのが現状じゃな」
「なるほど~」
種族に寄りけりなんだね。さすがは宮廷医師だったマルクさんだ。
他にも、ドラゴン族のように卵を産む種族で天使のような羽根人という種族がいるそうなんだけど、彼らも卵を産んだあと、ドラゴン族のように両親の魔力を与えて成長させるんだって。
本当にいろんな種族がいるんだなと勉強になった。
「他にはあるかの?」
「いえ、特には」
とりあえず聞きたいことも聞けたしと二人してお茶を飲みつつお菓子を頬張っていると、小さくなって子どもたちを見守っていたロックが声をあげる。
<リンママ! アンナがうんちした!>
「あーーん!」
ロックが叫んだあと、室内にアンナの鳴き声が響く。ほんと、ロックだけじゃなくて他の従魔たちがおしっことうんちを教えてくれるから、本当に助かっている。
「おやおや。どれ、儂がおむつを変えようかのう」
「え、でも……」
「よいよい。家でもやっているからの。手慣れたもんじゃて」
お茶を飲み切ったマルクさんは、そう言って席を立つと、おむつを置いている棚に向かう。そこからおむつとおしりを拭くための濡れている布、父が開発したベビーパウダーを持ち、アンナのところへ向かう。
マルクさんを追いかけてアンナのところへ行くと、汚れたおむつをはがし、濡れた布でおしりなどを優しく丁寧に拭いたあと、ベビーパウダーをはたいてから新しいおむつをアンナにつけるマルクさん。
その手慣れた手つきが、家でもやっているという事実が伺える。
「ほれ、終わりじゃ」
「あ~い! じー、あ~と~」
「よいよい。……リン、アンナはだいぶ言葉を覚えてきたのう」
「そうなんですよ~。これもおじいちゃんやみなさん、従魔たちが話しかけてくれるおかげですね」
本当にそう思う。もちろん私もエアハルトさんも子どもたちに話しかけているけど、一人よりも二人、二人よりも三人と、人数が多くなっていくごとに聞く機会も増えるし、話もしてくれるようになった子どもたち。
アンナとマルクさんが話しているのを見て、このまま元気に育ってくれるといいなあと思った。
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