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番外編

オハナシ

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 それは結婚し、蜜月を終えて帰ってきた翌日のこと。エアハルトさんと話し合い、私たちと従魔たちや眷属たち全員を連れて教会に来た。
 祈りを捧げるとすぐにいつもの神域へと連れていかれたんだけど……なんでニコニコしているのかな? アントス様は!

「いらっしゃい、リンとエアハルト。それから従魔たちも」
「「こんにちは」」

 さっそくとばかりに椅子を勧められて、席に着く。そこにアマテラス様とツクヨミ様もいらしたけど、なぜかとっても申し訳なさそうな顔をしていた。
 どうしてそんな顔をしているんだろう?
 エアハルトさんも同じことを思ったようで、一緒になって首を傾げていたら。

「優衣、ごめんなさい!」
「アントスだけではなく、我々も仕出かしました」
「「は?」」

 土下座とまではいかないけど、椅子に座って深く頭を下げるアマテラス様とツクヨミ様。意味不明です!
 そして居心地が悪いから、頭を上げてください!
 二人が語ったことによると、アントス様の祝福に混じって、アマテラス様をはじめとした日本の神々までもが、私たちの結婚を祝福してくれたのだという。純粋に「おめでとう!」という気持ちの現れだったんだけど、あとになってから「まずいんじゃ……」ということになり、私たちの未来を視たところ、神になってしまっていたそうだ。
 それは従魔たちと眷属たちも同じで、神獣の従魔たちは限りなく神に近い存在となり、眷属たちとエアハルトさんの従魔たちは、神獣にランクアップしてしまったらしい。

「「……」」
「本当にごめんなさい! 迂闊だったわ……」
「アントスだけが祝福したのであれば、神になることはなかったのです。もしくは、ここに来てから祝福すればよかったことでした。アントスの祝福だけであれば、せいぜい、悪運が寄ってこない程度でした」
「けれど、アントスよりも位の高いわたくしたちが、しかも八百万の神すべてが祝福してしまったものだから、一気にアントスと同格の神になってしまったのよ」
「「はあっ!?」」

 アントス様と同格って……問題ありありじゃないですか!

「本当に申し訳なく思っています。ですが、神になったからといって、いきなり神界に来てほしいとは言いません」
「ええ。神といっても優衣とエアハルトは魔神族だもの。先にその人生を終えてから、神として修行しつつ、アントスを支えることになるわね」
「そうなります。僕からすると仲間が増えることになるので嬉しいです」
「その、俺たちはどのような神になるんですか?」
「私も気になります」

 いきなり神様になったって言われても、実感が湧かない。それはエアハルトさんも同じようで、とても困惑した顔をしている。

「そうだね……リンは薬師の神、エアハルトは冒険者の神になるのかな」
「冒険者……」
「薬師……」

 どんな顔をしていいかわからない、微妙な顔になるのはしょうがないよね。

「そうね、アントスの言う通りになるわ。薬師も冒険者も、その職業と言っていいかしら? 彼らを祝福する役目を負うことになるわ」
「ただし、無闇やたらに祝福するのではなく、きちんとお祈りをした方だけに祝福すればいいんです」
「そういうのってわかるものなんですか?」
「ええ、わかりますよ」

 祈りというのは、必ずわかるというアントス様。アマテラス様もツクヨミ様も頷いている。

「いきなり神になったと知らせると混乱が生じますから、あと五百年くらいたったら世界中に知らせましょう」
「「知らせなくていいから!」」
「そういうわけにはいかないわ、優衣。祈りとは、わたくしたちを強くも弱くもするものなの」
「そうですね。地球の神様たちのように長い間信仰がある神様ほど、力がありますから」

 なるほど。
 アマテラス様によると、地球はできた当初からいろんな神々と協力しあって作り上げた結果、人々の祈りが世界中から集まったからこそ上位の存在となったけど、ゼーバルシュはまた十億年ほどしかたっていない、若い星だそうだ。
 だからこそ神の存在が身近で、まだまだ発展途中だとアントス様が話す。
 それがすべてというわけじゃないし世界によって様々だけど、神のルールなどに関しては、人生を終えてから話すという。それは、まだ私たちが神になっただけで、神としての修行をしているわけじゃないからなんだって。
 どんな修業をするのか楽しみだけど、面倒なのはいやだなあ……と思った。
 しばらく雑談したあとで教会に戻してもらうと、エアハルトさんや従魔たちと顔を見合わせ、小さく溜息をつく。今後どうするかはみんなと話し合って決めないといけないけど、私は人生をまっとうしたら、神様になってもいいかな、と思っている。
 そうすれば、エアハルトさんや従魔たち、眷属たちともずっと一緒にいられるから。
 そこは拠点でもある私たちの家に帰ってからまた話し合おう。
 もちろん、アントス様をみんなでボコってから、教会に戻してもらった。

 そして翌日、王様と宰相様に手紙を書いた。
 さすがに、平民の結婚式に来たらダメだと、私にもわかることだから。
 苦言を呈するという形で王様と宰相様に手紙を書き、王様の分は宰相様経由でお願いした。

 その三日後、お二人から返事が来た。

「……やっぱり、団長さんにも叱られたのかあ……」

 護る立場だもんね、団長さんは。それはしょうがないよねえ……。
 まあ、手紙の内容を読む限り、団長さんだけじゃなくて王妃様や他の人からもお説教されたみたいだから、今後は大丈夫だろう。
 というか、二度とあってはならないことだよね。

 結局、これ以降そういったことはなかったんだけど、こういった暴走癖みたいな部分は王太子様にもあったから、血の繋がりを感じた瞬間だった。

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