私の彼は、空飛ぶイルカに乗っている

饕餮

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番外小話

二人のバレンタイン

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 今日はバレンタイン。
 章吾さんと出会ってからいつも離れ離れなバレンタインだったし、チョコとかも遅れて渡したり、早く渡したりしてた。
 だけど今年は結婚して一緒に住むようになった、最初のバレンタインだ。……去年は式の準備でバタバタしてて、渡せなかったしね。
 アラート任務ではニ十四時間勤務して、翌日がお休みなんだと章吾さんが言ってた。それ以上のことは機密になるからと教えてくれなかったけど、待機中は勉強したり本を読んだりしてるって言ってた。あと仮眠を取ったりもするみたい。
 で、章吾さんは昨日からアラート任務だったから、もうすぐ帰ってくる。まあ、帰ってきたらすぐにシャワーを浴びて寝ちゃうから、渡すのは夜になるかなあ。
 なんて考えていたら、章吾さんが帰って来た。

「お帰りさなさい、章吾さん。お風呂沸いてるよ」
「ただいま。ああ、サンキュ、助かる」

 家に着いてホッとしたのか、章吾さんが盛大に溜息をついた。そのままお風呂場に直行し、あがると「寝るから」と言って寝室にこもった。なので、私はこの間にサイトに入った注文を発送する用意をし、それを持って買い物です。起きてくると困るので、テーブルに「買い物に行ってくる」とメモを残し、買い物に行く。
 今日はバレンタインだし、チョコの用意は章吾さんがいない間に作ったから大丈夫だし。何にしようと頭を悩ませ、夕飯は生姜焼きにしようと決めた。
 買い物から帰ってきたら章吾さんはまだ寝ていて、今のうちにと母に頼まれている、実家に卸すレジンのバッグチャームを作ったりしていた。そして三時過ぎ、章吾さんが起きてきた。

「おはよう。眠れた?」
「ああ。バッチリ」

 顔を洗ってくると言った章吾さんを横目に、先にバレンタインチョコを用意する。着替えてきた章吾さんに座るように言うと、後ろ手に隠し持っていたチョコを渡した。

「はい、章吾さん」
「ありがとう。ってなんだこりゃ」

 嬉しそうな顔をしてリボンをほどき、箱を開けた章吾さん。その内容を見て驚いていた。うん、今年は時間もあったから頑張った!

「ブルーインパルスチョコと、F-4チョコ」
「よくこんなの作ったな」

 箱の中身は、六機のブルーインパルスと、現在章吾さんが乗っているF-4戦闘機――ファントムおじいちゃんと呼ばれている戦闘機を模したチョコレートだ。但し平面に絵を描いただけだけど。
 でも、ブルーインパルスはちゃんと1から6まで数字が入っていて、四番機だけが他のよりも一回り大きく作ってある。今はドルフィンライダーじゃないけど、以前は四番機ライダーだったんだから、そこは贔屓するよ。

「それっぽい型を作って、絵を描いただけだし」
「器用なことをするなあ、ひばりは。嬉しいよ、ありがとう」
「どういたしまして。でね、実はもう一つあるんだよね」
「……今度は爺さんかよ」

 そしてチョコと一緒に渡したもう一つの箱は、F-4の立体ビーズストラップだった。難しくて何回も失敗したけど、頑張って作ったよ! もちろん、私のスマホにも同じものが付いている。
 呆れたようにそのストラップを見てたけど、章吾さんはそれにも「ありがとう」と言ってスマホを持ってくると、さっそく付けていた。

 結局章吾さんと私のスマホには、ブルーインパルスの四番機とおじいちゃんがぶら下がっている。

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