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本編
赤面ものでした
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章吾さんのやらかしに恥ずかしい思いをして帰って来た翌日の昼過ぎ、バイトから帰って来ると美沙枝から『SNSで藤田さんが話題になってたよ』と連絡が来た。
「マジか!」
『マジ。しかも、ウィンクまでしたんだって?』
「うう……そうです。しかも、最初に私を見つけたのはキーパーさんで……」
『うん、それもキーパーさんの写真付きで書かれてた! 珍しいことに笑顔だったって』
「うわーん!」
泣きはしないけど、泣き真似をしたら美沙枝に苦笑された。
確かに章吾さんにはメールしたよ? だけど、まさかキーパーさんにまで知られてるなんて思わないじゃないか!
『いいじゃん、ひばりの顔写真が出てたわけじゃないし』
「よくないって! もう、今度行く時は四番機のまん前なんかに行かないんだから!」
『はいはい、そういうことにしといてあげる』
「みさちゃん、何気にひどいよ……」
そんな会話をしていても、本当にひどいと思っているわけじゃない。お互いの性格をわかったうえでやってるおふざけみたいなものなのだ。
「あ、そうだ。入間の航空祭には行けるんだよね?」
『うん。招待状くれるって言ってたんだよね? 本当にいいの?』
「うん。章吾さんから言い出したことだから、大丈夫じゃない?」
『そっか。招待状なんて滅多なことじゃもらえないしね。なら遠慮なく』
「りょうかーい。なら、私が預かっておくね」
『よろしくー』
そんな会話をして、招待状は私が預かることにし、電話を切った。
なんでこんな話をしたかというと、章吾さんとメールのやり取りをしている時、住所を聞かれたからだ。さすがに美沙枝の住所を勝手に教えるわけにはいかなかったから、私の住所を教えて美沙枝の分も送ってもらうことにした。
だけど、それを伝える前に私が寝落ちちゃったもんだから、今朝になって慌てて【ごめんなさい! 寝落ちました!】とメールしたら【だと思った(笑)】ってメールが帰って来て、ちょっと凹んだ。
で、ようやく美沙枝に話ができたから、それを章吾さんにメールで伝える。時間的にお仕事中なので、いつもの如く【返事は夜でいいです】と一言添えた。
そして自分のアクセ作りをしたりお店のものを作ったり発送して来たりして日々を過ごしていると、招待状が届いた。
【招待状が届きました。ありがとう】
章吾さんのお仕事が終わりそうな時間を見てメールを送る。すぐには来ないだろうと思って待っている間にバッグチャームでも作ろうと思っていたら、すぐにメールが返って来て驚いた。
【無事に着いてよかった。当日楽しみにしてる&楽しみにしてて】
そのメールを見て一瞬何のことかわからなかったんだけど、きっと私が来ることが楽しみなのと、航空祭を楽しみにしててって意味だと思って気にもしなかった。
そして十月もあっという間に終わり、十一月三日になった。
今日は入間基地の航空祭であり、章吾さんと出会って一年になる記念日でもある。
「出会って一年かあ……。なんかあっという間の一年だったなあ……」
そんなことをポツリと呟いて、美沙枝の家まで行く。待ち合わせは美沙枝の家で、そこから行くことになっていた。空を見上げると、青空が広がっている。去年のことがあるから、今年は帽子を持って来ていた。
「お待たせ! 行こう、ひばり」
「うん!」
美沙枝と連れ立って基地へと向かう。途中にあった『招待者入口』というところで美沙枝の分と一緒に招待状を出し、案内に従って中へと入る。案内された席はブルーインパルスに近かったけど、目の前ってほどじゃなかった。でも、周囲にはほぼ何もない状態だし椅子もあるから、疲れることはなさそうなのがいい。
で、招待客にはわかるように色分けされたリボンが付けられているらしく、普通のリボンや豪華なリボンまであった。……豪華なのは偉い人用とかなのかな?
それはともかく、美沙枝と一緒にゆっくりしていると、その人の関係者と思われる人がちらほらと来る。美沙枝にも藤堂さんが会いに来て、なにやら楽しそうに話していた。
ていうか、美沙枝はしょっちゅう会えるんだから、わざわざ藤堂さんが会いに来る意味がわかんないんだけど……。
半分八つ当たり気味に二人のラブラブっぷりを見ながら、持って来たり買って来たものを食べたりしてオープニングを待つ。
「今日もいい天気だなー」
十一月にしては暑くなるかもと天気予報で言っていたから、帽子を持って来て正解だった。持って来た帽子を被り、ペットボトルのお茶を一口飲んだ時だった。
「ひばり」
「あ、章吾さん」
声をかけられてそっちを見れば、モスグリーンのツナギを着た章吾さんがいた。あちこちに同じ格好をした人がいるからなのか、章吾さんがドルフィンライダーだと気づいた人はいないみたい。
「来てよかったの? それにあっちの色じゃないんだね」
「さすがにあの色のフライトスーツを着て出てきたら騒ぎになると思ってさ」
隊長さんに少しだけ時間をもらって、私の顔を見に来たらしい。今日は会えないと思っていたから、すっごく嬉しい。ついでにフライトスーツとは何かって聞いたら、「今更か……」と章吾さんに呆れられたんだけど。
「戦闘機に限ったわけじゃなんだが、空自や海自の戦闘機パイロットやヘリパイが着る服、かな。こういうの」
「あー、それをフライトスーツっていうんだ」
自分が着ている服を引っ張りながら説明してくれた章吾さん。なるほど、自衛官が着てるツナギはフライトスーツっていうのか。
そんな話を少しだけした章吾さんは、「あとでまた」と言って私の頭を撫でると、奥のほうに歩いていった。……そこにいる自衛官さん、私を生温い視線で見ないでください……。
そんなことをしている間にいつの間にかオープニングは終わっていて、いろんな催し物が始まった。それを見たりトイレに行ったり、美沙枝と話しながらあれこれしているうちにブルーインパルスが飛ぶ時間となった。
「……やっぱいい声の人だなあ」
「初めて聞いた! ファンサイトに載ってた三番機候補の人かな?」
「多分。浜松基地の説明も、この声の人がしてたよ?」
「へー! 確かにいい声だし、聞きやすい声だね」
浜松基地で聞いた声と同じ声だったからポツリと呟いたら、美沙枝も聞きやすかったみたいで頷いていた。そして彼のアナウンスでその方向を見れば、ブルーインパルスが見えてくる。
スモークで展示飛行をするたびに観客から拍手と歓声、シャッター音が響く。それに何度見てもカッコいいし感動する。
(やっぱりバーティカル・キューピッドって技は可愛い……っ!)
青空に描かれる大きなハートと矢は今日も可愛いと思うし、何番機が作っているのかいまだに知らないけれど、今朝章吾さんに会ったからなのか、章吾さんからのメッセージみたいで余計に感動した。
そして最後の展示飛行が終わるとブルーインパルスが戻ってくる。聞きやすいアナウンスと空飛ぶイルカから降りて来たドルフィンライダーたちに、観客から大きな拍手と歓声、シャッター音があちこちから聞こえた。
それが終わると帰る人が一気にゲート方面に向かう。招待されている人の中にも帰る人がいて、美沙枝とどうしようか話し合ったけど、どうせならとF-15とF-2の展示飛行が終わってから帰ろうということになった。この二機は下りてくることなく、そのまま別の基地に帰るんだって。
「ひばり、並んでいる人も少なくなったし、三番機の因幡さんが多分今回で最後になるから、サインもらいに行く?」
「そうしようか」
そんな話をして三番機のドルフィンライダーさんの列に並ぶ。どうやら私たちが最後尾で、それ以上は誰もいなかった。そしてパンフレットにサインしてもらって帰ろうと思っていたら、章吾さんと目が合った。
「ひばり、おいで」
ちょいちょいと手招きをする章吾さんに、美沙枝も周囲も私と章吾さんをガン見してくる。お仕事中だからとシカトしようと思ってたのに、章吾さんはずっと手招きしてるもんだから、仕方なく彼のところへ行く。
「お仕事中じゃないの?」
「まあ。だけど、俺にも目的があるからさ」
「は?」
意味がわからないんだけど! と叫んでも章吾さんはどこ吹く風だし、他のドルフィンライダーさんも止めないし。なんだろうと思って章吾さんを見てたら、いきなり小説の騎士がするように片膝をつき、ポケットから箱を出すとそれを私に見えるように差し出した。
箱に入っていたのは、キラキラと虹色に光る指輪。
そのことに驚く。そして突如始まった章吾さんの行動に、周囲も唖然としながら見ている。
「この一年はお前にたくさん元気をもらったし、尊敬できる仲間やキーパーたち、お前がいたからドルフィンライダーとして頑張ってこれた」
「……」
「俺と結婚して妻となり、これからも俺を支えてくれないか?」
「……っ」
公衆の面前で、まさかのプロポーズ。しかも周囲はシーンとなっていて、固唾を呑んで様子を窺っている。
「……わ、私は、自衛隊の重要性や章吾さんのお仕事の大変さとか、よく知らない。そんな私で、いいの?」
「そんなお前だからこそ俺は惹かれたし、愛した。……お前じゃなきゃダメなんだよ、俺は」
章吾さんのその言葉と真剣な目に囚われる。
パイロットがどんなに大変なお仕事なのか、私にはよくわからない。だけど、そんな私でいいのなら、両親の前で言ったように、私の答えはひとつだ。
「ひばり……俺と結婚してくれるか?」
「……はい」
誰にも聞かれたくなくて章吾さんに抱きついて返事をすればぎゅっと抱きしめ返し、頭を引き寄せてキスをして来た。
「ありがとう」
章吾さんのその言葉でわかったんだろう……周囲からワーッ! と歓声があがった。そしてまた私を抱きしめてくれたんだけど、その歓声とシャッター音で我に返る。
しまった! つい返事をしちゃったけど、公衆の面前じゃないか! しかも写真に撮られてるじゃない!
「ひばり、真っ赤になって……可愛い」
耳元で囁く章吾さんは満面の笑みなんだろう……更にシャッター音が聞こえてきて、「原因はあの子か!」とか「どんな子なんだろう?」って声が聞こえて来て、本当に恥ずかしかった。
SNSでは私の後ろ姿と章吾さんの満面の笑顔の写真がアップされていたらしいんだけど、幸いにして私は関係者しか入れない区画に入れてもらい、尚且つ章吾さんに抱きついていたおかげで角度的に顔を撮られることがなかった。
ただ、美沙枝も少し離れたところで藤堂さんにプロポーズされてたらしく、こっちは制服姿だったもんだから私たち以上に大変だったようで……。
別々に帰って来てからお互いに「疲れたね」と「おめでとう」と言い合った。
「マジか!」
『マジ。しかも、ウィンクまでしたんだって?』
「うう……そうです。しかも、最初に私を見つけたのはキーパーさんで……」
『うん、それもキーパーさんの写真付きで書かれてた! 珍しいことに笑顔だったって』
「うわーん!」
泣きはしないけど、泣き真似をしたら美沙枝に苦笑された。
確かに章吾さんにはメールしたよ? だけど、まさかキーパーさんにまで知られてるなんて思わないじゃないか!
『いいじゃん、ひばりの顔写真が出てたわけじゃないし』
「よくないって! もう、今度行く時は四番機のまん前なんかに行かないんだから!」
『はいはい、そういうことにしといてあげる』
「みさちゃん、何気にひどいよ……」
そんな会話をしていても、本当にひどいと思っているわけじゃない。お互いの性格をわかったうえでやってるおふざけみたいなものなのだ。
「あ、そうだ。入間の航空祭には行けるんだよね?」
『うん。招待状くれるって言ってたんだよね? 本当にいいの?』
「うん。章吾さんから言い出したことだから、大丈夫じゃない?」
『そっか。招待状なんて滅多なことじゃもらえないしね。なら遠慮なく』
「りょうかーい。なら、私が預かっておくね」
『よろしくー』
そんな会話をして、招待状は私が預かることにし、電話を切った。
なんでこんな話をしたかというと、章吾さんとメールのやり取りをしている時、住所を聞かれたからだ。さすがに美沙枝の住所を勝手に教えるわけにはいかなかったから、私の住所を教えて美沙枝の分も送ってもらうことにした。
だけど、それを伝える前に私が寝落ちちゃったもんだから、今朝になって慌てて【ごめんなさい! 寝落ちました!】とメールしたら【だと思った(笑)】ってメールが帰って来て、ちょっと凹んだ。
で、ようやく美沙枝に話ができたから、それを章吾さんにメールで伝える。時間的にお仕事中なので、いつもの如く【返事は夜でいいです】と一言添えた。
そして自分のアクセ作りをしたりお店のものを作ったり発送して来たりして日々を過ごしていると、招待状が届いた。
【招待状が届きました。ありがとう】
章吾さんのお仕事が終わりそうな時間を見てメールを送る。すぐには来ないだろうと思って待っている間にバッグチャームでも作ろうと思っていたら、すぐにメールが返って来て驚いた。
【無事に着いてよかった。当日楽しみにしてる&楽しみにしてて】
そのメールを見て一瞬何のことかわからなかったんだけど、きっと私が来ることが楽しみなのと、航空祭を楽しみにしててって意味だと思って気にもしなかった。
そして十月もあっという間に終わり、十一月三日になった。
今日は入間基地の航空祭であり、章吾さんと出会って一年になる記念日でもある。
「出会って一年かあ……。なんかあっという間の一年だったなあ……」
そんなことをポツリと呟いて、美沙枝の家まで行く。待ち合わせは美沙枝の家で、そこから行くことになっていた。空を見上げると、青空が広がっている。去年のことがあるから、今年は帽子を持って来ていた。
「お待たせ! 行こう、ひばり」
「うん!」
美沙枝と連れ立って基地へと向かう。途中にあった『招待者入口』というところで美沙枝の分と一緒に招待状を出し、案内に従って中へと入る。案内された席はブルーインパルスに近かったけど、目の前ってほどじゃなかった。でも、周囲にはほぼ何もない状態だし椅子もあるから、疲れることはなさそうなのがいい。
で、招待客にはわかるように色分けされたリボンが付けられているらしく、普通のリボンや豪華なリボンまであった。……豪華なのは偉い人用とかなのかな?
それはともかく、美沙枝と一緒にゆっくりしていると、その人の関係者と思われる人がちらほらと来る。美沙枝にも藤堂さんが会いに来て、なにやら楽しそうに話していた。
ていうか、美沙枝はしょっちゅう会えるんだから、わざわざ藤堂さんが会いに来る意味がわかんないんだけど……。
半分八つ当たり気味に二人のラブラブっぷりを見ながら、持って来たり買って来たものを食べたりしてオープニングを待つ。
「今日もいい天気だなー」
十一月にしては暑くなるかもと天気予報で言っていたから、帽子を持って来て正解だった。持って来た帽子を被り、ペットボトルのお茶を一口飲んだ時だった。
「ひばり」
「あ、章吾さん」
声をかけられてそっちを見れば、モスグリーンのツナギを着た章吾さんがいた。あちこちに同じ格好をした人がいるからなのか、章吾さんがドルフィンライダーだと気づいた人はいないみたい。
「来てよかったの? それにあっちの色じゃないんだね」
「さすがにあの色のフライトスーツを着て出てきたら騒ぎになると思ってさ」
隊長さんに少しだけ時間をもらって、私の顔を見に来たらしい。今日は会えないと思っていたから、すっごく嬉しい。ついでにフライトスーツとは何かって聞いたら、「今更か……」と章吾さんに呆れられたんだけど。
「戦闘機に限ったわけじゃなんだが、空自や海自の戦闘機パイロットやヘリパイが着る服、かな。こういうの」
「あー、それをフライトスーツっていうんだ」
自分が着ている服を引っ張りながら説明してくれた章吾さん。なるほど、自衛官が着てるツナギはフライトスーツっていうのか。
そんな話を少しだけした章吾さんは、「あとでまた」と言って私の頭を撫でると、奥のほうに歩いていった。……そこにいる自衛官さん、私を生温い視線で見ないでください……。
そんなことをしている間にいつの間にかオープニングは終わっていて、いろんな催し物が始まった。それを見たりトイレに行ったり、美沙枝と話しながらあれこれしているうちにブルーインパルスが飛ぶ時間となった。
「……やっぱいい声の人だなあ」
「初めて聞いた! ファンサイトに載ってた三番機候補の人かな?」
「多分。浜松基地の説明も、この声の人がしてたよ?」
「へー! 確かにいい声だし、聞きやすい声だね」
浜松基地で聞いた声と同じ声だったからポツリと呟いたら、美沙枝も聞きやすかったみたいで頷いていた。そして彼のアナウンスでその方向を見れば、ブルーインパルスが見えてくる。
スモークで展示飛行をするたびに観客から拍手と歓声、シャッター音が響く。それに何度見てもカッコいいし感動する。
(やっぱりバーティカル・キューピッドって技は可愛い……っ!)
青空に描かれる大きなハートと矢は今日も可愛いと思うし、何番機が作っているのかいまだに知らないけれど、今朝章吾さんに会ったからなのか、章吾さんからのメッセージみたいで余計に感動した。
そして最後の展示飛行が終わるとブルーインパルスが戻ってくる。聞きやすいアナウンスと空飛ぶイルカから降りて来たドルフィンライダーたちに、観客から大きな拍手と歓声、シャッター音があちこちから聞こえた。
それが終わると帰る人が一気にゲート方面に向かう。招待されている人の中にも帰る人がいて、美沙枝とどうしようか話し合ったけど、どうせならとF-15とF-2の展示飛行が終わってから帰ろうということになった。この二機は下りてくることなく、そのまま別の基地に帰るんだって。
「ひばり、並んでいる人も少なくなったし、三番機の因幡さんが多分今回で最後になるから、サインもらいに行く?」
「そうしようか」
そんな話をして三番機のドルフィンライダーさんの列に並ぶ。どうやら私たちが最後尾で、それ以上は誰もいなかった。そしてパンフレットにサインしてもらって帰ろうと思っていたら、章吾さんと目が合った。
「ひばり、おいで」
ちょいちょいと手招きをする章吾さんに、美沙枝も周囲も私と章吾さんをガン見してくる。お仕事中だからとシカトしようと思ってたのに、章吾さんはずっと手招きしてるもんだから、仕方なく彼のところへ行く。
「お仕事中じゃないの?」
「まあ。だけど、俺にも目的があるからさ」
「は?」
意味がわからないんだけど! と叫んでも章吾さんはどこ吹く風だし、他のドルフィンライダーさんも止めないし。なんだろうと思って章吾さんを見てたら、いきなり小説の騎士がするように片膝をつき、ポケットから箱を出すとそれを私に見えるように差し出した。
箱に入っていたのは、キラキラと虹色に光る指輪。
そのことに驚く。そして突如始まった章吾さんの行動に、周囲も唖然としながら見ている。
「この一年はお前にたくさん元気をもらったし、尊敬できる仲間やキーパーたち、お前がいたからドルフィンライダーとして頑張ってこれた」
「……」
「俺と結婚して妻となり、これからも俺を支えてくれないか?」
「……っ」
公衆の面前で、まさかのプロポーズ。しかも周囲はシーンとなっていて、固唾を呑んで様子を窺っている。
「……わ、私は、自衛隊の重要性や章吾さんのお仕事の大変さとか、よく知らない。そんな私で、いいの?」
「そんなお前だからこそ俺は惹かれたし、愛した。……お前じゃなきゃダメなんだよ、俺は」
章吾さんのその言葉と真剣な目に囚われる。
パイロットがどんなに大変なお仕事なのか、私にはよくわからない。だけど、そんな私でいいのなら、両親の前で言ったように、私の答えはひとつだ。
「ひばり……俺と結婚してくれるか?」
「……はい」
誰にも聞かれたくなくて章吾さんに抱きついて返事をすればぎゅっと抱きしめ返し、頭を引き寄せてキスをして来た。
「ありがとう」
章吾さんのその言葉でわかったんだろう……周囲からワーッ! と歓声があがった。そしてまた私を抱きしめてくれたんだけど、その歓声とシャッター音で我に返る。
しまった! つい返事をしちゃったけど、公衆の面前じゃないか! しかも写真に撮られてるじゃない!
「ひばり、真っ赤になって……可愛い」
耳元で囁く章吾さんは満面の笑みなんだろう……更にシャッター音が聞こえてきて、「原因はあの子か!」とか「どんな子なんだろう?」って声が聞こえて来て、本当に恥ずかしかった。
SNSでは私の後ろ姿と章吾さんの満面の笑顔の写真がアップされていたらしいんだけど、幸いにして私は関係者しか入れない区画に入れてもらい、尚且つ章吾さんに抱きついていたおかげで角度的に顔を撮られることがなかった。
ただ、美沙枝も少し離れたところで藤堂さんにプロポーズされてたらしく、こっちは制服姿だったもんだから私たち以上に大変だったようで……。
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