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本編
地元でデート
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翌日、バイトから帰って来ると章吾さんにメールを入れた。朝におはようのメールをした時、【帰って来たらメールをくれ】と書かれていたからだ。
【五時に駅で待ち合わせな】
と書かれた返事が来た。どこに行くのか聞いたけど、教えてくれなかった。
「もう……」
そんなことを言いながら、母に「デートしてくるから、夕食はいらない」と言うと、ニヤニヤされた。
「……なに?」
「ふふっ。ようやくひばりにもいい人ができたのねぇ、と思って」
「うっ」
「相手は自衛隊のパイロットでしょ? もしその人に何か言われたら、ついていっていいんだからね?」
「え……?」
「ひばりがやってくれてる仕事はどこにいてもできるし、昔と違ってスマホや宅急便があるもの。電話やメール一つで注文できるし、自分で発送できるでしょ? それに、ここは尚徳が継いでくれるって言ってるから、心配しなくていいのよ?」
尚徳とは兄の名前だ。まさか兄がそんなことを言っているとは思わなかった。
「そう、だね。まだお付合いを始めたばかりだし、そういった話は出てないけど……もし何か言われたらお母さんに相談するね」
「ふふ、いいわよ」
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
母とそんな会話をして駅へと向かう。どこにいるかなと周囲を見回したら、メールが来た。
【ひばり、左に向かって歩いて来て】
そう書かれているメールに首を傾げつつ左のほうに歩いていくと、前から章吾さんが歩いてくるのが見えた。
「あ、章吾さん」
「ごめん、ひばり。俺の実家方向がこっちなんだけど、昨日みたいなのはこりごりだったから」
「あー……」
昨日、女性に囲まれていたことを思い出して遠い目になる。確かに昨日はクリスマスイブだから気持ちはわからなくもないけど、あれはないなあと思ったくらいだ。……肉食のお姉さんたち……怖い。
「じゃあ行こうか。車で来てるんだ」
車で来てることに驚いたけど、コインパーキングに停めてあるからとそこまで歩き始め、すぐに着いた。車種はよくわかんないけど、白い車だった。鍵を開けた章吾さんに促されて車に乗り込むと、シートベルトをした。
「どこに行くの?」
「小手指にあるレストラン。イタリアンでそこのパスタが美味しいんだけど、どうかな。電車でもよかったんだけど、帰りはドライブしたいし。いいか?」
「わー、イタリアン?! ドライブも料理も楽しみ!」
小手指なら電車だとすぐだけど、そこから二十分歩くと言っていたので車にしたという。クリスマスだし、混んでると困るからと予約もしているそうだ。
「よく予約が取れたね」
「実は知り合いの店でもあるんだけど、電話したらちょうどキャンセルがあったらしくてさ。『材料を無駄にしたくないし安くするよ。どうだ?』って言われてさ……」
「あははっ! それはラッキーだったね!」
「だろ?」
章吾さんの横顔を見ながら、そういえば私がバイトに行ってる時は何をしていたんだろうと気になって聞いてみた。
「そういえば章吾さんは午前中、何をしてたの?」
「掃除したあとしばらく車に乗ってなかったから、勘を取り戻すためにあちこち車で出かけてた。だからこうして安心してひばりを乗っけてられるんだけどな」
「そうなんだ」
そんな話をしている間に着いてしまった。道も混んでなかったし、電車よりも早かったかも知れない。
お店に入ると章吾さんが入口で名前を告げていた。そして店員に案内された席は窓際の席で、そこからイルミネーションが見える。クリスマスらしくイルミネーションが飾られている木には星やオーナメント、雪を模した綿が飾られていて、他の人の目も楽しませている。
そして席に着いてコートを脱ぎ、鞄からスマホとハンカチを出すと他のは窓際にあった籠に入れた。そこに水とメニューを持って来た男性が現れた。
「いらっしゃいませ。藤田、悪かったな。助かったよ」
「いや、構わないさ。横沢、俺の彼女で江島 ひばりさん。ひばり、彼がこの店のオーナーで横沢」
「初めまして」
横に立った人はオーナーさんだという。章吾さんと同年代に見えるその男性は、高校の時の同級生だそうだ。
お互いに初対面の挨拶を交わしたあと、メニューを渡されたのでそれを眺める。コースと単品があってすごく悩む。ただ、あまり多いと食べられないのでどうしようか迷っていると、章吾さんは「お任せで」と頼んでいた。
「できれば彼女の分は少なめにしてくれると助かる」
「ああ、わかった。お嬢さんもそれでいいかな?」
「はっ、はい!」
ボーッとしながら二人のやり取りを聞いていたら急に話しかけられ、慌てて返事をする。何が出てくるんだろう……そう思うものの、お任せなら楽しみでもある。
メニューをオーナーに返し、水を一口飲む。店内を見ると、クリスマスだけあってカップルが多い。
「どんな料理が出てくるのかな」
「さあ。ただ、ここのピザは石釜を使って焼いてるから、美味しいと思うよ?」
「ほんと?! わー、楽しみ!」
そんな話をしているところにサラダが運ばれて来た。それをスマホで撮ると、食べ始める。クルトンが乗ったサラダを食べ終えたころ、パスタが来た。パスタはペスカトーレで、アサリとムール貝にホタテとエビなど、魚介が沢山乗っていた。
「美味しそう~~~!」
「ひばりは魚介が好きなのか?」
「うん! 大好き!」
「ははっ! そっか。冷めないうちに食べよう」
「うん!」
章吾さんと話をして、写真を撮る。そしてまずはホタテから食べる。ぷりっとした弾力とトマトの味が濃厚で、顔が緩むのがわかる。
「美味しい!」
「ああ、これは美味いな!」
二人で美味しい美味しい言いながらペスカトーレをあっという間に食べ終わった。そして食器が片付けられ、しばらくしたらピザが来た。一人一枚だと思ってたら二人で一枚のようで、お腹の心配をしなくていいのは助かる。私個人の意見だけどやっぱ残したくないし、残すのは作ってくれた人にも食材を提供してくれた人にも失礼だと思うから。
ピザはマルゲリータ。「シンプルだからこそ、生地と素材の味を楽しめる」とオーナーさんが言っていた。チーズもモッツァレラとブルーチーズを使ってるんだって。その場でカットしてくれたので、写真を撮ってからそれを食べる。
一口食べると仄かに香るにんにくと甘いトマト、二種類のチーズの味が広がる。生地は外はカリカリ、中はもちもちで、ふちにはチーズが入っていた。
(ヤバイ! 美味しい!)
食べ過ぎて太るー! と思いつつも結局は平らげ、最後はデザート。定番のティラミスとアイスが来た。けど、章吾さんのにはアイスが乗っていない。それに首を傾げていたら、「お嬢さんにだけおまけだよ」とオーナーさんが笑ってそう言ってくれたし、それを聞いていた章吾さんは苦笑していた。
ラッキー! と写真を撮り、まずはティラミスを食べる。濃厚なマスカルポーネとコーヒーリキュール、ココアの味が絶妙で、言葉にするのが難しいくらい美味しかった。ティラミスを食べる合間にアイスを食べるとこれまた濃厚なバニラアイスで、つい夢中になって食べてしまった。そんな私の様子を、章吾さんはクスクス笑いながら幸せそうな顔で見てる。
(くそう……イケメンめ!)
その笑顔にドキドキしつつ、コーヒーを飲む。
「……はぁ。美味しかった!」
「気に入ってくれてよかった」
「うん! とっても気に入った!」
コーヒーを飲みながら、料理の感想を言い合う。そしてお腹が落ち着いたころ、お店を出た。レジにいたオーナーさんにお礼を言い、「またおいで」と言ってくれたことに頷くと外に出て車に乗り込む。
「美味しかった! お腹いっぱいだよ……」
「ははっ。また来ようか」
「うん!」
遠くにいる人だから今度いつこっちに帰ってくるのかわからないけど、約束してくれたことが嬉しかった。そして走り出した車は、そのままどこかに移動し始める。
「どこに行くの?」
「狭山湖はどう? もしくは適当に流すか」
「狭山湖! 行ってみたい!」
「いいよ。じゃあ行こうか」
小手指からならそれほど時間はかからない。とはいえ。途中で道が混んでいたのでそこそこ時間がかかった。湖に近い駐車場に車を停め、外に出る。何台も車が停まっていて、カップルもいた。周囲は小高い山があるから、それなりに寒かった。
ふと章吾さんを見ると、昨日渡したネックウォーマーを着けてくれていた。
「それ……」
「すっごくあったかいよ、ひばり。向こうでも使うから」
「うん!」
章吾さんの言葉がとても嬉しくて、差し出された手をギュッと握った。
そのまま歩き出した章吾さんは、湖のほうへと歩いて行く。
「暗いから足元に気をつけて」
「うん」
時々すれ違うカップルも手を繋いでいて、楽しそうに会話をしている。私たちもそんなふうに見えるのかなと思ったら、今更ながら恥ずかしくなった。
湖岸に着くと、そこをゆっくりと歩き始める。湖岸と言っても周囲はコンクリートで囲まれているから、暗くても落ちることはない。
「真っ暗だね……」
「うん。だけど、湖面に月が映ってて綺麗だよ?」
ほら、と指差されたほうを見ると、湖面に写る月はゆらゆらと揺れていて、とても幻想的だった。
「実は、狭山湖にくるのも初めてだったり……」
「え、そうなの?! ひばりは本当に地元にしか行かないんだな」
「そ、そんなことないよ?! ビーズを買いに、時々所沢まで行くこともあるし……」
「それ、同じ県内の隣の市なんだから、地元と変わんないじゃないか」
「……」
章吾さんに指摘されて、つい黙り込んでしまう。だって実家は商売やってるから家族旅行なんて行ったことないし、近くにある遊園地に行くくらいしか行ったことない。あとは学校で行った修学旅行くらいだ。そう言ったら章吾さんは苦笑して、後ろから抱きしめて来た。
「職業柄、俺も旅行に連れてってやれないのが苦しい」
「でも、先月みたいに近くの基地なら行けると思うし、松島だっけ? そっちも一度行ってみたいな……」
「そうだな。来るならメールをよこせよ? 迎えに行ってやるから」
「うん」
近くの基地にはまたこっそり行って驚かそうと思ったのは内緒だけど、素直に頷いておいた。
そのままの体勢で話し込んでいたら、章吾さんの手が胸をまさぐりはじめて背中が震えてくる。キュッと乳首を摘まれてつい背中を章吾さんに預けると、今度は両手で胸を揉み始めた。
「……っ、章吾、さんっ、は……っ」
「……クリスマスだし、ひばりを抱きたい。……いいか?」
胸を揉みながら耳元で囁く章吾さんに、明日も仕事だから無茶をしなければと頷いたんだけど……。
嬉々として狭山湖から離れた章吾さんは、そこからそれほど離れていないラブホを見つけるとさっさとそこに入り、前回同様に散々私をイかせたあと、その熱くて太い塊を胎内に入れ、前回と違って激しく私を抱いたのは言うまでもない。
【五時に駅で待ち合わせな】
と書かれた返事が来た。どこに行くのか聞いたけど、教えてくれなかった。
「もう……」
そんなことを言いながら、母に「デートしてくるから、夕食はいらない」と言うと、ニヤニヤされた。
「……なに?」
「ふふっ。ようやくひばりにもいい人ができたのねぇ、と思って」
「うっ」
「相手は自衛隊のパイロットでしょ? もしその人に何か言われたら、ついていっていいんだからね?」
「え……?」
「ひばりがやってくれてる仕事はどこにいてもできるし、昔と違ってスマホや宅急便があるもの。電話やメール一つで注文できるし、自分で発送できるでしょ? それに、ここは尚徳が継いでくれるって言ってるから、心配しなくていいのよ?」
尚徳とは兄の名前だ。まさか兄がそんなことを言っているとは思わなかった。
「そう、だね。まだお付合いを始めたばかりだし、そういった話は出てないけど……もし何か言われたらお母さんに相談するね」
「ふふ、いいわよ」
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
母とそんな会話をして駅へと向かう。どこにいるかなと周囲を見回したら、メールが来た。
【ひばり、左に向かって歩いて来て】
そう書かれているメールに首を傾げつつ左のほうに歩いていくと、前から章吾さんが歩いてくるのが見えた。
「あ、章吾さん」
「ごめん、ひばり。俺の実家方向がこっちなんだけど、昨日みたいなのはこりごりだったから」
「あー……」
昨日、女性に囲まれていたことを思い出して遠い目になる。確かに昨日はクリスマスイブだから気持ちはわからなくもないけど、あれはないなあと思ったくらいだ。……肉食のお姉さんたち……怖い。
「じゃあ行こうか。車で来てるんだ」
車で来てることに驚いたけど、コインパーキングに停めてあるからとそこまで歩き始め、すぐに着いた。車種はよくわかんないけど、白い車だった。鍵を開けた章吾さんに促されて車に乗り込むと、シートベルトをした。
「どこに行くの?」
「小手指にあるレストラン。イタリアンでそこのパスタが美味しいんだけど、どうかな。電車でもよかったんだけど、帰りはドライブしたいし。いいか?」
「わー、イタリアン?! ドライブも料理も楽しみ!」
小手指なら電車だとすぐだけど、そこから二十分歩くと言っていたので車にしたという。クリスマスだし、混んでると困るからと予約もしているそうだ。
「よく予約が取れたね」
「実は知り合いの店でもあるんだけど、電話したらちょうどキャンセルがあったらしくてさ。『材料を無駄にしたくないし安くするよ。どうだ?』って言われてさ……」
「あははっ! それはラッキーだったね!」
「だろ?」
章吾さんの横顔を見ながら、そういえば私がバイトに行ってる時は何をしていたんだろうと気になって聞いてみた。
「そういえば章吾さんは午前中、何をしてたの?」
「掃除したあとしばらく車に乗ってなかったから、勘を取り戻すためにあちこち車で出かけてた。だからこうして安心してひばりを乗っけてられるんだけどな」
「そうなんだ」
そんな話をしている間に着いてしまった。道も混んでなかったし、電車よりも早かったかも知れない。
お店に入ると章吾さんが入口で名前を告げていた。そして店員に案内された席は窓際の席で、そこからイルミネーションが見える。クリスマスらしくイルミネーションが飾られている木には星やオーナメント、雪を模した綿が飾られていて、他の人の目も楽しませている。
そして席に着いてコートを脱ぎ、鞄からスマホとハンカチを出すと他のは窓際にあった籠に入れた。そこに水とメニューを持って来た男性が現れた。
「いらっしゃいませ。藤田、悪かったな。助かったよ」
「いや、構わないさ。横沢、俺の彼女で江島 ひばりさん。ひばり、彼がこの店のオーナーで横沢」
「初めまして」
横に立った人はオーナーさんだという。章吾さんと同年代に見えるその男性は、高校の時の同級生だそうだ。
お互いに初対面の挨拶を交わしたあと、メニューを渡されたのでそれを眺める。コースと単品があってすごく悩む。ただ、あまり多いと食べられないのでどうしようか迷っていると、章吾さんは「お任せで」と頼んでいた。
「できれば彼女の分は少なめにしてくれると助かる」
「ああ、わかった。お嬢さんもそれでいいかな?」
「はっ、はい!」
ボーッとしながら二人のやり取りを聞いていたら急に話しかけられ、慌てて返事をする。何が出てくるんだろう……そう思うものの、お任せなら楽しみでもある。
メニューをオーナーに返し、水を一口飲む。店内を見ると、クリスマスだけあってカップルが多い。
「どんな料理が出てくるのかな」
「さあ。ただ、ここのピザは石釜を使って焼いてるから、美味しいと思うよ?」
「ほんと?! わー、楽しみ!」
そんな話をしているところにサラダが運ばれて来た。それをスマホで撮ると、食べ始める。クルトンが乗ったサラダを食べ終えたころ、パスタが来た。パスタはペスカトーレで、アサリとムール貝にホタテとエビなど、魚介が沢山乗っていた。
「美味しそう~~~!」
「ひばりは魚介が好きなのか?」
「うん! 大好き!」
「ははっ! そっか。冷めないうちに食べよう」
「うん!」
章吾さんと話をして、写真を撮る。そしてまずはホタテから食べる。ぷりっとした弾力とトマトの味が濃厚で、顔が緩むのがわかる。
「美味しい!」
「ああ、これは美味いな!」
二人で美味しい美味しい言いながらペスカトーレをあっという間に食べ終わった。そして食器が片付けられ、しばらくしたらピザが来た。一人一枚だと思ってたら二人で一枚のようで、お腹の心配をしなくていいのは助かる。私個人の意見だけどやっぱ残したくないし、残すのは作ってくれた人にも食材を提供してくれた人にも失礼だと思うから。
ピザはマルゲリータ。「シンプルだからこそ、生地と素材の味を楽しめる」とオーナーさんが言っていた。チーズもモッツァレラとブルーチーズを使ってるんだって。その場でカットしてくれたので、写真を撮ってからそれを食べる。
一口食べると仄かに香るにんにくと甘いトマト、二種類のチーズの味が広がる。生地は外はカリカリ、中はもちもちで、ふちにはチーズが入っていた。
(ヤバイ! 美味しい!)
食べ過ぎて太るー! と思いつつも結局は平らげ、最後はデザート。定番のティラミスとアイスが来た。けど、章吾さんのにはアイスが乗っていない。それに首を傾げていたら、「お嬢さんにだけおまけだよ」とオーナーさんが笑ってそう言ってくれたし、それを聞いていた章吾さんは苦笑していた。
ラッキー! と写真を撮り、まずはティラミスを食べる。濃厚なマスカルポーネとコーヒーリキュール、ココアの味が絶妙で、言葉にするのが難しいくらい美味しかった。ティラミスを食べる合間にアイスを食べるとこれまた濃厚なバニラアイスで、つい夢中になって食べてしまった。そんな私の様子を、章吾さんはクスクス笑いながら幸せそうな顔で見てる。
(くそう……イケメンめ!)
その笑顔にドキドキしつつ、コーヒーを飲む。
「……はぁ。美味しかった!」
「気に入ってくれてよかった」
「うん! とっても気に入った!」
コーヒーを飲みながら、料理の感想を言い合う。そしてお腹が落ち着いたころ、お店を出た。レジにいたオーナーさんにお礼を言い、「またおいで」と言ってくれたことに頷くと外に出て車に乗り込む。
「美味しかった! お腹いっぱいだよ……」
「ははっ。また来ようか」
「うん!」
遠くにいる人だから今度いつこっちに帰ってくるのかわからないけど、約束してくれたことが嬉しかった。そして走り出した車は、そのままどこかに移動し始める。
「どこに行くの?」
「狭山湖はどう? もしくは適当に流すか」
「狭山湖! 行ってみたい!」
「いいよ。じゃあ行こうか」
小手指からならそれほど時間はかからない。とはいえ。途中で道が混んでいたのでそこそこ時間がかかった。湖に近い駐車場に車を停め、外に出る。何台も車が停まっていて、カップルもいた。周囲は小高い山があるから、それなりに寒かった。
ふと章吾さんを見ると、昨日渡したネックウォーマーを着けてくれていた。
「それ……」
「すっごくあったかいよ、ひばり。向こうでも使うから」
「うん!」
章吾さんの言葉がとても嬉しくて、差し出された手をギュッと握った。
そのまま歩き出した章吾さんは、湖のほうへと歩いて行く。
「暗いから足元に気をつけて」
「うん」
時々すれ違うカップルも手を繋いでいて、楽しそうに会話をしている。私たちもそんなふうに見えるのかなと思ったら、今更ながら恥ずかしくなった。
湖岸に着くと、そこをゆっくりと歩き始める。湖岸と言っても周囲はコンクリートで囲まれているから、暗くても落ちることはない。
「真っ暗だね……」
「うん。だけど、湖面に月が映ってて綺麗だよ?」
ほら、と指差されたほうを見ると、湖面に写る月はゆらゆらと揺れていて、とても幻想的だった。
「実は、狭山湖にくるのも初めてだったり……」
「え、そうなの?! ひばりは本当に地元にしか行かないんだな」
「そ、そんなことないよ?! ビーズを買いに、時々所沢まで行くこともあるし……」
「それ、同じ県内の隣の市なんだから、地元と変わんないじゃないか」
「……」
章吾さんに指摘されて、つい黙り込んでしまう。だって実家は商売やってるから家族旅行なんて行ったことないし、近くにある遊園地に行くくらいしか行ったことない。あとは学校で行った修学旅行くらいだ。そう言ったら章吾さんは苦笑して、後ろから抱きしめて来た。
「職業柄、俺も旅行に連れてってやれないのが苦しい」
「でも、先月みたいに近くの基地なら行けると思うし、松島だっけ? そっちも一度行ってみたいな……」
「そうだな。来るならメールをよこせよ? 迎えに行ってやるから」
「うん」
近くの基地にはまたこっそり行って驚かそうと思ったのは内緒だけど、素直に頷いておいた。
そのままの体勢で話し込んでいたら、章吾さんの手が胸をまさぐりはじめて背中が震えてくる。キュッと乳首を摘まれてつい背中を章吾さんに預けると、今度は両手で胸を揉み始めた。
「……っ、章吾、さんっ、は……っ」
「……クリスマスだし、ひばりを抱きたい。……いいか?」
胸を揉みながら耳元で囁く章吾さんに、明日も仕事だから無茶をしなければと頷いたんだけど……。
嬉々として狭山湖から離れた章吾さんは、そこからそれほど離れていないラブホを見つけるとさっさとそこに入り、前回同様に散々私をイかせたあと、その熱くて太い塊を胎内に入れ、前回と違って激しく私を抱いたのは言うまでもない。
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