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北北西の国・ウェイラント篇

おうとへゴーでしゅ 5

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 余は満足じゃ! 状態で馬車に戻り、再び王都へ向けて出発する。お昼はアルバートさんが作ってくれたチーズ入りミルクリゾットと温野菜サラダを食べる。濃厚なチーズとミルクのリゾットはとっても美味しかったです!
 食べたあとはお昼寝タイム。テトさんに毛布にくるまれたあと、いつの間にか寝ていた。

 で、起きたら馬車が止まってた。窓から外を見たら、大人たちが全員外にいて、何やら野菜を持って話をしているっぽい。

「はりー、だれかよんできてくだしゃい」
「ぷ~」

 私を護っていたらしい玻璃にお願いすると、玻璃は快く返事をして外に出て、一声鳴いた。するとすぐにテトさんが飛んで来て私にもこもこコートを着せると、抱っこしたまま外にでる。

「にゃにかあったんでしゅか?」
「ん? ああ、起きたのか。実はここ、俺が持ってる畑のひとつでな。ブラッシカキャベツシネスコールはくさいが雪で埋まっちまってるから、どこで処分するかと悩んでたんだ」
「しょぶん?」
「捨てるってこと」

 なんですと!? 雪に埋まった野菜は食べないの!? しかも、種《たね》として残しておくもの以外は捨てるなんて、勿体ないじゃないか!

「しゅてるにゃんてもったいにゃいでしゅ! あまくておいちいのに!」
「甘くて」
「美味しい……?」

 なんでそこに驚くんだよ! つうか、雪中野菜を知らんのだろうか?
 知らないんだろうと判断し、雪の中に埋まっている野菜のことを雪中ナントカといい、野菜の甘みが強くなることを説明する。今回はキャベツとはくさいなので、雪中キャベツ&雪中はくさいだね。

「とりあえじゅ、しょのままたべるでしゅ」

 そう言って、まずはキャベツのを手に取り、外側の汚れている一枚を剥がしたあと中の葉を数枚剥がし、大人たちに配る。見本を見せるよう真っ先にそのまま齧ってみれば、春キャベツよりも甘みと旨味が強いキャベツの味がした。

「おいち~!」

 私の様子を見て、恐る恐るキャベツを齧る大人たち。咀嚼音がしたあと、揃って目を瞠った。

「これは……!」
「なんという旨味と甘みだ!」
「捨ててたなんて、勿体ねえことしてたんだな!」

 味わってみて納得した大人たち――特にアルバートさんは、興奮しっぱなしだ。捨てなくていいのは嬉しいみたい。種用として取っておくにしても限度があるし、捨てなくていいのであれば、いろいろ使えるもの。
 ポトフのようなスープにしてもいいし、コールスローにするもよし。あと、せっかく酪農が特産品なんだから、フィンランド料理を真似てもいいと思うんだよね。
 もしかしたら名前は違っても似たような料理があるだろうし、アメリカにいたときの同僚に教わった簡単なフィンランド料理を大人たちにご馳走してもいいかもしれん。きっと、同じものや近いものはあるはずだよね。
 なにせパスタがあるんだし、せっかく牛乳を大量に買い込んだからね~。それにキャベツをぶち込んでもいいと思うんだ。
 たとえば、フィンランド料理ならシエニケイットとかね。フィンランド語できのこはシエニ、スープはケイット。なのでシエニケイット。
 本来はたっぷりな種類のキノコと玉ねぎだけのミルクスープなんだけど、ここにキャベツを入れてもいいと思うんだよね。あとはショートパスタを入れてスープにするか、ロングパスタを入れてスープスパにするとか。
 そんな提案をアルバートさんにする。

「ふむ……、材料はなんでもいいのか?」
「あい。ようはミルクしゅーぷなのれ、ミルクのあじがしゅればいいでしゅよ」
「なるほどな。ロールブラッシカと一緒に作ってみっか」

 ニヤリと笑ったアルバートさんは、とりあえず手持ちの材料だけでスープとロールキャベツを作るそうだ。もちろん、はくさいも実食したうえで、ロールはくさいも美味しいと伝えると、ニヤリと笑うアルバートさん。
 ……こ、これはお手伝いをしなきゃいけないパターンか、も!?

「ステラ。当然、手伝ってくれるよな?」
「あ、あい……」
「よし! とりあえずある程度収穫していくぞー!」
『お、おう』

 アルバートさんの勢いに飲まれ、引き気味に返事をする私たち。かなり広い畑なんだけど、種用以外のものを全部収穫するのかと思いきや、三列分だけでいいと言われてホッとしていた大人しんじゅうたち。
 私も手伝おうとしたんだけど、幼児だし風邪をひかれても困るからと却下された! その代わりと言ってはなんだが、別び仕事を仰せつかった。

「ステラ、まずはロールシネスコールとロールブラッシカの材料を用意しててくれ」
「あーい」

 そだね、大人の人数が多いんだから、それなりの量の食材が必要だよね。
 てなわけで、アルバートさんに抱っこされ、馬車に戻りつつ材料を聞いたあと。馬車内に食材が入ってるマジックボックスなる木箱があるので、そこから指定された食材と必要数を出していく。
 そうこうするうちに大人たちも全員馬車に戻ってきた。

「今日の野営場所まで移動してから、料理を始めるぞー」

 そんなアルバートさんの言葉に全員が頷いたあと、ゆっくりと馬車が動き始めたのだった。

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