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北西の国・ミルヴェーデン篇
さらば、ミルヴェーデンでしゅ
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起きたら既に朝ご飯の用意が整っていた件について。
おはようございますと全員に挨拶をし、手渡された濡れタオルで顔を拭くと、すぐにご飯。今日はシンプルに野菜たっぷりなミルクスープとパン、温野菜サラダと目玉焼きとソーセージという、見事なブレックファーストでござる。
大人たちと私の食事量は違うので、テトさんにしっかり把握されている私のはスープ以外はワンプレートに載っている、お子様ランチスタイル。パンもみんなのより小さいんだぜ? 至れり尽せりだ。
しかも、石油ストーブもどきの凄さを理解したらしく、テトさんはちゃっかりストーブの上でスープを温めていたのには笑ってしまった。出して二日目にして、しっかり使いこなしてるのがなんともかんとも。
そして玻璃だが、今日はミルクスープに興味を示した。なので、少しだけ冷めたものを出すと、ちょっと啜ったあとで目を輝かせ、プルプル震える玻璃。
「おいちい?」
「ぷーーー!」
「しょれはよかったでしゅ」
一心不乱まではいかないものの、かなり気に入った様子。ミルクスープが平気なら、シチューもいけるんじゃないかと思った。
食事が終わるとお片付け。石油ストーブもどきはしまい、電気ストーブもどきを出したらしゅっぱーつ!
道中は特になにもなく、街道を驀進するゴーレム馬車。驀進でいいんだよ、だって他の馬車を追い抜いていくんだから。
休憩所を二ヶ所通り越し、村と町をひとつずつ通り越した先に見えてきたのは、この国に入国する時に見た国境の壁と同じものだった。はえーな、おい。
人と馬車が増えてきたのでスピードを落とし、カッポカッポという足音に変わるゴーレム馬。今馭者をしているのはキャシーさんとスーお兄様で、お兄様に操作を教えているみたい。
そんな二人を眺めていると、セバスさんに呼ばれた。
「ステラ。ここから先は冒険者ではなく、商人として出入国する」
「しょうにん、でしゅか。うりものはどうしゅるんでしゅか?」
「布と、毛皮などの皮製品だな」
「ほえ~」
布と毛皮か。布はスーお兄様が蜘蛛の時に吐きだした糸を使ってキャシーさんが織ったもの、毛皮は先日のスタンピードで出たやつを使用するとのこと。他にも魔石や骨、死の森で集めた薬草や、拾った大小様々な宝石をそのままや装飾品を売り歩くという。
ただし、そういう建前で。おい!
「スタンピードで得た皮と骨と魔石は確実に売るとして、スティーブたちが織った布に関しては、欲しいという人物がいれば売る。が、死の森で得たものに関しては、売るつもりはない」
「値段が値段ですもの。布も貴族じゃないと買えないわねぇ」
セバスさんに続いて宝石もね、と言ったセレスさん。確かに目玉が飛び出るほどの値段だったものね、宝石は。幼児である私の小指の爪サイズのダイヤモンドで、尚且つ透明度の高かったやつですら、金貨百枚は軽く超えていたはず。
そんなの、庶民が買えるわけがない。貴族だって、下手すると貧乏な男爵家だと買えない可能性が高いくらい、お値段が高いものなのだ。
普通の鉱山で採掘されたものに関してはそこまで高くはないし、死の森で採れたサイズや透明度と同じものですら、鉱山からの採掘だと金貨一枚から三枚がいいところだそう。同じサイズなのにどうして値段が違うのかというと、崩落という危険はあるものの魔物がほとんど出ない鉱山と、魔物が闊歩する死の森の差だ。
要はあの湖まで行ける冒険者となるとSランク以上が必要で依頼料がバカ高いのと、そこまで行くにしても食料やポーションなどの経費が必要になる。
それらと採りに行く技術料や経費の値段が上乗せされるから、どうしても高くならざるを得ないんだと。しかも、Sランク以上となると国のお抱えって人たちもいれば、セバスさんたちのように世界中を自由に動き回っている人たちもいる。
お抱えならば、国からの依頼として請けてもらうことができれば依頼料もそこまで高くないそうだが、そうじゃない人にとっては自分の技量と相談し、尚且つそこまで行けるだけの技術が自分にあるかどうかを天秤にかけるから、どうしても高くなってしまうとのこと。
「まあ、我らにかかればどうということはないな」
「そうだな」
そだね。神獣だし、あの森に棲んでる人たちだものね。そりゃあ簡単だろうさ。
で、話を戻して。
商人として入国するのは、これから行く国には魔物がほとんどいないそうだ。まったくいないわけじゃないが、畜産と小麦の産地なだけあって森の数自体が少なく、あっても規模の小さなものしかない。
なので、Eランク冒険者四~五人パーティーで、装備をしっかり整えて挑めば倒せる程度の強さであるフォレストベアが頂点なので、Sランクが常駐する町はほとんどないという。しかも、森の近くにある村には熊を平気で狩れる狩人たちがいるそうなので、そういった人たちがいる村では冒険者すらいない可能性が高いそうだ。
おおう、マタギがいるのかよ!
ちなみに、この国にいるフォレストベアは、魔物ではなく動物だそうだ。魔物として棲息が確認されているのは、スライムとホーンラビットのみ。
群れで行動する狼が棲息できるほど規模の大きな森はないし、大型の動物にしてもフォレストベアとフォレストボアくらいだし、他の動物だとやたら耳が長くて垂れている、体高一メートル近いラパンというウサギとヘビがいるくらい。
他の国に比べて漂っている魔素が少ない関係で、魔物が発生しにくいんだってさ。
魔素が薄いと魔物化しにくいので、動物としての牛やヤギなど、種の保存と同時に畜産も盛んになったんだそうだ。そういった事情があり、強い冒険者は必要ない国だそうなので、商人として入国するんだってさ。
「ほえ~! ミルクもかこうにくもほしいでしゅけど、うししゃん、みてみたいでしゅ」
「そうだね。食材の他にも毛糸が欲しいな」
「けいと……ひつじしゃんもいるんでしゅか?」
「ああ。他にも鶏もいたはずだ」
「ふおおぉぉ! たまご、ゲットしたいでしゅ!」
なんということでしょう! 異世界版北海道的な国か!
あれもこれも欲しい、作りたいと話しているうちに国境に着いたらしく、馬車が一旦停まる。すぐに発車したので窓の外を見たら、すでに隣の国の国境に向けて走っているところだった。
……商品チェックをすると言ってたような気がするんだが、門番に見せたんだろうか。疑問は尽きないが、大人たちは平然としているから問題ないんだろう。
そうこうするうちに反対側の門を抜ける。景色は相変わらず雪だらけ。
さらば、ミルヴェーデン(という国だと、今、聞いた)。あ・ば・よ・!
おはようございますと全員に挨拶をし、手渡された濡れタオルで顔を拭くと、すぐにご飯。今日はシンプルに野菜たっぷりなミルクスープとパン、温野菜サラダと目玉焼きとソーセージという、見事なブレックファーストでござる。
大人たちと私の食事量は違うので、テトさんにしっかり把握されている私のはスープ以外はワンプレートに載っている、お子様ランチスタイル。パンもみんなのより小さいんだぜ? 至れり尽せりだ。
しかも、石油ストーブもどきの凄さを理解したらしく、テトさんはちゃっかりストーブの上でスープを温めていたのには笑ってしまった。出して二日目にして、しっかり使いこなしてるのがなんともかんとも。
そして玻璃だが、今日はミルクスープに興味を示した。なので、少しだけ冷めたものを出すと、ちょっと啜ったあとで目を輝かせ、プルプル震える玻璃。
「おいちい?」
「ぷーーー!」
「しょれはよかったでしゅ」
一心不乱まではいかないものの、かなり気に入った様子。ミルクスープが平気なら、シチューもいけるんじゃないかと思った。
食事が終わるとお片付け。石油ストーブもどきはしまい、電気ストーブもどきを出したらしゅっぱーつ!
道中は特になにもなく、街道を驀進するゴーレム馬車。驀進でいいんだよ、だって他の馬車を追い抜いていくんだから。
休憩所を二ヶ所通り越し、村と町をひとつずつ通り越した先に見えてきたのは、この国に入国する時に見た国境の壁と同じものだった。はえーな、おい。
人と馬車が増えてきたのでスピードを落とし、カッポカッポという足音に変わるゴーレム馬。今馭者をしているのはキャシーさんとスーお兄様で、お兄様に操作を教えているみたい。
そんな二人を眺めていると、セバスさんに呼ばれた。
「ステラ。ここから先は冒険者ではなく、商人として出入国する」
「しょうにん、でしゅか。うりものはどうしゅるんでしゅか?」
「布と、毛皮などの皮製品だな」
「ほえ~」
布と毛皮か。布はスーお兄様が蜘蛛の時に吐きだした糸を使ってキャシーさんが織ったもの、毛皮は先日のスタンピードで出たやつを使用するとのこと。他にも魔石や骨、死の森で集めた薬草や、拾った大小様々な宝石をそのままや装飾品を売り歩くという。
ただし、そういう建前で。おい!
「スタンピードで得た皮と骨と魔石は確実に売るとして、スティーブたちが織った布に関しては、欲しいという人物がいれば売る。が、死の森で得たものに関しては、売るつもりはない」
「値段が値段ですもの。布も貴族じゃないと買えないわねぇ」
セバスさんに続いて宝石もね、と言ったセレスさん。確かに目玉が飛び出るほどの値段だったものね、宝石は。幼児である私の小指の爪サイズのダイヤモンドで、尚且つ透明度の高かったやつですら、金貨百枚は軽く超えていたはず。
そんなの、庶民が買えるわけがない。貴族だって、下手すると貧乏な男爵家だと買えない可能性が高いくらい、お値段が高いものなのだ。
普通の鉱山で採掘されたものに関してはそこまで高くはないし、死の森で採れたサイズや透明度と同じものですら、鉱山からの採掘だと金貨一枚から三枚がいいところだそう。同じサイズなのにどうして値段が違うのかというと、崩落という危険はあるものの魔物がほとんど出ない鉱山と、魔物が闊歩する死の森の差だ。
要はあの湖まで行ける冒険者となるとSランク以上が必要で依頼料がバカ高いのと、そこまで行くにしても食料やポーションなどの経費が必要になる。
それらと採りに行く技術料や経費の値段が上乗せされるから、どうしても高くならざるを得ないんだと。しかも、Sランク以上となると国のお抱えって人たちもいれば、セバスさんたちのように世界中を自由に動き回っている人たちもいる。
お抱えならば、国からの依頼として請けてもらうことができれば依頼料もそこまで高くないそうだが、そうじゃない人にとっては自分の技量と相談し、尚且つそこまで行けるだけの技術が自分にあるかどうかを天秤にかけるから、どうしても高くなってしまうとのこと。
「まあ、我らにかかればどうということはないな」
「そうだな」
そだね。神獣だし、あの森に棲んでる人たちだものね。そりゃあ簡単だろうさ。
で、話を戻して。
商人として入国するのは、これから行く国には魔物がほとんどいないそうだ。まったくいないわけじゃないが、畜産と小麦の産地なだけあって森の数自体が少なく、あっても規模の小さなものしかない。
なので、Eランク冒険者四~五人パーティーで、装備をしっかり整えて挑めば倒せる程度の強さであるフォレストベアが頂点なので、Sランクが常駐する町はほとんどないという。しかも、森の近くにある村には熊を平気で狩れる狩人たちがいるそうなので、そういった人たちがいる村では冒険者すらいない可能性が高いそうだ。
おおう、マタギがいるのかよ!
ちなみに、この国にいるフォレストベアは、魔物ではなく動物だそうだ。魔物として棲息が確認されているのは、スライムとホーンラビットのみ。
群れで行動する狼が棲息できるほど規模の大きな森はないし、大型の動物にしてもフォレストベアとフォレストボアくらいだし、他の動物だとやたら耳が長くて垂れている、体高一メートル近いラパンというウサギとヘビがいるくらい。
他の国に比べて漂っている魔素が少ない関係で、魔物が発生しにくいんだってさ。
魔素が薄いと魔物化しにくいので、動物としての牛やヤギなど、種の保存と同時に畜産も盛んになったんだそうだ。そういった事情があり、強い冒険者は必要ない国だそうなので、商人として入国するんだってさ。
「ほえ~! ミルクもかこうにくもほしいでしゅけど、うししゃん、みてみたいでしゅ」
「そうだね。食材の他にも毛糸が欲しいな」
「けいと……ひつじしゃんもいるんでしゅか?」
「ああ。他にも鶏もいたはずだ」
「ふおおぉぉ! たまご、ゲットしたいでしゅ!」
なんということでしょう! 異世界版北海道的な国か!
あれもこれも欲しい、作りたいと話しているうちに国境に着いたらしく、馬車が一旦停まる。すぐに発車したので窓の外を見たら、すでに隣の国の国境に向けて走っているところだった。
……商品チェックをすると言ってたような気がするんだが、門番に見せたんだろうか。疑問は尽きないが、大人たちは平然としているから問題ないんだろう。
そうこうするうちに反対側の門を抜ける。景色は相変わらず雪だらけ。
さらば、ミルヴェーデン(という国だと、今、聞いた)。あ・ば・よ・!
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