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北西の国・ミルヴェーデン篇
しょうきゅうしでしゅ
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起きたらもふもふじゃなく骸骨だった件について。
「おはよう、ステラ」
「おはよーごじゃいましゅ、テトしゃん」
お互いにっこりと微笑みを交わし、伸びをしてから起きる。つか、いつの間にバトラーさんからテトさんに変わったんだろう?
たまにはいいよねと思いつつ、何気にテトさんもぬくぬくしてたのには驚いた。魔法なのか種族特性なのか、あるいは着ているものがそういうものなのかはわからないけれど、とにかくあったかかったのは言うまでもない。
今朝は昨日の残りのシチューとパンで朝ご飯を済ませ、出発。馬車の中にいても暇だからと馭者台に乗せてもらい、景色を楽しむことに。
「寒くないか?」
「だいじょうぶでしゅ」
「そうか」
馭者台にいるのはセバスさん。冒険者の格好なので、執事仕様の言葉じゃないのが残念。
すっぽりと彼の膝の間に収まって周囲を見渡しているんだが、見事に雪が積もった平原と枯れ木ばかりでつまらない。
空は向かっている方向に行くほど曇天になっているけれど、真上は青空と白い雲が漂っている。そのおかげなのか雪が太陽の光を反射して眩しい。
そんな平原には冬毛のホーンラビットがちらちらと見え、それを狙っているのか冬毛のフォレストウルフがいる。ホーンラビットはフォレストウルフを警戒してか後ろ足で立ち上がり、耳を動かしているのが見えた。
そんな様子を見ていると、今度は上空で影が横切る。見上げれば大型の鳥が旋回していた。しかも、首が長い鳥だ。
「セバスしゃん、あのとりはにゃんでしゅか?」
「ん? ああ、あれはギャーギャー鳥だな」
「ギャーギャー鳥? しのもりのよりもくびがながいし、ちいしゃいでしゅね」
「それは仕方がない。死の森にいるギャーギャー鳥は濃い魔力を浴びているからなのか、普通の森にいるものよりも大型になるんだ。なぜか首は縮むんだがな」
「ほえ~」
なるほど、そういうことか。
他の種族もそうなのかと聞くと、中心部や最深部に行くほど魔力が濃くなるからなのか、同じように中心部や最深部に行くほど大型になるんだと。あそこにいたベヒーモスなども他の大陸やダンジョンにいるものに比べると、段違いでデカいらしい。
……そうかい、死の森産はデカいんかい。
死の森だからこそ平気でレベル700を超えているが、他はせいぜい400前後らしい。とはいえ、そこはやはり竜種なので、他の魔物たちに比べるとレベルも高いし、強さも段違いだそうだ。
他にも死の森にいた魔物の話や、今いる国の話を聞いていると、石造りの高い外壁が見えてくる。どうやらそこそこ大きな町みたい。
昨日の素材のこともあるし、そこで換金するのかと思ったら、見事に通り過ぎた。
あるぇ?
首を傾げていたら馬車が停まり、バトラーさんとスーお兄様、セレスさんが降りて来た。その手には大きな麻袋を全部で六つ持っていて、マジックバッグになっている腰に身に着けたポーチにそれぞれ二袋ずつ入れている。
「セバス、行ってくる」
「ああ、頼む」
どうやら町の中に入らず、換金してくるみたい。それをセバスさんに聞くと、そうだと頷いた。ただし全部を換金するんじゃなくて、町や村の規模によって個数を制限するそうだ。
王都や中間にある交易都市のような、頻繁に商人の往来がある大きな町ならお金があるから、それなりの数を放出しても支払ってくれる。けれど、国及び街道沿いにある町や村によっては、盗賊の被害に遭っていることもあるから、お金を用意できないこともあるんだって。
だから、もしその町や村に特産品があるならば、物々交換をする場合もあるんだとか。要は持ちつ持たれつですな。って違うかな?
なので、町や村の雰囲気を見つつ、肉や魔石を含めた魔物素材を売るらしい。
で、今見えている町は大きいわけじゃないが、まだ国境に近いぶんだけあり、そこそこ商人が立ち寄るそうだ。ちらっと門を見た限り、隊商と思われる馬車が並んでいたんだって。
隊商がいるならそこそこ買ってくれるだろうと予測して、予定よりも多い六袋をギルドに売って換金し、不足しがちな調味料や野菜を購入してくるという。大金になりそうならばギルドに預けてくるんだとさ。
「ほえ~。しゅごいでしゅ」
「落ち着き先が見つかったら、ステラも口座を作ろう」
「まらとうろくできるとしじゃないでしゅけろ、ちゅくれるんでしゅか?」
「ああ。身分証代わりの証明書があるだろう? あれを提示すれば、口座が作れるんだ」
「べんりでしゅねぇ」
「そうだな」
登録はできなくても、将来のために貯金ができるんだって。便利だな、証明書。
とりあえず、あのスタンピードで戦闘はしなかったけれど、逃げ遅れた人たちのために料理を作ったから、その報酬が出されるそうな。なので、魔物を換金したあと分配をするから、それまで待ってほしいと言われた。
もちろん待つよ!
「おはよう、ステラ」
「おはよーごじゃいましゅ、テトしゃん」
お互いにっこりと微笑みを交わし、伸びをしてから起きる。つか、いつの間にバトラーさんからテトさんに変わったんだろう?
たまにはいいよねと思いつつ、何気にテトさんもぬくぬくしてたのには驚いた。魔法なのか種族特性なのか、あるいは着ているものがそういうものなのかはわからないけれど、とにかくあったかかったのは言うまでもない。
今朝は昨日の残りのシチューとパンで朝ご飯を済ませ、出発。馬車の中にいても暇だからと馭者台に乗せてもらい、景色を楽しむことに。
「寒くないか?」
「だいじょうぶでしゅ」
「そうか」
馭者台にいるのはセバスさん。冒険者の格好なので、執事仕様の言葉じゃないのが残念。
すっぽりと彼の膝の間に収まって周囲を見渡しているんだが、見事に雪が積もった平原と枯れ木ばかりでつまらない。
空は向かっている方向に行くほど曇天になっているけれど、真上は青空と白い雲が漂っている。そのおかげなのか雪が太陽の光を反射して眩しい。
そんな平原には冬毛のホーンラビットがちらちらと見え、それを狙っているのか冬毛のフォレストウルフがいる。ホーンラビットはフォレストウルフを警戒してか後ろ足で立ち上がり、耳を動かしているのが見えた。
そんな様子を見ていると、今度は上空で影が横切る。見上げれば大型の鳥が旋回していた。しかも、首が長い鳥だ。
「セバスしゃん、あのとりはにゃんでしゅか?」
「ん? ああ、あれはギャーギャー鳥だな」
「ギャーギャー鳥? しのもりのよりもくびがながいし、ちいしゃいでしゅね」
「それは仕方がない。死の森にいるギャーギャー鳥は濃い魔力を浴びているからなのか、普通の森にいるものよりも大型になるんだ。なぜか首は縮むんだがな」
「ほえ~」
なるほど、そういうことか。
他の種族もそうなのかと聞くと、中心部や最深部に行くほど魔力が濃くなるからなのか、同じように中心部や最深部に行くほど大型になるんだと。あそこにいたベヒーモスなども他の大陸やダンジョンにいるものに比べると、段違いでデカいらしい。
……そうかい、死の森産はデカいんかい。
死の森だからこそ平気でレベル700を超えているが、他はせいぜい400前後らしい。とはいえ、そこはやはり竜種なので、他の魔物たちに比べるとレベルも高いし、強さも段違いだそうだ。
他にも死の森にいた魔物の話や、今いる国の話を聞いていると、石造りの高い外壁が見えてくる。どうやらそこそこ大きな町みたい。
昨日の素材のこともあるし、そこで換金するのかと思ったら、見事に通り過ぎた。
あるぇ?
首を傾げていたら馬車が停まり、バトラーさんとスーお兄様、セレスさんが降りて来た。その手には大きな麻袋を全部で六つ持っていて、マジックバッグになっている腰に身に着けたポーチにそれぞれ二袋ずつ入れている。
「セバス、行ってくる」
「ああ、頼む」
どうやら町の中に入らず、換金してくるみたい。それをセバスさんに聞くと、そうだと頷いた。ただし全部を換金するんじゃなくて、町や村の規模によって個数を制限するそうだ。
王都や中間にある交易都市のような、頻繁に商人の往来がある大きな町ならお金があるから、それなりの数を放出しても支払ってくれる。けれど、国及び街道沿いにある町や村によっては、盗賊の被害に遭っていることもあるから、お金を用意できないこともあるんだって。
だから、もしその町や村に特産品があるならば、物々交換をする場合もあるんだとか。要は持ちつ持たれつですな。って違うかな?
なので、町や村の雰囲気を見つつ、肉や魔石を含めた魔物素材を売るらしい。
で、今見えている町は大きいわけじゃないが、まだ国境に近いぶんだけあり、そこそこ商人が立ち寄るそうだ。ちらっと門を見た限り、隊商と思われる馬車が並んでいたんだって。
隊商がいるならそこそこ買ってくれるだろうと予測して、予定よりも多い六袋をギルドに売って換金し、不足しがちな調味料や野菜を購入してくるという。大金になりそうならばギルドに預けてくるんだとさ。
「ほえ~。しゅごいでしゅ」
「落ち着き先が見つかったら、ステラも口座を作ろう」
「まらとうろくできるとしじゃないでしゅけろ、ちゅくれるんでしゅか?」
「ああ。身分証代わりの証明書があるだろう? あれを提示すれば、口座が作れるんだ」
「べんりでしゅねぇ」
「そうだな」
登録はできなくても、将来のために貯金ができるんだって。便利だな、証明書。
とりあえず、あのスタンピードで戦闘はしなかったけれど、逃げ遅れた人たちのために料理を作ったから、その報酬が出されるそうな。なので、魔物を換金したあと分配をするから、それまで待ってほしいと言われた。
もちろん待つよ!
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