フォーチュンリング

饕餮

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現代篇

廻って紡ぐは紅き糸 1

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 祖母と一緒に朝食を作り、母屋の居間でいざ食事です。

「いただきます!」

 朝からうるさ……もとい、元気だなーと思いつつも、私はご飯と食べながらおかわりを渡したり調味料を渡したりしていたんだけど、突然晧兄のスマホが鳴った。

「はい、石下です」

 その声に全員が注目する。

「え?! ……はい、……はい」

 晧兄の口調で何かを感じ取ったメンバーたちは、『人のいい火乃香の兄貴たち』から『警察官』の顔へと変貌する。
 スマホを切ったあとで頷くと、全員がご飯をすぐに食べて「ごちそうさまでした」と言い、それぞれの食器を持って台所に向かう。

「師範、すみません……。合宿はもう終わりです」
「君が呼ばれたということは、人が死んだ事件かな?」
「恐らくは。行ってみないとわかりませんが……」
「気をつけて行っておいで。みんなも」
「はい!」

 祖父の言葉に晧兄達が返事をして出て行こうとしたところで、祖父が待ったをかけた。

「剣道の道具は置いて行きなさい、預かっててあげるから」
「助かります、師範。お願いします!」

 そう言って自分たちが使っていた部屋に戻ってスーツに着替え、貴重品や必要なのを持って現場へ直行することになったらしい。「三日間の休暇をもぎ取ったのに」って言ってたから、本当に予想外のことだったんだろう。
 まあ、こればっかりは仕方がない。

「行ってらっしゃい!」

 外へ行く晧兄たちに声をかけると、「行って来ます!」と返事が返ってくる。それを見送ってから彼らが使っていた部屋の掃除をするべく、室内へ戻って行った。

「ふぅー。うん、大丈夫そう。……終わり、っと」

 男の人が十人いた部屋は、私の予想以上に綺麗だった。そして布団を干してから時計を見ると、既に十時を回っていた。

「そろそろ道場へ行こうかな」

 段審査には型もある。それを練習しなければならない。
 頑張りなすかー、と一人ごちると伸びをし、窓を開け放したまま部屋を出て、晧兄たちが使っていた道場へ向かった。

 道場に着いて、早速練習をしようと木刀を探すのだが、なぜか一本もなかった。

「あれ? ない……」

 なんでないのよ、と思っていたら、隣で「カン、カン」と甲高い音がした。

「あ、隣か」

 そう言えば向こうには木刀を置いてなかったな、と思い出し、私は隣の道場に向かって祖父に声をかけた。

「お祖父ちゃん、木刀余ってる?」
「おお、あるぞ」
「じゃあ借りてくね」

 そういって木刀を見繕うとそれを持って戻ろうとしたんだけど、祖父に止められた。

「ここでやっていかんか?」
「え? でも、邪魔にならないかな……」
「邪魔どころか、大歓迎さ! たまにはお手本見せてくれよ」
「猛先輩」
「いいだろ?」
「まあ、主将である先輩がそう言うなら」

 そう言ってにっこり笑った私を、宗重さんが遠目に見ていたなんて知らなかった。


 ***


「で、ここでピタッと止めるの。やってみて」

 今やってるのは段審査の稽古。今は二段の形の練習をしているんだけど、猛先輩の型は、それはもうひどかった。

「もーっ、猛先輩、違うって! 踏み込む足が逆! それじゃ、流れるようにできないじゃないですか!」
「あ、そうか」
「みんなで一緒にやってみたらどうですか?」
「そうだな……。やるか?」

 猛先輩の問いかけに、二段を受けるメンバーが元気に返事をすると、練習を始めた。それを見ながら、これなら大丈夫かとホッと息を吐いた。

「さてと……」
「あのさ……」

 今度は自分の練習をしようと思ったところで声をかけられ、振り向くと中村先輩が側にいて驚いた。

「えっと……なんですか?」
「君は段、持ってるの?」
「まあ、一応」
「何段?」
「三段です」
「え?! その年で取れるの?!」

 横からもう一人の人――藤堂先輩に声をかけられた。

「取れますよ」
「じゃあ、今から練習して……」

 ぶつぶつと藤堂先輩が何か言ってるけど、何を言ってるのかさっぱりわからなかった。

「あの……そう言う藤堂先輩は、何段ですか?」
「僕? 高校卒業してから、二段のままだよ」
「とっくに四段か五段を持ってるのかと……」
「僕はそこまで強くないよ。むしろ宗重のほうが強いんじゃないかな?」

 中村先輩の名前を出され、ドキン、鼓動が跳ねた。

(全く同じ名前なんだよね……。だから似てるのかな……)

 そんな気持ちを隠しながら、二人と話を続ける。

「そうなんですか? 中村先輩は何段なんですか?」
「俺? 俺も二段止まりだな」
「え?! 先輩たち、二段なんですか?!」
「嘘! もっと上かと思ってた!」

 私たちの会話を聞いていたらしい猛先輩や他のメンバーが、口々にそんなことを言う。

「ほーと先輩たち、どっちが強いのかな?」
「中村先輩たちのほうが強いんじゃないの?」
「じゃあ、勝負してみたら? 久しぶりにほーの動きを見たいし」
「おう、それはいいな。火乃香、晧君たちに聞いたが、彼らに勝ったそうじゃないか。久しぶりにお前の技を見せてもらうよ、火乃香」

 晧兄ってば何バラしてくれちゃってんのかな?! それに祖父ってば何を言ってんの!
 と、内心で頭を抱えつつ、猛先輩の余計な一言で、私は中村先輩と藤堂先輩の二人と試合をすることになってしまった。

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