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戻ってきました
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その後、エドムンド殿下は学園までわたくしたちを送ってくださったあとわたくしに制服を渡し、王宮へと帰りました。それを見送り、マウリシオ様とアロンソ様と一緒に、Sクラスが使っている寮へと参ります。
寮自体は隣同士ですので、そこまで荷物を持ってくださるのだそうです。
本当にありがたいことですわ。
話をしながら歩いていますと、あっという間に寮に着きました。マウリシオ様とアロンソ様に少し待っていただき、寮母様を呼びます。
「学院長から話は聞いておりますわ」
「そうでしたか。ありがとうございます。実はお願いがございまして」
「あら。どうなさったの?」
「殿下のご厚意で実家に行ってきたのですが、その時に荷物をひとつと制服を持って帰ってきたのです。ただ、その荷物はソリス侯爵令息様が持ってくださって……」
「まあ、そうなのですね。男性ですから、寮に入ることはできませんしねぇ」
「ええ。寮母であるオルベラ夫人は、空間魔法を使うことができますでしょう? わたくしはまだできなくて……。それで、大変申し訳ないのですけれど、わたくしの部屋に運んでいただきたいと思いまして」
「それくらいならおやすい御用ですわ」
すぐに行きましょうと仰ってくださったイネス・オルベラ夫人にお礼を申し上げ、マウリシオ様とアロンソ様が待っているところへ向かいます。そして空間にしまっていただいていた木箱をオルベラ夫人に渡していただいたのです。
「マウリシオ様、アロンソ様。本日はありがとうございました。助かりましたわ」
「こちらこそ、お役に立てたようで、よかったです」
「複雑だろうが……気落ちしないようにね」
「お気遣いいただき、ありがとうございます」
それではまた明日とお互いに声をかけ、寮に戻るお二人を見送ります。それからオルベラ夫人と一緒にわたくしの部屋へと向かい、指定した場所に木箱を置いていただきました。
「オルベラ夫人、ありがとうございました」
「大丈夫ですわ。もうじき晩餐の時間ですから、遅れないように」
「はい」
もう一度お礼を伝え、扉を閉めます。
「……よかった」
ベッドに座り、ぽつりと呟きます。わたくしの部屋は、元々備え付けてあったベッドと机と椅子、クローゼットしかありません。本来は自分の家からテーブルやソファーを持ってくるのですが、わたくしの実家はあのような状態でしたしね。
今週末にはカレスティア家に行くことになっておりますから、お父様にご相談いたしましょう。
「制服を片付けないと……」
木箱の上にのっていた制服を持ち、クローゼットの扉を開けます。ハンガーがありましたので、そこに三着分かけました。他にも鞄や靴などもあります。明日から制服を着れると思うと、やっと入学したのだという感慨も沸いてきます。
クローゼット内は今のところ制服一式以外は何も入っておりませんが、木箱の底にはお手製のドレスやワンピース、寝間着を隠してあります。それは晩餐を食べてから取り出すことにいたしましょう。
食堂へと向かい、出されたものを食べます。少し量が多くて残してしまいました。
作ってくださった方にお詫びをし、部屋へと戻ります。友人がいればそのままサロンへ行っておしゃべりをするのですが、わたくしにはおりませんし、昼間のことがあってクラスメイトも遠巻きに見ているだけでしたしね。
前途多難ですと内心で溜息をついている間に部屋に到着しましたので、中へ入ると木箱があるところへと向かいます。そして中からドレスや装飾品、寝間着を出し、一息つきました。
お風呂も備え付けられていて、とても便利です。本来であれば侍女が用意をするのでしょうけれど、わたくしにはおりませんし。
もちろん、伯爵家でも自分で用意しておりましたので、やり方さえ教えていただければ用意できます。当然のことながら、説明されておりますのですぐにお風呂にお湯をはりました。
とても便利ですよね、術式が刻印されている魔石が設置されていると。
あっという間に溜まったお湯を止め、支度をしてお風呂に入りました。つい、溜息にも似た、安堵の息を漏らしてしまいます。
それほどに、今日は疲れたのです……精神的に。
それでも、諦めていたはずの家族という存在ができるかも、いいえ、できたことはとても喜ばしく、もはや実家とは呼べないくらいな存在感と化したジョンパルト伯爵家は、わたくしにとって過去のものとなりつつあります。
「……もう、あの子に煩わされることも、苛立つことも、」
我慢することもないのね。
ぽつりとこぼした言葉は、湯舟の中に消えました。
翌日、殿下たちに挨拶をしたあと、お昼を一緒にどうかと誘われました。そこで婚約者を紹介したいからと。是非にとお願いし、授業開始。といっても、二日後に行われるレクリエーションのために少人数の班分けをせねばならず、話し合いでは決まらなかったため、くじ引きなるもので班分けを決めました。
殿下方とは違う班となりましたが、同じ班になった侯爵家と伯爵家のご令嬢、公爵家と侯爵家のご子息と仲良くなりました。そしてレクリエーションをきっかけに、クラスメイトとも仲良くできたのです。
殿下たちの婚約者様たちとも友誼を結ぶことができました。それが、一緒の班になったご令嬢たちです。
週の終わりには公爵家から迎えが来て、改めて両親となってくださった伯父様と伯母様、いとこたちに挨拶をし、お部屋に案内されました。日当たりのいい部屋で、窓からは花が見えます。
その後、ドレスを作ると言われて採寸をしたり、好きな色や似あう色を探され、初めてのことでいろいろと疲れはしましたが、高位貴族ともなれば普通のことだからと言われてしまえば、苦笑するしかありません。
その採寸の時に、わたくしがデビュタントをしていないと知った両親といとこたちは、元両親に憤ってくださいました。そしてデビュタント用のドレスが出来次第、デビューをするそうです。
王城でのデビュタントの式典は毎月行われているそうで、わたくしの場合は早ければ今月末、遅くとも来月にはデビューできるだろうと言われました。
十四歳でデビューをする方がほとんどなのですが、わたくしの場合はミランダと元両親のせいで、その年にデビュタントできませんでしたし。まあ、十八歳になるまでにデビューできれば貴族としていられるそうなので、問題ないようです。
週末に公爵家にお邪魔しましたので、家族となってくださったお父様たちとの交流は二日間という短い時間ではありましたけれど、とても充実していたと思います。
そして週明け、授業が始まる前に殿下から話がある、放課後に時間が欲しいと言われ、頷きました。そして授業が終わった放課後、外部に聞かれるわけにはいかない内容だからと、事情を知っている学園長室に向かいます。そこで元兄とミランダ、ジョンパルト家についてのお話を伺ったのですが……。
そのお部屋で、殿下から、荒唐無稽で信じられないお話を聞くことになりました。
寮自体は隣同士ですので、そこまで荷物を持ってくださるのだそうです。
本当にありがたいことですわ。
話をしながら歩いていますと、あっという間に寮に着きました。マウリシオ様とアロンソ様に少し待っていただき、寮母様を呼びます。
「学院長から話は聞いておりますわ」
「そうでしたか。ありがとうございます。実はお願いがございまして」
「あら。どうなさったの?」
「殿下のご厚意で実家に行ってきたのですが、その時に荷物をひとつと制服を持って帰ってきたのです。ただ、その荷物はソリス侯爵令息様が持ってくださって……」
「まあ、そうなのですね。男性ですから、寮に入ることはできませんしねぇ」
「ええ。寮母であるオルベラ夫人は、空間魔法を使うことができますでしょう? わたくしはまだできなくて……。それで、大変申し訳ないのですけれど、わたくしの部屋に運んでいただきたいと思いまして」
「それくらいならおやすい御用ですわ」
すぐに行きましょうと仰ってくださったイネス・オルベラ夫人にお礼を申し上げ、マウリシオ様とアロンソ様が待っているところへ向かいます。そして空間にしまっていただいていた木箱をオルベラ夫人に渡していただいたのです。
「マウリシオ様、アロンソ様。本日はありがとうございました。助かりましたわ」
「こちらこそ、お役に立てたようで、よかったです」
「複雑だろうが……気落ちしないようにね」
「お気遣いいただき、ありがとうございます」
それではまた明日とお互いに声をかけ、寮に戻るお二人を見送ります。それからオルベラ夫人と一緒にわたくしの部屋へと向かい、指定した場所に木箱を置いていただきました。
「オルベラ夫人、ありがとうございました」
「大丈夫ですわ。もうじき晩餐の時間ですから、遅れないように」
「はい」
もう一度お礼を伝え、扉を閉めます。
「……よかった」
ベッドに座り、ぽつりと呟きます。わたくしの部屋は、元々備え付けてあったベッドと机と椅子、クローゼットしかありません。本来は自分の家からテーブルやソファーを持ってくるのですが、わたくしの実家はあのような状態でしたしね。
今週末にはカレスティア家に行くことになっておりますから、お父様にご相談いたしましょう。
「制服を片付けないと……」
木箱の上にのっていた制服を持ち、クローゼットの扉を開けます。ハンガーがありましたので、そこに三着分かけました。他にも鞄や靴などもあります。明日から制服を着れると思うと、やっと入学したのだという感慨も沸いてきます。
クローゼット内は今のところ制服一式以外は何も入っておりませんが、木箱の底にはお手製のドレスやワンピース、寝間着を隠してあります。それは晩餐を食べてから取り出すことにいたしましょう。
食堂へと向かい、出されたものを食べます。少し量が多くて残してしまいました。
作ってくださった方にお詫びをし、部屋へと戻ります。友人がいればそのままサロンへ行っておしゃべりをするのですが、わたくしにはおりませんし、昼間のことがあってクラスメイトも遠巻きに見ているだけでしたしね。
前途多難ですと内心で溜息をついている間に部屋に到着しましたので、中へ入ると木箱があるところへと向かいます。そして中からドレスや装飾品、寝間着を出し、一息つきました。
お風呂も備え付けられていて、とても便利です。本来であれば侍女が用意をするのでしょうけれど、わたくしにはおりませんし。
もちろん、伯爵家でも自分で用意しておりましたので、やり方さえ教えていただければ用意できます。当然のことながら、説明されておりますのですぐにお風呂にお湯をはりました。
とても便利ですよね、術式が刻印されている魔石が設置されていると。
あっという間に溜まったお湯を止め、支度をしてお風呂に入りました。つい、溜息にも似た、安堵の息を漏らしてしまいます。
それほどに、今日は疲れたのです……精神的に。
それでも、諦めていたはずの家族という存在ができるかも、いいえ、できたことはとても喜ばしく、もはや実家とは呼べないくらいな存在感と化したジョンパルト伯爵家は、わたくしにとって過去のものとなりつつあります。
「……もう、あの子に煩わされることも、苛立つことも、」
我慢することもないのね。
ぽつりとこぼした言葉は、湯舟の中に消えました。
翌日、殿下たちに挨拶をしたあと、お昼を一緒にどうかと誘われました。そこで婚約者を紹介したいからと。是非にとお願いし、授業開始。といっても、二日後に行われるレクリエーションのために少人数の班分けをせねばならず、話し合いでは決まらなかったため、くじ引きなるもので班分けを決めました。
殿下方とは違う班となりましたが、同じ班になった侯爵家と伯爵家のご令嬢、公爵家と侯爵家のご子息と仲良くなりました。そしてレクリエーションをきっかけに、クラスメイトとも仲良くできたのです。
殿下たちの婚約者様たちとも友誼を結ぶことができました。それが、一緒の班になったご令嬢たちです。
週の終わりには公爵家から迎えが来て、改めて両親となってくださった伯父様と伯母様、いとこたちに挨拶をし、お部屋に案内されました。日当たりのいい部屋で、窓からは花が見えます。
その後、ドレスを作ると言われて採寸をしたり、好きな色や似あう色を探され、初めてのことでいろいろと疲れはしましたが、高位貴族ともなれば普通のことだからと言われてしまえば、苦笑するしかありません。
その採寸の時に、わたくしがデビュタントをしていないと知った両親といとこたちは、元両親に憤ってくださいました。そしてデビュタント用のドレスが出来次第、デビューをするそうです。
王城でのデビュタントの式典は毎月行われているそうで、わたくしの場合は早ければ今月末、遅くとも来月にはデビューできるだろうと言われました。
十四歳でデビューをする方がほとんどなのですが、わたくしの場合はミランダと元両親のせいで、その年にデビュタントできませんでしたし。まあ、十八歳になるまでにデビューできれば貴族としていられるそうなので、問題ないようです。
週末に公爵家にお邪魔しましたので、家族となってくださったお父様たちとの交流は二日間という短い時間ではありましたけれど、とても充実していたと思います。
そして週明け、授業が始まる前に殿下から話がある、放課後に時間が欲しいと言われ、頷きました。そして授業が終わった放課後、外部に聞かれるわけにはいかない内容だからと、事情を知っている学園長室に向かいます。そこで元兄とミランダ、ジョンパルト家についてのお話を伺ったのですが……。
そのお部屋で、殿下から、荒唐無稽で信じられないお話を聞くことになりました。
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