オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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番外編・小話

ある日の穂積家 3~伯母と姪の戯れ~

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六女、瑠菜視点です。
猫の日にちなんだお話。



*******


 久しぶりに帰って来た実家、久しぶりに姉弟が全員揃った日。長女の瑠香の側には旦那さんの圭輔さんが、泪の側には嫁となったお圭ちゃんがいる。彼女に会うのも随分久しぶりで、姪の麗に至っては、生まれた時に見て以来だった。

「きゃー♪」
「あら、気に入ったみたいよ?」
「本当?! よかった!」
「あー♪」

 泪にそう言われて嬉しくなり、手を伸ばして来た麗の手のひらをちょいちょい、とつつくと、麗がキュッと私の指を握って来た。麗の膝には、私が作った二十センチほどの大きさの招き猫のぬいぐるみが乗っている。

「すごいですね。瑠菜義姉さんが作ったんですか?」
「うん。瑠香姉さんほど、上手くないけど……」
「そんなことないですよ? ね? 麗」
「あー♪」

 麗は握っていた私の指を離すと、招き猫を触ったり叩いたりしている。


『麗に何か作ってあげない?』

 そう言い出したのは、姉の瑠瀬だった。先日、瑠瀬のホテルに瑠香の元旦那の高林 充が現れてお圭ちゃんと何やらもめたあとで、麗のための服を大量に買って帰ったというのだ。それを見た姉は、そう言えば麗には何もあげてないと思い至り、今回のことを思い付いたのだという。

 瑠香はロンパースを作って来た。しかも、猫の形をしたものや、犬の形をしたもの、絵本のアンパンやバイキンのキャラクターのものまである。麗が今着ているものは猫の形のロンパースで、茶と白のトラ縞模様。ご丁寧にしっぽまでついている。帽子にあたる部分は猫の顔になっており、口を開けたような部分から顔が出るようになっていた。

 瑠璃は靴下数足とオープンハートのペンダントで、その隣には麗の守護石が一つついている。「まだ早かったかしら」と苦笑しつつも、「大きくなったら渡して」と言って泪に渡していた。

 瑠音は大量のよだれ掛け。色とりどりのそれにはいろいろな模様が刺繍されていた。そのうちの一枚は、今麗にかけられている。

 瑠瀬は茶色いリュック。後ろには天使の羽がついていた。二回分の紙オムツと、哺乳瓶やハンカチがしまえるものだった。瑠香に教わりながら、瑠瀬が作ったらしい。

 瑠美はロンパース数枚と、シャツやスカートなどの着回しができるような服一式が二種類。「不器用だから作れなかった。市販のでごめんね」と言いつつもよくよく聞くと、フランスのブランド、プチバトーのものだった。チェックやドット、無地もあって可愛らしい色合いがたくさんあった。

 そして私は招き猫のぬいぐるみ。右か左を上げたものではなく両手を上げたもので、三毛猫の模様にしてある。首に鈴がついているがそれは布でできているもので、ぬいぐるみ自体も麗が舐めたり噛んだりしても大丈夫な素材で作ってある。

 麗が一番喜んでいたのは、そのぬいぐるみだった。ぬいぐるみの中には鈴が仕込んであり、ぬいぐるみを振ったり叩いたりするたびに鈴の音が鳴る。それが面白いのか、麗は笑いながらしきりに招き猫と遊んでいた。

「だー♪」

 チリン。

「あー」

 チリン。

 遊んでいる猫のお腹を押してあげると、猫が「ニャー」と鳴いた。

「う?」

 麗が振るとチリン。私がお腹を押すと「ニャー」。

「きゃー♪」

 ぶん、と手足を振りながら麗はかなりのご機嫌だった。

「瑠菜、頑張ったわね」
「ありがとう。うん、頑張ったよ」

 麗のはしゃぐ声と、チリン、チリン、と鳴る招き猫を見ながら、頑張ってよかった……と、そう思った。

 遊び疲れてしまったらしい麗は、ぬいぐるみを抱き締めてコロンと寝転がると、そのまま眠ってしまった。


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