129 / 155
番外編・小話
ある日の在沢家 2
しおりを挟む
圭が在沢家の養女になってから、初めて笑った時のエピソードです。
*******
「なかなか笑ってくれないな……」
「あんなことがあったんだもの、仕方ないわよ」
彼女……圭が娘になって、初めて長期間帰宅する夏休み。もう一人姉ができたことがよくわかっていない翼はともかく、『お姉ちゃん、お姉ちゃん』と、週末に帰って来るたびにまとわりついていた真琴は嬉しくて仕方がないようで、到着早々圭にまとわりついていた。
真琴は先に退院したものの、圭は主治医の許可がなかなかおりず、退院まで時間がかかってしまった。やっと連れて帰ってこれた時も、退院時に主治医から『多感な年頃ですし、彼女が気にするだろうから』と言われ、途中で眼鏡やらカラーコンタクトを買って圭に持たせ、ベッドや布団も圭が退院する前に買い、届けてもらって部屋に設置した。もちろん、机や椅子も。
あの時一緒に住むつもりで全て用意してそう話したら、『全寮制の学校だから』とあっさり言われてしまった。
『ここから通えばいいじゃないか』
『えっと、ここからだと片道一時間半はかかるし、私の足で一時間半かけて通うのは無理です。それに、寮に入るのはもう決まってるから……』
少し困った口調でそう言った圭は、真琴が呼びに来て真琴と一緒に遊んでいたが。
『もしかしたらあの子、遠慮してるのかしら……』
『多分、な。下手すりゃ、この家に来ないつもりでいるかもしれないが』
『それは困るわ!』
『何でお前が困るんだ?』
『だって、真琴や翼同様、愛情をいっぱい注いであげたいもの!』
それは俺も同じだが、如何せん圭が遠慮してしまっていては……まして、寮に入ってしまっては充分には注いでやれない。
『まあ……毎週末は無理でも、せめて月イチとか長い休みには帰って来るように説得するか』
そう説得して、週末や長期間の休みには必ず帰ることを約束させて、今に至る。
「夕飯、どうしようかしら」
「なんで?」
「圭が何を好きで、何を嫌いかがわからないのよ。どうせなら、好きなものを食べてほしいでしょ?」
「まあな……。だったら、一緒に買い物に行くか? 圭が食べたいものを選んでもらったらどうだ?」
そう言って買い物に連れ出したのに、結局わかったのは好き嫌いがないことだった。残念に思いつつオモチャが見たいと駄々をこねた翼に苦笑し、オモチャが置いてある場所に行くと圭が食い入るようにじっとぬいぐるみを見ていた。それは、ディズニーの、蜂蜜の壺を持ち、赤いベストを着た黄色い熊だった。
「この黄色い熊が好きなのか?」
「あ、お父……さん……。うん」
「買ってやろうか?」
「ううん、いらない。そのぶん、真琴ちゃ……真琴や翼に買ってあげて? 足が痛いから、あそこで座って待ってるね」
そう言って、名残惜しそうにベンチで荷物を見ていた妻の場所に行って交代していた。
最近、やっと「お父さん、お母さん」と呼んでくれるようになった。最初は素っ気なく、嫌われてるんじゃないかとも思ったのだが、『親に構われたことがない』と聞いてからは、ただ単にどんな態度を取っていいかわからなかったんだなと思うようになり、ますます構ってやった。
(突破口を見つけた、かな?)
側に寄って来た妻に今の話をすると、二つ返事で「いいわよ」と言ってくれたので、真琴や翼のとは別に、二十センチ位のサイズのやつと、レジ近くにあった限定品を買った。もちろん、圭には内緒で。
家に帰ってから、それぞれにおもちゃの紙袋を渡す。特に圭はもらえるとは思っていなかったのか、本当にびっくりした顔をしていた。
「……いいの?」
「もちろん」
「中身はなに?」
「ふふーん。開けてみな?」
そう言って圭に開けさせると。
「これ……! どうして……?」
「圭が好きだ、って言ったからな」
「でも、あの時いらない、って……」
「だが、本当はほしかったんだろ?」
そう優しく聞くと、黄色い熊を二つとも抱き締めたままこくん、と頷く。
「埃がつくと汚れちゃうから、このビニール袋に入れたまま飾っておいたら?」
そう言って妻から差し出された袋に黄色い熊を入れて、リボンで縛った圭は、またそれをギュッと抱き締めたあとで
「お父さん、お母さん、ありがとう」
そう言って、初めて満面の笑みを浮かべて笑った。
***
「あれは、本当に可愛かったわよね」
「え、そうなの?! アタシも見たかったわ!」
オネエ言葉全開の義理息子の泪は、悔しそうな顔をしながらも、嬉しそうに話を聞いている。孫を連れて週末に遊びに来た娘夫婦。圭は今、もう一人の娘の真琴やその友人たちに料理を教えていて、この場所にはいなかった。
「今度アタシも買ってあげようかしら」
「いいんじゃないか? 特に、『限定品』には弱いぞ」
「お義父さん、ホント?! じゃあ、今度ディズニーリゾートに皆で行く?」
「マジ?! 泪さん、連れてってくれんの?!」
興奮した様子で口を挟んだのは、長男の翼だ。彼もディズニーのキャラクターが好きだ。
「もちろん! 泊まり掛けでどうかしら?」
「行く! 学校サボってでも行く!」
「翼……? アタシが学校をサボることを許すと思ってんの?」
「う……思いません……」
しどろもどろになった翼に、泪は少しお説教をしたあとで、二人でいつ行くのか相談を始めた。
「あの時はどうなるかとハラハラしたけど……。圭が幸せそうで、本当によかったわ」
そう呟いた妻に「そうだな」と返し、義息子と長男のやりとりを聞きながら、お茶を啜った。
*******
「なかなか笑ってくれないな……」
「あんなことがあったんだもの、仕方ないわよ」
彼女……圭が娘になって、初めて長期間帰宅する夏休み。もう一人姉ができたことがよくわかっていない翼はともかく、『お姉ちゃん、お姉ちゃん』と、週末に帰って来るたびにまとわりついていた真琴は嬉しくて仕方がないようで、到着早々圭にまとわりついていた。
真琴は先に退院したものの、圭は主治医の許可がなかなかおりず、退院まで時間がかかってしまった。やっと連れて帰ってこれた時も、退院時に主治医から『多感な年頃ですし、彼女が気にするだろうから』と言われ、途中で眼鏡やらカラーコンタクトを買って圭に持たせ、ベッドや布団も圭が退院する前に買い、届けてもらって部屋に設置した。もちろん、机や椅子も。
あの時一緒に住むつもりで全て用意してそう話したら、『全寮制の学校だから』とあっさり言われてしまった。
『ここから通えばいいじゃないか』
『えっと、ここからだと片道一時間半はかかるし、私の足で一時間半かけて通うのは無理です。それに、寮に入るのはもう決まってるから……』
少し困った口調でそう言った圭は、真琴が呼びに来て真琴と一緒に遊んでいたが。
『もしかしたらあの子、遠慮してるのかしら……』
『多分、な。下手すりゃ、この家に来ないつもりでいるかもしれないが』
『それは困るわ!』
『何でお前が困るんだ?』
『だって、真琴や翼同様、愛情をいっぱい注いであげたいもの!』
それは俺も同じだが、如何せん圭が遠慮してしまっていては……まして、寮に入ってしまっては充分には注いでやれない。
『まあ……毎週末は無理でも、せめて月イチとか長い休みには帰って来るように説得するか』
そう説得して、週末や長期間の休みには必ず帰ることを約束させて、今に至る。
「夕飯、どうしようかしら」
「なんで?」
「圭が何を好きで、何を嫌いかがわからないのよ。どうせなら、好きなものを食べてほしいでしょ?」
「まあな……。だったら、一緒に買い物に行くか? 圭が食べたいものを選んでもらったらどうだ?」
そう言って買い物に連れ出したのに、結局わかったのは好き嫌いがないことだった。残念に思いつつオモチャが見たいと駄々をこねた翼に苦笑し、オモチャが置いてある場所に行くと圭が食い入るようにじっとぬいぐるみを見ていた。それは、ディズニーの、蜂蜜の壺を持ち、赤いベストを着た黄色い熊だった。
「この黄色い熊が好きなのか?」
「あ、お父……さん……。うん」
「買ってやろうか?」
「ううん、いらない。そのぶん、真琴ちゃ……真琴や翼に買ってあげて? 足が痛いから、あそこで座って待ってるね」
そう言って、名残惜しそうにベンチで荷物を見ていた妻の場所に行って交代していた。
最近、やっと「お父さん、お母さん」と呼んでくれるようになった。最初は素っ気なく、嫌われてるんじゃないかとも思ったのだが、『親に構われたことがない』と聞いてからは、ただ単にどんな態度を取っていいかわからなかったんだなと思うようになり、ますます構ってやった。
(突破口を見つけた、かな?)
側に寄って来た妻に今の話をすると、二つ返事で「いいわよ」と言ってくれたので、真琴や翼のとは別に、二十センチ位のサイズのやつと、レジ近くにあった限定品を買った。もちろん、圭には内緒で。
家に帰ってから、それぞれにおもちゃの紙袋を渡す。特に圭はもらえるとは思っていなかったのか、本当にびっくりした顔をしていた。
「……いいの?」
「もちろん」
「中身はなに?」
「ふふーん。開けてみな?」
そう言って圭に開けさせると。
「これ……! どうして……?」
「圭が好きだ、って言ったからな」
「でも、あの時いらない、って……」
「だが、本当はほしかったんだろ?」
そう優しく聞くと、黄色い熊を二つとも抱き締めたままこくん、と頷く。
「埃がつくと汚れちゃうから、このビニール袋に入れたまま飾っておいたら?」
そう言って妻から差し出された袋に黄色い熊を入れて、リボンで縛った圭は、またそれをギュッと抱き締めたあとで
「お父さん、お母さん、ありがとう」
そう言って、初めて満面の笑みを浮かべて笑った。
***
「あれは、本当に可愛かったわよね」
「え、そうなの?! アタシも見たかったわ!」
オネエ言葉全開の義理息子の泪は、悔しそうな顔をしながらも、嬉しそうに話を聞いている。孫を連れて週末に遊びに来た娘夫婦。圭は今、もう一人の娘の真琴やその友人たちに料理を教えていて、この場所にはいなかった。
「今度アタシも買ってあげようかしら」
「いいんじゃないか? 特に、『限定品』には弱いぞ」
「お義父さん、ホント?! じゃあ、今度ディズニーリゾートに皆で行く?」
「マジ?! 泪さん、連れてってくれんの?!」
興奮した様子で口を挟んだのは、長男の翼だ。彼もディズニーのキャラクターが好きだ。
「もちろん! 泊まり掛けでどうかしら?」
「行く! 学校サボってでも行く!」
「翼……? アタシが学校をサボることを許すと思ってんの?」
「う……思いません……」
しどろもどろになった翼に、泪は少しお説教をしたあとで、二人でいつ行くのか相談を始めた。
「あの時はどうなるかとハラハラしたけど……。圭が幸せそうで、本当によかったわ」
そう呟いた妻に「そうだな」と返し、義息子と長男のやりとりを聞きながら、お茶を啜った。
21
お気に入りに追加
2,350
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる