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スピンオフ
葎(むぐら)に佇む、美しき樹 後編
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年甲斐もなく、心臓がドキドキしている。恥ずかしさと、不感症と言われたらどうしようという不安で。それを知ってか知らずか、彼は「一緒にお風呂入ろう」と楽しげに言い、自身の服と私の服を剥いで行く。
「は?!」
「だから、お風呂。元彼と入ったことくらいあるでしょ?」
「……ない」
「マジで?! 何なの? そいつ。本当にヤな感じ!」
ふん、と鼻を鳴らした彼は「じゃあ、恋人と一緒にお風呂、初体験だね♪」と言って私の背中を押してお風呂に押し込むと、湯船にお湯を溜め始めた。
「おっきなお風呂だね」
「そ、そうね……」
「美樹……緊張してるの?」
ぐっと腰を引かれ、彼の腕の中へと収まると、スッと顔が寄せられる。
「ん……、んん……っ」
ぬるりと彼の舌が入り込み、上顎や歯列をなぞられ、舌を絡められると背中にぞくりとしたものが走る。
「身体、洗ってあげるね」
「えっ?!」
逃げる間もなく後ろから抱き締められると、そのまま彼の膝に乗せられて足をぐっと開かされた。
(こ、この体勢、恥ずかしい!)
正面じゃないだけまだマシ、と自分に言い聞かせ、何とか我慢していると、背中にスポンジが当てられて擦られた。
「痛くない?」
「ううん」
「よかった。じゃあ、腕貸して」
そう言われ腕を出すと、同じように擦られる。
「今度は前ね」
今度はスポンジではなく彼の手が前に回され、太股やお腹を撫でて行く。脇腹を撫で、身体を這うように胸が掴まれ、ゆっくりと揉まれた。
「あ……」
「美樹の胸、気持ちいいね。それに、美樹の身体はいい匂いがする……」
「あ……っ、ん……っ」
円を描くように胸を回されながら揉まれ、首筋に彼の唇と舌が這うと、今まで感じたことのないぞくぞくとした感覚が背中を走る。
「美樹、本当に不感症なの? ほら、乳首が勃って来たよ?」
「あっ、あんっ」
キュッと乳首を摘ままれ、クリクリと捏ねられる。
「やっ、あんっ」
「美樹、可愛い」
彼はチュッと頬っぺたにキスを落とすと、泡を洗い流して私を抱き上げ、湯船に入ると身体を洗っていた時と同じような体勢で座らされ、続きと謂わんばかりに胸を揉み始めた。
「あ……っ、は……っ、ん……っ」
「これで不感症、って言われてもね……」
はあと溜息をついた彼は胸を揉むのを止めると、また私を抱き上げてお風呂から上がり、水滴を拭いてくれたあとでまた抱き上げ、ベッドへと連れて行かれた。
「無理させたら、ごめんね」
そう言うと彼は私に覆い被さり、愛撫を始めた。舌を絡める深いキスをしながら胸を揉み、乳首を擦る。首筋を舐めながら胸にたどり着き、乳首をなぶりながら胸を揉まれ、胸を愛撫されながら秘裂をまさぐる。
こんな感覚、知らない。子宮のあたりからぞくぞくしたものが這い上がるなんて感覚、知らない。彼が……葎の指が私の蜜壺を掻き回すたびに……ぐちゅり、ぐちゅり、と卑猥な水音が鳴るたびに背中にぞくぞくとしたものが走り、突起と中の部分を擦られた瞬間背中を何かが走り抜け、目の奥が真っ白になった。
「ああっ、あああっ!」
「イったね」
「イ、く……?」
「……マジかよ……」
ぶつぶつと呟いた葎は、ゴムの封を切ると自身に被せ、ぐっと私の足を開くと、ズブリと彼のモノを蜜壺に押し込む。
「あああっ! やっ! そんなおっきいの、入らな……っ、あああっ!」
「嬉しいこと、言ってくれるんだね」
ズルズルと入り込む葎のモノは、元彼よりも大きく、硬くて熱いモノ、だった。
***
信じられなかった。彼女が不感症だなんてことも、イったことがないってことも。僕の愛撫に身体を震わせ、啼き、喘いでいる彼女はどうみても感じている。それが嬉しい。
ぐっ、と足を開いて彼女の蜜壺に肉竿の尖端を挿れると、彼女の身体がびくりと震えた。
「あああっ! やっ! そんなおっきいの、入らな……っ、あああっ!」
「嬉しいこと、言ってくれるんだね」
つまり、彼女……美樹は不感症ではなく、元彼の性技が下手だったということと、元彼自身のイチモツは美樹に合わなかったということだ。僕の肉竿には、こんなに絡みついて離さないと謂わんばかりなのに。
美樹の腰を抱えて一気にナカに入れると、彼女に覆い被さり、キスをする。
「んんっ! んうっ、んんっ!」
キスをしながら腰をゆっくりと動かし、胸を揉みながら乳首を擦ると、肉竿をギュッと締め付ける。
「……っ、はあ、美樹……気持ちいい?」
「ああっ、やあんっ! 葎、葎ぅ! くる、またさっきのがきちゃう!」
「いいよ、一緒に、イこう」
跳ねる美樹の身体を押さえ込むように抱き締め、乳首を吸って舌で転がしては舐めながら、徐々に腰を振るスピードを上げると、美樹が背中に腕を回し、しがみついて来た。
「あんっ! ああっ、やあんっ! あんっ! あああっ!」
「っく……!」
ゴム越しに飛沫を吐き出すと、美樹もびくびくと身体を震わせ、甲高い声を上げてイった。
「はあっ、はあっ、……り、つ……」
「これで、美樹が不感症じゃない、ってわかったでしょ?」
「……うん」
ズルリ、と美樹のナカから肉竿を抜くと、ゴムを始末する。そのまま美樹の秘裂に顔を埋め、蜜と秘唇を舐め、突起を弄りながら胸も揉む。
「やあっ! ひゃあっ! ダメっ!」
「もしかして、ココも舐められたこと、ない?」
「な、ないっ! あんっ!」
美樹の言葉に、そいつ、女の身体を知らなすぎ。てか、身勝手すぎ! と憤る。
美樹は僕の愛撫にこんなにも感じて、甘く啼いているのに。
蜜壺に舌を入れて舐めたり突起を舐めたり吸ったりしながら、両胸を揉んだり乳首を捏ね回す。
身体を起こしてゴムを取り、封を破こうとしたら美樹に止められた。
「美樹……?」
「今日は、大丈夫な、日、だから……、そのまま、来て……?」
「いいの……?」
うん、と言って笑った彼女があまりにも可愛く、キスをするとそのまま蜜壺に肉竿を埋める。
「っは、気持ち、いい」
「葎……っ」
「美樹……っ、好きだよ……っ!」
「私も、葎が、好き……っ! あんっ! ああっ、やあんっ!」
美樹を啼かせ、喘がせながら何度も抱き合い、何度もナカに飛沫を吐き出す。幸せに浸りながら、美樹を腕に抱いて眠ったのは真夜中を過ぎた頃¥ころだった。
翌週、美樹が「同期会をやるから一緒に来て」と言われ、彼女にくっついて行った、その帰り。忘れ物をした美樹の代わりに店に取りに行って戻ると、美樹の側には美樹と同じくらいの身長の、知らない男が立ち塞がっていた。
「俺、やっぱり美樹じゃないとダメなんだよ!」
「今更何を言ってるの?! 妊娠した彼女はどうしたのよ!」
「何でそれを知ってるんだ?! ……妊娠は嘘だったんだ! だから、もう一度……」
「美樹、お待たせ。その男、誰?」
男の話を遮り、男から庇うように腰を引き寄せて抱き締めると、美樹がホッとしたように寄り添って来た。
「……元彼」
「そうなんだ。で? 元彼さんは、今更何の用? あ、寄りを戻すっていうのは無しね。美樹はもう、僕の恋人だから」
「……っ! そ、そんな不感症女のどこがいいんだ!」
男がそう言った途端、彼女の身体がびくりと震えたため、スッと目を細めて男を睨み付けると、男はびくりと身体を震わせた。
「ずいぶん酷いことを言うね。彼女は不感症なんかじゃないよ」
「葎……」
「だけど、実際に!」
そうしても別れさせて自分のものにしたいらしい元彼に憤る。そんなことを言っても、美樹は離れて行くだけなのに。だから事実を突きつける。
「僕の前では、可愛く啼いて、乱れるよ?」
「……え?」
「つまり、あんたが下手なだけでしょ? 自分の下手さ加減を美樹のせいにするなよ!」
「な……っ! この……っ!」
怒りで顔を赤くしながら殴りかかって来た男。美樹に当たらないように彼女を脇にどかすと、昔、圭がやっていた動作を思い出す。できるかな……と思いつつも、彼の手を左手で受け流し、右手の親指を畳んで他の四本の指を伸ばし、頬ギリギリのところに右手を素早く伸ばすと、男はギョッとした顔をして固まった。
「僕、空手の黒帯で有段者なんだよね。素人に手を出しちゃいけないんだけど……これ以上彼女に付きまとったり侮辱したりしたら、今度は腕をへし折るよ?」
「ひ……っ!」
一気に青ざめた男は、そのまま一目散で逃げ出した。
「ったく……。やっぱりヤな感じの男! 美樹に謝れっての!」
ふん、と鼻息を付くと、美樹が抱き付いて来た。
「大丈夫?!」
「平気だよ」
そう言うと、美樹はホッとした顔をして笑顔を浮かべた。
「葎は、空手をやってるのね」
「やってないよ」
「え?! でも、今……」
僕の話に、美樹が戸惑う。
「ああ、あれは嘘」
「嘘?! でも、本当に空手をやってるように見えたよ?」
「ああ、昔、散々見てたから」
「何を?」
「圭やじいちゃんの動き」
そう言うと、美樹は「は?!」と言って、口をポカンと開けた。
「じいちゃんは空手の師範で、道場をやってるんだ。圭は、そんなじいちゃんに空手を習ってたんだ」
「……え」
「圭が事故に遭った話をしたよね? 事故に遭う前は本当に強くて。十も年上の男を倒してたりしてたよ」
「え? え?」
「黒帯で有段者なのは圭で、僕は全くのド素人。僕は圭のその動きを真似ただけ」
そう伝えると、美樹は「えええええっ!?」と叫び声を上げた。
――お腹を大きく膨らませた圭が、旦那さんである泪義兄さんと自宅に泊まりに来た一ヶ月後。僕は美樹にプロポーズをし、承諾をもらった。
「は?!」
「だから、お風呂。元彼と入ったことくらいあるでしょ?」
「……ない」
「マジで?! 何なの? そいつ。本当にヤな感じ!」
ふん、と鼻を鳴らした彼は「じゃあ、恋人と一緒にお風呂、初体験だね♪」と言って私の背中を押してお風呂に押し込むと、湯船にお湯を溜め始めた。
「おっきなお風呂だね」
「そ、そうね……」
「美樹……緊張してるの?」
ぐっと腰を引かれ、彼の腕の中へと収まると、スッと顔が寄せられる。
「ん……、んん……っ」
ぬるりと彼の舌が入り込み、上顎や歯列をなぞられ、舌を絡められると背中にぞくりとしたものが走る。
「身体、洗ってあげるね」
「えっ?!」
逃げる間もなく後ろから抱き締められると、そのまま彼の膝に乗せられて足をぐっと開かされた。
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正面じゃないだけまだマシ、と自分に言い聞かせ、何とか我慢していると、背中にスポンジが当てられて擦られた。
「痛くない?」
「ううん」
「よかった。じゃあ、腕貸して」
そう言われ腕を出すと、同じように擦られる。
「今度は前ね」
今度はスポンジではなく彼の手が前に回され、太股やお腹を撫でて行く。脇腹を撫で、身体を這うように胸が掴まれ、ゆっくりと揉まれた。
「あ……」
「美樹の胸、気持ちいいね。それに、美樹の身体はいい匂いがする……」
「あ……っ、ん……っ」
円を描くように胸を回されながら揉まれ、首筋に彼の唇と舌が這うと、今まで感じたことのないぞくぞくとした感覚が背中を走る。
「美樹、本当に不感症なの? ほら、乳首が勃って来たよ?」
「あっ、あんっ」
キュッと乳首を摘ままれ、クリクリと捏ねられる。
「やっ、あんっ」
「美樹、可愛い」
彼はチュッと頬っぺたにキスを落とすと、泡を洗い流して私を抱き上げ、湯船に入ると身体を洗っていた時と同じような体勢で座らされ、続きと謂わんばかりに胸を揉み始めた。
「あ……っ、は……っ、ん……っ」
「これで不感症、って言われてもね……」
はあと溜息をついた彼は胸を揉むのを止めると、また私を抱き上げてお風呂から上がり、水滴を拭いてくれたあとでまた抱き上げ、ベッドへと連れて行かれた。
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「……マジかよ……」
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「あああっ! やっ! そんなおっきいの、入らな……っ、あああっ!」
「嬉しいこと、言ってくれるんだね」
ズルズルと入り込む葎のモノは、元彼よりも大きく、硬くて熱いモノ、だった。
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ぐっ、と足を開いて彼女の蜜壺に肉竿の尖端を挿れると、彼女の身体がびくりと震えた。
「あああっ! やっ! そんなおっきいの、入らな……っ、あああっ!」
「嬉しいこと、言ってくれるんだね」
つまり、彼女……美樹は不感症ではなく、元彼の性技が下手だったということと、元彼自身のイチモツは美樹に合わなかったということだ。僕の肉竿には、こんなに絡みついて離さないと謂わんばかりなのに。
美樹の腰を抱えて一気にナカに入れると、彼女に覆い被さり、キスをする。
「んんっ! んうっ、んんっ!」
キスをしながら腰をゆっくりと動かし、胸を揉みながら乳首を擦ると、肉竿をギュッと締め付ける。
「……っ、はあ、美樹……気持ちいい?」
「ああっ、やあんっ! 葎、葎ぅ! くる、またさっきのがきちゃう!」
「いいよ、一緒に、イこう」
跳ねる美樹の身体を押さえ込むように抱き締め、乳首を吸って舌で転がしては舐めながら、徐々に腰を振るスピードを上げると、美樹が背中に腕を回し、しがみついて来た。
「あんっ! ああっ、やあんっ! あんっ! あああっ!」
「っく……!」
ゴム越しに飛沫を吐き出すと、美樹もびくびくと身体を震わせ、甲高い声を上げてイった。
「はあっ、はあっ、……り、つ……」
「これで、美樹が不感症じゃない、ってわかったでしょ?」
「……うん」
ズルリ、と美樹のナカから肉竿を抜くと、ゴムを始末する。そのまま美樹の秘裂に顔を埋め、蜜と秘唇を舐め、突起を弄りながら胸も揉む。
「やあっ! ひゃあっ! ダメっ!」
「もしかして、ココも舐められたこと、ない?」
「な、ないっ! あんっ!」
美樹の言葉に、そいつ、女の身体を知らなすぎ。てか、身勝手すぎ! と憤る。
美樹は僕の愛撫にこんなにも感じて、甘く啼いているのに。
蜜壺に舌を入れて舐めたり突起を舐めたり吸ったりしながら、両胸を揉んだり乳首を捏ね回す。
身体を起こしてゴムを取り、封を破こうとしたら美樹に止められた。
「美樹……?」
「今日は、大丈夫な、日、だから……、そのまま、来て……?」
「いいの……?」
うん、と言って笑った彼女があまりにも可愛く、キスをするとそのまま蜜壺に肉竿を埋める。
「っは、気持ち、いい」
「葎……っ」
「美樹……っ、好きだよ……っ!」
「私も、葎が、好き……っ! あんっ! ああっ、やあんっ!」
美樹を啼かせ、喘がせながら何度も抱き合い、何度もナカに飛沫を吐き出す。幸せに浸りながら、美樹を腕に抱いて眠ったのは真夜中を過ぎた頃¥ころだった。
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「俺、やっぱり美樹じゃないとダメなんだよ!」
「今更何を言ってるの?! 妊娠した彼女はどうしたのよ!」
「何でそれを知ってるんだ?! ……妊娠は嘘だったんだ! だから、もう一度……」
「美樹、お待たせ。その男、誰?」
男の話を遮り、男から庇うように腰を引き寄せて抱き締めると、美樹がホッとしたように寄り添って来た。
「……元彼」
「そうなんだ。で? 元彼さんは、今更何の用? あ、寄りを戻すっていうのは無しね。美樹はもう、僕の恋人だから」
「……っ! そ、そんな不感症女のどこがいいんだ!」
男がそう言った途端、彼女の身体がびくりと震えたため、スッと目を細めて男を睨み付けると、男はびくりと身体を震わせた。
「ずいぶん酷いことを言うね。彼女は不感症なんかじゃないよ」
「葎……」
「だけど、実際に!」
そうしても別れさせて自分のものにしたいらしい元彼に憤る。そんなことを言っても、美樹は離れて行くだけなのに。だから事実を突きつける。
「僕の前では、可愛く啼いて、乱れるよ?」
「……え?」
「つまり、あんたが下手なだけでしょ? 自分の下手さ加減を美樹のせいにするなよ!」
「な……っ! この……っ!」
怒りで顔を赤くしながら殴りかかって来た男。美樹に当たらないように彼女を脇にどかすと、昔、圭がやっていた動作を思い出す。できるかな……と思いつつも、彼の手を左手で受け流し、右手の親指を畳んで他の四本の指を伸ばし、頬ギリギリのところに右手を素早く伸ばすと、男はギョッとした顔をして固まった。
「僕、空手の黒帯で有段者なんだよね。素人に手を出しちゃいけないんだけど……これ以上彼女に付きまとったり侮辱したりしたら、今度は腕をへし折るよ?」
「ひ……っ!」
一気に青ざめた男は、そのまま一目散で逃げ出した。
「ったく……。やっぱりヤな感じの男! 美樹に謝れっての!」
ふん、と鼻息を付くと、美樹が抱き付いて来た。
「大丈夫?!」
「平気だよ」
そう言うと、美樹はホッとした顔をして笑顔を浮かべた。
「葎は、空手をやってるのね」
「やってないよ」
「え?! でも、今……」
僕の話に、美樹が戸惑う。
「ああ、あれは嘘」
「嘘?! でも、本当に空手をやってるように見えたよ?」
「ああ、昔、散々見てたから」
「何を?」
「圭やじいちゃんの動き」
そう言うと、美樹は「は?!」と言って、口をポカンと開けた。
「じいちゃんは空手の師範で、道場をやってるんだ。圭は、そんなじいちゃんに空手を習ってたんだ」
「……え」
「圭が事故に遭った話をしたよね? 事故に遭う前は本当に強くて。十も年上の男を倒してたりしてたよ」
「え? え?」
「黒帯で有段者なのは圭で、僕は全くのド素人。僕は圭のその動きを真似ただけ」
そう伝えると、美樹は「えええええっ!?」と叫び声を上げた。
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