オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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圭視点

Morning

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(ん……身体が重い……)

 何かが上に乗っている感じがして身動ぐけれど、動けなかった。
 そして、それとは別の感覚……身体が温かい感じがする。まるで包まれているようで、守られているようで、すごく安心する。
 この安心感の中もう一度寝ようとして、それとは別の温かいものが胸を掠めて行く。くすぐったさに目を開け下を見ると黒くて軟らかいものが目の前にあり、手が私の身体に巻き付いていて、その手がさわさわと蠢く。そして私はなぜか上半身裸だった。
 思わず「きゃっ?!」と悲鳴をあげ、慌てて口を塞ぐ。

(どうしよう?! 聞かれた?! というか、パジャマは?! 着て寝たはずだよね?!)

 頭を動かしてパジャマを探すけれど見当たらず、私はこんなに寝相が悪かったっけと不思議に思いつつ、少しドキドキしつつも泪からは何の反応もなかったので安心し、重いけど我慢して寝よう……そう思った時だった。

「ひあっ?! な、なに?! あ、ああっ!」

 いきなり左胸を掴まれたかと思うと乳首を緩く摘ままれながら捏ね回され、右の乳首は軟らかいもので挟まれたかと思うとちゅうっ、と吸われ、吸われながらざらざらしたもので擦られる。

「あっ、あんっ……! やっ……!」

 黒いもの……泪の頭が持ち上がり、私の顔を見る。

「ふふ……オ・ハ・ヨ・♪ やっぱり悲鳴あげたわね……」

 寝ぼけてるのか、確信犯なのか、約束とはいえ朝から私の体を弄ろうとするので、待ってと強く言うと止めてくれた。

「もう……なあに?」
「これから実家に帰りたいんだけど……」
「離婚? 離婚なのっ?!」
「いえ、結婚どころか、まだ結婚の約束すらしてませんから!」
「あら、プロポーズしたじゃない」
「……ええっ!? いつ?! どこで?!」

 ぐるぐると考え、はた、と気付く。

「まさかとは思うけど……『妻に』って言葉じゃない、よね……?」
「もちろんそのつもりだけど?」
「は?! あのあと『妻は、先走り過ぎね』って自分で否定してたじゃない!」
「チッ! 騙されなかったか」
「ちょっと! んんっ!? んっ!」

 しれっと言った泪に怒ろうとして唇を塞がれ、また胸を揉まれる。

「実家になんか、帰さないわよ」

 そう言ってまた私の体を弄り始めたので、母と妹と買い物の約束をしていると言うと、「夜、この行為の続きをさせることとお風呂も一緒に入ること」と言われ、泪の手が私の肌を滑り、パジャマの中へ入り込んだ。

「だめ!」
「だめって言ったから、ここの愛撫も一緒に追加よ」

 誰にも触らせたことがない秘密の場所に泪の手がたどり着き、じかに撫でられ、羞恥で「ひゃあ!?」と声をあげる。

「うん、っていったら今すぐやめてあげる。言わないと、アタシが満足するまでずっとこのままよ?」

 そんなことを言いながら、泪は撫でるのをやめてくれない。
 私の両胸と股間を弄る泪。満足するまで……下手すると一日中弄られる可能性があるので、仕方なく頷いた。

「はい、約束ね ♪水曜まで休みだし……いろいろと楽しみね♪」

 ――四日間で愛撫の全てを教えるからね?

(や……やられた……っ!)

 少し荒い息をしているとそう耳元で囁かれ、また騙されたことに気づく。泪に身体の傷を見られることにはまだ抵抗はあるものの、愛撫をされることは嫌ではなくなって来ている私に気づいた。
 のだけれどふと思い、泪に「休みってなんですか?」と聞いた。

「あら、言ってなかった? 水曜までは大抵みんな穂積本社で打ち合わせしたり、出張行ったりしてるから、こっちの事務所には来ないわよ?」
「は?!」
「今はアタシも穂積本社での急ぎの仕事はないし、こっちでの仕事は今のところ書類整理だけだし」

 そんな話は聞いてないんですが!

「ちょ、ちょっと!」
「だから、水曜まで休みよ」
「だからって……!」
「元々アタシの都合で一週間以上早く引っ張って来たから、どのみち来週の月曜まで書類整理くらいしか仕事はないのよ」

 るん♪ という言葉とともに、なぜか泪の背中に蝙蝠羽と尻尾、渦巻き状でカクカクとした、稲妻のような形の二本の角が頭から生えているのが見えた。

 ……ような気がした。

 やはり早まったかも……と思いつつ、とりあえずは着替えて在沢家に行かねばならないと告げると、「アタシも行くわ」と泪が言ったので首を傾げつつもそれに頷く。出る前に母に電話をかけ、「今から一人連れてそっちに行くから」と告げ、一緒に在沢家に向かった。


 ***


「おはよ……うわっ?!」
「お姉ちゃーんっ!」

 玄関を開けた途端、ニコニコ顔の葵が飛び付いて来た。最近発見したのだけれど、どうやら葵は私に限らず、誰かに抱き付くのが好きらしい。けれどそろそろ私の身長――百五十しかない身長を抜きつつあるので、それも止めさせなければ、いつか私が怪我をしそうだ。

「あれ? お姉ちゃん……後ろのオジサン、誰?」
「オジっ?! 誰がオジサンよっ! お圭ちゃんと変わんないわよっ!」

 私に抱きついたまま、葵が胡散臭げに泪に話す。そこへちょうど真琴もやって来て、「うわ……オカマ……」と嫌そうに呟いた。

「ちょっと、真琴、失礼よ!」
「誰がオカマよっ!」
「そのオネエ言葉」
「生まれつきよっ!」

 真琴&葵vs泪との間で、バチバチっと火花が散った。

(ど、どうして?!)

 三人の様子にわけがわからずおろおろしていると、母が顔を出した。

「あら、おはよう。一人連れて来る、って……もしかしてその人?」
「うん」
「穂積 泪と申します。一昨日からお圭ちゃん……お嬢さんとお付き合いさせていただいています」
「ちょ、ちょっと、泪さん?!」

 いきなりちゃんとした言葉に戻った泪に真琴と葵は驚き、私が何か言う前に自己紹介を始めてしまった泪に少し慌てる。

「ふうん……?」

 不躾に泪をじろじろ眺める母に内心ビクビクしていると、さらに私まで眺める。

「あの……母さん……?」

 眺めるのを止めたかと思うと「やるわね」と一言言ってニヤリと笑った。……意味がわからない。

「真琴、葵、さっさと中に入って。圭、穂積さんに上がってもらってちょうだい」
「うん。泪さん、上がって」
「お邪魔します……ぅ?!」

 突然固まった泪を不思議に思い、「泪さん?」と声をかける。

「なんでもないわ……は、はは……」

 ひきつった顔をした泪を眺めながら先に上がってもらい、すぐに私も上がると泪が突然振り向いてチュッ、と唇に軽く触れるだけのキスを落とし、キュッと私の手を握って来た。

「泪さん……?」
「御守り代わり」

 泪の言葉に頭中をクエスチョンマークでいっぱいにしながら、手を繋いだまま母の待つリビングに行くと、そこには父が怖い顔でソファーに鎮座していた。


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