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圭視点
Afternoon
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「嘘……綺麗になってる……」
全ての片付けを終え、布団を取りに行くという泪にくっついて行こうとして、キッチンを見て驚いた。
「約束したからね。ちゃんとご飯作ってほしいもの」
「まだちょっと片付けなきゃいけないところはありますけど、これなら合格です」
「ホント?! よかった!」
「泪を手玉にとってるわね……」
「若干尻に敷かれてないか?」
「確かに」
「本人が気付いていないのであれば、構わないのでは?」
「アンタたち……聞こえてるわよ?」
瑠香、充、前嶋、小野の呟きに、泪が突っ込む。
「お圭ちゃんならいいのっ!」
「「「「……」」」」
それってダメじゃん、的な沈黙に「あの……」と声をかけると、それを遮るように泪が話しかけて来た。
「さ、お圭ちゃん、姉さんたちはほっといて、お買い物行きましょ?」
「あ、はい」
「じゃあ、アタシたちは帰るわね」
そう言って瑠香達が立ち上がったので、慌てて引き留める。
「あの、手伝っていただいたお礼がしたいんです!」
「あら、大丈夫よ。お気遣いなく」
「でも、あの……引越し蕎麦も振る舞ってないし……。せめてお昼ご飯はご馳走させてください! 泪さん、いいでしょう?」
「いいわよ。そのほうがアタシも嬉しいし。時間があるなら遠慮しないで。アタシからもお願い」
二人でお願いをすると「わかったわ」と言ってくれたのだけれど、「じゃあ、荷物持ちお願いね♪」との泪の言葉に、四人は盛大なしかめっ面をし、溜息をついた。
「ごめんなさい」
「お圭ちゃんの荷物持ちならいいわよ」
「お圭ちゃんのための荷物持ちに決まってんでしょっ!」
私が謝罪するとなぜか姉弟喧嘩が始まってしまい、「放っておきなさい」という充さんの言葉に甘え、携帯とお財布とエコバッグをポーチに入れ、それを袈裟懸けにしてエレベーターを下り、商店街へと向かう。ビルを曲がってすぐのところで「一人じゃ危ないよ?」と充さんに声をかけられた。
「身長は小さいですが、そんなに子供じゃないですよ」
と少し膨れてみる。
「ごめん、ごめん。それにしても、ゆっくり歩くんだな。泪を待ってるのかい?」
「え? ああ、違います。足が悪いので、ゆっくりとしか歩けないんです」
「……ごめん」
「気にしないでください」
少しだけ話したけれど、すぐに沈黙がおりる。
「あのさ、君……」
「お圭ちゃん! 置いてくなんてひどいじゃないの!」
充が何かをいいかけたけれど、追いついた泪がそれを遮るように話しかけて来た。
「だって姉弟喧嘩してたし……」
「喧嘩してたって、声をかけるぐらいしてちょうだい! 心配するでしょ?!」
「ごめんなさい……」
確かに何も言わないで出かけたら私も心配する。それに思い至ったのですぐに謝った。
「充さん、アタシの代わりをしてくれてありがと」
「……いや」
「姉さんに謝ったほうが……」
「充さん! 置いてくなんてひどいじゃないの!」
「……」
「あら、間に合わなかったみたいね」
後方から瑠香の声がしてくる。
(既視感を感じる……)
どこか冷たく感じる泪の声を他所に、今度は後ろで夫婦喧嘩が始まる。泪がそれを完全に無視して「さあ、行きましょ♪」と手を握って来たので、こくんと頷いてまた歩き出す。今度はいつもの泪の声だった。その対応の違いに内心首を捻りながらも泪に話しかける。
「先にどこに行きますか?」
「そうね……その前にお圭ちゃん」
「はい?」
「いい加減、敬語はやめない?」
「え……」
泪にそう言われて驚き、彼の顔を見上げる。
「仕事中は仕方がないから許すけど、今はプライベートよ? しかもアタシたちは恋人同士じゃないの」
「でも……」
「じゃあ、お仕置きする?」
「……それは、嫌で……や、だ」
危うく敬語になりそうになって言い直すと、しかめっ面をされた。
「チッ! お仕置きしたかったのに。でも……うん、それでいいわ。で、何をご馳走してくれるの?」
「お蕎麦と、ちらし寿司にしようかなと思って。泪さん、他に食べたいの、あり……ある?」
「お圭ちゃん」
「な、なななな……!?」
泪のとんでもない発言に言葉に詰まる。
「ふふ。それはおいおいおね。あとはすまし汁がいいわ」
「もう……!」
クスクス笑う泪に今度は私が膨れっ面になり、「あら可愛い♪ じゃあ、奥から行きましょうね」と言われて商店街の奥へ移動する。
八百屋、魚屋、乾物屋、米屋などで食材を揃え、金物屋で土鍋と片手鍋を買い、百円ショップで間に合わせの商品を買い、最後に布団屋に寄って布団を持って帰る。
ペントハウスに戻り、ちらし寿司と天ぷら蕎麦、ハマグリのすまし汁、浅漬けを作り、プレートにして出した。
食後のお茶を飲んでいる時に瑠香の携帯が鳴り、「お仕事入っちゃった」と残念そうに話し、三人を引き連れて行くと「ご馳走様」の言葉を残して帰って行った。
午後は泪と二人で部屋やお風呂場、キッチンを掃除し、布団も入れ替える。夕食はパスタが食べたいと言うので今度は少し離れたスーパーに行き、調味料や食材をきちんと買い込み、約束の膝掛けを二枚と「二人でかけましょ♪」と持って来たブランケット、おまけのヒートテック素材のスパッツを数着買って戻る。
結局パスタはミートソースにし、卵スープと温野菜サラダも添えた。
そのあともう一度キッチンを掃除し、それぞれお風呂も入り、あとは奥の寝室に入って寝るだけ。そう思っていたのに……。
「毎晩の挨拶とお仕置きが残っているわよ? お仕置きはあとで……そう言ったでしょ?」
泪の言葉に固まる。
(わ……忘れてたーーっ!!)
逃げる間もなくそう言われて連れて行かれたのは、ダブルベッドが鎮座する、彼の寝室だった。
全ての片付けを終え、布団を取りに行くという泪にくっついて行こうとして、キッチンを見て驚いた。
「約束したからね。ちゃんとご飯作ってほしいもの」
「まだちょっと片付けなきゃいけないところはありますけど、これなら合格です」
「ホント?! よかった!」
「泪を手玉にとってるわね……」
「若干尻に敷かれてないか?」
「確かに」
「本人が気付いていないのであれば、構わないのでは?」
「アンタたち……聞こえてるわよ?」
瑠香、充、前嶋、小野の呟きに、泪が突っ込む。
「お圭ちゃんならいいのっ!」
「「「「……」」」」
それってダメじゃん、的な沈黙に「あの……」と声をかけると、それを遮るように泪が話しかけて来た。
「さ、お圭ちゃん、姉さんたちはほっといて、お買い物行きましょ?」
「あ、はい」
「じゃあ、アタシたちは帰るわね」
そう言って瑠香達が立ち上がったので、慌てて引き留める。
「あの、手伝っていただいたお礼がしたいんです!」
「あら、大丈夫よ。お気遣いなく」
「でも、あの……引越し蕎麦も振る舞ってないし……。せめてお昼ご飯はご馳走させてください! 泪さん、いいでしょう?」
「いいわよ。そのほうがアタシも嬉しいし。時間があるなら遠慮しないで。アタシからもお願い」
二人でお願いをすると「わかったわ」と言ってくれたのだけれど、「じゃあ、荷物持ちお願いね♪」との泪の言葉に、四人は盛大なしかめっ面をし、溜息をついた。
「ごめんなさい」
「お圭ちゃんの荷物持ちならいいわよ」
「お圭ちゃんのための荷物持ちに決まってんでしょっ!」
私が謝罪するとなぜか姉弟喧嘩が始まってしまい、「放っておきなさい」という充さんの言葉に甘え、携帯とお財布とエコバッグをポーチに入れ、それを袈裟懸けにしてエレベーターを下り、商店街へと向かう。ビルを曲がってすぐのところで「一人じゃ危ないよ?」と充さんに声をかけられた。
「身長は小さいですが、そんなに子供じゃないですよ」
と少し膨れてみる。
「ごめん、ごめん。それにしても、ゆっくり歩くんだな。泪を待ってるのかい?」
「え? ああ、違います。足が悪いので、ゆっくりとしか歩けないんです」
「……ごめん」
「気にしないでください」
少しだけ話したけれど、すぐに沈黙がおりる。
「あのさ、君……」
「お圭ちゃん! 置いてくなんてひどいじゃないの!」
充が何かをいいかけたけれど、追いついた泪がそれを遮るように話しかけて来た。
「だって姉弟喧嘩してたし……」
「喧嘩してたって、声をかけるぐらいしてちょうだい! 心配するでしょ?!」
「ごめんなさい……」
確かに何も言わないで出かけたら私も心配する。それに思い至ったのですぐに謝った。
「充さん、アタシの代わりをしてくれてありがと」
「……いや」
「姉さんに謝ったほうが……」
「充さん! 置いてくなんてひどいじゃないの!」
「……」
「あら、間に合わなかったみたいね」
後方から瑠香の声がしてくる。
(既視感を感じる……)
どこか冷たく感じる泪の声を他所に、今度は後ろで夫婦喧嘩が始まる。泪がそれを完全に無視して「さあ、行きましょ♪」と手を握って来たので、こくんと頷いてまた歩き出す。今度はいつもの泪の声だった。その対応の違いに内心首を捻りながらも泪に話しかける。
「先にどこに行きますか?」
「そうね……その前にお圭ちゃん」
「はい?」
「いい加減、敬語はやめない?」
「え……」
泪にそう言われて驚き、彼の顔を見上げる。
「仕事中は仕方がないから許すけど、今はプライベートよ? しかもアタシたちは恋人同士じゃないの」
「でも……」
「じゃあ、お仕置きする?」
「……それは、嫌で……や、だ」
危うく敬語になりそうになって言い直すと、しかめっ面をされた。
「チッ! お仕置きしたかったのに。でも……うん、それでいいわ。で、何をご馳走してくれるの?」
「お蕎麦と、ちらし寿司にしようかなと思って。泪さん、他に食べたいの、あり……ある?」
「お圭ちゃん」
「な、なななな……!?」
泪のとんでもない発言に言葉に詰まる。
「ふふ。それはおいおいおね。あとはすまし汁がいいわ」
「もう……!」
クスクス笑う泪に今度は私が膨れっ面になり、「あら可愛い♪ じゃあ、奥から行きましょうね」と言われて商店街の奥へ移動する。
八百屋、魚屋、乾物屋、米屋などで食材を揃え、金物屋で土鍋と片手鍋を買い、百円ショップで間に合わせの商品を買い、最後に布団屋に寄って布団を持って帰る。
ペントハウスに戻り、ちらし寿司と天ぷら蕎麦、ハマグリのすまし汁、浅漬けを作り、プレートにして出した。
食後のお茶を飲んでいる時に瑠香の携帯が鳴り、「お仕事入っちゃった」と残念そうに話し、三人を引き連れて行くと「ご馳走様」の言葉を残して帰って行った。
午後は泪と二人で部屋やお風呂場、キッチンを掃除し、布団も入れ替える。夕食はパスタが食べたいと言うので今度は少し離れたスーパーに行き、調味料や食材をきちんと買い込み、約束の膝掛けを二枚と「二人でかけましょ♪」と持って来たブランケット、おまけのヒートテック素材のスパッツを数着買って戻る。
結局パスタはミートソースにし、卵スープと温野菜サラダも添えた。
そのあともう一度キッチンを掃除し、それぞれお風呂も入り、あとは奥の寝室に入って寝るだけ。そう思っていたのに……。
「毎晩の挨拶とお仕置きが残っているわよ? お仕置きはあとで……そう言ったでしょ?」
泪の言葉に固まる。
(わ……忘れてたーーっ!!)
逃げる間もなくそう言われて連れて行かれたのは、ダブルベッドが鎮座する、彼の寝室だった。
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