オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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圭視点

XYZ

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 そのあと四人で話し合いながら、翌日に使う資料や文書をその場で簡単に箇条書きにし、結局文書作成は智がすると決まったところで「今日は終わり!」との周の一言で打ち合わせを終える。
 四人で小会議室を出て企画室に戻ると周と智はまだやることがあると言うので、真葵と二人で帰ると告げて企画室を出た。

「真葵さん、お疲れ様でした。お目出度いお話のあとで、あのような話を聞かせてしまって申し訳ありませんでした」
「そんなことないわ! あたしは圭が話してくれて嬉しかったわよ? ……圭は頑張ったのね。ホント、室長様々だわ」

 真葵もまたフン、と鼻息を荒くする。

「今度またあの新人ボウヤが何か言って来たら、あたしに言うのよ?」
「ありがとうございます」

 お礼を言い、そのあとは真葵の愚痴を聞きながらエントランスに向かうと、父とばったり出会った。

「あれ? 今お帰りですか?」
「圭と美作か。ああ。さっき圭に頼んだ文書のことでな」
「何か違っていましたか?」
「いや、問題はなかったんだが……」
「何かありましたか?」
「あったと言えばあったんだが……まぁ、いい」
「室長にしては歯切れ悪いじゃないですか」

 言い渋る父に、真葵が茶々を入れる。

「まあ、いろいろあるんだよ」

 在沢室長こと、在沢ありさわ たもつは溜息をつく。

「じゃあ、久しぶりにコレ、どうですか? 圭も一緒に」

 真葵が右手を握って親指と人差し指で五センチくらいの輪っかを作り、くいっとお酒を呑む仕草をしたのだけれど。

「「これから雨が降るぞ降りますよ」」

 と、私と父に同時に突っ込まれ、真葵は「さすが父娘!」とぷっ! と笑った。

「じゃあ止めとくわ。また明日! 圭、コレ、ありがとう!」
「どういたしまして。また明日」
「美作、気をつけて帰れよ?」

 バイバイ、と小さく手を振り、入口で別れる。それを見送ったあと、そう言えばと、突然父が話を切り出した。

「圭、真琴まことたすくが『お姉ちゃんは? お姉ちゃんは?』と煩いんだが」

 真琴とは七つ下の妹だ。病院にいた女の子は彼女で、足を骨折して入院していた。翼はその時まだ三歳になったばかりで、現在の二人はもうじき二十歳と十六になるはずだ。

「甘えるような歳じゃないでしょう?」
「ついでに言えば、真由まゆあおい、俺もだが……」

 真由は母で、葵は一番下の弟で、在沢家の娘になった翌年に産まれた子だ。まだ小学生だったはすだ。

「父さんや母さんはともかく、葵に言われたのなら帰らないわけにはいかないですね」
「俺や真由はどうでもいいのか……っ!」
「毎日見ている父親の顔より、可愛い弟妹のほうがいいですから」
「ひど……っ! 圭……お前、だんだん真由に似て来たな……」
「本当ですか? それは嬉しいですね! 父親に似なくてよかったです」
「こんなに娘を愛してるのに……! なんて冷たい娘なんだっ!」

 父は泣き真似を、私は冷たい口調をしているが、顔はお互いに笑っているし、いつもの冗談なのだ。

「はいはい、なんとでも。でも、今日はどのみち無理です。彼らのための買い物をしなければいけませんから。その時は一緒に行ってください、父さん」

 それぞれ成人式、高校入学、誕生日、結婚記念日のお祝いがあるのだけれど、忙しくてまだプレゼントを買いに行けずにいた。

「ああ、わかった。今週末はどうする?」
「帰ります。昨日、翼から『今週末帰って来るなら勉強を教えて!』とメールが来ましたから」
「じゃあ、その時に買って帰るか」
「そうしましょう」

 話しながらそのまま駐車場まで一緒に歩き、いろいろな話をする。
 父は車で、私は徒歩で帰る……そのつもりでいたのだけれど。

「足が痛くて歩けないんだろう? 乗っていけ」

 父に気遣わしげに言われ、素直に乗り込んで家まで送ってもらった。

 翌日。秘書課に寄ってから企画室に行くと、挨拶もそこそこに「昨日は助かった! 圭の言う通りだった!」と智に言われ、結局単語の綴りが間違っていたことを知った。
 英文を頼んだのは営業部の智の後輩で、いつも凡ミスをおかしては誰かに叱られている人物らしい。
 企画室内での朝のミーティングを終え、周たちについて新人教育に行こうとしたのだけれど、「今日は企画室のほうが忙しいから」と残るように言われた。

「何かあったんですか?」
「昨日、圭たちが帰ったあとで発覚したんだが……。今日、午後からクライアントが来るんだが、必要な文書ができていないらしい」

 周の言葉に驚く。まさか、そんなことになっているとは思ってもみなかったのだ。

「え……? 今日の午後に来るのに、ですか?」
「ああ。頼まれたのは三島らしいがな。新人教育でなにかわからなければ内線をかけるから、圭は今日一日ここにいて、皆の指示に従ってくれ」
「畏まりました。三島さんのほうはどうしますか?」
「さっき在沢室長に報告した。聞いてないか?」
「いえ……」

 周の言葉に首を横に振ると、彼は小さく溜息をついた。

「入れ違っちまったか。あとで何かしら言ってくるだろうから、頼む」
「はい」
「皆も頼んだぞ! 今日は『文書の娘』がいるから、どんどん添削してもらえ! 時間がなければ、手伝ってもらえ! コイツの実力は……」
「わかってます!」
「そんなの、室長に言われなくたって俺らが一番よく知ってます!」

 私はそれどころじゃなかったけれど、周は周囲の言葉にふふっと笑って「あとは頼んだ」と言い残し、三人揃って会議室に向かった。


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