25 / 28
番外編
ユカリ姫
しおりを挟む
あるところにタカナシ公国という小さな国がありました。その国は小さいながらも、王様もお妃様も国民も皆が仲良く幸せでしたが、王様とお妃様の間には子供がいませんでした。
ですが王様が昼も夜も頑張ったおかげでお妃様はご懐妊され、お妃様に似た女の子が生まれました。
女の子はユカリ姫と名付けられてすくすく育ちましたが、ユカリ姫が十五歳になる前にお妃様は病気で死んでしまいました。
その噂を聞きつけて王様の押し掛けお妃様になったのがマチコ妃で、マチコ妃は不思議な鏡を持っていました。
ですが、押し掛けたお妃様を、王様もお城の侍女たちも国民も、誰もお妃様とは認めなかったので、押し掛けお妃様は毎日一人で過ごしていました。もちろん、侍女もいません。
そんなある日、押し掛けお妃様は不思議な鏡に向かって話かけました。
「鏡よ鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」
『世界中で美しい奴なんざたくさんいるが、あんたじゃないことは確かだな』
鏡の言葉に押し掛けお妃様はムッとしましたが、改めて聞き直しました。
「か、鏡よ鏡よ、鏡さん。この国で一番美しいのはだぁれ?」
『そりゃあ勿論、シオリ王妃に決まってんだろ?』
「王妃様はお亡くなりになりました!」
『あ? 何言ってんの。死してなお、シオリ王妃が美しいってことじゃねえか』
何言ってんのおめー、バカじゃね? とせせら笑いをした鏡に、とうとう押し掛けお妃様が怒りました。
「せめて生きている方にしなさい!」
『だったら最初からそう言えよ』
「あー、もう! どうでもいいからさっさと教えなさい!」
『チッ! 面倒くせえなあ……。この国の生きてる人間で一番美しいのはシオリ王妃の娘のユカリ姫で、その次があんたの娘のアカリ姫だな』
めんどくさそうな声で伝えた鏡に、押し掛けお妃様は黙りました。そして考えたのです。
どちらもいなくなれば自分が一番美しいのではないかと。かと言って自分の娘を殺すわけには行きません。
ならばと、押し掛けお妃様は自分の娘のアカリ姫をトウジョウ王国の王太子の妻にと嫁に出し、ユカリ姫は森に置き去りにし、近くにいた猟師にユカリ姫を殺して彼女の肝を持って来るように命じたのです。
ですが、この国の王様とユカリ姫が大好きな国民が、そんなことをするはずがありません。一計を案じた猟師は一旦ユカリ姫を街へ連れて行くと、押し掛けお妃様が言った言葉を皆に話しました。
そのことに怒った皆は知恵を出し、魚や鳥など動物の肝を持ち寄って料理し、料理は押し掛けお妃様へ献上し、ユカリ姫にはしばらく森にある小屋へ隠れているように言うと、街の皆は押し掛けお妃様のやったことやユカリ姫の居場所を王様に報告しました。
王様はユカリ姫の安否を気遣いながらも国民にはお礼を言い、しばらく見守っていてほしいとお願いをし、城の者には押し掛けお妃様を見張るように命じました。
するとどうでしょう。押し掛けお妃様は、あの手この手を使ってユカリ姫を殺そうとしたではありませんか。
何度も阻止をした皆ですが、最後の毒入りリンゴだけは回避できず、ユカリ姫はリンゴを喉に詰まらせて倒れてしまいました。
すぐにリンゴを取りだしましたが、毒が回ってしまったのか、ユカリ姫は一向に目覚めません。ユカリ姫が死んでしまったと思った街の皆は、ユカリ姫をガラスの棺に入れて王様のところへ報告に行くためにお城に行く途中で身なりのいい一人の男と会いました。
男はトウジョウ王国の王太子のカナメ王子で、ちょうどタカナシ公国のお城に行く途中でこの棺に出くわしたのだと言いました。カナメ王子が街の人に、なぜこの女性が棺に入れられているのか聞こうとしたところ、もう一人身なりのいい男に会いました。
もう一人の男はカンザキ帝国のアキラ第二皇子で、彼はユカリ姫の噂を聞きつけてタカナシ公国まで来たと言い、なぜこの女性が棺に入れられているのかを、カナメ王子と同じように聞きました。
街の人たちは二人に戸惑いつつも今までのことを説明すると、カナメ王子は怒りました。
「……やっぱり偽物か! あいつは塔に閉じ込めてやる!」
と言い、アキラ皇子は
「噂の姫でしたか……なんと美しい。僕に棺ごと譲っていただけませんか?」
と言いました。それを聞いて反応したのはカナメ王子です。
「俺もユカリ姫の棺が欲しいんだが」
カナメ王子の言葉に、アキラ皇子カナメ王子は睨み合いを始めてしまいました。街の人たちは慌ててそれを止めましたが、誰かがこんなことを言い出したのです。
「もしかしたら、誰かがキスをしたらユカリ姫は起きるかも……」
と。それを聞いた二人は棺の蓋を開けてユカリ姫にキスをしようとしましたが、お互いに邪魔されてユカリ姫にキスができません。そしてとうとう二人は喧嘩を始めてしまいました。
それを見た街の人たちは、あまりの恐ろしさに止めることもできません。おろおろしているうちに二人は棺にぶつかり、その衝撃でユカリ姫は目を覚ましました。
「う……ん……。私、どうしたの……?」
「姫様!」
「おお、お目覚めになられた!」
「心配しました、姫様!」
「心配かけてごめんなさい……」
ユカリ姫が街の人たちとそんな話をしているにも拘わらず、二人はユカリ姫が起きたことに気付かずにまだ喧嘩していました。
それを見たユカリ姫は喧嘩するほど仲がいいのねと納得し、街の人たちと一緒にお城へと帰りました。
お城に帰って来たユカリ姫に、王様や城の人たちは泣いて喜びました。
そして押し掛け王妃様はユカリ姫にわからないように捕らえられ、火で焚かれて熱くなった鉄板の上で、死ぬまで踊らされました。
喧嘩をしていてユカリ姫が起きたことに気付かなかったカナメ王子とアキラ皇子ですが、皆もユカリ姫もいつの間にか居なくなっていたことに気付いてお城に向かいました。
ですが、喧嘩をしてしまったために衣服がボロボロで門番の誰もが二人の話を信じす、二人は出直そうと自分の国に帰りました。
自分の国に帰った二人ですが、カナメ王子はアカリ姫を幽閉しました。「アカリ姫を妻に欲しい」と言った臣下に降嫁させたあと、再びタカナシ公国へと向かいました。
アキラ皇子も同じように再びタカナシ公国へと向かいましたが、またしてもカナメ王子と出くわして喧嘩を始めてしまいます。
何度もそんなことを繰り返していた二人を他所に、タカナシ公国の王様は自分の跡継ぎであるユカリ姫を他国に嫁がせるはずもなく、常にユカリ姫を守り、ユカリ姫を密かに慕っていた、宰相の次男で近衛騎士の男と結婚し、末長く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし……?
ですが王様が昼も夜も頑張ったおかげでお妃様はご懐妊され、お妃様に似た女の子が生まれました。
女の子はユカリ姫と名付けられてすくすく育ちましたが、ユカリ姫が十五歳になる前にお妃様は病気で死んでしまいました。
その噂を聞きつけて王様の押し掛けお妃様になったのがマチコ妃で、マチコ妃は不思議な鏡を持っていました。
ですが、押し掛けたお妃様を、王様もお城の侍女たちも国民も、誰もお妃様とは認めなかったので、押し掛けお妃様は毎日一人で過ごしていました。もちろん、侍女もいません。
そんなある日、押し掛けお妃様は不思議な鏡に向かって話かけました。
「鏡よ鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのはだぁれ?」
『世界中で美しい奴なんざたくさんいるが、あんたじゃないことは確かだな』
鏡の言葉に押し掛けお妃様はムッとしましたが、改めて聞き直しました。
「か、鏡よ鏡よ、鏡さん。この国で一番美しいのはだぁれ?」
『そりゃあ勿論、シオリ王妃に決まってんだろ?』
「王妃様はお亡くなりになりました!」
『あ? 何言ってんの。死してなお、シオリ王妃が美しいってことじゃねえか』
何言ってんのおめー、バカじゃね? とせせら笑いをした鏡に、とうとう押し掛けお妃様が怒りました。
「せめて生きている方にしなさい!」
『だったら最初からそう言えよ』
「あー、もう! どうでもいいからさっさと教えなさい!」
『チッ! 面倒くせえなあ……。この国の生きてる人間で一番美しいのはシオリ王妃の娘のユカリ姫で、その次があんたの娘のアカリ姫だな』
めんどくさそうな声で伝えた鏡に、押し掛けお妃様は黙りました。そして考えたのです。
どちらもいなくなれば自分が一番美しいのではないかと。かと言って自分の娘を殺すわけには行きません。
ならばと、押し掛けお妃様は自分の娘のアカリ姫をトウジョウ王国の王太子の妻にと嫁に出し、ユカリ姫は森に置き去りにし、近くにいた猟師にユカリ姫を殺して彼女の肝を持って来るように命じたのです。
ですが、この国の王様とユカリ姫が大好きな国民が、そんなことをするはずがありません。一計を案じた猟師は一旦ユカリ姫を街へ連れて行くと、押し掛けお妃様が言った言葉を皆に話しました。
そのことに怒った皆は知恵を出し、魚や鳥など動物の肝を持ち寄って料理し、料理は押し掛けお妃様へ献上し、ユカリ姫にはしばらく森にある小屋へ隠れているように言うと、街の皆は押し掛けお妃様のやったことやユカリ姫の居場所を王様に報告しました。
王様はユカリ姫の安否を気遣いながらも国民にはお礼を言い、しばらく見守っていてほしいとお願いをし、城の者には押し掛けお妃様を見張るように命じました。
するとどうでしょう。押し掛けお妃様は、あの手この手を使ってユカリ姫を殺そうとしたではありませんか。
何度も阻止をした皆ですが、最後の毒入りリンゴだけは回避できず、ユカリ姫はリンゴを喉に詰まらせて倒れてしまいました。
すぐにリンゴを取りだしましたが、毒が回ってしまったのか、ユカリ姫は一向に目覚めません。ユカリ姫が死んでしまったと思った街の皆は、ユカリ姫をガラスの棺に入れて王様のところへ報告に行くためにお城に行く途中で身なりのいい一人の男と会いました。
男はトウジョウ王国の王太子のカナメ王子で、ちょうどタカナシ公国のお城に行く途中でこの棺に出くわしたのだと言いました。カナメ王子が街の人に、なぜこの女性が棺に入れられているのか聞こうとしたところ、もう一人身なりのいい男に会いました。
もう一人の男はカンザキ帝国のアキラ第二皇子で、彼はユカリ姫の噂を聞きつけてタカナシ公国まで来たと言い、なぜこの女性が棺に入れられているのかを、カナメ王子と同じように聞きました。
街の人たちは二人に戸惑いつつも今までのことを説明すると、カナメ王子は怒りました。
「……やっぱり偽物か! あいつは塔に閉じ込めてやる!」
と言い、アキラ皇子は
「噂の姫でしたか……なんと美しい。僕に棺ごと譲っていただけませんか?」
と言いました。それを聞いて反応したのはカナメ王子です。
「俺もユカリ姫の棺が欲しいんだが」
カナメ王子の言葉に、アキラ皇子カナメ王子は睨み合いを始めてしまいました。街の人たちは慌ててそれを止めましたが、誰かがこんなことを言い出したのです。
「もしかしたら、誰かがキスをしたらユカリ姫は起きるかも……」
と。それを聞いた二人は棺の蓋を開けてユカリ姫にキスをしようとしましたが、お互いに邪魔されてユカリ姫にキスができません。そしてとうとう二人は喧嘩を始めてしまいました。
それを見た街の人たちは、あまりの恐ろしさに止めることもできません。おろおろしているうちに二人は棺にぶつかり、その衝撃でユカリ姫は目を覚ましました。
「う……ん……。私、どうしたの……?」
「姫様!」
「おお、お目覚めになられた!」
「心配しました、姫様!」
「心配かけてごめんなさい……」
ユカリ姫が街の人たちとそんな話をしているにも拘わらず、二人はユカリ姫が起きたことに気付かずにまだ喧嘩していました。
それを見たユカリ姫は喧嘩するほど仲がいいのねと納得し、街の人たちと一緒にお城へと帰りました。
お城に帰って来たユカリ姫に、王様や城の人たちは泣いて喜びました。
そして押し掛け王妃様はユカリ姫にわからないように捕らえられ、火で焚かれて熱くなった鉄板の上で、死ぬまで踊らされました。
喧嘩をしていてユカリ姫が起きたことに気付かなかったカナメ王子とアキラ皇子ですが、皆もユカリ姫もいつの間にか居なくなっていたことに気付いてお城に向かいました。
ですが、喧嘩をしてしまったために衣服がボロボロで門番の誰もが二人の話を信じす、二人は出直そうと自分の国に帰りました。
自分の国に帰った二人ですが、カナメ王子はアカリ姫を幽閉しました。「アカリ姫を妻に欲しい」と言った臣下に降嫁させたあと、再びタカナシ公国へと向かいました。
アキラ皇子も同じように再びタカナシ公国へと向かいましたが、またしてもカナメ王子と出くわして喧嘩を始めてしまいます。
何度もそんなことを繰り返していた二人を他所に、タカナシ公国の王様は自分の跡継ぎであるユカリ姫を他国に嫁がせるはずもなく、常にユカリ姫を守り、ユカリ姫を密かに慕っていた、宰相の次男で近衛騎士の男と結婚し、末長く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし……?
0
お気に入りに追加
425
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる