思いの行方

饕餮

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本編

過去と彬というひと

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 一年前――私は、集団レイプにあった。レイプした人たちは全員見たことのある人たちばかりだった。
 それも、東城の元恋人たちばかりだった。
 どうして私が彼らにそんなことをされなければならないのか、その時はわからなかった。
 でも、私を押さえ付け、服を剥ぎ取りながら彼らが話したのは、私には全く関係のない、不本意で理不尽な話だった。

 彼ら曰く、私や姉の朱里が東城の側にいることが許せなかった。但し、東城が私に話をふった時に少し話すこと以外は東城や彼らの邪魔をしたことがないから、彼らにとっての私の位置付けは東城の妹ポジションだと彼らなりに理解していた。
 東城もそれを態度に出していたので、非常にわかりやすかったらしい。
 だが、朱里は違った。彼らがいようとも東城に纏わりつき、彼らが話していてもお構い無しに遮って邪魔をし、ずっと話していたという。それについて東城に文句を言えば、東城は冷たくあしらったうえでそれを理由に彼らをふった。
 納得がいかなかった彼らは、朱里に文句を伝えることにさした。だが、直接朱里に文句を言おうにも彼女の側には常に誰かがいて近づけなかった。
 やっと近づけたから文句を言おうとも『あたしも紫も同じようなポジションなのに、なんであたしにだけ文句を言うわけ?』と逆ギレされ、そのことを朱里から東城に知らされたそうだ。しかも東城からも『朱里に手を出したら許さない』と言われる始末だった。

『あの朱里って女じゃなけりゃ、要も文句言わねーよな? 妹ポジションだろうが関係ねえ。朱里って女の代わりに、あの女の妹って言ってた紫ってヤツを痛い目に合わせようぜ』

 誰かがそう言いだし、それに賛同した五人が私を襲い、ホテルに連れ込み、レイプした。

『恨むんなら、あんたの姉ちゃんと東城を恨め』
『ネット上に動画や画像をアップされたくなきゃ、アイツらには黙ってろよ?』

 私を脅すように話した二人の男が別々の場所二ヶ所から撮影し、残りは三人がかりで私を襲った。もちろん、全員が私の身体を楽しめるように交代で。

 手を押さえ付けられて、私の乳房を揉みながら乳首を吸い、アソコを舐める男たち。
 暴れる私にナイフで傷をつけ、無理矢理犯す男たち……。

『男同士だと要や他の男に掘られてばっかだったけど、女の身体を抱くってなんかいいよな』
『わかる。支配欲とか征服欲が満たされるよな』
『だよな。ほらほら、俺たちはまだまだ満足してねえんだよ、紫ちゃん』
『暴れんじゃねえよ、もっと怪我してえのか?』

 ひげた笑いをしながら、男たちは自分たちの逆恨みと欲望を満たすためだけに、代わる代わる私を長時間犯した。

 私自身は途中から記憶がないけれど、教えてくれた婦人警官によると、たまたま監視カメラを見ていたホテルの従業員が異常に気づいて警察を呼び、現行犯逮捕となったらしい。
 その従業員の話によると、最初に入ったのは私と一人の男だけだった。部屋のキーを差し出して扉の所にある監視カメラを見るとちょうど部屋に入るところで、その時は特に異常はなかったらしい。
 けれど二人しかいないのに次々に料理やドリンクが注文され、部屋を出る時間になっても出て来ないし、部屋に電話をかけても誰も出ない。
 これはおかしいと思い、マスターキーを使ってこっそりと様子を見に行けば、一人だった男が五人になっており、ゲラゲラ笑いながら嫌がる私を無理矢理押さえ付け、三人がかりでレイプしていた。これはマズイと一旦扉を閉めると、慌ててその場で警察を呼んで即逮捕、となったらしい。

「私、途中から記憶がない……覚えていないんです。気づいたら病院で、救出されて既に十日ほどたっていると看護師さんが教えてくれました。記憶がない間、男の先生や看護師さんが近づくと、ずっと『嫌だ、やめて、助けて!』って叫んで暴れてたらしくて」
「……」
「その時から男性が怖くて……。でも、病院内で心療内科医カウンセラーと話をして……やっとというか、何とか震えずに男性と話しが出来るようになったのが最近……ここ一ヶ月前くらいです。それでもやっぱり、立ち直ったつもりでも、全然立ち直ってなかったんですね……」
「紫……」

 立ち直っていなかったことに落ち込んでいると、神崎さんがギュッと抱き締めて来た。話している間、慰めるようにずっと頭を撫でたり、身体中を撫でたり、音をたてながらキスをしたりしてくれていた。

「本当は、東城さんにマッサージされている間も、神崎さんと話している間も凄く怖かった。そんなことしない、大丈夫だってわかっていても、凄く怖かっ……」

 話しながら、思わず涙が溢れる。優しく接してくれた人なのに……。
 それすらも怖いと言った私は、嫌われても仕方がない。
 それなのに神崎さんは、指先で涙を拭うと唇に軽くキスをしてきたので驚いた。

「……泣かないで? 僕のほうこそごめん。手を押さえ付けたからフラッシュバックしたんだよね。もう押さえ付けたりしないから……ゆっくり進めるから……」
「でも、嫌いになったんじゃ……」
「どうしてさ? 逆恨みで何の関係もない紫をレイプするようなクズや、きちんと処理しなかった要、それにお姉さんに対して怒りはしても、紫に対しては何とも思わないよ?」
「でも、だって……私は汚れてるし……傷もあって……」

 そう言うと、神崎は傷がある辺りの肌をそっと撫でたあと、乳房を触りながら頭を優しく撫でる。

「傷は消えかかってるから大丈夫だよ。それにこの一年、性病の類いの病気になったり、妊娠したりしなかったんでしょう?」
「うん……」
「汚れてると思うなら、僕が紫を綺麗にする。記憶は消せないかも知れないけど、セックスは素敵なことだと……気持ちいいものだと身体に記憶させることもできるから。いや、僕がするから」

 真剣な顔でそんなことを宣った神崎さんは、突然腰を動かして私の太股に何かを擦りつけた。それは、話をする前に――愛撫されている時にも感じた、神崎さんの熱くて硬いモノだった。

「え……?」
「ふふ……驚いた? 紫の話を聞いても、僕のモノは萎えなかったんだけど? むしろ、話を聞いたからこそ、紫を抱きたいと思った」
「神崎、さん……」
「彬だよ。彬って呼んでよ」
「彬、さん……」

 名前で呼ぶと、神崎さんは――彬は嬉しそうに笑って手を動かし始める。

「僕がいろいろと試すから、何が怖いのか、どうすれば気持ちいいのか、僕に教えてくれる?」

 私に覆いかぶさってきた彬は、ゆっくりと、そして徐々にキスを深めながら、触っているだけだった私の乳房を揉み始めたのだった。


 ***


「あっ、あ……っ、は……っ」
「これくらいの力なら大丈夫そうだね。じゃあ、これは?」
「んあっ、あんっ」
「ん……これも大丈夫、っと。……紫、怖かったら僕の腕や頭を掴んでいいから。背中に手を回してもいいし」
「お、さえつけられなければ……今のところは大丈夫……あんっ」
「そう……。怖かったらちゃんと言うんだよ?」

 彬は、私の身体を綺麗にするかのように、あちこちに手と唇を這わせて行く。
 唇と舌で、掌と指先で乳首を捏ね回して舐めながら、身体中を撫でて行く。

 彬によって与えられるあの時とは違う優しさと、身体中を這い回る疼くような感覚に、私はそれに身を委ねていく。
 東城に抱かれた時に感じたものとは違うその感覚に翻弄されながらも、彬は時間をかけ、私をゆっくりと、丁寧に愛撫していく。

 その快楽とも呼べる感覚に身体中が慣れたころ、彬はその目に欲情を称えながら私を貫き、徐々に激しく抱き始めた。


 ***


「あっ、あんっ、あき、ら、さ、ひゃんっ、ああっ」
「凄く濡れてるよ、紫。身体は気持ちいい、って言ってる」
「だ、め、きたな、あき、らぁ、ああんっ!」

 今すぐ挿入したい思いにかられながらも、理性を働かせて紫をゆっくりと愛撫する。あんな話を聞いたあとで、奪うように紫を抱いてしまったら、紫の心は壊れてしまう。
 そう思ったからこそ執拗に愛撫し、僕とのセックスは怖くないと、心と身体に教えこんでいるのだ。
 あとはナカがどこまで解れているか、どこまでの行為を紫が怖がるか次第だが、問題が一つ。

 女をしばらく抱いてなかったのと、両刀なせいで基本的に必要なかったし、まさか紫を抱きたいと思うことになるとは思わなかったからスキンを買っていないのだ。スキンがないので、紫を妊娠させてしまう可能性がある。
 僕自身はそれでも構わないが、紫がどう思っているのかがわからない。

「紫……僕自身はスキンを持ってないんだけど、紫は持ってる?」
「わ、たしも持ってない……、んっ、あっ」
「僕はこのまま紫を抱いてしまいたいし、紫が妊娠してもいいと思ってるから今日はこのまま抱くけど……いい?」
「あっ、あっ」

 ピチャピチャと音をたてながら舐めていた秘裂から顔を上げ、代わりに蜜壺に指を出し入れしながら紫に問う。紫は欲情した顔を赤く染めながら僕を見たあと、喘ぎながら小さく頷いた。

「ああっ、た、ぶん、大丈夫……っ。あっ、彬、さんなら、いい、んあっ、ひぁっ!」
「紫がいいなら、このまま抱くよ。……挿れるよ?」
「あ、あっ、ああんっ、やっ」
「怖い?」
「だいじょ、ひぁ、いたぁ! やめっ、あああっ!」

 無意識に揺れている腰に内心笑みを浮かべながらも、ぐちゅぐちゅと弄っていた蜜壺から指を抜いて紫の腰を掴むと、その身体がビクリと震える。秘裂に肉竿を擦りつけながら怖いのか紫に問えば、紫は大丈夫だと言うのでそのまま蜜壺に亀頭を埋めた。
 凶暴なほどに張り詰め、先走りを出しながら赤黒く染まって脈打つ僕自身の肉竿は、よいやく蜜壺のナカに入れることを喜ぶかのように、更に張り詰める。
 他の女を抱いてもここまで張り詰めることはなかった。ましてや、男に抱かれていても、逆に男を抱いていても、同じようにここまで張り詰めることもなかった。

(狭い……っ)

 食いちぎられそうなほどに肉壁がギュッと締まった、紫の蜜壺のナカに驚く。数人の男に何時間も犯されたという話だったから、それなりに緩いと思っていた。だが、予想に反して紫のナカは狭く、キツイ。そして熱かった。

(は……っ、これなら、男たちが飽きもせず抱きたがるのがわかる。僕でさえ、ずっと抱いていたくなる……っ)

 紫との身長差は頭一つぶん。それほど差があるとは思わないが、紫は僕の肉竿を挿れた途端、痛いと言った。
 僕自身は肉竿が大きいとは思わない。だが、紫が発した言葉は。

「ああっ、彬、さんの、おっきい、いた、苦し、あああっ!」
「おや、嬉しいことを言ってくれるね。おかげで、ほら……」
「あっ、ああっ、はあっ、あんっ!」

 紫の嬉しい言葉に、更に張り詰める肉竿。ゆっくりと腰を動かせば、その動きに合わせて紫が喘ぎ、甘く啼き声をあげる。その声に、蜜壺のナカの狭さと熱さに、背中がゾクゾクとした快感が走る。

「ああっ、ああんっ! ああっ、ああんっ!」
「気持ちいいんだね。紫……これが本当のセックスだよ? 身体がアイツらとは違うと感じてるのが……わかるでしょ?」
「んっ、わ、かる、のぉ……! 初めて、の時も、こんな感覚じゃ、んあっ、ああんっ!」
「ふふ……。つまり、初めてのヤツよりも僕のほうがテクがある、ってことだよね。紫に誉められたから頑張ろうかな。たくさん気持ちよくなって、紫……」
「あっ、あっ、あんっ、あああっ! はっ、あっ、ああっ!」

 適度なスピードで腰を動かしては止め、肉芽と乳首を同時に舌と指で愛撫する。
 僕だけでなく、紫自身も僕を求めてほしいと思ったから。
 僕がほしいとねだることができれば、紫は僕とのセックスを怖がらなくなる気がするから。

 そんなことを繰り返していたら、とうとう紫が「もっと」と言わんばかりに自然と腰を動かし始めた。それを嬉しく思い、紫の心と身体を僕自身に向けさせたことも相まって、そこからは紫を激しく抱き始める。

「ああっ! あああっ! はげし、あああっ!」
「紫……っ、好きだよ、紫……っ、もっと喘いで、もっと啼いて、僕の色に染まって……!」
「あああっ! あ、きら、さ……、あああんっ、あああああっ!」

 肉竿締め付け、ビクンビクンとイった身体を痙攣する紫に遅れ、蜜壺から抜いてお腹に精を吐き出そうと思っていたのに、間に合わなくてナカに精を吐き出してしまった。申し訳なく思いながらもそのまま背中に手を回して肩を抱くように紫をギュッと抱き締めると、紫も僕の背中に手を回して来た。そのことがなんだか嬉しい。

「紫……?」
「う、れしかった、の……例え嘘でも、彬さんが私を『好きだ』って言ってくれたことが」
「嘘じゃないよ。昨日と今日合わせても、出会ってまだ数時間だけど、僕は紫が好きだって言えるよ?」
「うん、愛撫されてても、抱かれている間も、それはずっと感じてた。だから嬉しかったのもあるの。初めての人も、『抱きたい、いや、抱かせろ』って言っただけで、『好きだ』なんて言われなかったし」
「うわ、何、その俺様な感じのヤツ。確か、キスもしなかったんでしょ?」

 呆れてそう言えば、紫は苦笑した後で寂しそうな顔をした。

「……東城さん、なの」
「え?」
「初めての人は、東城さんなの。もう十年くらい前だし、その時以来抱かれたことはないけど」
「……」
「その時は東城さんが好きだったから、抱いてもらえることが嬉しかった。でも、コトが終わって呼んだ名前は、私じゃなくて姉の名前……『あかり』だった」

 紫の言葉に、寂しそうな顔をした理由を悟る。そんな前から要と付き合いがある事に驚いたけど、それ以上に要のやったことに怒り、僕が紫のバージンを奪えなかったことに悔しさを覚える。

「私の心も身体も急激に冷めたけど、東城さんは満足できなかったのか、私をまた抱いた。今から思えば、姉を抱くための練習だったんじゃないかって思う」
「うーん……要が何を思って紫を抱いたのはわからないけど、要のしたことは最低だね。僕なら絶対にそんなことしないよ。そんな最低なことをした要のことなんか、忘れちゃいなよ」
「ありがとう、彬さん……ん……、んぅ、んんっ、あっ、あんっ」

 キスをしながらまた愛撫を始め、繋がったままだった腰を緩やかに動かせば、紫のナカが肉竿に絡み付くように蠢き始める。

「……僕が、忘れさせてあげる。だから、僕を好きになりなよ、紫」
「わ、たし……っ、あっ」
「ゆっくりと、僕を知ってくれればいい……それからでいいから。でも今は、紫を抱きたいし、堪能したい」
「あっ、私、仕事、が……っ、あああっ!」
「ごめん、我慢できない。今日は諦めて」

 落ち着いたとは言え、イッたばかりの紫にとっては、少しの刺激でも気持ちいいのだろう。怖いと言っていた男に抱かれ、貫かれているにも拘わらず、今や紫の身体や顔にその恐怖はない。
 話を聞く限り、多分紫は要が最初に半分無理矢理抱いた段階で、無意識に男に対して恐怖を覚えたんだろうと思う。たまたま好きだった要が抱いたからそれに気付かなかっただけで。
 でも結局は、要の元恋人たちのせいでそれが甦り、恐怖することになってしまった。

 昨日の態度や、画面越しに見た要の手つきを見る限り、多分要は本人が気付かないだけで紫が好きなんだろうと――女として見ている気がする。

 でも。

 紫に何があったのか話を聞かせはしても、要に紫は渡さない。昨日会った紫の姉も許さない。

 内心で昏く嗤いながらも愛おしく紫を見つめ、優しく、時に激しく紫を抱いた。

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