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従魔専用レベル上げダンジョン編

第204話 不思議なダンジョン 3

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 説教もかまし終わったところで、ヤミンとヤナ&彼らの従魔たちは、のんびりとくつろぎ始める。従魔たちは私の従魔に戦闘関連の質問をして勉強、ヤミンとヤナはヴィンから借りてきたらしい武器をずら~っと並べ、どれがいいかと悩み始めた。
 こればかりは仕方がない。種族的に適正武器が限られているからだ。
 特に樹人のヤミンは適正が杖オンリーなので、相当頭を悩ませている。ヤナはリッチなので、杖の他に大鎌が使えるけれど普通は大鎌を使おうと思わずにいるし、武器として制作している鍛冶職人もいないので、考えが思いつかないんだろう。

「うーん……。ねえ、アリサ。ボクの適正は杖だけど、槍も使えるってギルマスが言ってたよね?」
「言ってたねぇ」
「一応ね、練習したらスキルとして両方使えるようになったけど、いちいち変更するのが面倒でさ」
「そうね……モーニングスターはダメなのよね?」
「うん。ロマンではあるけど、なんか違うというか……」

 なんとも贅沢な悩みだな、おい。
 この世界において、モーニングスターと呼ばれる武器の形状は二種類ある。が、ヤミンは樹人なので鎖がついた先に棘ボールがついているものだと、自身が傷つきかねない。
 あとは杖の先端が棘ボールになっているもので、こちらは先端が重いので振り回すことになり、隙ができる。
 魔法だけなら、エルダートレント材とドラゴンの魔石を使えば素晴らしい杖ができる。けれど、どうもヤミンとしてはヴィンにも相談している通り、武器を振り回したいお年頃なわけで。
 杖と槍かあ。そういった武器がないわけじゃない、が。

「ヤミン、槍杖そうじょうって知ってる?」
「そうじょう……?」
「ええ。簡単にいうと、槍と杖の両方を併せ持った武器ね」
「へえ……」

 なんか知らんが、目がきらっきらと輝いてるぞ、ヤミン。とりあえず形を見せるかと木材で槍杖を二本錬成し、一本をヤミンに渡す。

「形としては槍なんだね」
「そうね。動きもほぼ槍。ただ杖の機能も合わせ持っているから、槍よりも石突がしっかりしているし、槍とは違う動きもあるわね」
「なるほど」

 てなわけで、祖父が研究して独自に型を作り、それを教わった私がいくつか教えることに。とはいえほぼ槍と同じ動きで、槍自体を回転させて動きを阻害や妨害、牽制するなど、棒術に近いものもある。
 ちなみに、祖父になんで槍杖なるものをあみ出したのか聞いたところ、祖父いわく『某大型投稿サイトで見た、VRMMO小説がヒントだ』とのこと。……あれか、熱心に私に勧めたやつか。
 よわい六十を超えてからファンタジー小説にはまり、亡くなるまで読んでたもんなあ。気に入った話が書籍になれば、それもきっちり買っていたくらいだし。
 そんな祖父に感化され、私も多少なりとも読んだけれど、弟はガチではまって、祖父と一緒になって読み漁り、自分が面白いと思ったものを教えあっていたなあと思い出した。
 それはともかく、今は槍杖の型だ。

「動きとしては、私が槍を使った時の動きを参考にするといいわ。ほぼあれと同じ動きだから」
「へえ! やってみるね。教えてくれる?」
「ええ。まずは――」

 ヴィンから教わった型から始めて、私が祖父から教わった型を教える。すると、ヤミンはそれが楽しかったようで、動きがどんどんよくなっていく。

「孫悟空になったみたいで、楽しい!」
「それならよかった」

 孫悟空かよ! と思ってはいけない。如意棒自体が棒術だもんな。
 動きすぎるなよと釘を刺し、次はヤナのところへといく。しかも、私が木材で作った大鎌を見つめ、溜息をついてるし。

「……やっぱ、大鎌しかないよな……」
「そうね。種族的にどうしようもないわね」
「だよなあ……」

 ヤナにとってはどうやら不満なようだけれど、種族特性として大鎌が一番の適正武器なのだ。あとはスケルトンやスパルトイのような骸骨系の種族だからなのか、剣と槍、弓に適正があるが、杖や大鎌ほどではないのだよ。
 だからこそ、ヤナは微妙な顔というか不満があるわけで。

「鍛冶屋にはないだろうし、錬金する?」
「うん。お願いしてもいいか? もちろん、代金は払うから」
「なら、格安にしておくわね」
「助かる」

 こういうところはヤナだけではなく、ヤミンもしっかりしているんだよね。
 とりあえずインゴットを出してヤナに金属と木材を選ばせる。選んだのはやっぱりというか、神鋼とエルダートレントだった。
 まあ、出会った当時よりもレベルは各段に上がっているし、普段使いの杖もエルダートレント材に変更しているから、問題ないでしょ。
 てなわけで、本人にどんな形状がいいか聞き、装飾を施したり魔石をあしらったりと、ある程度絵にしてから錬成したんだが。
 闇属性がついているからなのか、ソウルイーターなる、妙に禍々しい大鎌ができてしまった。

「おお……! かっけーー! ソウルイーターなんて名前、厨二心を擽るぜ!」
「そうかい……それはよかった」

 あれだけ微妙な顔をしていたのに、現物が目の前にあるとテンションが上がったようで。ソウルイーターを持ち上げたまま、キラキラと目を輝かせている。

「あーーー! ずるい! ボクにも作ってよ、アリサ!」
「はいはい。じゃあ、インゴットと木材選んで」

 ヤナが大鎌を振り回し始めると、それに気づいたヤミンがずるいと文句を垂れる。ヤミンの分もきっちり作るからと落ち着かせ、インゴットと木材などを並べて選んでもらう。
 まあ、ヤミンも神鋼とエルダートレントを選んで、ヤナと同じように形状や装飾などを話し合って決め、絵にしたものを錬成した結果。

「ゲイ・ボルグ! クー・フーリンの武器だよね!」
「そうね」

 ヤミンが言った通り、ゲイ・ボルグが出来上がってしまった。形状としてはシンプルだが、こちらも風属性がついているからなのか、綺麗な緑色をした槍に仕上がっている。
 ちなみに、命名は私たちじゃないぞ? 出来上がった段階で鑑定したところ、銘がついていたのだ。だから私たちのせいじゃない!

「型を練習するのはいいけど、ほどほどにね。疲れて明日に響いたら、元も子もないから」
「「はーい!」」

 元気に返事した少年二人は、それぞれの専用武器を自慢しあったあと、基本をなぞるよう丁寧に型の練習をし始める。楽しそうに目を輝かせて練習しているのを苦笑しつつ、晩ご飯の準備を始めたのだった。

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