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1巻

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  プロローグ 天使にやらかされた結果


 朝の九時。私、桐渕有里沙きりぶちありさは通学路になっている、一方通行の細い路地を歩いていた。
 そしてそれは、自宅マンションを出てすぐのところで起こった。
 キキーッというブレーキの音、ドン! という衝撃と全身の痛み。
 あちこちから、「事故だ!」「きゃー!」「救急車と警察!」という人々の焦った声が聞こえてきた。朝の時間だから、目撃者がいたんだろう。
 そんな私はといえば、車にかれそうになっていた猫を腕に抱き、暢気のんきにも「あ、これは死んだかも」と思った。

「ね、こさん、だいじょ……ぶ? そ……か」

 そう尋ねながら腕をゆるめると猫は一目散に逃げていく。途中で様子を窺うようにこっちを見たような気がするが、無事ならよかった。


 つうか、通学路になっている一通いっつうのめちゃくちゃ狭い二十キロ道路を、それ以上のスピードを出して運転するってバカなの? 小学生がいたら大問題だぞ?
 そんなことを考えていたら、体に車が乗っかったような感触がした。
 そして、「てめえ、降りろ! 逃げんじゃねえ!」という怒鳴り声。
 あのバカ、き逃げしようとしたのか……目撃者に感謝だ。
 あっという間に視界が真っ暗になり、耳が遠くなった。その中で唯一聞こえた声……
 そこまでは覚えている。
 そして今、目を覚ました私がいるのは真っ白い空間。よくある物語のテンプレってやつ。
 私の目の前には、土下座をしている人が二人いる。いや、一柱と一人か?
 一人は神様だと名乗った男で、もう一人は背中に翼が生えている子ども――天使。
 私は怒り心頭で腕を組み、そして二人を冷めた目で見下ろしていた。

「へえ? ま・ち・が・い・で、殺したってわけ?」
「も、申し訳ありません!」

 額がめり込む勢いで白い地面につけ、汗をダラダラと流している一柱と一人。
 彼らによると、私は間違って殺され、そのお詫びとしてこの白い空間に呼び出されたらしい。別に死んだことに対してどうこう言うつもりはない。人はいつか死ぬ運命だから。
 でも間違って殺されたとあっては、普通怒るでしょ!

「どうして名前をきちんと確認しなかったわけ?」
「……」
「しかも年齢も書いてあったんでしょ? それすらも見なかったわけ?」
「……っ」
「見なかったんかーい! そんなんでよく天使だなんて言えるわよね!」

 視線を逸らした天使に、思わず突っ込む。
 やらかしたのは、天使。ただし、まだ見習い。
 天使の仕事は死んだ人間を迎えにゆくこと。そして迎えに行ったときは、顔と年齢、名前を確認する義務があるそうだ。
 それにもかかわらず、このバカ天使はなにも確認せずに私を連れてきてしまった。本来ならば違う人を連れてこなければいけなかったのに……つまり私は、死ぬ運命に無かったのだ。
 それを知った上司である神様が激怒。
 私の魂をこの白い空間に呼び、バカ天使と一緒に土下座しているというわけ。
 しかも地球の神様ではなく、別世界の神様と天使だというんだから、性質タチが悪い。

「で、こんなところに呼んでどうするわけ?」
「今ならまだ間に合うから、生き返らせることもできるよ」
「そうなの? けど、私はあの世界に未練はないから、このまま死にたいわね」
「「え……?」」

 私の言葉によほど驚いたのか、一柱と一人――ああ、もう面倒! 二人揃って顔をあげ、私を凝視ぎょうしした。

「貴女の過去をてもいいかい?」
「どうぞ」

 神様が立ち上がり、私の頭に手を乗せる。するとすぐにつらそうな痛ましそうな顔をして、優しく頭を撫でてくれた。
 私の過去はある意味壮絶だ。
 親には育児放棄という名の虐待をされ、学校でもいじめられていた。それは他の兄弟たち――姉や兄、弟も同じだった。
 私たちは、父の曽祖父がスペイン人だったことと母の祖母がノルウェー人だった影響で、髪や瞳の色が多くの同級生たちとは異なっていた。
 そんな状態だったもんだから、私は中学を卒業するころにはもう人間不信どころか人間嫌いになっていて、業務的な話はしても友達を作ろうとすらしなかった。友達になりたいと思ってくれていた子もいたようだが、私自身がその子たちを信用できなかったのだ。
 申し訳ないという感情が出てこない時点で、筋金入りの人間嫌いだとわかってもらえるだろう。
 そして、私と弟は父方の祖父母に、兄と姉は母方の祖父母に引き取られることとなる。
 引き取られたあとは剣道と薙刀なぎなた、簡単な護身術と、英語とスペイン語、フランス語を祖父母に習った。武道系と護身術は「多少なりとも自衛ができるように」と言って、教えてくれたのだ。
 まあ、どれもチカンにあったとき以外は、一切使うことはなかったが。
 そんな状態でも高校を卒業して大学に入り、在学中に資格を取って、就職難の時代になんとか秘書として就職できた。
 秘書として長年働き、今年になって通訳も兼ねた海外出張が増え、給料も上がった。それが嬉しく、結婚する気もないし、家族となるペットを飼おうと、猫と犬の譲渡会に行く途中で事故にあったのだ。
 祖父母はとうに亡くなったけれど、代わりに兄弟たちや伯父、叔母たちが心配してくれて、いつも生存報告だけはしていた。いくら人間嫌いでも、優しくしてくれた身内だけは特別だ。
 私が事故に遭って死んだって知ったら悲しむだろうな……
 だからこそ、神様は痛ましそうな顔をしたんだろう。
 神様の手が優しくて、ホッとすると同時に泣けてくる。

「苦労したんだね。確かにこれでは、生き返りたいと思わないのも納得だよ」
「でしょ? だから、このまま死にたいって言ったの」

 私の言葉に、神様もしかめっ面をしながらも「そうだね」と頷く。

「で、この天使はどうするわけ?」

 そんな私の事情はともかく、今は目の前のバカ天使のことを優先する。

「もちろん処分するよ、きっちりとね」
「……っ」
「当然だろう? お前は何回失敗した? 次はないと言った矢先に、仕出かしたんだろうに」
「う……っ」

 神様の目がとても冷ややかで、バカ天使は冷や汗をダラダラとかいている。
 どれだけ失敗を繰り返したんだ、このバカ天使は。もはや天使の資格はないんじゃないの?
 そんなことを思っていたら、天使の体が少年サイズから赤ちゃんサイズになった。

「もう一度最初からやり直してこい!」

 神様が手を振ると、バカ天使が消えた。それと同時に神様は私に向き合い、もう一度謝罪したあと自分の世界に転生しないか、と誘ってきた。

「裏があるんじゃないでしょうね」
「ないよ。僕の世界で、楽しい生活を送ってほしいだけだよ」
「なら、記憶を持ったまま転生してみたいわ。いろいろ作ってみたいし」
「ああ、それはいいね! アクセサリーや料理の種類があまりないから、そういうのを中心に作って文化を広めてほしい」
「まあ、それくらいならいいけど」
「なら、赤子からというのはまずいな」

 ぶつぶつとなにか言っている神様。なんだろうと首を傾げていると、ポンッ! とその場に黒くて丸いなにかが現れた。よく見ると猫耳と尻尾がついていてとても可愛い!
 しかも、尻尾だけが黒とシルバーの縞々しましま模様。とてもチャーミングだ。

「相棒の従魔じゅうまとして、この子を連れていってほしい」
「いいけど……その丸っこい子はなに?」
「スライムだよ。にゃんこスライム――にゃんすらという特別な種族のスライムで、僕の世界に十匹しかいないんだ。本来は白なんだけど、この子はさらに特別な子で、僕の世界でも三匹しかいないんだ」

 神獣なんだよ~と微笑む神様。
 そしてにゃんすらと呼ばれた丸っこい子が触手しょくしゅを出してみょーんと縦に伸び、お辞儀をしたような形になる。目と口がついていて、なかなか愛嬌あいきょうがある顔だ。
 しかも、機嫌がいいときの猫のように、縞々しましまの尻尾がゆらゆらと揺れている。
 神様からにゃんすらを手渡され、しげしげと眺める。グレープフルーツくらいの大きさで、とても綺麗な金色の瞳をしている。
 目が合うと、にこりと笑って触手しょくしゅを振ってくれた。おお、なかなか可愛いぞ!

「この子の名前は?」
「ないんだ。できれば貴女がつけてくれないかな」
「そう……。うーん、名前、名前かあ……」

 にゃんすらを見ていると、とある童話を思い出した。アニメにもなった、白い猫の童話。本来は白だというにゃんすらだから、きっと似合うと思う。その猫の名前の一部を取ろう。

「ノン、はどうかな」
「いい名前だ。この子も気に入ったようだよ。よかったね、ノン」
〈うん!〉

 私が名前を告げると魔法陣が現れ、私とにゃんすらを包んだ。
 すると、にゃんすらの可愛らしい声が聞こえてきた。
 なるほど、今の魔法陣は従魔契約をするもので、契約をすると魔物の声が聞こえるようになるのか。便利かも!
 尻尾を揺らし、ピョンピョンと跳ねて嬉しさを表現するにゃんすら――ノン。
 貴重なにゃんすらなのに私と契約してしまってよかったんだろうか。
 まあ、神様が提案してくれたんだしいいかと自分を無理矢理納得させる。
 そして、天使がやらかした分のお詫びを、しっかりきっちりもらおうじゃないの!
 まずはどんな世界なのか教えてもらわないといけないんだけれど、そこはさすが神様だ。私の頭に手を乗せると、世界の情報が染み込んできて、一気に理解する。
 剣と魔法があり、魔物が跋扈ばっこする世界のようだ。
 いわゆるゲームのように様々な種類のスキルがあって、それを元に生産したり料理をしたり、戦ったりするみたい。
 逆に言えば、対応するスキルを持っていないと戦えないし、料理なども作れないということだ。
 私の戦闘経験といえば、ないに等しい。スポーツとして戦ったことはあるが、実践で戦ったことはない。
 そんな私でもこの世界で生きていけるかなあ……と心配すると、ノンが一緒に戦ってくれるというので安心した。
 もちろん、ノンばかりに戦わせるなんてことはしない。

「テイムのスキルはいるかい?」
「うーん……従魔はたくさんいらないから、いいわ」
「そうか。まあ、テイムのスキルがなくても、魔物が君を認めれば従魔になってくれるから、大丈夫かな」
「ノンのように?」
「ああ」

 なるほど。魔物と心を通わせると、従魔になってくれるのか。
 それはともかく、世界の常識はわかったので、次に異世界で生活するうえで必要なスキルについて話し合うことに。
 基本的に、スキルは誰でも使えるものと、適性がないと使えないものがあるという。私はどうも攻撃魔法と回復魔法の適性がないようで、授けることができないと言われてしまった。残念。
 その代わりといってはなんだが、生産系のスキルにかなり適性があるそうだ。
 まず授かったのは、【生活魔法】と呼ばれているスキル。これには火をおこす、水を出す、かまどを作る、光を灯す、ゴミを集める、洗濯または服や体、食材を綺麗にする、乾燥の七つが含まれる。あとは【マップ】のスキル。
 本来の【マップ】は、自分が行ったことがない場所はグレーに、行ったことがある場所がカラーになり、詳細な情報が出る仕組みだという。私の場合は、神様が先に全部埋めてくれたからオールカラーだそうだ。
 もちろん、町や村、国の名前などもわかるようになっているんだとか。
 ……本格的に、ゲームっぽいわね。
 ただし、オールカラーといえど私自身が世界を旅したわけではないので、いきなりその場所には転移できないそうだ。つまり、逆にいうと一度でも訪れていれば、転移が可能ってわけ。
 ちなみに、この【生活魔法】と【マップ】は誰もが必ず持っているスキルだそうだ。
 あとこの世界には、トイレとお風呂、水道などのインフラがあるという。これは過去にこの世界に転移したり転生した人が伝えたんだとか。
 それなのにアクセサリーがないって、どういうことなんだろう?
 まったくないわけじゃないけれどネックレスだけで、イヤリングやピアス、指輪や腕輪、ブローチはないという。
 おい……いろいろ突っ込んでいい? ダメ? それは残念。
 料理に関しても、小説にありがちというか御多分にれず、塩味しかないそうだ。ただし、塩といってもレモン塩やハーブ塩、藻塩はあるから、全部が同じ味だということはないみたい。
 それでも遅れているとしか言いようがない。他にも調味料があるというのに、見向きもしなければ実験というか模索すらもしないというんだから、驚きだ。
 まあ、それはいいとして、私ができることは限られている。
 料理を含めた家事の他にDIYと編み物、アクセサリー作りと家庭菜園だ。
 DIYは趣味の範疇はんちゅうでしかないが、一緒に住んでいた祖父と伯父が宮大工みやだいくだったおかげもあり、屋根の修理や壁の補修くらいならできる。ログハウスや小さな小屋を祖父や伯父と一緒に建てたこともあるので、平屋ひらやを作ろうと思えばできると思う。
 祖父たちからは一応、基本的なことは一通りは習ったし、実践もさせられたしね。
 料理は祖母から教わった。和洋問わずなんでもできる人で、いろいろなものを自作する女性だったから、私もしっかり覚えさせられたものだ。
 今でも味噌と梅干、糠漬ぬかづけは自作しているくらいだし。
 そういえば冷蔵庫にあった糠漬ぬかづけと梅干と味噌はどうなるんだろう……。弟が持っていって使ってくれることを祈る。
 そんなことを考えていたら。

「それくらいなら、この世界に持ち込んでも大丈夫だよ。まったく同じ材料があるから」
「ほんと!? それは嬉しい!」

 あちらから持ってくるだけでなく、今すぐ採れる場所を教えましょうかと言われたけれど、断った。できれば自分で探したいからと。
 どうしても見つからなかったら教えてほしいとお願いすると、神様は嬉しそうな顔をして頷いていた。
 家庭菜園はプランターを使ったもの。自慢じゃないが、植物をらしたことは一度もない。
 アクセサリー作りも副業として、一時期販売していたことがあるが。
 そして剣道と薙刀なぎなた、護身術はたしなみのひとつです。……ナンチャッテ。

「うん、それだけあれば充分じゃないかな。なら、それら武道系の【剣術】と【槍術】と【体術】。もの作りに使える【緑の手】と【錬金術】と【付与】、【鑑定】と【解体】。あとは【転移魔法】と【時空魔法】、【結界】を授ける。それから【全種族翻訳】と、【状態異常無効】と【物理及び魔法無効】と【身体能力向上】も」


 おいおい、なんという大盤振る舞い。ほぼ無敵じゃない!
 そして、料理はそのまま、編み物は【裁縫さいほう】、DIYは【建築】として私の中にスキルとして定着している状態だそうなので、わざわざ授けることはしない、とのこと。

「だいたいわかるけど……念のために聞くわ。【緑の手】と【錬金術】と【解体】って?」
「うん。【錬金術】は薬を作ったり、他にもいろいろとイメージすることで作ったりすることができるスキルだよ。【緑の手】は植物の成長を早めたり、病気に強いものに改良するスキルだね。スキルのひとつである【農業】の上位互換なんだ」

 なるほど。【緑の手】は【農業】の上位スキルなのか。

「便利ね、【緑の手】は。畑を作るのが楽になりそう。それと、薬作りは薬師の仕事じゃないのね」
「薬師も【錬金術】で薬を作っているからね。薬作りを専門にするか、他のことも一緒くたにやるかで職業がわかれている感じだけど、明確な違いはないよ」

 なんとも曖昧な感じね。まあ、ある程度【錬金術】でできるならいいか。いろいろできそうだし。
【結界】は、魔物と盗賊から護ってくれるものらしい。これも珍しい魔法だそうだ。
 ノンがいるとはいえ、若い女の一人旅。宿に泊まれなかったときのため、ってことみたい。

「へ~、面白そう。【解体】は?」
「動物だろうと家だろうと、触って〝解体〟と言えば、全部ばらしてくれるスキルかな」
「肉だったら、部位ごとや皮と内臓に分かれるの?」
「ああ、ちゃんと想像すれば大丈夫だよ。便利だろう?」

 確かに【解体】はめちゃくちゃ便利じゃない! 血を見ながら解体しなくていいのは助かる。
【転移魔法】は、遠くに行っても一瞬で行き来できるスキル。ただし、自分が行ったことがある場所限定。
【時空魔法】は、【付与】と連動して、馬車や鞄、家の中などを広げるのに使うといいと、神様が教えてくれた。
 おお、それはいいね! 外見はこぢんまりとしているけれど、実は中が広い〇〇ってことができるもの。そう思ったら、すでにそういった馬車もこの世界にあると、授けてもらった知識が教えてくれる。
 そして神様はこの世界の服も用意して、斜め掛けのバッグにしまってくれた。
 これから旅をするので、チュニックにズボンとショートブーツ、外套がいとうだって。
 斜め掛けのバッグはインベントリのマジックバッグになっていて、無限に収納することができ、中の時間が経過しない仕組みだそうだ。これも【時空魔法】を応用したもの。
 インベントリのバッグは、とても珍しいものなので、できるだけ隠しなさいと言われた。私はお喋りじゃないから、もちろん隠しますとも。
 ノンも〈内緒にするー〉と言ってくれているし。
 可愛いなあ。つるつるぷよぷよをでちゃう!
 他にも当面のお金と旅に適した格好の予備、武器と防具とテントをくれた。あと、この世界にある調味料とハーブ類、スパイス類も。
 ちなみに、この世界のお金は硬貨のみ。銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨の五種類。日本のお金に無理矢理換算するならば、銅貨が十円、大銅貨が百円、銀貨が千円、金貨が一万円、白金貨が百万円。
 渡された金額は、金貨九十八枚と銀貨や銅貨、大銅貨合わせて合計百万分。
 多すぎでしょ! 小銭は助かるけども。
 そしてテントの性能には驚きだ。

「これは空間拡張が施されているテントでね。中がとても広くなっているんだ」
「おお~」

 テントは日本でも見た天井がドーム形になっているもので、周囲と高さが二メートル四方くらい。中に入ってみると、六畳から八畳はあろうかという広さで、天井も三メートルくらいの高さがあった。
 他にも、寝袋や魔物避けの結界を作る石に、魔道具の二口コンロは魔力を流すだけで使える優れもの。中に家具やベッドを置くこともできる。
 しかも、テントの中にはトイレとお風呂もある。トイレを外でしなくていいのは、本当にありがたい。
 なんというか、ワンルームがそのままテントになったような感じだ。さすがにキッチンはないが。
 授けてくれたスキルに関しても、全てカンストしてるから使い勝手が悪いということもない。これならば充分生活できそうだ。まあ、場所によりけり、かな?
 他にも神様は、薬のレシピを同じように全部馴染なじませてくれた。
 そんな私の魂の器となる肉体は、日本にいたときと同じ容姿をしている。
 金髪に近い薄い茶髪に青色の目、それが私。とは言っても年齢は一気に半分の、十六歳になってしまった。
 成人年齢も旅に出られるのも十六歳からだと言われてしまえば、仕方ないと諦めるしかない。
 気持ち的には十八歳でもよかったけれど、「少しでも長生きして、楽しんでほしいからね」と神様が言ってくれたから、感謝する。


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