161 / 190
ファウルハーバー領編
第177話 村から出発
しおりを挟む
三日ほど村に滞在した公爵一行だが、今日村から出発する。案の定領地まで護衛依頼を請けたとも。
もちろん私たちパーティーに対する護衛依頼なので、従魔は当然としてヤミンとヤナも同行する。
食料については一度帝都に寄り、そこで買い物をする予定。その時に、ルードルフが皇帝にあとをつけられたことを手紙に書いて出すと言っている。
「側近がしっかり家紋を見てるからな。家名もバッチリだ」
「ちなみに、それだけで処罰ってできるもんなの?」
「捜査と調査次第かな」
「捜査と調査……」
「元とはいえ王子と、皇帝と宰相の友人のあとをつけたんだ。しかも家紋までわかっている。それを進言したらどうなると思う?」
くくく……と低い声で、尚且つ真っ黒い笑みを浮かべて笑うルードルフ。ほんっとにこえーよ、お貴族様は! この手のタイプは、絶対に敵に回したらあかんというのがよーくわかるってもんだ。
とりあえず家紋を見ただけじゃなく、その映像も保存してあるから、それも一緒に皇帝に送ったうえで「ストーカーされたよ、父ちゃん。怖いし、砂糖作りを横取り&邪魔されると困るから、調べてね☆(意訳)」的な内容の手紙を添えるという。
……終わったな、その貴族は。どのみち真っ黒い噂しか聞かない家らしいので、その内容次第では逮捕、じゃなくて捕縛されるだろうとのこと。
「そのまま芋蔓式に別の連中を捕縛できれば、御の字だな」
「中には幼子の人身売買もありましたもの。できれば捕縛していただきたいですわ」
「そうだな」
おいおい、子どもの人身売買かよ! どう考えてもアウトでしょ!
絶対に狙ってるだろ、ルードルフ。国の中枢なんて清だけでは立ち行かないしね。清濁併せ持ってないと無理。
正義だけでは国も領地も治められないとは、ルードルフの弁だ。
「もちろん悪事に手を出すつもりはないが、正義感だけで領地なんて治められない。どこかで切り捨てる必要も出てくる」
「主に税金ですわ」
「なるほど。場合によっては上げざると得ないってことね」
「ああ。災害に備えてできるだけ備蓄などを用意し、資産を増やして貯金していたとしても、その規模によっては赤字になる場合がある。その時は数年は税を軽くするが、その後は税を上げざるを得なくなる」
「とはいえ、上げたとしても数年ですわ。その見極めを間違うと、ずっと重税に喘ぐ領地が出てしまいますもの」
「なるほどね」
その采配がとても難しいと話す公爵夫妻。税を上げるか増やすかするしかないが、一歩間違うと悪徳領主になってしまうってことか。
そんな話を聞いていると、私には確実に無理だとわかる。書類整理くらいはできるけれど、それ以上の采配などは確実に無理!
教育を受けた貴族は怖いと同時に凄いって思った。
そんな話をしていると準備が整う。公爵夫妻一行待ちだったんだよね。
私たちは自分たちが使う馬車にリコを繋ぎ、いつものポジでスタンバイ済みだったのだ。
「じゃあ、アリサ、頼む。出立する」
「はっ!」
「はいよー」
村人たちに見送られ、馬車が走り出す。来た時同様に休憩所まで行ったあと、転移で下まで行くのだ。
その後帝都まで行って買い物をしたあと、領地に向かう予定。
てなわけで予定通りに行動し、帝都を出たのは昼過ぎだった。買い物と、ついでに食事をして出て来た。
ルードルフたちの領に向かう途中にいつも行く牧場があったので寄ってもらい、卵と肉類を購入した。なくなったら襲ってきた魔物肉を食べる予定。
途中休憩を挟み、夕方まで移動。泊まる予定の町に着いたものの、珍しく宿が全滅だったので、町を出て少し先にある休憩所に移動中だ。
とはいえ、公爵夫妻一行の馬たちはスレイプニルだったので、ちょっとスピードを上げてもらうと、すぐに休憩所に着いた。さっさとテントと結界を張り、ピオに雷を這わせてもらうと、一行の顔が引きつった。
「凶悪ですわね……」
「そうは言うけど、休憩所といえど安全じゃないの。特にこっちは女がいるんだから、自衛は大事よ」
「確かに」
「よからぬ視線も感じますしね」
「でしょ?」
休憩所に着いてすぐ、気持ち悪い視線が飛んできた。そのこにいたのは冒険者が複数組と、商人一行だ。
どこから飛んできたのかわからないが、先客が野郎どもしかいないことを考えると、警戒し自衛するのは当然。怖いのは魔物よりも人間だからね。
なので、しっかりと結界を張ったうえでの雷付き。
明日の朝はどうなってるかな♪ 楽しみだな♪
「結界も三重になってるから、見張りも必要ないわよ」
「わかった。ゆっくりと寝かせてもらうことにするよ」
着いたばかりだからと一行全員に紅茶を配り、まったりしててもらう。その間にヤミンとヤナと一緒に、ご飯作り。
貴族だからといって豪華な食事にはしないぞ? そういうのは町で食べればいいんだよ。
とはいえ、デザートは食べたいとロジーネたち女性陣に言われているから、一品ずつだすつもりではいる。もちろん、男性陣も食べる気満々だ。
領地の特産品となり得るものだからね~。そこは男性陣も真剣に吟味するだろう。
まずはデザートよりも晩ご飯。春になったとはいえ、夜はまだまだ寒い。なのでスープは必須。
「アリサ、キノコたっぷりな野菜スープでいい?」
「いいわよ」
「俺は肉を串に刺すのを手伝うぜ」
「よし。じゃあ、一緒にやろうか」
「手が空いたらボクも手伝うね」
「ありがとう」
スープはヤミンが作ってくれるというのでお願いし、その間に微妙に残っているボア肉とディア肉を一口大にカット。それをヤナが串に刺し、焚火の周囲に刺していくという流れだ。
引っくり返すのは騎士たちがやると言ってくれたのでお願いする。ある程度カットしたらパンを用意して温め始めた。
「手際がいいな」
「そりゃあ冒険者稼業には必須だしね。冒険者によっては干し肉と硬い黒パンで済ませる人もいるけど、栄養面を考えるとねぇ」
「確かに」
ルードルフを含めた騎士たちが頷いている。
「最近は、冒険者も料理するようになったよ、アリサ」
「ああ。といっても野菜が入ったスープだけとかな」
「それでも、野菜が入ったスープがあるだけで、栄養面は安心よね。あとはそこに加工肉を入れたり、干し肉を入れたり、魔物肉を入れるだけで立派な一品になるし」
「アリサ殿、もし休憩所での食事になるようであれば、我らにも教えていただきたい」
「簡単だし、いいわよ」
私たちの話を聞いて何やら考えていた騎士の側近が、教えてくれと言ってきた。たぶん、村でもヴィンあたりに何か言われたんだろう。
向上心が出てきてるから、村での訓練はいい経験になったんだろうね。
他にも簡単な料理を教えてほしいというので、まずは何を作れるか聞いてからと提案すると、騎士たち全員が頷いた。その間も串を引っくり返している。
そうこうするうちに一人三本は食べられる量の肉が焼けたし、スープもパンも出来上がった。串焼きが足りないのであれば、自分で焼いてほしいと話し、ご飯開始。
「美味しいです! ディアは滅多に食べられませんし」
「ボアもだよな」
「領地だとホーンラビットぐらいだもんな」
「あとはダンジョンから出るオークか」
「へ~、ダンジョンもあるんだ」
和気藹々と話が弾む。ダンジョンがあるとは聞いてないぞ、ルードルフ!
「ああ。初級がふたつと中級がひとつある。ただ、どれも階層が深くてな」
「何階まであるの?」
「初級が三十と五十だが、中級は不明だ。三十のほうは攻略済みで、五十のほうが四十まで行ってる。中級はまだまだだな」
「そうなの?」
「発見されたばかりなんだ。だから、攻略が始まったばかりさ」
なるほど。騎士たちによると、オークはその中級ダンジョンに出るという。ワンフロアがかなり広いらしく、五階までしか攻略が済んでいないらしい。
ただ、その情報は帝都に来る前の話なので、もしかしたら帰るころにはもっと攻略が進んでいる可能性があるんだとか。進んでいれば、肉の種類がもっと増えると喜んでいる騎士たち。
そうかい……やっぱ肉が好きなんかい……。
今は領の騎士と冒険者が手を組んでダンジョンに挑んでいるが、もっと冒険者の数が増えたら、彼らに一任するつもりだという。
領主になるとあれこれ考えないといけないから、大変そうだ。それでも、ルードルフもロジーネも、愚痴を言わずに楽しそうにしているのが印象的。
部下にはならんけど、手伝いはするから頑張れよー。
なんなことを考えつつ、ご飯を食べたのだった。
もちろん私たちパーティーに対する護衛依頼なので、従魔は当然としてヤミンとヤナも同行する。
食料については一度帝都に寄り、そこで買い物をする予定。その時に、ルードルフが皇帝にあとをつけられたことを手紙に書いて出すと言っている。
「側近がしっかり家紋を見てるからな。家名もバッチリだ」
「ちなみに、それだけで処罰ってできるもんなの?」
「捜査と調査次第かな」
「捜査と調査……」
「元とはいえ王子と、皇帝と宰相の友人のあとをつけたんだ。しかも家紋までわかっている。それを進言したらどうなると思う?」
くくく……と低い声で、尚且つ真っ黒い笑みを浮かべて笑うルードルフ。ほんっとにこえーよ、お貴族様は! この手のタイプは、絶対に敵に回したらあかんというのがよーくわかるってもんだ。
とりあえず家紋を見ただけじゃなく、その映像も保存してあるから、それも一緒に皇帝に送ったうえで「ストーカーされたよ、父ちゃん。怖いし、砂糖作りを横取り&邪魔されると困るから、調べてね☆(意訳)」的な内容の手紙を添えるという。
……終わったな、その貴族は。どのみち真っ黒い噂しか聞かない家らしいので、その内容次第では逮捕、じゃなくて捕縛されるだろうとのこと。
「そのまま芋蔓式に別の連中を捕縛できれば、御の字だな」
「中には幼子の人身売買もありましたもの。できれば捕縛していただきたいですわ」
「そうだな」
おいおい、子どもの人身売買かよ! どう考えてもアウトでしょ!
絶対に狙ってるだろ、ルードルフ。国の中枢なんて清だけでは立ち行かないしね。清濁併せ持ってないと無理。
正義だけでは国も領地も治められないとは、ルードルフの弁だ。
「もちろん悪事に手を出すつもりはないが、正義感だけで領地なんて治められない。どこかで切り捨てる必要も出てくる」
「主に税金ですわ」
「なるほど。場合によっては上げざると得ないってことね」
「ああ。災害に備えてできるだけ備蓄などを用意し、資産を増やして貯金していたとしても、その規模によっては赤字になる場合がある。その時は数年は税を軽くするが、その後は税を上げざるを得なくなる」
「とはいえ、上げたとしても数年ですわ。その見極めを間違うと、ずっと重税に喘ぐ領地が出てしまいますもの」
「なるほどね」
その采配がとても難しいと話す公爵夫妻。税を上げるか増やすかするしかないが、一歩間違うと悪徳領主になってしまうってことか。
そんな話を聞いていると、私には確実に無理だとわかる。書類整理くらいはできるけれど、それ以上の采配などは確実に無理!
教育を受けた貴族は怖いと同時に凄いって思った。
そんな話をしていると準備が整う。公爵夫妻一行待ちだったんだよね。
私たちは自分たちが使う馬車にリコを繋ぎ、いつものポジでスタンバイ済みだったのだ。
「じゃあ、アリサ、頼む。出立する」
「はっ!」
「はいよー」
村人たちに見送られ、馬車が走り出す。来た時同様に休憩所まで行ったあと、転移で下まで行くのだ。
その後帝都まで行って買い物をしたあと、領地に向かう予定。
てなわけで予定通りに行動し、帝都を出たのは昼過ぎだった。買い物と、ついでに食事をして出て来た。
ルードルフたちの領に向かう途中にいつも行く牧場があったので寄ってもらい、卵と肉類を購入した。なくなったら襲ってきた魔物肉を食べる予定。
途中休憩を挟み、夕方まで移動。泊まる予定の町に着いたものの、珍しく宿が全滅だったので、町を出て少し先にある休憩所に移動中だ。
とはいえ、公爵夫妻一行の馬たちはスレイプニルだったので、ちょっとスピードを上げてもらうと、すぐに休憩所に着いた。さっさとテントと結界を張り、ピオに雷を這わせてもらうと、一行の顔が引きつった。
「凶悪ですわね……」
「そうは言うけど、休憩所といえど安全じゃないの。特にこっちは女がいるんだから、自衛は大事よ」
「確かに」
「よからぬ視線も感じますしね」
「でしょ?」
休憩所に着いてすぐ、気持ち悪い視線が飛んできた。そのこにいたのは冒険者が複数組と、商人一行だ。
どこから飛んできたのかわからないが、先客が野郎どもしかいないことを考えると、警戒し自衛するのは当然。怖いのは魔物よりも人間だからね。
なので、しっかりと結界を張ったうえでの雷付き。
明日の朝はどうなってるかな♪ 楽しみだな♪
「結界も三重になってるから、見張りも必要ないわよ」
「わかった。ゆっくりと寝かせてもらうことにするよ」
着いたばかりだからと一行全員に紅茶を配り、まったりしててもらう。その間にヤミンとヤナと一緒に、ご飯作り。
貴族だからといって豪華な食事にはしないぞ? そういうのは町で食べればいいんだよ。
とはいえ、デザートは食べたいとロジーネたち女性陣に言われているから、一品ずつだすつもりではいる。もちろん、男性陣も食べる気満々だ。
領地の特産品となり得るものだからね~。そこは男性陣も真剣に吟味するだろう。
まずはデザートよりも晩ご飯。春になったとはいえ、夜はまだまだ寒い。なのでスープは必須。
「アリサ、キノコたっぷりな野菜スープでいい?」
「いいわよ」
「俺は肉を串に刺すのを手伝うぜ」
「よし。じゃあ、一緒にやろうか」
「手が空いたらボクも手伝うね」
「ありがとう」
スープはヤミンが作ってくれるというのでお願いし、その間に微妙に残っているボア肉とディア肉を一口大にカット。それをヤナが串に刺し、焚火の周囲に刺していくという流れだ。
引っくり返すのは騎士たちがやると言ってくれたのでお願いする。ある程度カットしたらパンを用意して温め始めた。
「手際がいいな」
「そりゃあ冒険者稼業には必須だしね。冒険者によっては干し肉と硬い黒パンで済ませる人もいるけど、栄養面を考えるとねぇ」
「確かに」
ルードルフを含めた騎士たちが頷いている。
「最近は、冒険者も料理するようになったよ、アリサ」
「ああ。といっても野菜が入ったスープだけとかな」
「それでも、野菜が入ったスープがあるだけで、栄養面は安心よね。あとはそこに加工肉を入れたり、干し肉を入れたり、魔物肉を入れるだけで立派な一品になるし」
「アリサ殿、もし休憩所での食事になるようであれば、我らにも教えていただきたい」
「簡単だし、いいわよ」
私たちの話を聞いて何やら考えていた騎士の側近が、教えてくれと言ってきた。たぶん、村でもヴィンあたりに何か言われたんだろう。
向上心が出てきてるから、村での訓練はいい経験になったんだろうね。
他にも簡単な料理を教えてほしいというので、まずは何を作れるか聞いてからと提案すると、騎士たち全員が頷いた。その間も串を引っくり返している。
そうこうするうちに一人三本は食べられる量の肉が焼けたし、スープもパンも出来上がった。串焼きが足りないのであれば、自分で焼いてほしいと話し、ご飯開始。
「美味しいです! ディアは滅多に食べられませんし」
「ボアもだよな」
「領地だとホーンラビットぐらいだもんな」
「あとはダンジョンから出るオークか」
「へ~、ダンジョンもあるんだ」
和気藹々と話が弾む。ダンジョンがあるとは聞いてないぞ、ルードルフ!
「ああ。初級がふたつと中級がひとつある。ただ、どれも階層が深くてな」
「何階まであるの?」
「初級が三十と五十だが、中級は不明だ。三十のほうは攻略済みで、五十のほうが四十まで行ってる。中級はまだまだだな」
「そうなの?」
「発見されたばかりなんだ。だから、攻略が始まったばかりさ」
なるほど。騎士たちによると、オークはその中級ダンジョンに出るという。ワンフロアがかなり広いらしく、五階までしか攻略が済んでいないらしい。
ただ、その情報は帝都に来る前の話なので、もしかしたら帰るころにはもっと攻略が進んでいる可能性があるんだとか。進んでいれば、肉の種類がもっと増えると喜んでいる騎士たち。
そうかい……やっぱ肉が好きなんかい……。
今は領の騎士と冒険者が手を組んでダンジョンに挑んでいるが、もっと冒険者の数が増えたら、彼らに一任するつもりだという。
領主になるとあれこれ考えないといけないから、大変そうだ。それでも、ルードルフもロジーネも、愚痴を言わずに楽しそうにしているのが印象的。
部下にはならんけど、手伝いはするから頑張れよー。
なんなことを考えつつ、ご飯を食べたのだった。
132
・「転移先は薬師が少ない世界でした」1~6巻、文庫版1~2巻発売中。こちらは本編完結。
・「転移先は薬師が少ない世界でした」コミカライズ 1巻発売中。毎月第三木曜日更新
・「転生したら幼女でした⁉ ―神様~、聞いてないよ~!」
を連載中です。よろしくお願いします!
・「転移先は薬師が少ない世界でした」コミカライズ 1巻発売中。毎月第三木曜日更新
・「転生したら幼女でした⁉ ―神様~、聞いてないよ~!」
を連載中です。よろしくお願いします!
お気に入りに追加
8,882
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。
亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません!
いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。
突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。
里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。
そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。
三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。
だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。
とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。
いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。
町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。
落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。
そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。
すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。
ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。
姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。
そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった……
これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。
※ざまぁまで時間かかります。
ファンタジー部門ランキング一位
HOTランキング 一位
総合ランキング一位
ありがとうございます!
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。