自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ドルト村の冬編

第151話 ダンジョン攻略 12

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 半日かけてフロア全体の魔物をほぼ全滅させ、地図を描いていく。魔物の数が少ないから、採取もし放題だ。
 まあ、一日経つと魔物は復活するけれど、今倒した数と同じにはならないから大丈夫だと、ヴィンが太鼓判を押した。モンスターハウスだった場合だけれど、そこを一掃してしまうと、通常の湧き方に戻るらしい。
 なので、ひしめき合うような魔物の湧き方にはならないという。本当にダンジョンって不思議だな。
 そんなわけでほぼ一日かけて五十三階層のマップと野菜の分布図を作ったあと、五十四階層に来たわけだが。
 今度はマグマが流れる、真っ赤に燃えた山々だった。

「気温の変動が激しすぎるでしょ!」
「こりゃあ、耐熱と耐寒、できれば防熱と防寒が必要だよなあ……」
「とりあえず両方付与した腕輪を作るから」
「頼む、アリサ」

 寒さは着ればいいが、暑さはそうはいかない。なので、とりあえずオリハルコンを使って防寒と防熱を付与した腕輪を人数分作る。従魔たちに関しては首輪など従魔の証に付与してあるので、今回は作らない。
 準備ができたので全員に配り、燃え盛る山を探索する。ところどころでマグマがボコっと音を立てて弾けたり、山が噴火して石が飛んできたりと、なかなかに殺意が高い。
 しかも魔物もワイバーンやリトルドラゴン、炎をまとったライオンや虎といった魔物が出てきている。レベル自体は400前後と上の階よりも低いものの。周囲の殺傷力が高すぎて、相当な手練れじゃないと攻略は難しいだろう。
 それはヴィンもわかっているようで、苦い顔をしている。
 あとは常に強力な結界を張れるだけの魔力とレベルがあれば大丈夫かもしれない。試しに結界を張ったまま移動してみたけれど、カンストしているからなのか、結界が壊れることはなかった。
 まあ、それでも、私たちに限り、切り込み隊長な私とノンのサンクチュアリがあればそれほど脅威じゃないのよね、魔物自体は。どのみち薬草などの採取できるものはほとんどなく、あっても火炎草という火傷を治す薬に必要な薬草くらいで、他に有用な素材はワイバーンとリトルドラゴンの皮と肉、牙と魔石しかないことから、ここは最短距離で抜けられるよう、マップを作ることに。
 もちろん、セーフティーエリア込みで階段まで誘導したとも。
 あとちょいで階段に辿り着くというところで、氷魔法が使えるヤナとジルが戦闘するのが面倒になったらしく、ヤナが上級魔法のダイヤモンドダストを、ジルが最上級魔法のコキュートスを放ってフロア全体を凍りつかせ、私とヤミン、従魔たち以外を唖然とさせたのは余談だ。

「暑いとこで寝たくなかったし、暑さにもうんざりしてたし」
<我もだ>
「ドロップも集まったんだろ? 確認は下か階段でやって、さっさと通り抜けようぜ」
「そ、そうだな」

 ヤナとジルの言葉に、ヴィンは顔を引きつらせながらも頷き、目の前にある階段を下りる。そこはボス部屋に続く手前の場所で、視線の先には重厚感がある扉があった。

「「「「「「「…………ボスかあ」」」」」」」

 全員ではもった。
 まあ、予想通りっちゃ予想通りだけれど、どんなボスが出るのかわからないのが痛い。初見で倒せるかなあ? まあ、従魔たちもいるし、なんとかなるっしょ。
 時間もまだ昼前だし、軽く食べてから一回戦闘することに。
 とりあえず軽~くパンとスープだけをお腹に入れ、戦闘準備。そしてボスへと続く扉を開け、くぐる。
 全員入りきると扉が閉まり、中心に魔法陣が出現したあと、そこからボスが出てきた。ボスはジェネラルオーク一体とキングゴブリンが四体。
 鑑定によるとレベル自体は500前後だが、それぞれの上位種なので警戒が必要だ。といっても、私たちの敵ではないわけで。
 従魔を含めた全員で攻撃し、五分とかからず倒す。ドロップと一緒に全員の目の前に宝箱が出現した。
 中身は上級ポーション二種類が五本ずつと、万能薬が三本だった。これはありがたいね!

「とりあえず、下に行く階段があるか調べるぞ」

 ヴィンの言葉に全員で頷き、入ってきた場所と奥に開いた扉を確認し、奥へと向かう。そこには転移陣と階段があった。

「偵察してくるわね」
「頼む」

 気配を消して階段を下りると、やはり魔物の数が多かった。見える範囲だとフォックス、ウルフ、ベア、ディア系の上位種と、あとはワイバーンがいるようだ。
 フロア自体がどういう景色なのか、階段の途中からは見えないが、種族からして森や山があると考えられる。その確認はボス部屋の確認が終わればわかるからいいとして。
 魔物の数の多さに辟易して溜息をこぼしたあと、戻ってヴィンに報告すると、顔を顰めた。

「やはり、スタンピード間近なのか……?」
「あとは、魔物が増え過ぎたせいで、モンスターハウスになっているだけかもね」
「それもあり得るな。このまま行くのは危険だから、一回ボス部屋の手前まで戻るぞ。ボスが固定なのかも調べたいしな」
「了解」

 てなわけで残りの半日はボスがどうなのかを調べることに。その前にお昼ご飯。
 海があった階層に単独でイクラが出たからね~。しっかり醤油漬けにしておいたので、それを食べるつもりだ。
 ご飯を炊いて、漬けにしたイクラの上に葉ワサビのみじん切りと針海苔をぱらり。スプーンでかきこんでくれ。
 ヤミンとヤナはかなり久しぶりに食べたのか、目がうるうるしてたしね。そういえばイクラは出してない、かも?
 まあ、全員で山分けしたとしても村へのお土産にできるほどの量を確保しているし、どうせ村へ帰ったらヘラルドあたりが「お疲れ様の宴会を~」とか言いそうだしねぇ。
 野菜さえしっかりと作っておけば、山にいる魔物を間引く程度ですむくらいの量の肉も確保できたし、魚も漁港に行かなくてすむほどドロップしている。とはいえ、五十階層までに出たドロップ品と、五十階層以降に出たドロップ品の三分の一、または半分は冒険者&商業ギルドに売ると決めているので、全部村へのお土産ではない。
 あまり持って帰っても、貯蔵庫がいっぱいになっちゃうしね。そこは保存食を中心に作って、家に置いておけるように提案するちもりだ。
 村周辺にいる魔物は、ダンジョンと違って無限に湧くわけではない。なので、ある程度の間引きをしたら、あとは帝都に行って買い揃えるしかない。
 今まではディエゴが村に来てくれていたからそれができていたけれど、今は馬車も馬もいるからと、どんどん帝都に行っている村人たち。ずいぶん積極的になったとは、ヘラルド談だ。

 閑話休題。

 ご飯も食べ終わり、お腹も落ち着いた。ボスが固定なのかランダムなのかを調べるために、ボス部屋へと突入する。出たのは同じだったのでサクッと倒し、一度外に出てまた入り直す。
 これまた同じだったのでまた……と人数や種族を変えて十回ほど繰り返し、ボスが固定とわかった時点でちょうどおやつの時間となった。
 ……頑張りすぎでしょ!

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