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ドルト村の冬編

第147話 ダンジョン攻略 8

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 セーフティーエリアに着いたあと、昼ご飯。ここから四十三階に行くには時間が足りないけれど、ふたつ目のセーフティーエリアに行く分には問題ない時間と距離だそうだ。
 ただし、階段とは逆方向にあるのでおすすめしないとのこと。
 それならばとセーフティーエリアを中心に、周辺を回って肉と素材集めをすることに。薬草と果物はノンとヤミン、護衛にジルが付き、戦闘はヴィンとヤナとピオ、ランツと新人二人の親子、私とリコとエバに分かれた。
 効率を重視した形になるのかな。
 とはいえ、ほぼ全員一緒に動いているから、魔物が脅威になっているということはない。村の周辺にいる魔物たちに比べたら、まだまだ弱いし。
 てなわけて二時間ほど探索をし、セーフティーエリアへ。二組ほど冒険者がいたけれど、視線を集めるとか言いがかりをつけられるといったこともなく、さっさと晩ご飯を食べて寝た。

 それを皮切りに、戦闘を重ねてはセーフティーエリアや階段で休憩し、どんどん下層に潜っていった私たち。結局は最短距離で下りまくった結果、四日で五十階に来てしまった。
 まさに「どんだけー!」だ。
 四十五階のボスはブラックベア五体、五十階はビッグホーンディアが十体出た。どうやらここが節目になりそうだ。
 で、五十一階。魔物は四十一階と変わらないが、レベルの関係なのか二回りほど大きくなり、レベルも450を超えている。本来であれば少年二人とランツの息子の二人は格上になる。
 けれど、村の周辺にいる魔物はレベル600超えのものばかりであり、常にそのレベルの魔物と戦っているからか、キツイとは感じなかったらしい。経験値がガッポリ入って来てはレベルが上がっていくのがわかるようで、喜々として戦っているしね。
 それに伴って動きがどんどん洗練され、無駄な動きもなくなっていく。そして連携もとれていくから、戦闘時間がどんどん短くなっていってるのだ。
 ヴィンにしてみたらそれは嬉しい誤算で、指示を飛ばさなくても動いてくれるものだから、喜々として戦っている。そういうところが脳筋っぽい。
 今日一日かけて五十一階を探索。マップを展開し、さりげなく宝箱があるところに誘導しつつ、埋まってない場所を埋めていく。
 といっても草原しかないからね~。目印と一緒に宝箱の位置を記入するしかない。

「よし。じゃあセーフティーエリアに戻るか」
「そうね。階段の位置の確認はどうする?」
「あ~……どうするか……」
<オレとエバで探してこようか? アリサの地図だとはっきりとわかるし>
「お願いしてもいいかしら」
<<うん!>>
「じゃあお願いね」
「従魔たちはなんだって?」

 飛び立ったピオとエバを眺めつつマップ云々のところ以外のことを話すと、助かると笑みを浮かべるヴィン。十分ほどで戻ってきたピオとエバは、マップと同じ場所にあったと教えてくれる。
 なので手書きの地図を出し、聞き取りをしている風を装って地図に階段の場所を書き込んだ。

「ここだそうよ」
「ここから近いな」
「距離的には歩いて一時間以内といったところでしょうか」
「ヴィンさん、セーフティーエリアの場所はわかっているんですよね?」
「ああ。わからなかったのは、階段と転移陣の場所だけだからな」

 なるほど。転移陣の場所を二羽に聞くと、それも階段の近くにあったと教えてくれたので、それも書き加える。

「ここにあるそうよ」
「さすがはアリサの従魔たちだな。しっかりとわかっているってことか」
「一度、迷宮都市のダンジョンを攻略してるからね」
「「あ~……」」
「なるほどね」

 ヤミンとヤナが当時を思い出したのか遠い目をし、ヴィンが納得したようにニヤリと笑う。なんつーあくどい顔をしてるんだ、ヴィンさんや。
 まあ、遠い目をしているとはいえヤミンとヤナも楽しそうだし、トラウマになっていないならよかったと胸を撫で下ろした。
 その後、日暮れまではまだ少し時間があるからと、階段付近まで探索することに。帰りは走って帰ってくるか、ピオとエバに乗せてもらえばいいしね。
 で、四十分で階段に到着、階下を見に行ってみると、なんだか普段よりも魔物が多いと感じた。ある意味セーフティーエリアともいえる階段付近は、本来であれば魔物は近寄って来ない。
 なのにそこに魔物がいる。ひしめき合っているわけではないが、他のフロアに比べても多いと感じたのだ。それをヴィンに伝えると、難しい顔になって腕を組む。

「もしかして、スタンピードになる直前か、モンスターハウスになりつつある、とか?」
「……っ!」

 可能性をあげてみると、ヴィンが息を呑む。それだけじゃなく、従魔たち以外も目を瞠って驚いている。
 従魔たち? なぜか殺る気になっているんだが。

「その可能性は高いと、私は考える。ここに来るまでにスタンピード直前の森の間引きもしたし、状況がとても似ている感じがするわ」
「……スタンピードの前兆として、モンスターハウスになることがあるんだ。もしかしたらそうなる可能性が高い」
「そうですね。できれば殲滅、不可能であれば半分に減らし、階上に行かないようにしないと……」
「腕試しできそうだよね、ヤナ」
「そうだな。広域魔法でもぶっ放す?」

 おい、物騒なことを言うんじゃない、少年組!
 まあ、気持ちはわかる。今まで碌に戦闘してないもんな。してもがっつりというわけじゃなかったし。
 ここで話していても埒が明かないからとセーフティーエリアに戻り、ご飯を食べつつ話し合い。ご飯は米と牛が食べたいというリクエストのもと、悩んだ末に牛丼とビーフストロガノフの二種類を用意した。
 牛丼だとビーフと玉ねぎだけだしね。その分、ストロガノフには玉ねぎだけじゃなくて、たくさんの種類のキノコを入れてみた。
 どっちも茶色っぽい色なのでサラダを用意。息子たちだけじゃなく、少年たちも作り方を覚えたいというので、こうなった。
 ストロガノフのアレンジとして、牛の代わりにオークやロック鳥、コッコで作っても美味しいと教えると、今度やってるみると嬉しそうにしていた四人であった。

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