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ガート帝国編
第78話 森の道
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道を折れ曲がると、すぐに林になり、森になった。マップを見る限り集団の赤い点はないから、とりあえず放置でいいだろう。
何せ、ピオとエバがスィーっと飛ぶだけで逃げていくからね~。一角兎しかいないというのも納得だ。ただし、上のほうはどうなのかわからないが。
ゆるいとはいえ上り坂だからなのか、馬車の歩みは遅い。しかも普通の馬車や幌馬車はサスペンションなんてないから、石なんか踏もうものなら体が飛びあがる。
うーん……鉄が大量にあるから、それでサスペンション代わりのバネでも作ってみるかなあ。これからずっと取引しそうなんだよね、ディエゴとは。
特にミショの実はこれから本格的な商談をしないといけないし、真珠に関しては私から買い取ることになっているし。もし、村にいる鍛冶師に宝石のカットができないとなると、私が作らないとダメだからね。
今後もよろしくという意味でも、ちょっと改造させてもらおう。
「ディエゴ、相談があるんだけど」
「なんですかな?」
「馬車をもっと快適にしたくない?」
「それは……」
今日は御者台にいるディエゴに話をふると、迷うように目を泳がせる。
「この山道を上り下りするとなると、毎回馬車が傷んでいるんじゃないの?」
「よくおわかりですな……。ええ、その通りです。足回りは大丈夫なのですが、荷台のほうがガタガタになってしまうんですよ」
「その解消法を私が知っているとしたら、どうする?」
「「「「「えっ⁉」」」」」
ギョッとしてこっちを見るディエゴと馬車にいる三人。おい、御者をしているジョナスさんや、よそ見をするんじゃない! 危ないだろうが!
なーんて思っていたら、やっばり石を踏んでガタンと馬車が大きく左右に揺れると同時に、体が上に飛び上がる五人。
「せめてこの揺れさえなければいいのですが……。本当に、その技術を持っていると?」
「ええ。重量軽減と状態維持のかかりも甘いみたいで、馬にも負担になっているし。ね、お馬さん」
「ブルッ、ブルルっ!」
つらいし重いですぅ! と、返事をするかのように鼻を鳴らした馬に、五人がギョッとした。もちろん、つらいし重いと言ってるけどね。
「ふむ……。わかりました。休憩の時にでもお願いしてもいいですかな?」
「いいわ」
OKが出たので、しっかりと改造しよう。まあ、錬金術で一発なんだけどね。
緩やかな上り坂が終わり、平坦な道になる。その先に見える道はまだまだ続いており、ここから見るだけでも上り坂になっていることがわかる。
まだ林と呼べるほどにしかない木々と眼前に広がる風景は、正にカントリーロードだ。
それが何回も続いているのだ。その先は見えないから、もしかしたら途中で曲がるのかもしれない。
そうこうするうちに休憩所に着いたので、馬を休ませるために放牧する。リコが護衛として近くにいるから問題ないだろうし、ピオとエバも周囲を見てくると飛び立った。
<アリサ、採取してきてもいい?>
「いいけど、遠くに行かないでね。馬が休憩できたら、すぐに出発するから」
<はーい!>
いつものように籠と瓶をいくつも渡すと、ノンが森の中へと入っていく。それを見送ってから鉄とミスリル、メテオライトのインゴットを出し、丈夫なバネを作る。
もちろん状態維持と重量軽減をかけた。それからディエゴに断ってから板を出し、バネと一緒に馬車に錬成すると同時に、全体的に重量軽減と状態維持もしっかりかけておく。
「これでいいわ。次の休憩所に着いたら、感想を聞かせて。それによっては修正するから」
「一瞬でしたな。さすがはアリサといったところでしょうか」
「アリサ、これで揺れが軽減されるの?」
「ええ。乗ってのお楽しみよ」
半信半疑な様子の五人に、それは仕方がないかと思う。バネを取り付けたからといって外からは見える部分には錬成していないからね。
私たちもトイレ休憩をしてまったりしていると、リコと一緒に馬が戻ってくる。それを皮切りにピオとエバが一角兎を持って帰ってきたり、ノンが薬草とキノコ、果物を持って帰ってきた。
キノコはシメジとなめこ、エリンギに似たものだ。よし、夜はなめこの味噌汁にしよう。……豆腐がないのが残念だ。
果物は小玉スイカと巨峰。ただし、巨峰の一粒は日本で見たものよりも大きい。
そして小玉スイカだが、ノン曰く木に生っていたらしい。……この世界のスイカは木に生るのか。日本では野菜に分類されるけれど、異世界だと果物に分類されるみたい。
面白いなあ。
気温が高いから、昼のデザートか午後の休憩時に出そう。
マックスが馬に馬車を繋ぎ、準備を整えると休憩所を出発する。平坦でなだらかな道だったものが、また緩やかな上り坂になっていく。
馬車の重量が変わったからなのか明らかに速度が上がっているし、馬も楽しそうに馬車を引いている。そんなに重かったのか……。
誰だよ、こんな雑な仕事してるやつは。馬が可哀想でしょ!
それはディエゴたちも実感しているようで、最初は驚いて固まっていたが、次第にリラックスし始める。石を踏んでもすこーし揺れたかな? と思うくらいで、体が飛びあがるようなことがなかったからだ。
うん、スプリングがいい仕事をしている。よきよき。
ゆるい上り坂と平坦な道を二度繰り返し、休憩所に着く。これからお昼だけれど、どうしようかな。
先に小玉スイカを盥に入れて冷やしていると、ディエゴがマジックバッグを持って寄ってくる。
「アリサ、この中に食材が入っています。期待していますからね」
「あはは……わかった」
ディエゴの言葉に、護衛たちもサムズアップしながらとーってもイイ笑顔で頷いている。ご期待に添えられるかどうかはわからないけれど、しっかりとご飯を作りますか。
まずは食材は何があるのかを確認する。いろいろあるなあ。
今日はいつも以上に暑いから、夏野菜を中心にするか。ナスときゅうり、レタスとコーン、枝豆とトマト。肉はオークとボア、ディアか……。よし、ディアにしよう。
ナスの味噌汁と、コーンと枝豆のご飯、ディアの串焼き。レタスときゅうり、トマトに自家製のツナを載せ、醤油を少しだけ入れたレモン塩ドレッシングで。
デザートは冷やした小玉スイカ。ついでになんちゃってスポドリも作っておこう。
「できたよ」
「「「「「美味しそう! いただきます!」」」」」
<<<<いただきまーす!>>>>
「はい、召し上がれ」
串焼きは各自で取ってもらい、空いたところにどんどん串を刺していく。どれくらい食べるかわからないから、かなりの量の串を用意した。
ツナも最初は恐る恐る食べていたけれど、口に合ったようで笑みを浮かべて食べている。ディエゴに至っては目をギラつかせていたから、「漁港で買った魚だから、作れと言われても無理」と先に釘を刺すと、がっくりと肩を落とした。
ダンジョンで採れればいいが、採れないのであればレシピを教える意味はないし、わざわざ漁港に買い付けに行くほど、ディエゴと仲がいいわけでもない。まあ、もしダンジョンでマグロかカツオなどの赤身の魚が出るようであれば、教えるのは吝かじゃないと、話だけはしておいた。
それでもがっくりしているってことは、今のところ赤身の魚は見つかっていないんだろう。もしくは、知らずにいて捨てているか。
「アリサ。もし時間があるようでしたら、ゲイブと一緒にダンジョンに潜っていただけませんか? きっと、ゲイブも知らない魚や貝があると思うのです」
「私も一度は潜ってみたかったし、いいわよ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに頭を下げるディエゴに、苦笑するしかできなかった。ちなみに、ゲイブとは料理長の名前である。
昼食を終え、なんちゃってスポドリを五人に渡す。最初はその味に驚いていたけれど、汗をかいた時の水分補給に最適な飲み物だと教えると、喜々として飲んでいた。
特に護衛組の食いつきは半端なかったと言っておこう。もちろん、あとで作り方を教えるつもりだ。
休憩も終わり、準備をして休憩所を出る。夜はオークを使った冷しゃぶサラダにするか~、なんて考えながら、リコの背に揺れていた。
何せ、ピオとエバがスィーっと飛ぶだけで逃げていくからね~。一角兎しかいないというのも納得だ。ただし、上のほうはどうなのかわからないが。
ゆるいとはいえ上り坂だからなのか、馬車の歩みは遅い。しかも普通の馬車や幌馬車はサスペンションなんてないから、石なんか踏もうものなら体が飛びあがる。
うーん……鉄が大量にあるから、それでサスペンション代わりのバネでも作ってみるかなあ。これからずっと取引しそうなんだよね、ディエゴとは。
特にミショの実はこれから本格的な商談をしないといけないし、真珠に関しては私から買い取ることになっているし。もし、村にいる鍛冶師に宝石のカットができないとなると、私が作らないとダメだからね。
今後もよろしくという意味でも、ちょっと改造させてもらおう。
「ディエゴ、相談があるんだけど」
「なんですかな?」
「馬車をもっと快適にしたくない?」
「それは……」
今日は御者台にいるディエゴに話をふると、迷うように目を泳がせる。
「この山道を上り下りするとなると、毎回馬車が傷んでいるんじゃないの?」
「よくおわかりですな……。ええ、その通りです。足回りは大丈夫なのですが、荷台のほうがガタガタになってしまうんですよ」
「その解消法を私が知っているとしたら、どうする?」
「「「「「えっ⁉」」」」」
ギョッとしてこっちを見るディエゴと馬車にいる三人。おい、御者をしているジョナスさんや、よそ見をするんじゃない! 危ないだろうが!
なーんて思っていたら、やっばり石を踏んでガタンと馬車が大きく左右に揺れると同時に、体が上に飛び上がる五人。
「せめてこの揺れさえなければいいのですが……。本当に、その技術を持っていると?」
「ええ。重量軽減と状態維持のかかりも甘いみたいで、馬にも負担になっているし。ね、お馬さん」
「ブルッ、ブルルっ!」
つらいし重いですぅ! と、返事をするかのように鼻を鳴らした馬に、五人がギョッとした。もちろん、つらいし重いと言ってるけどね。
「ふむ……。わかりました。休憩の時にでもお願いしてもいいですかな?」
「いいわ」
OKが出たので、しっかりと改造しよう。まあ、錬金術で一発なんだけどね。
緩やかな上り坂が終わり、平坦な道になる。その先に見える道はまだまだ続いており、ここから見るだけでも上り坂になっていることがわかる。
まだ林と呼べるほどにしかない木々と眼前に広がる風景は、正にカントリーロードだ。
それが何回も続いているのだ。その先は見えないから、もしかしたら途中で曲がるのかもしれない。
そうこうするうちに休憩所に着いたので、馬を休ませるために放牧する。リコが護衛として近くにいるから問題ないだろうし、ピオとエバも周囲を見てくると飛び立った。
<アリサ、採取してきてもいい?>
「いいけど、遠くに行かないでね。馬が休憩できたら、すぐに出発するから」
<はーい!>
いつものように籠と瓶をいくつも渡すと、ノンが森の中へと入っていく。それを見送ってから鉄とミスリル、メテオライトのインゴットを出し、丈夫なバネを作る。
もちろん状態維持と重量軽減をかけた。それからディエゴに断ってから板を出し、バネと一緒に馬車に錬成すると同時に、全体的に重量軽減と状態維持もしっかりかけておく。
「これでいいわ。次の休憩所に着いたら、感想を聞かせて。それによっては修正するから」
「一瞬でしたな。さすがはアリサといったところでしょうか」
「アリサ、これで揺れが軽減されるの?」
「ええ。乗ってのお楽しみよ」
半信半疑な様子の五人に、それは仕方がないかと思う。バネを取り付けたからといって外からは見える部分には錬成していないからね。
私たちもトイレ休憩をしてまったりしていると、リコと一緒に馬が戻ってくる。それを皮切りにピオとエバが一角兎を持って帰ってきたり、ノンが薬草とキノコ、果物を持って帰ってきた。
キノコはシメジとなめこ、エリンギに似たものだ。よし、夜はなめこの味噌汁にしよう。……豆腐がないのが残念だ。
果物は小玉スイカと巨峰。ただし、巨峰の一粒は日本で見たものよりも大きい。
そして小玉スイカだが、ノン曰く木に生っていたらしい。……この世界のスイカは木に生るのか。日本では野菜に分類されるけれど、異世界だと果物に分類されるみたい。
面白いなあ。
気温が高いから、昼のデザートか午後の休憩時に出そう。
マックスが馬に馬車を繋ぎ、準備を整えると休憩所を出発する。平坦でなだらかな道だったものが、また緩やかな上り坂になっていく。
馬車の重量が変わったからなのか明らかに速度が上がっているし、馬も楽しそうに馬車を引いている。そんなに重かったのか……。
誰だよ、こんな雑な仕事してるやつは。馬が可哀想でしょ!
それはディエゴたちも実感しているようで、最初は驚いて固まっていたが、次第にリラックスし始める。石を踏んでもすこーし揺れたかな? と思うくらいで、体が飛びあがるようなことがなかったからだ。
うん、スプリングがいい仕事をしている。よきよき。
ゆるい上り坂と平坦な道を二度繰り返し、休憩所に着く。これからお昼だけれど、どうしようかな。
先に小玉スイカを盥に入れて冷やしていると、ディエゴがマジックバッグを持って寄ってくる。
「アリサ、この中に食材が入っています。期待していますからね」
「あはは……わかった」
ディエゴの言葉に、護衛たちもサムズアップしながらとーってもイイ笑顔で頷いている。ご期待に添えられるかどうかはわからないけれど、しっかりとご飯を作りますか。
まずは食材は何があるのかを確認する。いろいろあるなあ。
今日はいつも以上に暑いから、夏野菜を中心にするか。ナスときゅうり、レタスとコーン、枝豆とトマト。肉はオークとボア、ディアか……。よし、ディアにしよう。
ナスの味噌汁と、コーンと枝豆のご飯、ディアの串焼き。レタスときゅうり、トマトに自家製のツナを載せ、醤油を少しだけ入れたレモン塩ドレッシングで。
デザートは冷やした小玉スイカ。ついでになんちゃってスポドリも作っておこう。
「できたよ」
「「「「「美味しそう! いただきます!」」」」」
<<<<いただきまーす!>>>>
「はい、召し上がれ」
串焼きは各自で取ってもらい、空いたところにどんどん串を刺していく。どれくらい食べるかわからないから、かなりの量の串を用意した。
ツナも最初は恐る恐る食べていたけれど、口に合ったようで笑みを浮かべて食べている。ディエゴに至っては目をギラつかせていたから、「漁港で買った魚だから、作れと言われても無理」と先に釘を刺すと、がっくりと肩を落とした。
ダンジョンで採れればいいが、採れないのであればレシピを教える意味はないし、わざわざ漁港に買い付けに行くほど、ディエゴと仲がいいわけでもない。まあ、もしダンジョンでマグロかカツオなどの赤身の魚が出るようであれば、教えるのは吝かじゃないと、話だけはしておいた。
それでもがっくりしているってことは、今のところ赤身の魚は見つかっていないんだろう。もしくは、知らずにいて捨てているか。
「アリサ。もし時間があるようでしたら、ゲイブと一緒にダンジョンに潜っていただけませんか? きっと、ゲイブも知らない魚や貝があると思うのです」
「私も一度は潜ってみたかったし、いいわよ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに頭を下げるディエゴに、苦笑するしかできなかった。ちなみに、ゲイブとは料理長の名前である。
昼食を終え、なんちゃってスポドリを五人に渡す。最初はその味に驚いていたけれど、汗をかいた時の水分補給に最適な飲み物だと教えると、喜々として飲んでいた。
特に護衛組の食いつきは半端なかったと言っておこう。もちろん、あとで作り方を教えるつもりだ。
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