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ハンデル自由都市国編

第59話 迷宮都市ラビラント 6

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 ポトフが出来上がったころ、まるでそれを見計らっていたかのように、従魔たちが全員帰って来た。

「おかえり。戦果はどうだったの?」
<<<<いっぱい! 満足した!>>>>
「そ、そうなんだ。それはよかった。怪我は?」
<<<<してない!>>>>
「そう。じゃあ、みんなを綺麗にしたら、ご飯にしようか。今日はポトフだよ」
<<<<やったーー‼>>>>

 くぅーっ! 可愛いが過ぎるよ、従魔たち!
 内心で悶えつつ魔法でさっさとみんなを綺麗にすると、それぞれが使う器を出し、その中にポトフを入れていく。焼いただけのソーセージも食べたいというので、ポトフを食べながらフライパンで焼いた。
 本当に美味しいソーセージだ。まあ、簡易版のだから、ちょっと味がぼやけているが。
 旅の途中なんだから、こんなもんでしょ。定住したら本格的に作ろう。
 食べながらどんな魔物と戦ったとか、ドロップはなんだとか。今回はピオとリコ、ノンとエバが一緒に行動していたらしく、それぞれ楽しそうに自分たちがなにをやったのか教えてくれる。
 ドロップに関してはご飯を食べ終わってからもらうことにしてどんどん食べてもらう。かなり多めに作ったから、明日の朝もポトフになるかな?
 もし、下の階層に行っても誰もいなかったら、醤油や味噌を使ったものを作ってみよう。そろそろ味噌汁が食べたいし。
 明日以降の予定を決めるとニンマリし、しっかりとご飯を食べる。そしてコンロを片付けて結界を張るとテントの中に入る。

<布団が新しくなってるのー!>
<アリサ、これがふわふわふかふかのやつか?>
「そうだよ。SSランクの糸や羽毛だからね。きっとあったかいと思う」
<<<<楽しみ!>>>>

 気持ちはわかる。私だって楽しみだもの。
 寝る前にドロップ品をもらい、マジックバッグにしまう。肉類は従魔たちが食べたいというので半分は手元に、素材も一部は手元に残し、魔石は吟味して一部は残して他は全部ギルドに売ることにした。
 さすがにSSランクのものは売らないよ? 全部私たちが使うんだから。
 ドロップを受け取ったら、SSランクの糸で新たに作った馬着とレッグプロテクターをリコに装備し、従魔たち全員にリボンを巻き付ける。これで防御が格段にアップしたから、一安心だ。

「そろそろ寝ようと思うけど、布団カバーはどれがいい?」

 新しい布団の上に、作ったカバーを並べる。

<<<<これ!>>>>
「やっぱりか~」

 従魔たち全員が選んだのは、みんながデフォルメされているもの。しかも、満場一致だった。
 パパっとカバーをかけ、寝る態勢になる。全員でおやすみと声をかけると、あっという間に寝入った。
 軽くて適度な温度で、とてもふかふかでございました。

 翌朝、残っていたポトフとパンで朝ご飯にし、セーフティーエリアを出て探索する。二十一階層も草原で、今まで出てきた魔物の上位種やレベルが高いものが闊歩している。
 スライムもドロッとしたものから某国民的RPGのような丸っこい形になり、落とす魔石の色も体色に合わせてその色を落としていた。魔石のランクもSSランクと、かなり高い。
 羊類の毛糸や羊毛はSSランクだし、鳥系の魔物が落とす羽毛もSSランク。もしかしたら、こういったアイテムはSSランク以上のものはないのかもしれない。錬金すればそれ以上のものが作れる可能性もあるが、勿体ないから実験はしないことにした。
 ノンと一緒に薬草を採取してはみんなと一緒に戦闘をして、どんどん下層を目指していく。それと同時にレベルもガンガン上がっていて、内心で戦々恐々としていた。
 三日かけて草原と林を抜け、森のエリア。

「おお、すんごくぶっとい樹だなあ……」

 樹齢五十年は軽く超えているであろう幹の太さの樹がいっぱいある。魔物もエンシェントトレントになっているが、魔物たちが落とす木材よりもランクが高いとは、これ如何に。
 エンシェントトレントが落とす木材はSSランク。そしてぶっとい樹はSSSランク。
 これは樹木の伐採確定でしょ! トレントが落としたものに関しては、一部を除き全部ギルド行きにした。

「よし。私は樹木の伐採をするけど、みんなはどうする?」
<あたしは警戒しているわ>
<オレも>
<ノンは採取するー>
<俺もアリサを手伝う>
「わかった。じゃあみんな、お願いね」
<<<<はーい!>>>>

 役割を決めたところで、私は斧を取り出して担ぎ、どの樹がいいか吟味する。まあ、吟味するまでもなくどれも太くて真っ直ぐに伸びているから、家を作るにも申し分ない。
 どれだけの木材が必要かわからないから、適当に五十本もあればいいかな? そんなに必要ないかもだけど、増築したいと思い立つかもしれないし。
 外見はこじんまり。中は広く。
 そんな家を作りたいな。
 ふんすと気合いを入れ、樹に切れ込みを入れる。

「倒れるぞー」

 マップで誰もいないことを確認しているとはいえ、確かこういうマナーがあったよね? なので一応、声をかけてみた。
 メキメキというかミシミシというか、そういう音をたてて倒れる樹木。その下敷きになったらしく、いくつか光の粒子が見え、ドロップを落とす。

「だから言ったのに。まあ、魔物だからいいか」
<ノンがドロップを取ってくるのー>
「ありがとう、ノン。リコ。こういう感じで伐るんだけど、リコは土魔法を使って、根っこごと掘り起こしちゃって」
<わかった>

 ドロップを取りに行ったノンを見送ったあと、リコに説明する。それを難なく実践したリコは、なんだか楽しそうだ。
 薬草を採取しながらちょっと歩いては伐採し、樹やドロップをマジックバッグにしまっていく。
 ……ドロップの中にエンシェントトレントの木材と魔石があるんだけどさ……まさか、樹に擬態してたのを偶然倒したとか? 他にもブラックベアやレッドビッグホーンディア、ブラックバイコーンウルフのものもあるんだけれど!
 哀れ、ダンジョンの魔物たち。私やリコが倒した樹木に殺られるとは思ってもみなかっただろうなあ……。つうか、樹木を倒しただけで攻撃判定になるなんて、私だって思ってなかったよ!

「あはは……」

 乾いた笑いをこぼしたあと、思いっきり溜息を吐いた。
 いつまでも唖然としていられないから、ここは気を取り直して。セーフティーエリアを目指して歩き、お昼は結界を張って安全を確保し、森の中で食べた。そして夕方近くになってやっとセーフティーエリアに着く。
 けれど、誰もいなかった。人気がないダンジョンなのかなあ。それとも、上の階層でSランクのものをドロップするから、そっちで賄っているのか。
 ただ、この階層はセーフティーエリアがふたつあるようで、マップによるとそっちのほうに人がいるみたいだから、こっちにはたまたまいないだけなんだろう。まあ、そのほうが私としても楽なのよね、従魔たちをジロジロ見られたり、私もガン見されたりするから。
 一応、美少女の部類に入るからね、私。しかも、この世界だと成人したての十六歳だ。それなのにAランクになっているし、従魔が四匹もいるから、珍しいんだろう。しかも、ノンというとても珍しい黒いにゃんすらがいるし。
 そういう視線が嫌なんだよ。……この世界で人間嫌い拍車がかかりそうだ。
 内心で溜息をつき、テントを展開する。ご飯を作りつつ、明日の予定を話し合った。

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