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ハンデル自由都市国編

第58話 迷宮都市ラビラント 5

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 ダンジョンに潜って早五日。現在、二十階層のボスを倒したところである。ボスはスモールタラテクトが三体とレッドロック鳥、ビッグシープで、一匹ずつ仲良く倒した。
 ドロップは、スモールタラテクトが魔石と毒腺、SSランクの蜘蛛糸だ。まさか、SSランクがあるとは思わなかった!
 レッドロック鳥は魔石と、ダウンとフェザーの羽毛と肉、長い尾羽と飾り羽。もちろんこれらもSSランクの代物だ。
 ビッグシープは魔石と肉、羊毛と毛糸と羊腸。これもSSランクだった。
 初回特典の宝箱は、SSランクの蜘蛛糸とダウン、毛糸が大量に入っていて、他にも白く光る斧と手紙が入っていた。……なんで手紙?
 不審に思いつつも、もう一度戦いたいという従魔たちに頷き、入口に戻ってまた中に入ると、やはり同じ魔物が出たので、サクッとと倒す。今回はレッドロック鳥もビッグシープも、肉を落とさなかった。残念。羊腸を落としたからいいか。
 十階と同じように入口とは別の扉をくぐると、やはり魔法陣と下に下りる階段が。魔法陣に触れば、一階から十九階までの数字が表れた。

「十階と同じみたいね。その分潜っているから、階層は増えているけど」
<戻りたい階層もないし、下に行こう>
<そうね。どんどん魔物が強くなっているから、戦っていて楽しいわ!>
<俺も楽しい! どんどんレベルも上がっているし!>
<ノンはもっと採取したいー>
「ふふっ! いいわよ」

 魔法陣の横を通り過ぎ、階段に向かうとそのまま下りる。広がっていた光景は、またもや草原だった。
 これまで潜ってきた階層は、すべて一階から九階と同じ内容だった。ただし、魔物のレベルが少しずつ上がっていたし、上位種にもなっていたのだ。
 だからこそ、私が欲しかった糸などの素材のランクもSSになっていたわけで……。
 SSランクで終わりなのか、それともその上があるのか。そこはこれから戦ってみないとわからないが、魔物のレベルは確実に上がっているだろう。
 ダンジョン自体の強さがわからないのが痛いけれど、従魔たちにとってはそれほど問題ではないみたい。むしろ、一番レベルの低い私がガンガン上がっていることに戦慄している。
 だってさあ……ここに入った時、私のレベルはまだ200もなかった。それなのに、今のボス戦で250に上がったってどういうことかな⁉ どう考えてもおかしいんだけど!
 まさか、ノンがいるから? それとも、リュミエールが何かしたとか?
 リュミエールに聞くにしても教会に行かないと聞けないのでそこは一旦置いておくとして。まずは今日泊まる場所を確保するべく、セーフティーエリアを目指す。
 飛んでいるのはワイバーンらしく、ピオとエバが張り切っている。上空は彼らに任せておき、ノンは採取をしながら戦闘、私とリコは戦闘をしながら採取といった感じで役割を決めていた。
 それが一番効率がいいんだよね。ノンは植物に関してはなんでも知っているみたいで、すぐに薬草やキノコ、果物を見つけては採取しているんだから。
 楽しそうに採取しているノンにほっこりしつつ、私も採取を手伝ったり戦闘したりしているうちに、セーフティーエリアに着いた。階層が深いからなのか、冒険者はいなかった。これはラッキーだとニマニマし、今日はここに泊まるから、さっそくテントを展開する。
 竈は作らずにコンロを出し、そこにやかんを置くと水を入れ、沸くまで放置。晩ご飯まではまだ時間があるからね~。お茶を飲んでまったりすることにしたのだ。
 茶葉やポット、カップを用意したあと、ボスの宝箱に入っていた手紙を出す。

「……誰から、かしら」
<たぶんリュミエールなのー>
「そ、そう……」

 ニコニコしながらリュミエールだと言ったノン。なんで神様からの手紙が宝箱に入っているのかな⁉
 それに疑問を持ちつつ、手紙を広げてみる。


 アリサへ

  入れ忘れたというか、アリサが欲しいと願っていたものを、
  宝箱に入れておいたよ。よかったら使ってね☆
  神鋼で作った斧だから、アリサが作ったノコギリのように、
  錆びたり曲がったり切れ味が落ちたりしないから、安心し
  てね。
  いつもアリサたちを見守っています。みんなに幸あれ!

                             リュミエール


 おおう、本当にリュミエールからだったよ! そして作ろうと思っていた斧が手に入ってしまった!
 ま、まあいっか。神鋼はそんなに採掘できなかったら斧が作れるか心配だったし、作る手間も省けたし。
 十七階あたりの樹も、そんなに太くなかったんだよね。だから作るのに躊躇ったというのもある。それでも、その上の階層よりは太かったが。
 一応鑑定はしてみたけれど、特筆するものはなかった――魔力が多く含まれている木と書かれていること以外は。
 魔力を多く含む木材を使用した家はとても丈夫だし、シロアリのようなものに食い破られたりもしないそうだ。それを見た時、家を作るならこのダンジョンに生えている樹木で作りたいと思ったのだ。
 だからこそ、できるだけ太い樹を探している。
 これから先の深い階層にあるならそれを伐りまくり、なければ上に戻ろうと決める。まあ、下に行くほどワンフロアは狭くなっているものの、魔素の濃度は上がっているからね。
 だからこそ、魔素を吸って体内に取り込む魔物は、魔素が濃ければ濃いほど、強くなる。そして経験値もおいしい。
 私たちにしてみれば、一石二鳥よね!
 手紙を読んでいるうちにお湯も沸いたので、紅茶を淹れる。ノンがミントを採取してくれているから、ミントティーにしてみよう。

<アリサ、採取に行ってきてもいい?>
<オレたちも魔物を狩って来たい>
「いいわよ。ただ、あと二時間くらいで夕飯になるから、それまでに帰ってきてね」
<<<<やった! ありがとう、アリサ!>>>>
「冒険者から、間違って討伐されないようにね」
<<<<はーい>>>>

 行ってくると叫ぶなり、すぐにセーフティーエリアから出ていく従魔たち。ノンとリコはともかく、ピオとエバは元々外にいたフレスベルグだから、ちょっと心配なんだよ。
 まあ、首にリボンと鞄が付いているし、本来のサイズとは違うから、大丈夫だろう。それに、ここに来る冒険者が、ベテランとは限らないし。
 ピオとエバはベテラン冒険者よりもレベルが高いし、雷魔法が使えるから、そんなに心配はしていない。むしろ心配なのは、ノンとリコのほうだ。
 レベルという意味ではなく、連れ去られる可能性として、だが。
 ノンは神獣で滅多に見ない黒いにゃんすらだし、リコは小さくなったままとはいえ、バトルホースだ。バトルホースって買うと高いらしいからね~。
 生まれたての仔馬ですら白金貨三枚もするって聞いた時は、あんぐりと口を開けたもんだ。成獣で白金貨五枚、スキルを使いこなせているならそれ以上するんだから、ビックリだ。
 それはともかく。誰もいないうちに、羽毛布団を作ってしまおう。
 SSランクのスパイダーシルクを出して、何色にしようかと悩む。どうせならカバーをいろんな色や模様にして、中は白のままでいいか。
 そんなことを考えつつ、いっそのことダウンも一緒に出して錬成してしまうことにした。もちろん、サイズはベッドに合わせる。

「〝羽毛布団を錬成〟っと。よし。これにいろいろと付与してしまえ!」

 付与エンチャントをかける前に一応鑑定しておく。すると、この段階で既に汚れ防止と状態維持が付いていた。
 おおう、なんという規格外な糸か! これなら特になにもかけることはないと思い、今度は布団カバーを錬成する。
 青と緑、それから従魔たちをデフォルメした絵がプリントされたもの。他にも黒やベージュのカバーも作ってみた。
 あとはリコの馬着とレッグプロテクターに、従魔たち用のリボン。
 私も、自分で着れるようにチュニックを作ったりズボンを作ったり。もちろん、スカートやキュロットもね。
 ズボンやキュロットはともかく、他は今着る機会がないけれど、定住したら着てみたいと考えてのことだ。
 定住したら、機織りもしてみたいなあ。そのスキルもあるからね、私。冬は編み物をしてもいいし。
 どんなところなんだろう、ガート帝国は。日本と同じ気候だといいなあと思いを馳せる。

「……そろそろ従魔たちも帰ってくる時間だし、ご飯を作るか」

 ミントティーを飲みながら布団を作ったり服を作ったりと、まったりのんびりしているうちに、二時間近くたっている。なんだかんだとソーセージを食べることができなかったから、今日はポトフでも作るか……なんて思いながら、材料を準備した。

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