上 下
26 / 190
セガルラ国編

第42話 村をビフォーアフター 3

しおりを挟む
 採れたての野菜を使った昼食を食べたあと、先にアクセの作り方を伝授する。土台作りはきちんと作れるようになっていたので、今度は鎖を作る練習。
 これも私が作ってから構造を教え、その練習だ。いきなり小さいものを作れというのは無理があるから、大きなものを使ってそれを見ながら練習してもらい、徐々に輪っかを小さくしていってもらう。
 手作業でするわけじゃないから、どんなに小さな鎖でも錬金術ならお手の物だと思うんだよね。他にも、蛇腹のような鎖も教えたから、それも練習だね。
 その間に、今度は大工さんたちと一緒に家の補修。
 まずは村長むらおさの家の修理。ここも屋根は切妻だったのでこれも段々になるように板を張り、木の釘で打っていく。金属を使いたいところだけれど、この村は海風があるからね~。そこから腐ってしまったら張り替えが面倒なので、木の釘にしてみた。
 もちろん雨漏り防止として、皮のシートには防水加工と塩害にならないよう状態維持をかけて一枚のシートに錬成し、それを屋根の下に敷いている。
 壁はあの獣人の村と同じように、内側に木を使って張り合わせ、外側を漆喰のような形にする。これだけでも、温度や風の音が小さくなり、寝るにしてもかなり違うはずだ。
 大工さんたちに教えながら補修をした結果、これまた立派な家が出来上がった。

「おおお……! 立派になったな!」
「中を確認してくれる?」
「ええ!」

 いそいそと中に入り、温かさなどを確認する村長。室内の温かさや風の音などを確かめているんだろう……うんうんと頷きながら、各部屋を確認していた。その顔はとても嬉しそうで、そっと胸を撫で下ろす。

「ありがとう、アリサ! これなら冬も立派に越せる!」
「それならよかった! じゃあ、大工さんたち。他の家の修理もやってみようか」
『おう!』

 今度は住人たちだけでやってもらう。私が手を出してもいいけれど、結局は自分たちでやることになるんだから、作業工程をしっかり学んで、できるようになってほしいなあ、と考えたからだ。
 時間がかかったっていいんだよ。きちんとできればいんだから。
 そんな話を大工さんたちにして、わからなければ聞いてという感じで放置。その間に鎖作りを練習している人たちのところに行くと、土台で要領を得たのか、短時間でできるようになっていた。
 しかも、彼らは本当に楽しそうに作っていたんだから、上達も早い。

「どうかな……」
「ちょっと失敗しちまって……」
「……うん、大丈夫。失敗したっていいんだよ、これは練習なんだから。本番で失敗しないために、何回も練習するんでしょ?」
「そう、だな。うん、もう少し頑張ってみる」

 気合い充分な二人に、失敗しないコツを教える。とにかく焦らないこと。失敗しそうならそこで手を止めること。一回落ち着けば、どうすればいいかわかるからと、言い聞かせた。
 あとは何回も練習して、スキルにしてしまえば失敗はしないからね。だから、ひたすら練習させている。
 そうこうするうちに大工さんから一軒出来上がったと言われたので、見に行く。

「うん、いいね! その調子で全部の家をやり終えるころには、スキルレベルが上がっていると思うわ」
「だよな!」
「俺は今ので上がったぜ?」
「俺も!」
「俺はあとちょっとかなあ……」

 おお、レベルが上がっている人がいるよ! その調子でどんどん補修をしてレベルを上げてほしいと伝えると、俄然やる気になる大工さんたち。特にこれといった問題もなく、次々に補修をしていた。
 その様子を見ながら、アクセ作りの練習をしている二人のところに行くと、今度は失敗しないで作れたのか、綺麗な鎖を量産していた。これはスキルになったかもとこっそり【鑑定】してみたら、しっかりとスキルになっていた。

「「ど、どうかな……」」
「うん、これなら大丈夫。じゃあ、さっそく作ってみようか。見本を見せるから、作り方をきちんと見ていてくれる?」
「「はい!」」

 まずはスキルになっているかどうかを確認してもらうと、二人は驚いた顔をしたあとでとても嬉しそうに「「やった!」」と叫んだ。うんうん、その調子で頑張れ。
 それから真珠の粒の大きさを仕分けるために、自分用に作った穴空きを使って、大きさを選別。もちろん、あとで彼らのために道具を各種作って渡すつもりだ。
 真珠を選別したら、同じ大きさのものをふたつ取り出し、市販されている糊でいいからと話して土台に糊を塗ったあと、真珠を貼り付ける。あとは糊が渇くまで放置すれば完成だ。

「これが一番簡単だと思う。ぶら下げる場合はこの細い鎖を使って――」

 ハンドドリルとバイスを出し、真珠をバイスに固定。それからハンドドリルを使って穴を開け、そこに鎖を通す。下のストッパーは錬金で花の形にしてみた。それとイヤリングの土台を使って錬成すると完成だ。
 本当は錬成一発でできるけれど、どういう構造なのかわからないと、彼らが作ることができない。だからこそ、この面倒な工程で作ったのだ。

「じゃあやってみようか」

 この工程をしっかり理解すれば、錬成できるようになるからと言うと、彼らはすっごくやる気になり、真剣に取り組んでいる。だからなんだろう……スキルレベルの上がりがとても早い。
 たぶん、簡単なものじゃなくて難しい鎖から作らせたことも大きいと思う。鎖さえ作れてしまえば、あとは応用なり別の基本なりを教えればいいんだから。
 この村の女性に渡すのであれば、ネックレスやイヤリングがいいかな? 指輪だと作業をするのに邪魔だし。
 そんなことを考えながら二人の作業を見ていると、真っ直ぐに穴を開け、鎖を通して固定すると、台座に鎖を貼り付ける。そこまでやってほぅ……と息を吐いた二人は、自分で作ったものをしげしげと見つめる。

「構造はだいたいわかった?」
「「はい!」」
「構造を理解していれば、イメージしやすいよね。錬成するのに大事なのは、イメージなの。なにも知らないものを、いきなり錬成しろって言われても、無理な話でしょ? だから構造を理解してもらうために、一から作ってもらったのよ」
「「な、なるほど!」」
「なら、今度は錬金術で作ってみようか」
「「が、頑張ります……」」

 ふんす、と気合いを入れて意欲を見せるアクセサリー担当。うんうん、その調子で頑張れ!
 まずは穴の開いた木の板を二枚作って二人に渡し、それに合わせて真珠を選別してもらい、見本として様々な大きさの真珠を使ったイヤリングを一組ずつ作ってもらう。あまりにも小さいものや大きいものはネックレスやブレスレットにすればいいし、彼らが扱いづらいなら私が買い取ればいいだけだ。
 土台にくっついているのとぶら下がっているものが出来上がったら、木材と布を使って化粧箱作り。これは一から作らせるようなことはしなかったけれど、見せただけで彼らは作り上げた。
 おお、凄い!
 そこに真珠のイヤリングを配置して、蓋がきちんと閉まれば完成だ。

「「で……できた……」」
「うん、上出来じゃない! これならそのまま売ることができるでしょ?」
「そうですね。なくさないように、しまっておけますし」
「贈り物にもできそうだな」
「でしょう?」

 そう、しまっておける、贈り物という発想が大事なんだよ。
 売る場合はできるだけ同じ大きさものにして、もしお客さんからもう少し粒が大きいとか小さいものをという要望が出たら、その場で作ればいいだけだ。そう説明したら、確かにと頷いていた。
 彼らに作ることができるとわかったら、まずはこの村の女性たちがおしゃれとして身に着ける。そのまま漁港や近隣の町や村に買い物に行けば、宣伝になると思うんだよね。
 もし聞かれたら自分の村で作っていると話し、来てもらえばいいんだから。不正されていたのなら、彼らの心情的にあの漁港では売らないと考えるだろうし。
 で、真珠は三十箱あるというのでそれを選別してもらい、小さな粒や一番大きいものは私が買い取ることにした。どうも、この村に出る真珠の大きさがほぼ揃っているからなのよね~。
 買い取るにしても、たくさん出たらと言ってあるし、自分たちで扱えないものも買い取ると話したら、真剣な顔で選別を始めたので、そのまま彼らに任せることにした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

出戻り巫女の日常

饕餮
ファンタジー
転生者であり、転生前にいた世界に巻き込まれ召喚されて逆戻りしてしまった主人公、黒木 桜。桜と呼べない皆の為にセレシェイラと名乗るも、前世である『リーチェ』の記憶があるからか、懐かしさ故か、それにひっついて歩く元騎士団長やら元騎士やら元神官長やら元侍女やら神殿関係者やらとの、「もしかして私、巻き込まれ体質……?」とぼやく日常と冒険。……になる予定。逆ハーではありません。 ★本編完結済み。後日談を不定期更新。

転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。 神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。 職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。 神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。 街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。 薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。

料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!

ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました 。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。 令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。 そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。 ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

ゲーム世界といえど、現実は厳しい

饕餮
恋愛
結婚間近に病を得て、その病気で亡くなった主人公。 家族が嘆くだろうなあ……と心配しながらも、好きだった人とも結ばれることもなく、この世を去った。 そして転生した先は、友人に勧められてはまったとあるゲーム。いわゆる〝乙女ゲーム〟の世界観を持つところだった。 ゲームの名前は憶えていないが、登場人物や世界観を覚えていたのが運の尽き。 主人公は悪役令嬢ポジションだったのだ。 「あら……?名前は悪役令嬢ですけれど、いろいろと違いますわね……」 ふとした拍子と高熱に魘されて見た夢で思い出した、自分の前世。それと当時に思い出した、乙女ゲームの内容。 だが、その内容は現実とはかなりゲームとかけ離れていて……。 悪役令嬢の名前を持つ主人公が悪役にならず、山も谷もオチもなく、幸せに暮らす話。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。