とある彼女の災難な日々

饕餮

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七話目

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 ダニエルの家は、『何もない』という言葉がぴったりなほど、必要最低限のものしかなかった。クローゼット、テレビ、DVDプレイヤーらしきもの、テーブル、椅子、ソファー、カーテン、そして暖炉。
 ベッドルームも同じように、ベッドとヘッドランプ、クローゼットとカーテンしかない。

 寝室に連れて行かれた途端にキスをして来たダニエルに待ったをかける。

「ダニエル、待って。先にシャワーを浴びさせて」
「待てない」
「お忘れのようだけど、あたしは射撃をしてたのよ? 硝煙の匂いがして気持ち悪いのよ。それに汗もかいたし……」

 そう言ったあたしにダニエルは溜息をつき、無言でバスルームへと連れて行かれた。

「服や下着は洗濯機に入れておけ。乾燥機能付きだから全部やってくれる」
「ごめん、ありがと」
「ついでに、お前もする」
「えっ?!」

 あたしを洗濯ってどう言う意味、と聞く間もなくダニエルはあたしを全裸にし、自分も全裸になってバスルームへと押し込むと、お湯を出してあたしにかけた。

「ダニっ、あっ、んんっ」

 シャワーの音に混じり、ダニエルがキスをするリップ音が響く。あたしの身体を洗いながら時々キスをするダニエルの目は、ギラギラするほど妖しく誘うような、欲情を湛えた目だった。
 身体を這うボディソープを泡立てたスポンジと、それを広げるように這うダニエルの掌と指先……。その全てがあたしの身体を優しく撫で回し、肌を敏感にして行く。

「フラン、乳首が勃ってるぞ?」
「あっ、はんっ」

 胸の先端を指先で弾かれ押し潰され、擦られて捏ねられる。
 指先も、腕も、足も、全てを洗われ、頭を洗われる時にはあたしの弱い部分の全てをダニエルに知られていた。

 バスルームを出ると水滴をふき、バスローブを羽織ることなくカーテンを閉められ、ヘッドランプを付けたベッドへと押し倒された。そのまま覆い被さって来たダニエルは、あたしにキスをしながら身体中に手を這わせ、胸を揉み、足を撫でて秘部に指先を這わせる。

「あっ、やっ、ああっ」

 キスを止めたダニエルは、胸の先端を指先で挟みながら胸を揉み、首筋に唇と舌を這わせながら秘部の突起を弄り、胎内に指を入れて動かす。

「ひゃんっ、あっ、ああっ!」

 胸の先端を吸われ、舐められ、胎内にある指先が蠢く。何かが競り上がって来て視界が白く染まった時にはもう足を広げられ、ダニエルの太くて熱い塊が胎内に入りこんで来た。その大きさに息を飲む。

「いっ! ああっ!」
「く……っ、狭い……っ、フラン、バージンか?」
「だったら、どうなのよっ! んっ、ダニエルの、おっき、無理っ、あああっ!」

 グッ、と奥まで入りこんだダニエルのモノは、バージンだと言ったあたしにお構い無しに中を広げていく。

「ふっ……。貴重なモンをもらったな……俺が最初で最後の男だ、フラン」

 そう言ったダニエルはあたしにキスをすると、そのまま腰を動かし始めた。そしてそのままダニエルのテクニックに翻弄されて行き、最後はその腕の中で眠りについた。


 ***


 俺は外人部隊に数年いた。それも、あの有名なフランスの外人部隊に。元々海軍ネイビーに所属してはいたが、たまに戦略などの勉強目的で行かされることがあると聞いてはいたが、まさか俺が行かされるとは思ってもみなかった。
 過酷な訓練と実戦ではあったが、それでも死ぬことはなく本国アメリカへと帰ってこれた。まあ、腹に銃弾を食らって何度か死にかけたことはあるが。

 帰国してネイビーの新人に混ざる。数は少ないが女性軍人もいた。その中にフランチェスカ・ラングレンがいて、女とは思えないほど、ガハガハと笑っていた。
 そんな屈託もない笑顔のフランチェスカに一目惚れをした。身体つきは女性らしいのに、性格はサバサバしているのか、他の女のように男に色目を使わないことにも驚いたし、好感が持てた。
 『ラングレン』というファミリーネームから伝説の狙撃手に関係あるのかと思っていたが、俺が知ってる限りでは年下の同期の誰もそのことについて知らないようだった。まあ、ファミリーネームが一緒だからと言って、親類とは限らないが。

 最初の班は違っていたが、彼女の狙撃の腕の噂は聞いていた。そしてたまたま一緒になった狙撃訓練で、彼女は噂以上の腕の持ち主だと知った。百発百中のど真ん中の腕、見ただけでわかる銃の砲身の曲がり……それに合わせて銃を打つ、腕と目。それに感心しつつ、次の班分け――これでほぼチーム分けが決まる――で、彼女を俺のチームの狙撃手にすることを決めた。
 同じチームになっても彼女は変わらなかった。体力的にキツイだろうに一切の泣き事を言わず、ひたすら訓練に打ち込むその姿にどんどん惹かれていく気持ちが募る。
 G訓練をしたらしたで、男ですら気絶する奴がいる中、軒並み気絶してる女の中で唯一気絶せず、挙げ句に『ジェットコースターだと思えば楽しい』と宣うその根性と、『狙撃手になる』という目標にブレることなく、狙撃の腕が上がって行くフランチェスカ。

 単独でも戦闘機を飛ばし、飛ばしながらはしゃぐフランチェスカに唖然としたり、タンデムで背面飛行をすれば『おー、街が米粒! 山脈が小さい! 綺麗!』と余裕をかます。何度「本当に女か」と思ったことか。

 そうった自然な態度が俺の心にスッと入り込み、いつの間にか大切で愛する存在になった。だからこそ、中年のオヤジと笑いながら出かけるフランチェスカを見て憤り、絶望もした。
 何故お前の隣にいるのは俺じゃないのかと身勝手に怒り、射撃場にいたフランチェスカに八つ当たりじみた言葉をぶつければ伝説の狙撃手の名前を告げられ、それが自分の父親だと言われて思わず笑ってしまった。思い出した限り、確かにフランチェスカが言った通り、二人は似ていたから。
 そっと抱き締めれば、フランチェスカが硬直する。思いを告げれば、フランチェスカも俺のことを愛していると言ってくれた。まさかそんな答えが帰って来るとは思わなかった俺はその場で彼女の唇を奪い、貪るようにキスをする。
 角度を変えて何度もキスをし、欲情に濡れたフランチェスカの目を見ながら「フランが欲しい」と言えば、フランも俺が欲しいと……抱いてくれと言ったその言葉に歓喜が走る。
 基地内に住んでいるフランは外出許可をもらい、その足でフランを自宅へと連れて行く。すぐに抱いてしまいたかったが硝煙の匂いがついているからシャワーを浴びたいと言い、そのまま一緒にバスルームへ入ってフランの身体を洗った。

 俺のキスで乳首が硬くなるフランの身体を洗いながら愛撫を施し、ベッドの上でも充分に愛撫を施す。胎内に挿れた時の狭さに驚いたが、まさかバージンだとは思わなかった。

「ふっ……。貴重なモンをもらったな……俺が最初で最後の男だ、フラン」

 そう言ってキスをすると、そのまま腰を動かし始めた。ゆっくり腰を動かしながら胸を揉み、なめらかな肌に唇と舌を這わせる。

「あっ、はぁっ、あんっ、ああっ!」

 腰の動きに合わせて啼くフランは、普段が女を感じさせないだけにセクシーだ。背中を反らせ、突き出した胸にしゃぶりつき、乳首を舐めながら腰を動かす。

「ああんっ! ひぁ、ダメっ、あああ!」

 喘ぐその声も、啼く声も。そのどれもが愛おしく、可愛くて仕方がない。抱き起こして下から突き上げれば、俺の肩を掴んで背中を反らせる。目の前で揺れる乳首に吸い付き、舌でなぶればフランは益々乱れる。

「あああっ! ダニエルっ、ダニーっ! ああんっ!」

 激しく下から突き上げるとイったのか、びくびくと震えて弛緩するフランの後に続いて俺もあとを追うように蜜壺の中へと白濁を吐き出した。フランの生理の期間は把握している上、絶対ではないが妊娠することもない。最初はどうしてもナマでフランを抱きたかった……ただそれだけのことだったが、何度も抱いているうちに結局フランに怒られ、フランはピルを飲むようになり、俺も避妊するようになったのは余談だ。

「この、体力バカ! 明日は単独での飛行訓練フライトなのよ?! 足腰立たなくなったらどうするのよ!」

   疲れた顔をしてそう言ったフランに、今度は休みの前日に抱こうと密かに決め、帰ると言ったフランを基地内の部屋まで送り届けた。


 ***


(あのヤロー!)

 ダニエルに自室まで送ってもらったあと、シャワーを浴びて汗を流す。しつこいくらいにダニエル……ダニーに抱かれ、足腰が痛い。

「……同じ軍人だからこの程度で済んでいるのよね、きっと……」

 あたし自身にも体力があるから。

 ふう、と息を吐き出して身体を見下ろす。見えないところに散らされたキスマークに溜息をつきながら、痛む足腰を揉み解す。身体が酷く疲れているからさっさと眠りたい。
 水滴を拭いて下着を身につけ、Tシャツを着てベッドへと潜ると、さっきまであった温もりがなくてなんだか寂しさが込み上げる。
 愛した男に抱かれるのはこんなにも幸せなことなんだ……そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠ってしまった。

 翌朝起きた時は微妙に身体が怠かったものの、ダニーに抱かれたせいだと何とかベッドから抜け出し、日課であるランニングをするべく着替えて外へ出ると、ゆっくりと走り出した。ランニングを終えて戻るとシャワーを浴びて着替え、そのまま訓練へと向かう。今日は飛行訓練と実地訓練があった筈だ。

 単独の飛行訓練フライトから戻って来るとお昼で、ご飯を食べたあとは実地訓練だった。それもこなし、夜はダニーと少し話し、休みの前日にダニーに抱かれるという日々を繰り返し、ダニーと付き合い始めて一年がたったころ上官に呼ばれた。

 呼ばれた先には三十人くらいの人間で女性はあたしだけだったけど、ダニーがいたから何となくホッとしていた。そして扉から入って来たのは父を含めた数人で、その父から言い渡されたのは海軍特殊部隊ネイビーシールズの任命だった。まさか、父が海軍特殊部隊ネイビーシールズだとは思わなかった。

 派遣先はキナ臭い中東で、とある人物の暗殺が目的だった。もちろん、あたしの役目は狙撃手ヒットマン
 暫く抱けないからと出発の前日にダニーにたっぷりと抱かれたあたしは、当然のことながら翌日は寝不足なうえ、足腰が痛いわけで……。

「……俺が悪かった。暫く寝てろ」

 輸送機の中でそう言ったダニーの言葉に甘え、そのまま目を瞑った。

「本当に寝るとは……大物だな、おい」

 起きたあと、ダニーや他の皆にそう言われてからかわれるとも知らず。


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